転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた   作:大きいホクロ

47 / 65
その怪物は外界から来たという説もある

ファイティングライフ 神罰漆攻 収録カード『海原の大賢者』フレーバーテキスト


EX話 せめて彼の地の土となりて

「……ゼン君!……ゼン君!」

 

「…ここは…」

 

誰かの呼ぶ声に釣られて目を覚ますと、水瀬が泣き顔でこちらを覗き込んでいた。

 

 

「大丈夫!?ここ?ここは離島の森の中だよ!」

 

「…森?戻って、これたのか……今どういう状況だ?」

 

「ユウキ君の竜王が虹色の光を出したと思ったら、ゼン君やDFCの人たちが寝てて…で、ユウキ君と紬ちゃんも寝ちゃってて…それに急に何人かDFCの人が消えちゃって………ゼン君も消えちゃうんじゃないかと思って……思って…」

 

そう言いながら水瀬はこちらに泣きながら抱き着いてきた。

 

「ちょっ、水瀬落ち着……」

 

抱きついてきた水瀬の体は震えていた。

そういえば前にもこんな事あったよな、と思い出して黙って抱きつかれておく。

 

「なんだ、お前も戻らなかったのか?………おっと悪い邪魔した後ろ向いとこう」

 

違う方向から声が聞こえてきた。

 

「…………そういうのじゃない」

 

「それ、昼も言ってなかったか?」

 

「そうだな」

 

「……ご、ごめんね…私、不安になっちゃって…」

 

我を取り戻した水瀬がそそくさと少し俺から距離を取った。

店主と会話をしてる俺を気遣ったのだろう。

 

「……戻らなかったんだな」

 

店主に声をかける。

俺と店主は森の中の何処とは言わずに奥に視線を向け、それぞれの顔を見ていない。

 

「娘を置いて行くわけにゃいかんさ」

 

「……良い親だな」

 

「それにさ………アイツ、もう結婚してるみたいだった。今更どの面下げて会いに行くんだよ」

 

その声は震えていた。しかしそれはきっと気のせいだろう。

 

「お前は?」

 

「爺ちゃんの写真と並んでたよ」

 

「そうか………」

 

俺と店主は無言になってしまった。

 

ドゴォ!と沈黙を破るように大きな音がすぐ近くでした。

その音の先にあった木々は倒れていた。

更に次々と木々は倒れ、海の方からも水飛沫が上がっている。

 

「なんだ!?」

 

「オトルか……」

 

「オトルさんが?一体何で破壊行動なんて…」

 

店主にもさん付けされている辺り彼も周りからは信頼されていたのだろう。

 

「来い!」

 

俺は先ほどやったように龍を呼び出した。

 

「水瀬、ここに留まる方が危ない、動くぞ!店主も!」

 

「悪い、俺はこの離島を出て娘の所に行く、海を移動できるモンスターなら俺のデッキにいる。オトルさんの事は頼む!」

 

「わかった。……ついでに俺と一緒にいた奴の安否も確認してくれ」

 

「任せろ!……死ぬなよ」

 

「当たり前だ………行くぞ、水瀬」

 

「うん……」

 

 

龍に水瀬と2人で乗り空へ再び昇る。

 

「雅や一色は?」

 

「2人はまだ上にいると思うけど……」

 

「そうか……」

 

「見えた、ユウキと竜王だ。そして、………あれはオトル、なのか?」

 

「なにあれ……」

 

そこに居たのは、先程謎の世界でオトルが放っていたのと同じオーラを放つ大きなタコのようなモンスターだ。

確かオトルも先程のユウキとの対戦中にタコ型のモンスターを使っていた筈だ。

特筆すべきはその幾つものうねる触手である、それらが大きく動き衝撃を生み出している。

そしてそのモンスターの体の中央にオトルがいた。デュエ⚪︎の蝿の王に何処となく似た取り込まれ方をしている。

その触手は何本か海岸へと突き刺さっているのも見て取れる。

そして更にもう一本触手は別方向にたった今、伸びた。

反応する間もなくそれは陸の何処かに大きく突き刺さった。

 

「ターンエンド……もう諦めろ、次のターンで俺の勝ちだ」

 

声がした。それは間違いなくオトルの声である。どうやらあの姿になってなおまだ対戦は続いていたようだ。

 

「ヤバい状況だな…」

 

「あれって、モンスターなの?それとも人なの……」

 

「わからない……」

 

そう言いながら辺りを見回す。

そうするとある光景が目に入る。触手から放たれる衝撃波に吹き飛ばされているネオDFCの団員達だ。

 

「水瀬……」

 

「うん、私もそうしたら良いと思う」

 

俺の視線の先を察したのか水瀬は何も聞かずに肯定してくれた。

昇った空を再び降り、吹き飛ばされた奴らの元に駆けつける。

 

「……生きてはいるな」

 

「うん、こっちの人も生きてる」

 

次々と倒れた団員を回収する。

回収する奴らの中で見た事ある顔が何人かいた。いずれもこちらに残るのをあの世界で選んでいた人物だ。

 

「安全そうな場所は……」

 

「この先に、俺たちの基地がある……そこならシェルターを兼ねているから安全だ」

 

辛うじて意識がある男がそう教えてくれた。

 

「なんでんなもん用意してあんだよ……」

 

「はは……まあ色々やってたのさ……」

 

シェルターに辿り着いた後、取り敢えずそこに一通り団員を寝かせた。

 

「悪いな……リーダーがあんな事になってんの……助けてくれて」

 

この場所を案内してくれた男は怪我が酷いのにも関わらずそれを手伝ってくれた。

 

「……あの人の気持ちも分かるので」

 

「そう言ってくれるなら嬉しいさ」

 

備え付けのモニターで俺たちは空の状況を確認している。

オトルがユウキを仕留め損ね、ターンがユウキに渡った。

 

「あの人はさ、総帥や副総帥より近しい存在として俺たちと一緒にやってきてくれたんだ」

 

ポツポツと男が語り出した。

 

「いつも励ましてくれたよ、いつか必ず元の世界に帰って、そうしたら絶対に皆を見つけ出して一緒にうまい酒飲んで騒ごうぜってさ」

 

「…………だが戻らなかった、戻れる世界じゃ無かった」

 

「そうだな、責任感の強い人だったからさ…だから今回の件も彼が主導した。責任は全部負うって豪語してな………………けどこの結果がさ、これなんだよ」

 

男は大粒の涙を出し泣き崩れた。

この世界はこの世界だ、在り方が間違っているとは思わない。

だが、この世界に突如連れて来られた彼等が苦しみ続けている。

どうすればこんな事が終わるのか、俺はそんな事を泣き崩れる男を前に考え出していた。

 

 

 その一方で画面の中でも決着がそろそろ付きそうである、いや付いていたと言った方が良いだろう。

『世界繋ぐ竜王』がオトルごとタコのモンスターを貫いていた。

 

「水瀬、ちょっと行ってくる」

 

部屋の隅で休んでいた水瀬に声をかける。

 

「うん……。いってらっしゃいゼン君」

 

 

 

 

 

「………俺は、帰りたかった…だけなんだ」

 

龍に乗り上空に昇ると、モンスターの体が朽ち始めており、そこでオトルとユウキ、紬が対面していた。

そしてオトルの後ろには小さな穴が空いている。謎の空間で見た俺たちの居た世界と繋がっていると思しき穴だ。

 

「けど、それでも僕は命を犠牲にする選択を取れなかった……」

 

「………お兄さんと似ているな、そういう所は…………一体なんでこんな事になってしまったんだろうな……。そうだ…君のお兄さんにもし会ったら伝えて欲しいんだ……ありがとうございました、って」

 

「兄さんに……ええ、必ず伝えます」

 

「ああ、ありがとう………彼は我々の希望だったんだ………生きる意志をくれたんだ………それともう一つ、この穴に私を放り投げてくれ…せめてあの世界の土になりたい」

 

「………分かりました」

 

「ありが、とう………もうそろそろ、限界みたいだ」

 

オトルの体もモンスターの体のように朽ち始めていた。もう長くないのが分かるほど弱々しい姿だ。

 

「待って、ユウキ君と…オトルさん」

 

突然紬が声を上げた。

 

「俺があちらで土になるのを許せないか?…それなら……」

 

「違う!そうじゃないの……私の帰り道もそこなんだよね……だったらさ、私がオトルさんのお墓を作る!そうじゃなきゃかわいそうだよ!」

 

優しい奴だ。

自分を連れてきてあまつさえ殺そうとした男の墓を掘るなんてな。

 

「………本当にすまなかった……私の、私達の為に、同じような…いやもっと酷い境遇に合わせようとして……」

 

「仕方ないですよ、きっと私がここに来て1人で生き続けろって言われたらあなたを支持してたって思うもん」

 

「本当に……すまなかった……」

 

そう言いながらオトルは静かに目を閉じた。

そして動かなくなった。

 

「紬さん……この穴を通っても帰れる保証はないし、帰ってもどうなってるか分からないけれど……それでも、元の世界で元気で暮らせる事を祈ってるよ」

 

「ありがとうね、ユウキ君。大丈夫、もう覚悟はできてるから。楽しかったよ、お昼の少しの時間だったけど、皆と遊べて」

 

「僕も楽しかった、もっと一緒に居たかった」

 

「私も、だからね……あなたと過ごしたこの夏を、私は絶対に忘れない。………さようなら、ユウキ君」

 

「うん、さようなら」

 

その挨拶の後、紬はオトルの亡骸と共にその小さな穴の中に消えて行った。

そしてその穴は消えてしまった。

 

 

 

「…………ゼン」

 

後ろで見ていた俺にユウキが声をかける。

 

「………気付いてたのか」

 

「ごめん、乗せてくれないかい?」

 

「おう………」

 

空中に浮いてる状態から俺の龍にユウキが乗った。

 

「………僕はどうすれば良かったと思う」

 

「………やめておけ、俺達が背負える物じゃない」

 

彼等の人生全部なんてとても簡単に背負える物じゃない。ましてやユウキは本当に正真正銘のただの中学1年生だ、背負えるはずがない。

 

「それでも、僕は……僕は……兄さんの思想の理由も、何も知らずに………」

 

友人の弱音を俺は何も言わずに聞き続けた。

今日だけで俺は何人の涙を見ただろうか?

これ以上こんな顔を見るのはごめんだ。俺の中でそんな感情が強くなった。

陸に降りる頃にはユウキはいつもの優しい表情になり、モンスターの実体化も終わっていた。

 

 

 その後俺、ユウキ達はボートに乗り陸に戻る事にした。一色はいつの間にか居なくなっていた。

この島に来る前に降っていた雨は止み、茜色の夕焼けが俺たちを照らし始めていた。

その夕焼けはこの世界を照らしていて、その明るさは様々なものを映し出す。

荒れに荒れた砂浜、オトルの攻撃で被害を受けた海沿いの集落とそこで必死に瓦礫をどかしている人々、呆然と夕焼けを見るネオDFCの元団員、衝撃で半壊している店主と娘の海の家。

例え世界が違っても、そこには人は生きている。この世界とあの世界、命の重さに違いはあるのだろうか?

 

EX話 了




今回のEX話の目的は今後のキャラ達の心情の変化の補完とDFCとは何かの掘り下げの目的で作成しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。