転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
ファイティングライフ 竜王黎明 収録カード『流浪の癒し手』フレーバーテキスト
交流戦が迫る中、俺はデッキの調整に勤しんでいた。
相手は恐らく三月先輩では無いにしても三年生、それもあの先輩が選び抜いた一人だ。
決して油断できる相手では無い。
デッキを組んで回すにしても一人では限界がある。しかしセンヤ一人相手に回し続けるのも変な癖が付く、そうなると別の相手を用意するのが自然な形となる。
しかし誰でも良いという訳でもなく、センヤレベルは正直欲しい。
そうなると俺の伝手でなってくれそうなのは………
「とどめだ」
「また負けちゃった…ここまで連敗すると自信無くしちゃうな、あはは」
そうして調整相手として白羽の矢が立ち、俺の部屋で複雑そうな笑みを浮かべるているのは水瀬だ。
一色に負けたとはいえ選抜ではかなり上位にいた為調整相手としては申し分ない。
戦績は現在10戦やって俺の全勝だ。
「…‥わ、悪い」
俺はまたやってしまったようだ。前世の俺に染みついたトラウマが蘇る。
水瀬視点だと俺は急に部屋に呼びつけ、ひたすらサンドバッグにしてくる酷い男だろう。
そう考えると途端に申し訳なくなって来る。
「そ、そんな気にしないで!ゼン君が頼ってくれたのは嬉しいし、何回でも相手になるよ!」
しかし水瀬はこれだけ一方的な試合をしてもまだ対戦してくれるようであり、笑顔でそう言ってくれた。
前世で水瀬みたいな友人と出会えていたらな、と思ってしまうほど良い奴だ。
「…‥水瀬、本当にありがとうな」
「え、えへへ…どういたしまして」
「じゃあ採用枚数弄って使用感試したいから取り敢えず後10回くらい頼む」
「え!?これからあと10回も……う、うん頑張るよ!」
「とどめだ」
「うー、また負けた……毎回対策してるのに〜」
20戦目が終わる頃には水瀬は随分ヘトヘトになっていた。
連敗して項垂れてはいるが、水瀬は対戦するたびにこちらへの対抗策を考えてプレイングを変えている所が随所に見えた。
水瀬は成長速度がかなり速いのかもしれない。
「よし、ちょっとデッキを変えたからもう少し頼めるか?」
自分の構築でまだ少し気になる点がまた出て来た為そこを弄る。
相手の展開次第で変わる所ならともかく、自分の動きをしていて気になる箇所はできる限りなんとかしたい。
「ま、まだするの……?いいよ、何回でも相手になるね」
「本当に助かるよ、水瀬」
「仕方ないなあ、ゼン君は」
その後も10回くらい対戦した。
水瀬はかなりへとへとになっており、やはり申し訳ない気持ちになった。
「そういえばさ、今日ユウキ君と一色君が喧嘩したんだ」
ぶっ続けで対戦をして流石に少し疲れたので雑談しつつ飲み物を飲んで休憩していると、水瀬がそんな話題を出して来た。
「あの二人がか?」
「うん、ユウキ君も珍しくだいぶ怒ってたんだ」
「あのユウキが?」
「うん、あのユウキ君が」
ユウキが怒るなんて相当珍しいな、あいつは一体何をやったんだよ……。
「この前も捻咲さんと喧嘩してて、大変だったみたいだよ」
「捻咲もか…‥この前イライラしてたのはそれか」
「わかりやすいもんね、捻咲さん」
「本当にな」
「それでね、ユウキ君と一色君が勝負して、ユウキ君が勝ったんだけどね…」
「ユウキが勝ったのか?一色も大分強いはずだが」
「うん、ユウキ君がしっかり勝ったよ。でね、それですっかり仲直りして寧ろ仲良くなってた」
「へえ、ユウキと一色が…ねえ」
ユウキと仲良くなったのであれば、案外一色は話せば分かるタイプの奴なのかもしれないな。
ここ最近喉に刺さった小骨の様に頭を悩ませていた問題に進展がありそうで少し気分が良くなる。
喧嘩して仲直りしてさらに仲良くなる、良い話だな。
「そこまでは良かったんだけどね…」
「ん?」
「一色君、元々気軽に話しかけるタイプだからミコトちゃんや捻咲さんに積極的に話しかけるようになってね、距離感近すぎて二人が最近虫の居所すごい悪いんだ」
「あいつ外見通りなんだな……」
「あはは、悪い人じゃ無いと思うんだけどね」
ふと頭にある言葉が浮かんだ。
負けたらギャ…………なぜかこれ以上考えてはいけないなと俺は記憶の扉を閉じた。
「それじゃあ、私は女子寮に戻るね」
その後少し雑談した後、時間も遅くなって来たから解散の流れとなった。
「ああ、今日は助かったよ」
「どういたしまして、私はいつでも相手になるよ」
「ありがとう。またな」
「うん、またね」
そう言うと水瀬は帰って行った。
結局ひたすら俺が勝っていただけだったし前世みたいに嫌われたりしたら嫌だな…と水瀬が去ってから少しの時間後悔した。
交流戦当日、一年生チームの控え室に俺は向かっていた。
昨日の夜になってもまだデッキの構築を弄っていて、気が付いたら今日になっていたこともありかなり眠い。
控室は野球スタジアムのダッグアウトみたいになっており、対戦者以外のチームメンバーはそこから試合を観戦することになる。
盤面は大型モニターにも映される形だ。
「ちょっと、一色隣座んないでよ気色悪い!」
「こっちに座るのをやめてくれないか!」
「ユウキ、シラユリちゃんとミコトちゃんが冷たいよ……」
「自業自得だと思うよ…大人しく僕の隣にでも座ってて」
「ならもう片側は私だな」
「ミコトちゃん、それ不公平じゃないかなー、って」
「うるさい」
何やら既にだいぶ騒がしい様子だ。
一色のうるささが増しているような気がするしなんかもう入る前に帰りたい。
困ったことに時間が近づいて来ている、意を決して入るとしよう。
「よお………」
「おはよう、ゼン」
「遅いわよ何やってたの?」
「おはよう、悪道殿」
「おお、おはようゼン!聞いてくれよシラユリちゃん達が酷いんだよ〜」
「………帰って良いか?」
「ちょっと困るかな」
「私も帰りたいけど我慢してるのよ、アンタも耐えなさい」
まあ良いか、と諦めつつ座る席を探し視線を彷徨わせる。
「悪道、こっち座りな…」
「一色、隣失礼するぞ」
「ん?良いよ。できれば女の子が嬉しかったんだけどね」
話したいこともあったため一色の隣に腰をかける事にした。
「………ふん」
「随分と打ち解けてるじゃないか」
小声で一色に声を掛ける。
「ユウキのおかげさ。良い奴過ぎて色々考えるの馬鹿らしくなるわ」
「そうだな……」
「けどさ、俺はユウキ達は信頼しても君達の事はまだ信頼できてないから。交流戦終わってから決着付けようぜ」
「話し合うっていうのは?」
「……考えとくよ。その前にまずは試合に集中させてくれ」
会話してるうちに1戦目の時間が近づいていた。
先鋒である一色はもう間も無く出番である。
「そうか。初戦頑張れよ」
一応今はチームメイトだからエールを送る。
「おう、頑張るよ……あ、シラユリちゃん、ミコトちゃん行ってくるからエールちょうだーい!」
小声での会話を切り上げ大声で女子達にエールをねだり出した。
締まらない男である。
「とっとと行きなさい」
「さっさと行ってくれないか?」
「ソメル、頑張ってね〜」
応援してるのユウキだけじゃねえか…。
「まあ気を取り直して、行ってくるわ」
そう言って一色は卓に着いた。
まあ着いた、と言っても対戦用のテーブルは高いので立って対戦する事になるんだがな。
そして一色の前に立ったのは………………
「なっ………」「はぁ!?」「まさかっ……」
その雰囲気だけは優等生そうな佇まい、溢れ出る威圧感は俺にとっては比較的見慣れた物ではあるが対戦の場に出てくるのを見るのは久しい。
「…‥会長か」
「一色ソメル君、君とはちょうど戦ってみたかったんですよね」
「大将戦で出てくるべきじゃないですかねー、貴女は」
交流戦が始まる。
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