転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
ファイティングライフ 上級デッキ ロストヒーローズ収録カード
『失いの英雄』フレーバーテキスト
イライラする。そして気に入らない。
「攻撃だ。『失いの英雄』」
「なんなんだよ…その強さ」
「さあ…腕試しで負けた奴は鍛え直さなきゃな」
「…畜生っ」
負けた奴からカードを巻き上げる事が。
そしてそれを正当化している事が。
「ほら…カード置いてけよ。今ならさっきのカードで許してやるよ」
まるで自分を見ているようだ。
「はっ…その程度で良いのかよ!くれてやるよこんなカード!どうせ元は二階堂さんからの貰い物だ!」
そう言うと先輩はカードを投げつけて走り去って行った。
二階堂先輩と関わる気は無いつもりだった。
だが気が変わった。
地べたに落ちた『夜の忍』を拾い上げる。
間違いなくアイツのカードだろう。
二階堂先輩を生徒会から引き摺り下ろす。
「しかし彼のやり方は度が過ぎています。僕は彼を止めようかなと思います」
「しかし彼のやり方なら危機感はより一層高まりますよ?誰も自分のカードは失いたく無いですから」
取り敢えず生徒会室に居ないかと目の前まで来たが、中から聞こえるのは会長と三月先輩の声だけだ。
三月先輩にしては珍しく声に僅かな怒気を感じる。
「会長は二階堂君をかなり気にかけていますよね…彼を使って何を企んでいるんですか?」
「さあね…取り敢えず三月君は手を出さないで貰えるかしら?これは1年生と2年生の問題です。…と言う事ですよ悪道君。入って来たらどうかしら?」
「………」
俺は言われるままに入室した。
会長はニコニコ微笑んでいる。
「ごきげんよう悪道君。1年生の雰囲気は聞いてますよ」
「分かってて放置してるのか?」
「生徒の自主性は大切ですからね」
「物は言いようだな」
「敬語、忘れてますよ?」
「失礼しました会長様。用事を思い出したので失礼します」
「そういう反骨精神私は好きですよ…‥あ、そうそう面白い事教えてあげます」
「……………」
取り敢えず耳だけは傾ける。
「今から勝導ユウキ君と二階堂君が対戦するみたいですよ。校庭の真ん中で」
急いで走り出す。勝導が負ける気はしない。そんな筈なのに嫌な予感がしている。
「ふふふ、可愛いですね。ウツワは」
会長が何か言っていた気がするが俺は気にする余裕は無かった。
校庭の中心には人だかりが出来ていた。
その中心にいるのは勿論二階堂先輩と勝導だ。
その周りにいるのは武家、「す」の奴、捻咲、そして水瀬、相対する形で二階堂先輩の取り巻きの2年生だ。
「悪道!アンタも今来たの!?ユウキは!?」
「既に始まってるみたいだ…」
「っ…ユウキ…勝って…」
同じタイミングで雅も息を切らしながら走ってきた。
「勝導くぅん、前にワテクシと同じポストに居た二ノ宮くんに勝ったから勝てると思ってるのですかぁ?」
「そんな事は関係ない。貴方の横暴が見過ごせない、ただそれだけです」
勝導は明らかに怒っている。
敵意を大分二階堂先輩に向けている。
現在は勝導の3ターン目が終わったタイミングだ。勝導の盤面にモンスターは居ないが代わりに手札は潤沢にある。
「けどねぇ…生徒会長に成す術も無く負けた君じゃあ…ワテクシには勝てない」
「…‥随分煽りますね」
「煽りますよぉ〜なんせ今年の1年は質が低い!1クラス全員丸刈りなんて去年は居ませんでしたよぉ〜!ですから!心を鬼にして皆さんの腕試しをしてあげてるのですよぉ〜!」
「心にもない事を」
「負けるのが悪いでぇす!………さぁ…おいでませぇ〜、召喚『蝋人形館の主』」
「その能力は相手のモンスターを選んでコピートークンを精製する。だけど僕のモンスターはさっきのターンの攻撃後に盤面から退かしている」
「それは感心しましたよ、よく勉強していますねぇ〜、偉い!けどこれはどうです?『死体標本』その能力で相手の墓地のモンスターを2体まで蘇生し、蘇生した数相手に1ダメージ!」
「しまった!」
「さあ、コピーしましょうか、『絆の竜王』!これでコピートークンは竜王と同じ能力に……つまりぃ!…君は対抗魔法を発動できない、さぁ一斉攻撃ですよ」
「………っ」
「これで終わり」
「「ユウキ!」」「ユウキ君!」「ユウキ殿!」
「勝導っ!」
「…………また、負けた」
「さて…‥負けた者は鍛え直す。それがぁ、ワテクシたちの交わしたルールです」
「ほら、カード出せ」
その声は二階堂先輩から出た声の中で一番低かった気がした。
「……どうぞ」
勝導が『絆の竜王』を震える手で差し出した。
「………」
パシィっと音を鳴らしながら二階堂先輩はそれを取り上げた。
「本当に今年の1年はレベルが低い。これが天下のFL学園なのかと呆れるばかり…なので
ビリッ!
二階堂先輩の両手には2枚に分かれた『絆の竜王』だった物があった。
「……なっ」
「ひ、酷い……」「あ、あそこまでやるのかよ…」
「やりすぎだろ…」「なんなんだよこの学園…生徒会は頭おかしいのかよ」
「これは見せしめです!一年生!プロを志すなら死ぬ気で勝ちなさい!こいつみたいになりたく無いでしょう!」
「ほら、返してやるよ」
ビリビリとカードを粉々にして二階堂先輩はそれを俯く勝導の上に降らしている。
「二階堂!今度は私が相手よ!ぶっ殺す!」
隣に居た雅が声を張り上げる。今にも飛び掛かりそうな勢いだ。
「落ち着け、雅」
その腕を掴んで無理矢理止める。
「離しなさいよ!アイツは絶対に許さない!」
「うるさい。黙れ」
「黙ってられないわよ!邪魔するならアンタだって……」
「うるさいですよぉ…お2人さん」
二階堂先輩がこちらに視線を向けている。
眼鏡は放課後の夕焼けに反射して怪しく光っている。
「二階堂!私と……」
二階堂先輩に面と向かって勝負を挑もうとする雅。
を俺は押し退けた。
「
「ちょっと横入りしないでよ!」
「おやぁ…ワテクシの後輩の悪道君じゃあないですか、先輩に敬称を付けないなんて本当にかわいげがない。それに賭けなんて本当にレベルの低そうな言い方ですねぇ…‥ちなみに賭けるのは?」
「お前とお前の取り巻きが持って行ったカード全てだ。売ったカードは全部買い戻せ」
「正義のネズミ小僧気取りか……悪道君、ワテクシは君に期待してたんですよぉ?もっと勝ち一本に拘る奴だって、なのに正義感に駆られて感情で動くなんて」
「誰が持ち主に返すって言った、勝ったら全部俺のものだ。勿論『絆の竜王』も探してこい、綺麗な状態のをな」
「へぇ……」
「悪道…アンタこのタイミングで!」
「ちなみにワテクシが勝ったら何がもらえるんですか?」
「俺のデッキと…そうだな、そこで俯いてる勝導のデッキでどうだ?俺たちのデッキは強いぜ。俺が負けたら煮るなり焼くなり好きにしな」
「悪道!さっきから好き勝手やりすぎよ!」
「良いでしょう!叩きのめしてあげましょう!……ですがワテクシは疲れました。また明日にしましょう」
「おう、逃げんなよ先輩」
「そちらこそ、後輩君。ほら皆さん!帰りますよ!」
二階堂と取り巻きはその場を後にした。
集まっていた一年達は不安そうな顔して俯いているか何も言わずに消えるばかりだ。
「さて………邪魔だ。帰らせろ」
帰ろうとする俺の前に武家、「す」、水瀬、捻咲、雅が立ち塞がって居た。
「………勝ってくれっすよ、絶対に」
「ユウキ殿の無念、晴らしてくれ」
「俺は勝導の為じゃなくてカードが欲しいだけだ」
何故こいつらはまるで俺が勝導の為に戦おうとしてると思っているのか。
「こういう時のアンタは頼もしく見えるわね…それと勝ったら私のカードは私にちょうだい」
「考えといてやる」
捻咲は相変わらずだ。表情はどこか強がっているようにも見えるが気のせいだろう。
「悪道君、勝ってね」
水瀬は相変わらず俺を信じきった目をしている。
「今回は譲ってやるけど、負けたら殺す」
雅は意外なことに俺に対して怒らなかった。
正直一発は殴られると思ってた。
「言われなくても勝つさ」
今までこの世界で俺は大抵ヒリヒリした対戦を楽しんでいた。リアルにダメージを負うDFCとの対戦すら、だ。
今回は楽しもうという気は一切起きなかった。