転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
ファイティングライフ 映画入場特典ファイライベイゴマースペシャルパック収録カード『ベイゴマー タイフーンユニコーン』フレーバーテキスト
「ご馳走様でした。……さあ」
焼きそばを食い終わり、俺は期待を込めて店主の方に視線を送る。
「分かったよ、テーブル拭いてからな……あ
あそうだ…おーい、お使い頼んで良いか?」
店主は思い出したかのように店員の少女を呼ぶとそう言って買ってくるものを一通り伝え出した。
「うん!それじゃ、行ってくるね」
そう言うと店員は店から出て行った。
「さて、机もきれいになったしやるか」
「「レディー、ファイト」」
店主のプレイは丁寧だった。カードの切り方、プレイ中の所作それら全てが彼がかつて強かったのであろう事を裏付けている。
だがしかし……
「デッキが古い、腕にカードが追い付いていない」
「酷い事言うじゃねえか、まあその通りだがな。さて……俺のターン………雨か?」
ドドド、と表現されるようなほど大きな雨音が突然外から聞こえ出した。
おそらくゲリラ豪雨なのだろうが、かなり強く大きな音色を奏でている。
「あいつ確か傘持って行ってなかったな………悪いな兄ちゃん、対戦はお預けだ」
確かにこの雨を傘なしでは大変だろう。
残念だがここで中断か……。
「そうですね、仕方ない」
「あ、あの〜私が傘届けてきましょうか?」
突然横で黙って観戦していた女性が店主にそう声を掛けた。
「いや、悪いさ流石に」
「いえ、行かせてください!ゼン様すごく残念そうですから」
「いや、俺は別に」
この女性は俺のなんなんだ。的確に俺の心情を当ててくるのはさっきの怖い話より怖いぞ。
「良いですから、最後までしっかり対戦しててください!」
「そんじゃ、これ傘だから頼むよ。場所はこっから………って感じだ」
「分かりました、届けてきますね。ゼン様、では頑張ってください!」
そう言って女性はウインクして雨の中に繰り出した。
「良い子じゃねえか。大切にしろよ」
「別にそういう関係じゃないですしそもそも初対面なので………」
「なんだそうなのか…………さてと、俺のターンだったな」
「ええ」
「…………で、兄ちゃんも向こうから来たのか?」
「やっぱり本当だったんですね」
俺の勘は当たっていた。
この男も恐らく俺と同じ世界から来た人間だ。
「ということは…」
「ええ、気が付いたらこの世界に俺は生を受けていた」
「俺もそんな感じさ、元からカードゲームは結構うまかったから転移したての大学生の頃から生きやすかった。おかげさまで生計を立てるのには困らなかったな」
「だがな……」
店主の顔はその接続詞と共に曇り出した。
「俺は元の世界に戻りたかった、あっちに俺を待ってる筈の可愛い恋人がいたから、どうしても帰りたかったんだよ」
「………それは」
「おっさんの不幸自慢さ。久しぶりに同郷の奴に会ったからしたくなったのさ」
店主は自嘲するようにそう言った。
「そいつとは長い付き合いでさ、こっちに来る前には指輪まで用意してたんだぜ。だからかもな、こんな歳になっても最近までそいつに焦がれててよ」
「…………」
「だから俺はちょっと前まではある組織に入っていた、DFCっていう組織にな」
「DFCに?」
「なんだ知ってたのか?まああそこは俺達みたいなあっちから来た奴らの集まりだしそりゃそうか」
……まさかこんなところで知りたかった事を知れるとはな。
DFCはやはり俺のような転生者の集まりだったようである。
「んで俺はその中でも過激な連中と連んでたんだがな……世界を変えるんじゃなくて元の世界に戻ろうって一派さ」
「ちょっと前まで、って事は今は?」
「抜けたさ、総裁がとあるガキに負けた時にな。この世界のガキに迷惑かけてまで戻るべきじゃないとも思ったし総帥に無理なら無理だろ…って諦めもあった」
とあるガキ、間違いなくユウキだ。
店主の口ぶりから勝導ユウの人望の厚さ、この店主が明らかに格上と見るほどの実力の高さを伺える。
「そんで目標も無くなってここの空き家を買った時、アイツに出会った」
「あの店員か……」
「両親が借金取りに追われて蒸発した後に追いかけられてるのをたまたま見かけた。そいつらをファイトで倒しつつ余ってる金で代わりに借金を払ってやったのさ。どうせ使い切れない程金はあった」
「…………」
「そうしてそんなガキ1人残す訳にもいかなくてな……今に至るわけだ。ほら、攻撃だ」
「………対抗魔法で」
「おっとそりゃ辛い、最近のカードはすごいな」
「……今も、その恋人の方を想っていますか?」
「さあな…アイツには母親が必要と思ってるのに結婚しようともしないのは、そういう事なのかもな」
「そうですか………俺の、ター…………」
突然、ドアが勢いよく開けられる音がした。
店員やあの女性にしてはあまりにも力強くだ。
「……雨に打たれて誰か避難でもしてきたか?」
そう言いながら店主はドアの方へと向かい、俺もそちらに視線を向けた。
「ゲン!!俺だよ久しぶりだな!」
「ゲン、聞いてくれ!ついにアチラへのゲートが開いたんだ!」
そこには2人の男が立っていた。だいぶ濡れているのを見るに大雨をおかまない無しにここまで来たようだ。
口振りから察するに店主、おそらく名前はゲンの知り合いだろう。
「お、お前ら……本当か?ゲートが開いたって?」
昔の知り合いを見る表情にしては店主の表情は複雑だ。
そして何より混乱の色が強い。
「ああ!帰れるんだぜ、俺たち!オトルさんがやってくれたんだ!」
「一緒に戻ろう!ついに家に帰れるんだ!ネオDFCは遂にここまで辿り着いたんだ!」
「どこに開いたんだよ、ゲートがよ?それにネオDFCって……」
ゲート、帰れる………俺たちの世界とこの世界が繋がったということか?
「あの離島さ、だが変なガキ共に邪魔されてんだよ!」
「このままじゃゲートは閉じちまう!ゲン、一緒に来てくれ!ガキ共の仲間もそこそこやる奴らなんだ、一緒に戦ってくれお前が居たらなんとかなる!」
ガキとガキの仲間?……まさかアイツらか?
「いや、俺は今ここで娘と……」
「そのガキ共の中に、やたらと語尾がすの奴とか性格悪そうな眼鏡の女はいたか?」
「なんだお前……いやいたけどさ、語尾にすって付けてるガキは」
「………」
「どうした?」
何かを察してから小声で店主がこちらに小声で真意を問うてきた。
「俺の友人達だ」
「そうか………おい、俺達も案内してくれないか?」
「ありがとうなゲン……とそのガキは?」
「こいつも転移者だ」
「まじかよ、運いいな坊主!帰ろうぜ!俺たちの故郷へ!」
「早くしねーと帰れなくなっちまうかもしれねーぜ!」
俺はアチラに着いても勿論ユウキ達の味方をするつもりだ、しかしこのフレンドリーなDFC団員達の悲願をもしかしたら打ち破る事になるかもしれないのは心苦しい。
本当に今日会う奴らはフレンドリーな奴ばっかだ…。