転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
ファイティングライフ 『神徒討双』収録カード『<神託>を受けし獣』フレーバーテキスト
名称持ちのカード群が出てきて雰囲気がガラッと変わるアレ
最近は夢を見る事が減っていた。
友人だった筈の奴らが離れていく断片的な記憶の一部も、母との記憶も。
最近の眠りはとても深い。まるで暗闇の中にいるかのような安心感がある。
ぐっすり眠れて仕方ない。
“俺”は最近とても充足している。
「攻撃だ、『氷山の大獣』」
「くっ…何も、ない」
二階堂の後釜を決める選抜戦を勝ち抜いたのは二ノ宮先輩だった。
危なげを感じさせない圧倒的な試合で生徒会の座に返り咲いた。
「流石ですね二ノ宮君は。二階堂君が居ないとはいえ、全ての試合で常に主導権を握っていましたね」
「前より強くなってるっすね……」
以前より更に強くなった二ノ宮先輩はおそらく二階堂を凌ぐ強さだろう。
もし対戦する機会があるならば楽しみだ。
「そうだね、頼もしい限りだよ……ところで会長、その二階堂君がどこへ行ったか知りませんか?」
「さあ、どこへ行ったんでしょうね?」
三月先輩の視線は何か知っているだろ、と会長に訴えていたが、会長はそれをどこぞ吹く風と受け流した。
「さて、私は二ノ宮君を迎えに行ってきますね」
二階堂の一件以来、会長に対して俺と三月先輩は疑念を深めるばかりで、それは間違いなく今の生徒会の雰囲気に影響を与えていた。
「よお!元気か悪ガキ!」
「別に……」
放課後、寮に帰ろうとしていると掃除をしていた用務員兼DFCのオッサンに声をかけられた。
「釣れねえこと言うなよ、まあ聞けって」
中学生にこのノリするオッサンってかなりキツくないか?
「なんだよ……」
「それがよぉ……」
「ゼン様ー!待ってくださーい!」
オッサンの声をセンヤが遮った。
「おっと、また今度な」
「お、おう」
そう言うとおっさんは余所余所しく掃除に戻って行った。
「用務員様と何かお話されてましたか?」
追い付いてきたセンヤに尋ねられる。
そういえばこいつはオッサンの正体知らなかったな。敢えて言う事でも無いしと適当にはぐらかす事にする。
「いや、挨拶してただけだ、行くぞ」
「はい!」
「攻撃だ。『失いの英雄』」
「また負けました…相変わらずお強いですね」
ここ最近は俺の部屋で俺とセンヤは対面練習を繰り返していた。
センヤはもうすぐ始まる三年生と一年生の交流戦の代表選抜に備えて、俺自身は参加が現状内定している為交流戦自体に備えてだ。
「三月先輩には勝てそうですか?」
「どうだか」
「意外ですね」
本当に意外そうな声でそう返された。
「そうか?相手は三年生で会長を除いて最強だぞ?」
「けどゼン様なら澄ました顔で『勝つさ…』って言うと思ってました…」
「どんなイメージだよ…」
「私の中でのゼン様のイメージです」
「辞めろよ恥ずかしい…」
この男の中で俺は一体どういう扱いになっているのだろうか?
仲直りはしたものの相変わらずこの男の事を理解しきれていない。
「そういえばゼン様、ここ最近流行ってる“噂”知ってますか?」
「噂?なんだそれ」
「気が付いたら知らない強いカードがデッキに入ってる、って噂です」
カードが進化している事か?だがこの世界では割とある事だった気がするがそれとも違う事なのか?
この時点で何かとても嫌な予感がするぞ…。
「で、それは一体どんな強いカードなんだ?」
「私も詳しくは知らないですが…カード名に『神託』という言葉が入ってるらしいですよ」
「神のお告げ、か…」
特殊な名称のカード、か…。
番号持ちだったり星座だったり反転してたり偽りだったり仮面してたりするカード群みたいな物だろうか?
何はともあれ、また面倒な事が起きてそうだ。
「じゃ、また明日」
「ええ、お疲れ様です!ゼン様!」
あれから更に数回デッキを回すと良い時間になり解散となった。
そういえばセンヤの部屋を俺は知らない。男子寮のどこかなのだろうが、集まる時は基本広い俺の部屋に来るばかりだから気にも留めていなかった。今度覚えていたら聞いてみよう。
そんなことを考えながら玄関先から離れようとするとコンコン、とノックが響いた。
「誰だよ、こんな時間に」
捻咲がお菓子でも食いに来たか或いはユウキがデッキの相談に来たかと思いドアを開けると、そこには見知らぬ男が居た。恐らく同じ学校の生徒だろうか?
「悪道、俺と戦え!」
「へえ…久しぶりだな、そういうの。いいぞ」
どうやら最近はだいぶ減っていたカチコミみたいだ。
小学生の頃は大分多かったしここに入っても普通の対戦を挑まれる事は多々あった。
「お前を倒して、この世界に平和を!展開!」
瞬間、世界が変わった。
「フィールド展開か…二階堂が使ってたし普及して来たのか?」
つい先日二階堂が使っていたのもあって今回は自然に飲み込めた。
いや、飲み込めてしまったんだ。ここで俺は疑念を持つべきだったんだ…。
「「レディー、ファイト!!」」
「『失いの龍』の能力、お前の盤面を全て山札に戻す。お前の『<神託>を受けし獣』はここで退場だ」
「そ、そんな…俺の切札がっ…」
「とどめだ。『杯から目覚めし者』の効果で召喚した『失いの英雄』で攻撃」
「そ、そんなっ………」
世界が俺の部屋の玄関口に切り替わる。
目の前に居た男はかなりボロボロだ。
「……大丈夫か?」
「次はこそは、お前を倒す……世界は、俺たちが守る」
そう言ってそいつは足を引き摺りながら去って行った。
実体化する空間が気軽に使われるようになる状況は少し困るな、などと俺は呑気に考えていた。
この先に起こる事を、俺はまだ知らなかった。