転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
竜の魂は受け継がれる
ファイティングライフ 上級デッキ ソウルメイツドラゴン 収録カード
『誓いの竜』 フレーバーテキスト
高校生になる頃には“俺”はカードショップの大会に休日出るようになっていた。
「これで攻撃で」
「ありがとうございました、さっきのターン……でしたよね」
「あ、はい!…だったので!」
「ですよね!なのでこっち……で……」
店で会う人は色んな人が居た。
そこに居るのは自分と同じがそれ以上にカードにのめり込んでる人ばかり、友達との温度差で苦しむより気軽に楽しめた。
そこで俺は何人か新しく友達と呼べる人もできていたと思う。
だがその環境でも俺は上手くやれなかった。
「……で攻撃です」
「………あざしたー」
対面の男はそう言うとつまらなそうに片付けを始めた。大会でよくある事だった。
そのよくあることが“俺”は苦手だった。
別に暴言を吐かれる訳でもない、何か嫌な事を言われた訳ではない。
今の俺からしたら笑ってしまうほどに“俺”の気が弱かっただけだ。少しの苛立ちに必要以上に怯えてる、ただそれだけ。
“俺”はカードゲームで嫌われるのが怖いんだ。
いやカードゲームのせいにするのは良くないな、結局ガキの頃友達が離れていったのが未だにトラウマなだけで人に嫌われるのが怖かった。
だから“俺”は相手を窺って手加減をしたり相手のつまらなそうな表情を見て焦って早く終わらせようと勝ちを急いだりお粗末な手を打ったりしていた、本当に情けない。だから俺はこの世界では傲岸不遜に手を抜かずに勝ちを狙い続けた。
嫌われるのなんて気にしない。俺は好きに対戦する。…………そんな自分に、この体の性格と合わせて自然となっていたと思っていたんだ。
………それでも俺は1人の友人からの拒絶を怖がり負けを選ぼうとしていた。
何も変わっていない。多少性格が変わっても俺は“俺”だった。
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「ここじゃあなんだ、場所を移そう」
「こんな時間にかよ……」
「大丈夫、迎えは呼んであるよ」
そう言うと勝導は俺達を寮の外へと誘った。
外へ出て門を出るとそこにはワゴン車とボロボロの軽が2台並んでいた。
「人使いが荒くて困るな、勝導ユウキ」
ワゴン車から降りてきたのはDFCの副総帥だった。残念ながら今日は棘を付けていない。
以前協力すると言っていたが車まで出してくれるのは便利屋みたいな扱いだなと少し憐れむ。
「ありがとうございます…この学校内だと寮内は狭いし広い場では万が一誰かの目がありそうなので」
「俺の部屋はどうなんだよ……」
「この夜遅くに女子を君は部屋に入れたいのかい?正直僕もこの時間まで皆が居るのは大分思うところがあったよ?」
「そうだな………すまん」
「まあいいじゃないか、勝負の場は気持ち的にも大切だ。ほら、時間も遅いし早く乗ると良い」
副総帥がその場をまとめる。相変わらずその辺がうまい。
「ワゴン車でもかなり詰めないとキツくないすか?」
「だから俺も居るんだよ」
オッサンがボロい軽自動車から顔を出した。
オッサンは昼間も用務員してるのに忙しいな…DFCってもしかしてブラックか?
「俺はオッサンのに乗ってく。お前らは副総帥のに乗ってけ」
ワゴン車だし向こうに運転手除いて6人でも乗れるだろう。
「待って、私も悪道君と…」
「今は1人にさせてくれ」
そう言ってオッサンの軽の助手席に無理やり乗り込む。
「出してくれオッサン」
「はあ…良いのかよ悪ガキ?」
「早く出してくれ」
「まったく横柄なお客様です事」
そう言いながらもオッサンは車を発進させてくれた。
寮内での水瀬の表情を思い出すと、彼女と同じ車内に居られる気がしなかった。
やっぱり俺は相変わらず小心者だ。
気を利かせてか、車内ではオッサンは特に何も聞いてこなかった。
沈黙が車内を支配していた。
「……オッサン」
「なんだ?」
「DFCの理念、結局俺は聞いてない」
以前聞きそびれた事を俺は思い出した。
ちょうど良い機会だし今日こそ聞かせてもらおう。
「まだ知らなかったのかよ…」
「タイミングを逃したんだよ」
チェーン処理みたいに、な。なんてこの世界では通用しない例えが喉から出かかった。つまらないな…。
「DFCの理念、それはな…………
カード中心の世界を作り変えることだ」
「は?…どういうことだよ」
「そのままの意味だよ。お前らプロ目指してる学園に通ってるガキに言う事じゃあねえがな、この世界はカード中心に回りすぎてんだと俺たちは思ったんだよ」
思った以上にでかい野望だった。
つまるところこの世界のあり方を俺の前世の世界に近づけようという事だろうか?
正直、言ってる事に対して思った以上に理解を示せてしまった。
「で、一年前はその為に動いていたのか?」
「カード達が内包しているエネルギーを集めて世界を書き換えようとした。それが勝導ユウの目的だったわけだ」
「その為に暗躍していたと」
「エネルギーを強く内包していた『希望の竜王』だかを狙っているうちにアイツらと対立したって訳さ」
「で、お前らは勝導に負けたと」
「仰る通りさ…だから別の方法を探して今もDFCは活動中って訳だ」
「ちなみになんで……」
「おっとそろそろ目的地に着くぜ」
そんな世界を作ろうとしているんだ?
そう聞こうとする頃には目的地に着いてしまっていた。
そこはFCタワーだった。以前DFCとの戦いがあった場だ。
無言でタワーの頂上へのエレベーターを登ると、あとに出たはずの勝導達はとっくに頂上についていた。
「ゼン君……」
「勝導……」
「「レディー、ファイト」」
「ゼン君、僕は君を友達だと思っている、攻撃だ『誓いの竜』」
6→5(ゼン)
序盤、勝導は盤面を並べつつしっかり攻めてくる。いつもの打点を並べて詰め切る戦い方だ。
「俺はそう思った事は一度もない。召喚『失いの村人』。魔法『失いの沼地』竜を破壊だ。更に山札から2枚を墓地へ」
俺も負けじと盤面を取りつつ墓地を肥やす。
「けど対戦する時、君はいつも楽しそうだった。その時僕は思っていたんだ、君は僕に似ているって。召喚『老練の翼竜』、速撃だ」
「俺は対戦するのは楽しんでいたさ。けどそれは対戦が好きなだけだ。対応魔法『失いの瘴気』その攻撃を無効にして1枚墓地を肥やす」
「ならなんで君はあんなに怒ってくれたんだ!」
「二階堂が気に入らなかっただけだ!魔法『虚の日常』!墓地を肥やして更にドロー!そして召喚!『失いの英雄』!速撃だ!」
「くっ………ゼン君、君は小学生の頃からお人好しだった!なのに君はいつも損していた!今回だってまた損をしようとしている」
6→4(勝導)
「うるさい!だからなんだよ!」
思い出すのはあの頃、ガリとデブに利用されていた情けない俺だ。だがだからどうした?俺が馬鹿だったから損した、それだけの話だ。
「僕は君が辛い思いをするのが嫌なんだよ!召喚!『誓いの竜騎士』」
勝導の声に呼応するように1人の騎士が、そこに実体を持って現れた。
その騎士は最初に彼が持っていた騎士より凛々しくなっている気がする。
王が居なくとも俺が居る!そう言っているような気迫だ。
「能力により仲間を呼ぶ!来い!『誓いの竜』!そしてこのターン防御されず自陣は全て速撃を持って打点を追加だ!一斉攻撃!」
「舐めるな!『失いの園』!手札を2枚捨てて山札から2枚を墓地へ!捨てた中の失いカードの分相手の打点を減らす!減る打点は3だ!」
「だが3打点はある!」
「くそっ………」
4→1(ゼン)
「ゼン君、君が傷付いたら嫌な人がここに居る、あそこで見てる皆もだ」
その視線の先に居るのは水瀬達だった。
アイツらは黙ってこの戦いを見ている。
「俺は自己犠牲の精神で動いてるような奴じゃない!ただ自分が話しかけたくないから!お前に押し付けようとしただけだ!負けて汚名が付くくらい辛くない!召喚!『失いの龍』!」
瞬間、俺の側に圧倒的な存在感を感じた。
それは勿論俺が召喚した龍だった。『失いの龍』がそこに居た。
「全てを吹き飛ばせ!『失いの龍』でお前の盤面を全て山札の下だ!そして更に2点!」
「っ………『誓いの竜騎士』は場を離れた時の能力を解決。」
4→2(勝導)
「そして魔法!『杯を満たす赤』これで俺の盤面を消し去り!お前に2点だ!」
「さっき解決した竜騎士の効果により、僕のライフはこのターン効果で1より少なくならない」
2→1(勝導)
竜騎士の霊体のようなものが勝導を守っている。
ここまでやって防がれるなんて、相変わらず勝導は強い。
「ちっ……だがまだだ!魔法『杯から目覚めし者』!除外されている『失いの英雄』を出して速撃だ!」
「対抗魔法『竜の奏でる天命』2点回復』
1→3→1(勝導)
「っち、ターンエンドだ」
「
「………その能力は?」
勝導は真っ直ぐだ。
いつまでもウダウダして心を閉ざしている、いつまでも歩み寄らなかった俺に対して駆け寄ってくる。
嫌なくらい……違うな、気持ちいいくらい真っ直ぐな奴だ。
「手札の竜騎士を1枚出して即座に防御、対抗不能な攻撃をするだ。代わりに打点はマイナス1だけどね」
「1点でもそれが最後の点なら重すぎるんだよ」
「そうだね、さあ終わりだよ」
「そうだな」
「攻撃『誓いの竜騎士』」
1→0(ゼン)
「負けたか………」
「ゼン、僕の勝ちだよ」
「そうだな、
そう言って俺はその場に仰向けで転がった。
タワーの頂上から見る空は星がキラキラ輝いている。雲なんて一切ない。
「僕も疲れたよ」
そう言いながらユウキも寝転がった。
「なあ、ユウキ……」
「なんだい?」
「負けといてなんだが………俺がカード返すの、その…手伝ってくれないか?」
「勿論手伝うよ。最初からそのつもりだったさ、ゼン」
「そうか………そりゃ助かるよ」
緊張の糸が途切れたのか意識が大分遠のいた。
なんか久しぶりに良い夢見れそうな気がする。
そう、昔の話だとかそんな辛気臭いもんじゃなくきっと良い夢が………。
「2人とも寝るな。ほら帰るぞ」
副総帥がなんか言ってる気がするが耳に入らない…………まあ良いか。
おやすみ。
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