転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
ファイティングライフ 神罰漆攻 収録カード『神光の勇者』フレーバーテキスト
登校する最中、校門を掃除しているオッサンと遭遇した。
その顔はどこか申し訳無さそうだ。
「よう、聞いたぞ。………アイツらが迷惑かけたみたいだな。……………本当にすまなかった」
そう言いながらオッサンは綺麗に頭を下げた。
「いや、オッサンが謝ることじゃないだろ」
「それでもだ、アイツらは昔からの友達だ……いい奴だったんだよ……本当に……」
夏の臨海学校でDFCの一部が事件を起こした。
オッサンからも好かれていたらしい。
「オッサンはさ………帰りたいか?」
ここ最近の一件から、ふと気になった事を聞いてみる。
「なんだよ……知ってんのか。…………まあ、そうだな、帰りたいかと言われたらそりゃ帰りたいさ。………けどさ、俺は帰っても心配してくれるような人も居ねえし、こっちでもあっちでも仕事して汚い部屋に帰って酒飲んでるだけだ……親父とお袋を見送ってないのは心残りだがな」
「………そうか」
「そんな暗い顔すんなよ、暗い顔してたって状況が良くなるわけじゃねえ」
「そうだな……」
「元気出して登校しろって、じゃあな」
昼休み、俺は生徒会室に呼び出されていた。
交流戦での敗北を受けての追放宣言だろう。
「取り敢えず、生徒会の選抜は2週間後くらいの予定ですよ。臨海学校の一件もあったことですし休養をしっかり取ってください」
やはり追放はされるようだが2週間も期間を設けてくれるようだ。
この会長のことだからすぐにでもやると思っていただけに意外である。
「………ありがとうございます」
「どうかしましたか?意外そうな顔をして」
「いえ、そんな気遣いをされるとは思わなくて」
「別に私は鬼じゃないですよ」
「………………」
本当か?
「今日の放課後にしましょうか?」
「いえ、ありがとうございます」
手短に礼を言って俺は生徒会室を後にした。
戻ってくるのは2週間後になるだろう。
「ゼン様、臨海学校から元気ないですね」
教室でぼーっと過ごしているとセンヤに声をかけられる。
臨海学校では何故か会ってないから久しぶりな気がしてくる。
「そうか?」
「そうですよ!あの日何があったんですか?」
あの日、十中八九臨海学校での一件だろう。
何があった、と言われてもDFCの幹部が破壊活動を行った、なんて言っても蚊帳の外だったセンヤには分からないだろう。
「………俺も考えが追い付いてない。纏まったら話すよ」
ただセンヤになら話していいか、なんとなくそう思えた。しかし今は現状をうまく言語化できない。
「分かりました。必ず聞かせてくださいね」
「ああ、必ず話すよ」
「約束ですよ」
「ああ、約束だ」
「ちょっと、面貸しなさいよ」
帰り際、廊下でなんか久しぶりに見る顔に因縁を付けられた。
「捻咲か…」
「ユウキもアンタも何辛気臭い顔してんのよ……」
どうやら捻咲と同じクラスのユウキも同じように暗い顔をしてるらしい。
ユウキもその臨海学校の一件で大きく精神的にダメージを受けていたが未だに癒えていないらしい。
「色々あったんだよ……」
「その色々は何かって聞いてんのよ!」
「悪い、水瀬にでも聞いてくれ」
軽く話すだけでも色々と深掘りされて長くなりそうだから切り上げる。
許せ水瀬。
「ちょっと!待ちなさいよ」
俺はその声に背を向けて帰る。正直しばらくは1人になりたい気分だ。
帰宅中、何か俺は嫌な予感を覚えた。
その予感に導かれるまま、寮への道を少し外れ道の脇の林の中へと進んでいった。
しかしそこには誰も居なかった。
気のせいかと安堵した瞬間、2人の人間が現れた。
その2人はどちらも見覚えがある。
一色とオッサンだ。
見た所展開したフィールドで対戦していたのだろうか?オッサンはボロボロだ。
「DFC、あの日どれだけの被害が出たか分かっているか?帰還のためと言っていたのにやった事は破壊活動だ………近くの集落には死人も出たんだ」
「…………うっ……それは……」
「魂よ、在るべき所へ還れ………神罰の時だ」
光が落ちた。
比喩的な表現では無い、一つの光が落ちてきた。
そしてその光が消えた場所には何も無かった。
そこにあった筈の肉体すらも。
「オッサンっ……」
俺は思わず飛び出した。
別に深い付き合いだったわけではない、しかしなんだかんだで長い付き合いだった。
「……ゼン、やっぱりDFCとつるんでたんだな」
一色の顔色は暗い。その表情から読み取れるのは諦めと哀しみだろうか?
「………DFCだからとか言う話じゃない……個人的な知り合いってだけだ」
「そうか。……で、お前は臨海学校の時の破壊活動、どう思う?」
「……酷い事件だったと思ってる」
「そうだな、俺もそう思う。だから俺はDFCを、異世界からやって来た奴らを還す」
「……還す?」
「<神託>カードの力だ、倒した相手を神の力で元の世界に還すんだ………」
「ならオッサンは元の世界に帰れたのか?」
「…………どちらかというと元の世界に埋葬してると言った方が正しいか」
苦虫を噛み潰した顔をしながら一色は言う。
埋葬、その言葉が意味する事は単純だ。
「つまり……死んだのか?」
「そうだ、俺が殺した」
一色は端的にそう告げた。
「一色、お前………」
つまりオッサンは殺された。
目の前の男にだ。
「誰かがやらなければならないから俺がやる。
一年前のDFCによる騒動、残党によってこの世界の各所で起きている暴動、そして臨海学校での一件………これは過激な思想の奴ら全員を元の世界に還すまで終わらない」
「………話し合いで解決できないのか」
「解決できるなら良い……。だがDFCに入ってるなら話は別だろ?この世界の在り方を変えようとしているんだぞ…………話はこの辺でいいだろ?始めようか」
「………そうだな」
「展開」
一色のその言葉と共に世界が切り替わる。
例のモンスターが実体化するフィールドだ。
「「レディー、ファイト」」
「俺のターン、『<神託>受けし勇者』を召喚、能力で山札より『信仰の従者』を召喚。能力でお前は次のターン墓地のカードを動かせない」
「攻撃だ、『勇者』と『剛腕の従者』」
「対抗魔法2枚で二つの攻撃を無効に」
「1点も受けないか……ターンエンド」
現在は俺が5点で一色が6点。
「俺のターン、『村に立ちこむ霧』を発動このターンの召喚権を放棄する代わりに次のターン俺はダメージを3点までしか受けない」
「デメリットが重いな」
「更に魔法『失いへの誘い』山札からカードを5枚墓地へ落とし一枚ドロー。ターンエンドだ」
墓地利用デッキの俺は先のターンに受けた制限が重いから守りに徹するしかない。
「俺のターン、『護法の従者』を召喚して対抗魔法『祈りの障壁』をサーチ、更に魔法『回復の魔術』で1点回復」
6→7(一色)
「一斉攻撃、勇者の効果で従者の打点は上乗せだ」
「全て受ける」
6→3(効果により最大3点)ゼン
「俺のターン……来い、神を今ここで討つ『<神討ち>の龍』!」
いつの間にか手に入れていた新たなる力。
神託カードが相手なのも初陣にお誂え向きだ。
「……ゼンも持っていたか……神討ちを」
「その能力で墓地のカードを全て除外!その数に応じて相手のモンスターをバウンス!13枚以上除外されたなら相手のバウンスされたモンスターの数分、或いは2点を与える!つまり3点だ」
「一気に3点かよ…」
7→4(一色)
「更に魔法『満たされし杯』を発動!その能力で除外されたカードが10枚以上なら3点を与える!」
「クッソ……残り1点か」
4→1(一色)
「これでターンエンドだ……どうせ対抗魔法を持ってるんだろ?」
このターンにバーンではキルしきれない。そして一色の手札には対抗魔法が見えている。
それなら無理に詰めるより防御に回した方が次のターン耐え凌げる。
「防御に回した方が得ってか?その通りだよ………俺のターン」
「なあゼン………俺はなんだかんだで学校生活楽しかったぜ」
「なんだよ急に」
「お別れの言葉さ………召喚『神光の勇者』」
激しい光が世界を染め上げた。
そこに現れたのは『<神託>の勇者』とよく似たモンスターだった。
「能力で従者を呼び出す……『思慮深き従者』を呼び出す。そして魔法をサーチ、そのまま発動『決死の魔術』その能力で攻撃後の自壊と攻撃を一回のみとする代償と引き換えに自分のモンスター一体の攻撃の際相手は対抗魔法を打てない、更に打点を+3だ」
「……だが俺は防御が可能だ」
「防御はな………『神光の勇者』で攻撃」
「防御だ!『<神討ち>の龍』!」
「防御したな……『神光の勇者』の能力!防御された際にこのモンスターの打点と相手モンスターの打点の差だけ相手にダメージを与える!」
「龍の打点は……2」
「そして今の勇者の打点は2+3で5だ!つまり3点のバーンダメージだ!………さようなら、ゼン」
「………………畜生」
俺の眼前には勇者の剣が迫ってくる。俺にそれを防ぐ術は無かった。
3→0(ゼン)
「ぐあっ…………」
フィールドでの初敗北、勇者からの身をもって受けたダメージは大きく体が動かない。
「辛いよな、知らない世界に連れてこられるのはさ………せめて元の世界で安らかに眠れよ……魂よ、在るべき所へ還れ………神罰の時だ」
光が落ちてくる。
まあ、悪くない人生だったんじゃないだろうか?終わる筈だった命だ、ボーナスタイムみたいなもんだろ。………もう少し、アイツらと遊びたかったかもな…………。
「困るんですよね、まだ消されちゃ」
最後にそんな声が聞こえた気がした。
一色は前回の一件でDFC達が謎の空間で何を見たか、そもそも謎の空間に行ったことを知りません。
状態的には水瀬と同じような状態で周りが急に寝たぞ?と言った感じですね。