転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた   作:大きいホクロ

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その正しさは神すらも信頼したと言われる
ファイティングライフ 竜花剣燗 収録カード 『王命の聖騎士』フレーバーテキスト



ライバルキャラの逃れられぬ役割

「対戦よろしくお願いします」

 

「お願いします」

 

その日、俺はデュエルスペースが広いカードショップの公認大会にて卓番が若い方の席に座っていた。

対戦相手はその地域だと有名なプレイヤーだった。

 

「これでとどめで」

 

「………ありがとうございました」

 

「勝敗登録しときます」

 

「おねがいします」

 

その試合はまさに完敗だったと思う。大分一方的な負け方をした気がする。

 

 

「対戦よろしくおねがいします」

 

回想の風景が切り替わる。今度座っているのはさっきとは違う店の卓だった。対戦相手も違うがその人も強いってよく話題に出てる人だった筈だ。

 

「通りますか?」

 

「通ります、ありがとうございました」

 

その試合でも俺は負けていた。

ガチ勢気取って周りと軋轢が出来ても、実績はそこそこ止まりで3位だとかべ8だとか数回だけ2位もあったか……パッとしない順位をたまに取る程度で、所謂本当に強い人とは明確な差があった。

そしてその明確な差は卓に座り、対面を始めた時には自然と感じられる。

その差は俺にとっては遠く、決して追いつけないように思えた。

 

 

 

「これでターンエンドだよ、悪道君」

 

その差を俺は今感じている。

現在は後手3ターン目、ライフはお互い6だ。この膠着状態から察するに向こうも狙いはワンショットだろう。

 

「俺のターン、『失楽の村』を発動して能力で山札から3枚を墓地に送り『失いの獣』を蘇生、更に獣の能力で二枚墓地を肥やして一枚回収する。更に『失いの流れ人』を召喚、能力で更に墓地の魔法を回収、このターンに発動できないのでターン終了」

 

「僕のターン、龍は居ないようだね」

 

「さあ、温存してるのかもしれないですよ」

 

「そういうことにしておいてあげるよ」

 

実際俺の手札に『失いの龍』はない。更に言えば墓地にもない。

一見溜めてるように見せたのだが三月先輩はお見通しの様だ。

 

「『鉄壁の聖騎士団員』を召喚。更に魔法『騎士王の召集』、山札よりもう一体聖騎士モンスターを召喚、『偵察する聖騎士団員』を召喚だ」

 

盤面には現在四体の聖騎士モンスターがいる。

前のターンから居る実直、剛健、そしてこのターンに出た鉄壁と偵察。

今の所耐性は何も無いため次のターンになんとか龍にアクセスしてかつ召喚さえすればこちらのワンショットは難なく決まるだろう。

龍へのアクセスに失敗してもハンドには破壊能力を持つ『失いの騎士』と破壊魔法もある。

次ターンで面を処理し次のトップに賭けつつビートする手段もある。

 

「更に盤面に騎士団モンスターが三体以上、『王命の聖騎士』を召喚。その能力で自陣の聖騎士モンスター全てに耐性を二つから選んで付与できる」

 

「一つ、次のターンに効果で破壊されない」

 

破壊耐性、シンプルながら強力だ。

 

「二つ、破壊以外では離れない」

 

破壊以外、範囲は広い代わりに除去として広く使われる破壊は受ける。

ここでどちらを選ばれるかで次ターンの俺の勝ち筋はかなり変わってくる。

 

「僕が選ぶのは……一つ目の効果だ」

 

「失いの龍で消し飛びますよ」

 

破壊ではなく山札の下に送れる『失いの龍』にアクセス出来れば後は打点も揃えられる俺の勝ちというわけだ。

 

「そうだね、僕は後輩に甘いのかもよ」

 

どこが甘いだこの鬼畜め。

 

「俺の、ターン!」

 

引いたカードは山を掘りつつ墓地からカードを回収できる『失いの回顧』、先程のターンに回収した『虚の日常』と合わせて大分山札を掘れる。

 

「魔法発動!効果で山札から2枚落下しつつドロー!更に『失いの回顧』!能力で墓地を更に3枚落下!」

 

1枚目…『失いの村人』

2枚目…『失いの瘴気』

 

「………っ」

 

「さあ、最後の一枚だね」

 

「3枚目っ…」

 

そのカードは手札にもある『失いの英雄』だった。

このカードは速撃と殴る時に破壊効果を持っている。……しかし破壊はこのターン能力では不可能だ。

手札にある破壊魔法も腐っている。

 

「墓地より『失いの英雄』を回収…」

 

「さあ、手札に龍はあるかい?」

 

「手札から『失いの英雄』を召喚し……ターン終了」

 

「僕のターン、速撃を持つ『切込む聖騎士団員』を召喚、更に魔法『騎士王大号令』能力で自分のモンスターは打点が1増えて全て防御されなくなる。そしてもう一枚、『洗練された一撃』。手札を1枚捨てることで自分の聖騎士モンスターが五体以上の場合、一体に打点を1追加、更にその追加されたモンスターの攻撃時に相手は対抗魔法を打てない。対象は『王命の聖騎士』だ」

 

「攻撃!『王命の聖騎士』、打点は現在3だ!」

6→3(ゼン)

 

「……っ」

 

「続け!『切込む聖騎士団員』」

 

「対抗魔法!『失いの園』!効果で打点を合計4減らす!対象は攻撃中の奴と横の『偵察する聖騎士団員』だ!これでそいつらの打点は0!」

 

「攻撃!『鉄壁の聖騎士員』!」

 

「対抗魔法『失いの瘴気』!その攻撃を無効だ!」

 

「さて、手札はないね。そして僕には2打点になった『実直の聖騎士団員』と『剛健の聖騎士団員』がいる。全軍突撃」

3→0(ゼン)

 

「…………負け、ました」

 

この世界に来てからも負けることは何度もあった。最近だってユウキに負けている。けれど負けた時に圧倒的な実力差を感じた事はあまりなかった。だけど今日は違った。

 

三月先輩、貴方は遠い。

 

「楽しかったよ、悪道君」

 

「ええ、俺もです」

 

楽しかった、口ではそう言ったが本当にそうだろうか?

俺の本心はただ悔しかったと言っていて、多分さっきの一色や捻咲と同じ気持ちなのだろう。

 

「悪道君、君のプレイングは確かに最善手だったかもしれないけど結果として次の動きが読みやすくて僕は動きやすかった。ブラフはちょっと苦手みたいだね」

 

「はいっ………気を付けます」

 

「うん、君は絶対に僕より強くなる。また対戦しよう」

 

「ええ、ありがとうございました」

 

 

 

 

「……悪い、負けた」

 

「しっかり見てたわよ、あんたの負け姿」

 

綺麗にさっき捻咲が負けた時に俺が言った言葉を返された。

お前さては根に持ってるな捻咲…。

 

「お疲れ様、ゼン」

 

「良い試合だったと思うぞ、三月先輩が強すぎた」

 

「どこが良い試合だか………ボロ負けだ」

 

思わず言ってしまった。あそこまで一方的な試合を良い試合だなんて俺は思えなかった。

 

「何しおらしくなってんのよ」

 

「うおっ………何すんだよ」

 

捻咲に思いっきり肩パンされた。結構本気で叩いてきやがったのかかなり痛い。

 

「調子狂うからいつも通りふてぶてしくしてなさい」

 

「ふてぶてしいって……別にふてぶてしくないだろ俺は」

 

「ゼンはふてぶてしいよ」

 

「ふてぶてしいな」

 

「ふてぶてしいよ」

 

「なんだとっ!?」

 

こいつら俺に対してなんか言う時はしっかり意見合わせてくるな…。

 

「そう言うことだからいつも通り構えてなさい」

 

「っち、そうかよ」

 

「そうそう、でなきゃ生徒会の座この勢いで奪っちゃうわよ」

 

さっき負けて落ち込んでいた姿はどこに行ったのか、捻咲は図太い事をまた言っている。

こいつの立ち直りの速さを見ていると俺も落ち込んでいられない。

 

「やってみろよ、返り討ちだ」

 

「俺も狙っちゃおっかなー、生徒会」

 

「僕も狙うのありかもね」

 

俺、負けたから生徒会追放もあり得るのか………。

だが追放されてもすぐに返り咲いてやる。

生徒会にはまだ残っていずれ三月先輩にリベンジしてやる。

遠くて追いつけない、そんな昔あった諦めは何故か今は消えていた。




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