転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた   作:大きいホクロ

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失いしは郷愁の念。生贄になる日を待つのみの骸となった。

ファイティングライフ 獣鬼撃闘 収録カード 『失いの龍』フレーバーテキスト


めんどくさいメンタルクソ雑魚ライバル

「やっぱ強いな…君は」

 

「へへ、そうでしょ」

 

それは幼い日の“俺”だった。

いや“俺”というより“以前の俺”と形容した方が良いかもしれない。

カードゲームはなんだっけ…まあなんでも良いか。

あの頃の俺は友達の中だと負け無しの地元じゃ最強とでも言うべきだった。

 

「…君は俺たちの中で最強だな!」

 

「そんなことないって〜」

 

だから俺はそれからも強くあろうとした。

皆が俺の強さを褒めてくれたから。

 

 

「…で攻撃」

 

「はぁ…負けだよ」

 

「そこは…した方が良かったよ。そうしたら…になって…」

 

「お、おうありがとな」

 

それから少し時間が経って今の俺と同い年くらいになった時、俺はよりカードにのめり込んでいた。

周りの友人は少しずつ部活だったり別の趣味に流れていった。それでも残った奴らと遊んでいた。

きっとこの頃から周りとの温度差は生まれていたんだろう。

俺の構築はどんどん所謂ガチ構築に近付いていた。お小遣いだとかお年玉は大分カードに注ぎ込んでいた。

一方友人たちはお小遣いで軽くやる程度。

その差は幼い俺たちには大き過ぎた。

 

「…を出してcip解決で…更に効果で……」

 

「………はぁもういいよ、俺の負けだ」

 

「あ、ああ」

 

勝てないゲームはつまらない、当然の話である。俺が勝つ時の友人たちの顔は諦めを孕んでいた。

そうやって俺の対戦相手だった幼馴染達は自然とカードゲームを辞めていった。

俺もそうやって友人が離れていくのが怖くて自然と友人とカードゲームをする事が減っていった。

そうして俺は高校生になると…………

 

 

懐かしい夢を見た。

今日はいつもより鮮明だった。外は薄暗く大雨が降っている。

最近の俺はこの世界に慣れていたと思っていた。

カードが科目になっていようと気にもならなかった。だから油断していた。

この世界の人間達はデッキを変えることがあまり無い。

変える人はたまに居るがそういった連中は得てしてあまり強く無い、ということが多い。

特に強いプレイヤー達、プロだとかはデッキは殆ど固定である。デッキはリスト自体は流動的だが軸は変わらない、使ってる者と共に成長する物、という認識が一般的だ。

それほどそれぞれのデッキへの愛着は強い。

分かりやすく言うとデュ⚪︎マなら赤単ブラ⚪︎ドがB⚪︎ライザ入れたり我⚪︎我を獲得したりだとか、遊⚪︎王だと⚪︎碑が閃⚪︎姫を混ぜたり永続罠を混ぜたりだとか、ヴァ⚪︎ガならドラ⚪︎ュエルドが仮面を付けたりイグ⚪︎スになったりはするけどそれらが別の何かにはならない。

そのようにこの世界の個々人のデッキというのは重要な物である。

宵闇が怒ったのはデッキを変える事そのものよりも気軽に変えようとしている俺の態度でもあったのだろうと思いたい。

 

準備は済ませたものの足取りが重い。

俺は教室に行きたく無いらしく、自室から出ようと言う気が起きなかった。

俺の根幹では友人を無くすのは大分恐れていた事だったみたいである。

なので体調不良と言うことにして部屋に引き篭もることにした。

これも前世の俺だったらやらないような不真面目さだ。

 

 嫌な夢を見た手前眠る気にもならずなんとなしにデッキを机に並べる。

『生贄村』と『郷愁』。

この世界に来てから使い続けたテーマとそれと相性の良いこともあって採用したテーマだ。

不自然な笑顔の人間型のモンスターと少々グロテスクな動物のイラストが特徴のテーマと、帰れぬ今は亡き祖国を想う兵士達のテーマだ。

そしてそこにいまだに残っている異物が1枚。

母から貰った、貰った時には強かった『彷徨いの龍』。

そのカードは明らかに今のデッキリストにおけるおかしな点である。

副総帥との対戦で軸に据えるには限界を感じ、ピンに採用を減らし、使う時があるかもしれない程度のカードになっているそのカードは酷く頼りなく見える。

いっその事抜いてやろう、そう思ったのは何度となくあるがそれでも抜くことはなかった。

こんな中途半端なデッキで生徒会長や勝導に張り合えるのか、そう考えつつ頼りないそのカードへ手を伸ばし、脇へ避けようとする。

代わりに採用するのは『生贄村』の枚数を減らしていた別のカード。

前世でも何度となくやってきた事だ。

好きだからと無理に入れていた、けれどそこより優先して採用すべき物があるからそちらを優先して結局抜く。

 

「これは貴方のために用意したカードよ」

 

死んだ母の笑顔が頭を過る。ファイティングライフを始めてから厳しいばかりだった今世の母が俺に向けた笑顔が。

 

「ゼン様…」

 

友人だった者の悲しそうな声が過る。

いつになっても俺は友人とうまく行かない。前世よりも簡単に解決できそうだった今回でさえも。

だったらそれで良い、うまく行かないのはいつもの事だ。

繋がりを失ってまで通したかったことを通すべきだ。そこすら通さないならただのアド損だ。

そんな開き直りのような感情と共に俺の手元にあるカードは光っていた。

俺の薄暗い感情に合わさったようにそのイラストはさらに暗くなっていた。

 

「『失いの龍』か……」

 

カードの姿が変わる、話には聞いていた。

勝導や雅が実際に引き起こしていたりプロが実際にやっている。

驚きはない。なんとなくこうなる気はしていた。ちなみに複数持っている奴らも全て変化していた。

ちょうど良い、学校に行かない時間はこいつのデッキについて考えよう。

外では相変わらず雨が降り続けていた。




一年間苦楽を共にした可愛いクリーチャーが殿堂したので昨日は投稿できませんでした
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