転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた   作:大きいホクロ

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かつてその氷山は王の実験に使われた

ファイティングライフ 獣鬼撃闘 収録カード 『氷山の大男』フレーバーテキスト


後処理回

「どうぞ?悪道君」

 

寮に戻る前に生徒会室に灯りが見えた為、そこに足を向けた。

相変わらず部屋の前に立っただけで会長は気付いた様である。

 

「失礼します」

 

最近は敬語にも慣れて来た。俺の年齢に合わせて口の悪さもマシになっているのだろうか?

会長は何やらパソコンで作業している最中な様だ。生徒会長が学園最強であるが故の仕事なのだとしたら、強いだけで会長になっても相当面倒だろうなどと思ってしまう。

 

「会長、二階堂先輩は呆気なく一年坊に負けました。その上勝負の上での合意を翻す様な姑息な男でしたよ」

 

会長は聞いてるのか聞いていないのか、しばらくキーボードを叩いたかと思うとこちらに視線を向けた。

 

「はぁ……2週間も持たなかったなんて嘆かわしいですね…四天王同士の勝負とは言え彼を降ろさないのは貴方達の溜飲が下がらないでしょう?」

 

「当然です」

 

「それと…賭けを反故にされたんでしたっけ?アンティルールはそもそもいい事じゃ無いから強く言えないんですけどねぇ……」

 

この後に及んでも二階堂を庇うつもりだろうか?

 

「悪道君、これをあげましょう」

 

そう言いながら会長はこちらに何枚かを纏めたプリントの束を差し出した。

 

「これはなんです?」

 

「二階堂君達が持って行ったカードの一覧です。貴方は当事者じゃないから具体的に持ってかれたカードは知らないでしょう?」

 

目を落とした書類に書いてあるカードの量はあの場で受け取った物より圧倒的に多かった。

 

「何故こんなものを?」

 

「勝負が付いた後にいつまでも返した返さないの話になったら困るでしょう?」

 

「黙って見てた癖に……」

 

「どうせ彼のやり方ならいずれ討たれてましたからね。仮に貴方が倒さなくても三月君が止めていたでしょうから…けどどうせなら一年に乗り越えて欲しかったんですよ、貴方みたいにね」

 

「……取り敢えず貰っていきます。」

 

この学園の実力主義はイカれている、恩恵を受けている俺ですら感じる。

書類をどう突きつけるかはこれから考えるにせよ貰える物は貰っておく。

 

「ええ、ぜひ有効活用してくださいね」

 

「次の選抜戦は?」

 

「また1週間後ですかね」

 

「仮にそこでまた二階堂が勝ったら?」

 

「二階堂君が生徒会に戻ってくるでしょう」

 

「またあの男に権力を与えるのかよ!」

 

思っていた以上に大声を出してしまった。

またこんなことになるのはまっぴらだ。

 

「仕方ないでしょう。強さと言う指標で私達には権力が与えられていて、そのチャンスは平等に全ての生徒にあります」

 

「そうかよ……」

 

2年生の先輩方が二階堂に勝つのを祈るしかないのはもどかしいばかりだ。

踵を返し生徒会室を後にしようとする。

 

「会長、最後に一ついいですか?」

 

「なんでしょう」

 

「会長は二階堂のやったことをどう思ってますか?」

 

「うーん、そうですね……残念に思ってますよ」

 

「そうですか。リスト、ありがとうございました」

 

 

 

 

「盗み聞きですか?」

 

ドアを開けたら三月先輩が居た。

 

「二階堂君が負けたって聞いてね。来てみるとお取込み中だったから」

 

入らないでおいていたよ、そう彼の顔は言っている。

 

「耳が早いですね」

 

「君も手が早いね。ありがとう、二階堂君を止めてくれて」

 

「気に入らなかったから倒しただけです」

 

「二階堂君にそのリストを突きつけるのかい?」

 

俺の手元のプリントを見ながらそう彼は尋ねてきた。しっかり盗み聞きしていたようである。

 

「ええ、しっかり毟り取ってやります」

 

「僕も一緒に行って良いかな?友人達と、ね」

 

要するに圧を掛けてくれるという事だろう。

友人達とは言っているが生徒会の三月先輩の近くにいる連中だ、相当手練れなのだろう。

 

「助かります」

 

「それじゃあ、明日の朝始業前、二階堂君の教室の前で」

 

「ええ、また明日。……三月先輩は帰らないんですか?」

 

「ああ、ちょっと会長と話をしたくてね」

 

「そうですか」

 

「昔はもっと正義感が強かったんだよ。悪い子じゃないんだ」

 

三月先輩は昔から会長を知っているかのようにそう言うと生徒会室の扉を叩いた。

俺はその場を後にした。

 

 

 

校舎を出ると夜はだいぶ深くなっていた。

俺は部屋に戻る…のではなく寮のとある一室の前にやって来ていた。

乱雑にドアを叩くと、無警戒にアッサリと開けられた。

 

「勝導……なんだよ揃い踏みだな」

 

「来ると思ってたわよ」

 

開けられた扉の先には雅がいた。

アッサリ部屋に通されると、俺の部屋と違い狭いスペースで勝導と向かい合う。周りにはあの場にいた連中だ。

すの奴はともかく女子の捻咲、雅、武家、水瀬までこんな夜なのにいる。

 

「やあ、ゼン君……結果は聞くまでもないみたいだね」

 

「そうだな、一通り終わった」

 

「流石だね、本当に君は強いよ」

 

「お前は弱くなったな、あんなに無様に負けて」

 

「……………」

 

「見ろよ、一年連中のカードの山だ。これは全部俺の物だ」

 

そう言いながら今手元にある二階堂から奪い返したカードを見せつける。

 

「……………」

 

俺の煽りに対して誰も何も言わない。

直接煽られた勝導も、普段なら突っかかって来そうな捻咲もだ。

 

「カードまで破られて泣き寝入り、本当に情けないな」

 

「そうだね」

 

勝導は言い返す事もなく一言そう肯定した。

本当に負けて腑抜けたか?

 

「そうだよ、雑魚が」

 

「本当にそう思うよ」

 

「……少しは言い返してみたらどうなんだよ!」

 

痺れを切らし胸倉を掴み上げる。そうしたこちらを見据える勝導の目は鋭かった。

明らかに腑抜けた男の目ではない。

 

「言い返さないよ。君が言っているのは事実だ」

 

「っ〜〜、お前らもなんか言ったらどうだよ!」

 

周りの奴らはどいつもこいつも黙って状況を見てるだけだ。

全員俺への視線は冷たい。俺の横柄な振る舞いを責めるような冷たさではなく、憐れむような冷たさだ。

 

「……悪道君はさ、分かりやすいよね」

 

水瀬はとても悲しそうな声、表情でそう絞り出した。

 

「……何がだよ」

 

「下手な芝居辞めろって言ってんのよ」

 

捻咲もそれに乗っかって文句を垂れて来た。

 

「芝居ってなんだよ」

 

「あんまり交流無い俺にもバレバレっすよ」

「私にもバレバレだぞ、悪道殿」

 

「だから何が言いたいんだよ!」

 

イライラする。俺をそんな可哀想な目で見るな。

 

「何って…ユウキ焚き付けてわざと負けてカード渡そうって魂胆でしょ?分かりやすすぎ」

 

雅は呆れながら俺の目的を言い当てた。

分かってるならとっとと乗れよ。

二階堂の言う通りネズミ小僧なんて俺のやる事じゃない。

それに今更どの面下げてアイツにカードを返せば良いかも分からない。

 

「っち…分かってんなら話は早い。勝導、俺と勝負しろ」

 

「やだね、その功績はゼン君の物だ。君がみんなに感謝されるべきだ」

 

「そんな功績いらねーよ。良いからデッキ出せよ、切札も無くなって負けるのが怖いのかよ!」

 

「…悪道君は!」

 

水瀬が声を張り上げた。その声は少し震えてる。

 

「もっと周りの気持ち考えてよ…」

 

水瀬は俺が今まで見た表情の中で一番悲しそうな顔をしている。

何故かその顔を直視したくなくて視線を逸らした。

 

「……良いよ。そこまで言うなら勝負しよう」

 

「やっとやる気になったかよ」

 

「けど僕は負けるつもりは無いよ」

 

その言葉に虚勢は感じられない。

本気でそう思っているようだ。

 

「言うじゃねえか」

 

「だから賭けをしようか」

 

勝導が珍しくアンティルールを提案して来た。

小学生の頃に初めて戦った時以来だろう、勝導とアンティルールで戦うのは。

 

「へぇ、何を賭けるんだ?」

 

「僕が勝ったら君はそのカードを皆に返して来い。二階堂に勝ったってね」

 

「なんだと?」

 

「僕が負けたら僕が君を倒して手に入れたって皆にカードを返しに行くよ」

 

「舐めてるのか?」

 

「君の望みを君が勝ったら叶うようにしてあげたんだよ。それとも怖いのかいゼン君?切札を失ってる僕が」

 

勝導にしては珍しくかなり煽って来やがる。

まあ良い。負ける必要なくカードを返してくれると言うのなら乗ってやろう。

 

「良いぜ、やってやるよ。お望み通り叩き潰してやる」

 

「それは無理だよ、勝つのは僕だ」

 

 

俺は手加減もわざと負けるのも嫌いだ、どうせやるなら勝ちたい主義だ。

……だが今の俺は元友人に話しかけるよりわざと負ける事の方が気が楽らしい。

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