転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた   作:大きいホクロ

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その竜は世のために戦場で生き続けた。
その様は人々には希望と映った。

ファイティングライフ 竜武乱閃 収録カード 『希望の竜王』フレーバーテキスト


インフレが進むキャラの強さ

「悪道君、久しぶり!」

 

 放課後、廊下を歩いていると、偶然水瀬とすれ違った。

思えば入学してから顔を合わせていなかったような気がする。

ご丁寧に此方を振り向いて元気な挨拶を寄越してきた。

 

「ああ、久しぶりだな。じゃ」

 

ガシッ。と擬音で表すなら鳴りそうな勢いで俺は腕を掴まれた。かなり強い力で軽く振り払おうとしても思うように振り払えない。

 

「せっかくだから、一緒に寮の方まで行こうよ?」

 

「遠慮しておくよ」

 

水瀬が手を離してくれない。

全力で振り払おうと思えば振り払えるだろうが流石にそうも行かない。

水瀬は微笑みを浮かべて何も言わない。

周りにいた丸刈りやら髪の毛が生えてる奴やらがこちらに奇異の視線を向けている。

 

「はぁ…好きにしろ」

 

「うん!」

 

水瀬は嬉しそうだ。小学生の頃もこんな事があった気がする。

多少強引になろうが水瀬のこの笑顔は以前から変わっていない。

変わっているのは背丈と着ている服が同じ制服になったくらいだ。

 

 

「悪道君はやっぱすごいね。生徒会にいて」

 

寮への道、水瀬の歩幅に合わせてゆっくりと歩いている。

 

「捻咲と宵闇のおかげだ、と言っておくか」

 

「けど悪道君がやっぱ凄いよ、全勝だもん」

 

「そうかよ…」

 

「うん!」

 

水瀬からのヨイショにどう答えて良いかわからずぶっきらぼうに答える。

相変わらず何が楽しいんだか水瀬は笑顔だ。

 

「そう言えば水瀬」

 

「うん、何かな?」

 

ふと少し気になっていたことを聞いてみることにした。

 

「どうしてこの学園に来たんだ?」

 

「えっ!?そ、それはね……」

 

水瀬は焦りながら言い淀んでいる。

どうしても知りたいわけじゃ無いから深掘りするのは辞めておこう。

 

「言えないなら別にいい」

 

「そ、そう。い、いつか言うよ…」

 

「そうか」

 

「あ、そろそろ分かれ道だね」

 

それはそれとして学園への入学でもう一つ気になっていた事があったのを思い出した。

 

「水瀬、これから時間あるか?」

 

「え!?あ、あるけど…」

 

「部屋に寄ってけ」

 

「あ、あく、あ、悪道君のへ、部屋に!?」

 

「時間がないなら別にいい」

 

「お、お邪魔させてもらうね」

 

 

 

 

 

「デッキを出せ」

 

「そうだよねー、悪道君だもんねー」

 

「それ以外に何があるんだよ」

 

水瀬は試験の時にあの捻咲を下している。

そして今髪の毛がある事から二ノ宮先輩の実力テストでは負けていない。

つまり今の水瀬は強い。

直接戦ったことが無いのもあり、俺は水瀬に興味を持っている。

 

「はぁ…ドキドキして損した」

 

「何か言ったか?」

 

「ううん、何でも無いよ。分かった、じゃあ始めようか」

 

「ああ」

 

「「レディー・ファイト」」

 

 

 

 

 

「とどめだ、『生贄村の農夫』」

 

「私の負けだね」

 

勝負は俺の勝ちだった。

水瀬の実力はかなりの物だった。

今の雅は同級生だと勝導の次に強いと思っているが、それに迫る強さが水瀬にはあった。

 

「捻咲に勝った時にも思ったが…強いよな、水瀬」

 

「えへへ、ここに入学する為にマコトちゃんとユウキ君に厳しく指導して貰ったんだ」

 

「勝導と雅が教育係か‥豪華だな」

 

「ふふふ、そうだよね」

 

水瀬は恐らくまだ強くなるだろう。

水瀬だけじゃ無い、恐らく会長に負けた勝導ももっと強くなる。対戦する際は悟られない様にはしているが俺は水瀬や雅に大分苦戦している。

アイツらの成長は俺に危機感を与えている。

どうやら“俺”は負けて今のポジションを失うのが怖いらしい。

 

「さて、呼び止めて悪かったな水瀬」

 

「大丈夫だよ。悪道君とファイトできて良かった」

 

「そうか。そこにある菓子は好きに持ってけ」

 

「良いの?ありがとうね」

 

「どうせあったらあるだけ捻咲が食い尽くすだけだ」

 

「……捻咲さん、よく来るの?」

 

「ん?ああ菓子食ってぐうたらしてるよ」

 

何やら急に水瀬の声のトーンが落ちた。

 

「私もまた来るね」

 

「あ、ああ」

 

どこか有無を言わせない様な雰囲気を纏っているが別に来られる分には問題はない。

 

「…それじゃ、またね!悪道君!」

 

「ああ、またな。水瀬」

 

「うん!またね!」

 

言ったばかりの「またね」を復唱しつつ、大きく手をこちらに向けて振りながら水瀬は帰っていった。

 

 

 水瀬を見送った後個室の奥の部屋、プライベートのスペースに戻ると机の上にストレージを取り出した。

そしてデッキを広げて種類ごと枚数順に並べ替えた。

恐らくこれから更に学園は荒れる、そんな胸騒ぎを“俺”は感じながらデッキ作りに精を出す事にした。

 

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