転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた   作:大きいホクロ

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その骸は敵を討つ、敵が何かを知らぬまま

ファイティングライフ 神罰漆攻 収録カード『<神討ち>の龍』フレーバーテキスト


主人公相手にめんどくさい奴

 その勝負を見ていた俺の感想は、「遠い」だった。

同じくらいの速さでせめぎ合っていたと勝手に思っていた。

あの夜の対戦だって僅差だった、そのはずだった。

 

「攻撃だ!『運命の竜騎士』!」

 

最後の試合、ユウキと三月先輩の対戦カードは間も無く幕を閉じようとしていた。

 

「とどめです、『<神討ち>の竜王』」

 

最後の一手を告げる言葉がユウキの口から放たれた。

 

「強いね、勝導君は。完敗だよ」

 

「あの時の借りは、返しましたよ」

 

どうやらユウキは既に三月先輩とも対戦した事があったようだ。

本当知らない所で色々やってるなこいつは。

握手を交わしている2人を見ながらそんなくだらない事をボーっと考えていた…………だけじゃない。

俺は悔しかった。俺より先に三月先輩にユウキが勝ったことが。同じくらいの強さだと思っていたユウキが俺よりも強くなっていたことが。

 

「凄い目がギラギラしてるわよ」

 

隣で観戦していた捻咲にそんな事を指摘された。

 

「そうか?」

 

「そうよ、見てて負けてられないってなったんでしょ?」

 

どうやら捻咲にバレバレになる程顔に出てしまっていたようだ。

 

「そうだな、俺はあいつに勝ちたい」

 

「私もよ。ユウキだけじゃない、アンタも一色も全員倒す」

 

「次俺たちが戦うのは四天王の選別だろうな」

 

「アンタの負けは生徒会同士だからやらないんじゃない?」

 

「仮に会長が降ろさなくとも、俺が降りてやるさ。三月先輩に負けた俺が、勝ったユウキを差し置いて居座るなんてダサいだろ」

 

ユウキの試合を見てて思った。

一年最強の肩書きはアイツに勝たずして持つべきではないと。

 

「そのまま2度と生徒会には戻れないわね、可哀想」

 

「戻るさ、絶対に。俺が最強だ」

 

 ユウキに俺は今負け越している。

だから次は必ず勝つ、負けっぱなしは俺が気に食わない。

俺のデッキケースに何か熱が通ったような感覚がした。

 

 

 

 

「あ、ゼンお疲れ様、一戦しかしてないのに凄い疲れたね」

 

「そうだな」

 

試合後の挨拶が終わる頃には、空は茜色に染まっていた。

そんなオレンジ色の空の下、自販機でジュースを買っているユウキに近付くと、向こうから声を掛けてきた。

 

「まさか三月先輩に勝つとはな」

 

「運もあったけどね。できる限り詰めれるところは全て詰めた、それなのに上振れがあってギリギリの勝ちだったから本当にあの人は怖いよ」

 

確かにユウキと三月先輩の試合は運に左右された所があった。しかしその運の要素が出てきたのはそれ以外の部分をユウキが詰め切ったからこそだ。

 

「すごいな、ユウキは」

 

「ははは、ゼン、やっぱり本当に変わったね」

 

突然勝導は笑い出した。どいつもこいつも俺が褒めたら変な反応をするのはなんなんだよ。

 

「不満そうな顔してるね」

 

「どいつもこいつも人が褒めたら失礼な反応をするからな」

 

「ごめんごめん、けど変わったのは本当だよ。昔と比べてとっつきやすくなった」

 

「そうか?」

 

「そうだね」

 

「そうか……」

 

変な沈黙が訪れた。

そういえばアレについてまだ聞いてなかったな。

 

「なあユウキ、神討ちってなんだ?」

 

「ああ、それなんだけどね、実は使っておいてなんだけど僕自身もよく分からないんだ。急に姿を変えたとしか」

 

「それ自体は良いとして、なんで会長も……」

 

「それは神託モンスターを倒すための力だ」

 

突然、俺でもユウキでも無い声が俺たちの会話を遮った。

 

「一色………」

 

「生徒会長のもだ、あれは神託使いを倒す為に姿を現した」

 

会長の『<神討ち>の英雄』とユウキの『<神討ち>の竜王』。

どちらも神託カードが俺たちの周りに現れた時と同じくして姿を現している。

 

「けどユウキは神託カードについても何も知らないからよく分からないんだよな、どういう条件で姿を現すか……例えば、世界の調和を乱す者を守る側だから、とかね」

 

「この前も言ってたよな、その調和ってなんだよ」

 

「この世界のあるべき姿だよ、調和を乱すってのは例えるなら歯車に挟まるゴミだ。挟まると大変だろ?それと一緒だよ」

 

「つまり本来なら入っちゃ駄目って事か………」

 

「そうだ、そこまで言えば分かるだろ?」

 

「ソメル、それって………」

 

「ゼン、お前はこの世界の異物だ。」

 

「………そう思う理由は?」

 

「単純だ。神託カードがお前に反応してるって事だ、お前を見るとこいつが荒ぶるんだよ。お前以外の異物だった奴らにもこいつは反応してきた」

 

そう言いながら一色は『<神託>受けし勇者』を見せ付けてくる。

どこか怪しい光を放っている。この世界でカードの能力が発動する時に出てる謎の光とは違う光り方だ。

 

「心当たりがないな」

 

ここで認めて話し合うという手もあるだろう。いや実際には間違いなくそれが最善手なんだろう。しかしそれはユウキがこの場に居なければの話だ。

俺が転生して同い年面して生きてきた事を知られたくない、そんなちっぽけな考えで俺は今恐らく間違った択を選んだのだろう。

 

「………そうか。あのさ、今日は疲れたからさ、この話ここで辞めようぜ」

 

「奇遇だな、俺もそう思ってた所だ」

 

ここで対戦する事になるかと思っていたが一色側が先に引いてくれた。

正直俺としてもデッキを再調整したかったから助かる限りである。

 

「よっしゃ、じゃあここまでにしようぜ。別に俺はさあ、ゼン自体は嫌いじゃないから学校では仲良くしてくれると嬉しいな」

 

「元から仲良くはない」

 

「釣れないな〜、まあいいや。またな、ゼン。ユウキも、最後の試合すごかったぜ」

 

「え、う、うん。ありがとう、またねソメル」

 

一色はそうして去っていった。

また俺とユウキの2人きりになったが、一色の残した雰囲気だけが重くのしかかっている。

 

「ゼン、あのさ…………」

 

「ユウキ、次の生徒会選抜本気で来いよ」

 

何かを言いそうだったユウキの声を俺の声でかき消す。

 

「え?」

 

「次は俺が勝つからな、じゃあな」

 

「うん……全力で行くよ。全力で行ってまた僕が勝つよ」

 

ソメルの話を聞いて俺の中である仮説が生まれた。次オッサンに会ったら問い詰めるべきだ。

DFCのメンバーは転生者なのか、と。

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