転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた   作:大きいホクロ

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我々に残された道は一つ

ファイティングライフ 竜王決戦 収録カード『参謀の革命騎士』フレーバーテキスト


EX話 時の歩みは止まらず速さは同じと限らない

 その空間には何も無かった。

虹色の光を竜王が放った後、俺はその空間に居た。

自分が立っているところが地面なのかすら分からない。

この謎の空間に対して自分はなぜか恐怖を持っていないが、それすらも不気味に感じる。

何も無いと先程は言ったが語弊があった。

空間には小さな黒い点のような物だけがまばらに浮いていた。

目を凝らし、その一つに近づいてみるとそれは穴である事が分かった。

しかし指すら入りそうにないサイズで、万華鏡を覗くかのように覗く事しか出来なそうだ。

 

その一つに俺は目を近づけた。

 

俺の中の何かが警鐘を鳴らしている。

見るべきじゃない、辞めておけと。

 

しかしそれでも俺はその穴に目を付けた。

 

そこはどこかの会社だろうか?

スーツを着た男性や女性が忙しなく働いている。

これは元の世界だろうか?そう考えながらその風景を眺めていると、どこか懐かしい顔を見つけた。

あの世界で中学生の頃に友人だった男だ。

必死に自分の仕事をこなしているようだが周りとは良好な関係を築けているのが伺える。

その風景はそこで終わりを告げた。穴が消えたのだ。

 

特に脳が鳴らした警鐘に反して悪い事が起きなかったのもあり俺は続けて別の穴を覗いた。

相変わらず警鐘は鳴り響いている。

 

その無数の穴から見える風景は様々な物だった。

先程のような友人の現在、父や母の現在、売られてるゲームは変わったが今も変わらず営業されてる高校生の時通ったカードショップ。

それらは俺の中の郷愁の念を強く擽った。

そして次の穴を覗くと、そこは俺の家の一室だった。その部屋に置いてあるのは確か祖父の仏壇だった筈だ。

記憶の通りそこには仏壇があった。

頭に響き続けてる警鐘が更に強くなる。

それを見てはいけないと。

それでも俺は目を凝らした。

 

そこにあったのは祖父の写真と、俺の写真だった。当然だ、俺はそもそも死んでこの世界に来ているのだから。

 

それでもこの写真を見る直前まで、俺は少し、もしかしたら帰れるのかもしれないと思っていた。その期待をこの光景は綺麗に打ち砕いた。

そしてその穴も消えてなくなった。

そしてその穴が消えた後、目の前には大きな大きな、人間も通れそうな穴が生まれた。

その先に見える風景はあまり見覚えはないが元の世界だと確信できた。

 

「………俺の居場所はそこにはもう無い」

 

俺はその穴に背を向け、来た道を戻る事にした。後悔は無かった、寧ろ清々しいまであるかもしれない。

 

元来た道を戻っていると世界が急に切り替わった様な感覚があった。

そこにはまた元の世界に繋がっているであろう穴と、今度は人が1人いた。

その男は先ほど店主を訪ねてきた男の片方だった。

その男は穴の前でうずくまっていた。

 

「……こんなところで何してるんだ?」

 

「おお、俺以外にも居たのか……見ろよこの穴を、元の世界に帰れると思うぜ?俺と一緒に通るか?」

 

男は憔悴しきった声と表情で俺にそう言った。

 

「俺は帰らない。俺の居場所はそこには無かった」

 

「なんだよ……お前もかよ……俺もさ、友達みんな俺を残しておっさんになってたし……いや俺もオッサンだがその2倍以上さ……オヤジとオフクロの墓参ってる親戚のガキも居たよ……俺と同じくらいになっててさ…そんな世界で俺さ、生きていける気がしねえんだよ」

 

涙を流しながら男はそう言った。

 

「なら帰るか?」

 

「分からない……俺、カードゲーム下手くそなんだ。もう少しここで考えるさ………」

 

「そうか、俺は行く」

 

「強いな………お前は、まだガキなのによ」

 

「案外こっちに来る前は大人だったかもしれないぞ」

 

「まさか、俺たち皆年齢そのまま転移しただろ?じゃあな」

 

「…?………そ、そうだな」

 

年齢そのまま?皆?そんなはずはない。少なくとも俺はここに転生している。

そんな疑問を新たに抱きながらまた世界は変わった。

 

そこでは男がまさに大きな穴に入ろうとしている所だった。

その男は確か離島についてから誰かをと対戦してるのを見かけた男だった筈だ。

 

「帰るのか?元の世界に」

 

「?なんだお前………そうさ、俺は帰るよ。たとえ時が経ってても俺の故郷はあそこだけだ」

 

この男もやはり年月がかなり流れてしまっていたようだ。

 

「そうか……」

 

「だってさ、小学生だった娘がもう結婚してるみたいなんだぜ?たとえ何年会ってなかったとしても、祝いの言葉を伝えたいんだよ……」

 

その男の顔は硬く覚悟を決めた表情だった。

 

「そうか………」

 

「お前もこっち側なんだろ?後悔のないようにな」

 

そう言って男はその穴の中に入って行った。

 

 

 次の空間には1人の高校生くらいの女性が体育座りで座り込んでいた。

確かユウキにブーイングを飛ばしていた女性だ。

 

「あれ……私以外にも人がいる」

 

「……帰らないのか?」

 

「帰る?嫌だよ……だって私の居場所もうないもん……皆、大人になってた、例え辛くてもこっちの世界の方がまだ生きてけそう……それとも君があっちで一緒に生きてくれる?」

 

その顔は1人では怖い、誰か一緒にいてくれと言っているようだった。

 

「……俺はこっちに残る、アンタと一緒で居場所なんてもうない」

 

「そう、じゃあまたあの世界で会うかもね。私はもうちょっとここで思い出に浸るわ、じゃあね……」

 

 

 

その後も何人かの人に会った。

居場所のない世界に絶望し留まることを選ぶ者、それでも戻ると決めた者を俺は何人も見た。

そして辿り着いた空間には、この騒動の発端であるオトルと呼ばれていたネオDFCのリーダーが居た。

 

「なんだ、全員で俺を笑いに来たのか?」

 

「……?全員?」

 

「……ゼン」

 

そこにはユウキと、紬と呼ばれていた少女が居た。2人の顔はとても暗かった。

 

「勝導ユウキ、君が生み出したこの空間で君自身は何を見た」

 

「…………絶望している人たち……何もかもを失ったかのように俯いてる人たちだ」

 

それを思い出すのも辛そうな表情だ。

 

「そうか………滑稽だろう、そこの少女を犠牲にしないと成し遂げられないと思っていた事をカードと少女の共鳴で引き起こされたうえ、その悲願の結末がこれだ」

 

あれ共鳴現象的な何かだったのかよ………。

 

「あなた達は何年前からこっちに来ちゃったの?」

 

紬が問いかける。その声色は少しの怯えを感じる、もしかしたら自分も同じようになっているかもしれない、そんな感情だろう。

 

「さあ、みんなバラバラだよ。俺は20年前だね。そしてそんなバラバラなのをまとめ上げてDFCを作ったのがお前の兄さん、勝導ユウさんだ」

 

「……兄さんのやりたかった事って当時ではやっぱり……」

 

「そう、当初は帰還だった。だけどすぐ今のDFCの理念に変わったよ、なんせあの人は早い段階で気付いてた。そこの少女みたいな犠牲が必要ってな……だがそれでも俺たちは夢見て実行した……この計画を」

 

その頬は涙が伝い出している。

声も少し震えている。

 

「……そして貴方は元の世界に何を見たんですか?」

 

「変わり果てた風景と知らない街並み、年老いた友人だ、知ってる景色なんて何一つ無かった。戻っても何もない」

 

「…………ごめんなさい、貴方達のことを僕は止めたい一心だった…だから強く否定してしまって……」

 

「いやなに俺達こそ悪かったな、迷惑をかけて。少女も俺達が憎んだ境遇と同じ境遇にしてしまって…。だが……………それでも………私の怒りはおさまらない。この世界に対する復讐を、私は始める」

 

突然、オトルの雰囲気が豹変した。

この何もない筈の空間に怪しい空気が立ち込める。

 

「なんだと……ユウキ!嫌な予感がする!」

 

「世界を繋ぐためのエネルギーを、このクソッタレな世界に向けてやる!」

 

まるでもうどうにでもなれ、とでも言いたげな雰囲気だった。長年の悲願の先に何も無かった、それがどれ程彼に絶望を与えただろうか?

 

「私はこの世界を許さない!これ以上こんな世界に迷い込む人間が現れぬよう、この世界を滅ぼしてやる!」

 

オトルの周りに怪しげなオーラが集まり出した。

 

「落ち着いてください、この世界が嫌いだとしても!貴方の仲間達だってこの世界にはまだいる!元の世界に戻ろうと貴方達と生きてきた人たちが……それにここにいないDFCの人たちだってこの世界で生きて行くために頑張っている!」

 

恐らくオッサンや副総帥達のことだろう。

 

「ああ、可哀想な俺の同胞達……みんな絶望してるだろうからな…………だからさ、俺が一緒に死んでやる」

 

オーラが一層強くなり激しい暴風が吹き荒れた。

この謎の空間が砕ける音がした。

世界の崩壊に俺たちは巻き込まれる。

 

「ユウキ!」

 

「ゼン………僕は……兄のように彼らの光にはなれない……ごめんね、巻き込んで…………僕が全部終わらせるから」

 

そう言いいながら崩壊に飲まれていくユウキの顔はそこそこ長い付き合いの中で初めて見る、弱音を吐く幼い少年の顔だった。

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