転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
そちらへ神は降りられる
ファイティングライフ 神龍祭誕 収録カード 『器の龍』 フレーバーテキスト
「ゼン、貴方は強くなるのよ、誰よりも強く」
声が聞こえる。
今世で俺を育てた、母の声だ。
その声がする先を見つめると、そこに母が居た。
その表情は幼い頃見た母の表情と何一つ変わらないが、幼い頃より鮮明に見えた。
その表情は冷たく貼り付けたような笑顔だった。
「っ…………ここは」
知らない天井だ、そんなテンプレの台詞を吐きそうになりながら目を覚ました。
俺は確か一色に負けて、それで確か元の世界に魂が戻されるとか……じゃあここは元の世界なのか?だが俺は肉体がある、この体は実は霊体なのだろうか?
あまりを見回すと自分が寝ていたベッド以外は特にない一室のようだ。
よくわからない絵が飾ってあり花が生けられている程度だ。
起きあがろうとするとうまく体が動かない、まるで体が動き方を忘れたような感覚だ。
「目が覚めましたか?」
そう言いながら出て来たのは胡散臭い人、ではなく我らが母校の会長だった。
「……ここは?」
「私の個室の中の小部屋です。生徒会長の部屋は生徒会の生徒の部屋より広いですからね」
広すぎだろ…ここだけでもこの前入ったユウキの部屋より広いぞ。
「で、調子はどうですか?」
そう言いながらベッドの脇に置いてあった椅子に腰掛けて来た。
手には何やら紙袋を持っている。
「どうもクソも………理解が追いついてないですよ」
カードゲームアニメみたいに負けたら死ぬを体験したとしか言いようが無い。
カードゲームアニメではよくある事って奴だな。
「貴方が負けて死ぬ所を私が助けてあげた、それだけの話です」
「それだけ?」
「ええ」
「まず、聞いていいですか?」
「良いですよ。なんでも聞いてください」
「あれからどれくらい経ちました?」
これは目が覚め、体が上手く動かなかった時に真っ先に気になった事だ。
「2週間ですね。ずっとこの部屋で貴方は寝てましたよ」
どうやら大分眠ってしまっていたようだ。
それだけ寝っぱなしなら体が動かないのも当然だろう。
「次の質問です、負けた後に一色のあれを受けて俺が生きてる理由はなんですか?」
「あの光から即座に引き離したのと、君と他の転移者とのちょっとした差異のおかげですね」
差異……恐らくだが俺は転生していて他のDFCの奴らは年齢そのままに此方に来ているという違いだろうか?
「あの光が当たらなければ死なないって事ですか?」
「うーん、本来の転移者は一度受けたら終わりなんですけどね……君は違うんですよ」
会長は呑気に紙袋から取り出した林檎の皮を同じく取り出した包丁で剥き始めた。
「………どう違うんですか?」
「君の魂はその体に馴染んでる、けれど他の人達のは綺麗にハマってないんですよ。同じ年齢の別人の器に無理矢理魂を嵌め込んだ形ですからね……簡単に外れちゃうんですよ」
つまり俺の魂は綺麗にこの体にハマっているから簡単に取れなかったって事だろうか?
「それは俺が、転生者だからですか?」
生まれた時から埋め込まれてるから綺麗にハマってて取れ辛かった、そういう事だろうか?
「そうですね、そして………魂が馴染むように細工が生まれた時からされていたからですね………林檎が切れましたよ、どうぞ」
うさちゃん林檎が乗った皿を手渡される。
…………うまい。
いやそんな事より気になる事がある。
「………細工?」
「最も、あの光を受けて取れちゃったみたいですけどね……思考がクリアでしょう?それに普段は無理矢理やってる敬語をこの状況でもスラスラ吐いてる………精神が元に近くなってませんか?」
シャクリ、そんな音を立てながら自分の分の林檎を彼女は頬張る。
「確かに………大分スッキリしてますが」
言われてみると確かに普段からたまに覚える既視感の正体を、目を覚ましてからはすぐに何処で感じた既視感かを理解している。
カードゲームアニメだから、そんないろんな事に納得できてしまう理由を俺は今日に至るまであまり覚えていなかった筈だ。
「で、それをなんで貴方が知っているんですか?」
「君を転生させた組織に、私が入ってるからですよ」
はぐらかされる、そう思っていた答えを会長はあっさり答えた。
「………組織?」
「ええ、君を転生させた組織、そして転移者達をこの世界に転移させたのは私の組織なんですよ」
「なん……だと」
「なので君が転生したのもDFCの人達が全員転移者なのも把握してるんです」
つまり、この人のいる組織がDFCの構成員の本来の人生を奪ったという事なのか?
「………それは、つまり…全部の原因は貴方達って事ですか?」
「まあそうなりますね……最も、それを主導した一部の過激な人間は既に死んでるので一部の過激な人がそれを引き継いでる状態なんですよね」
「主導した人、その人はまさか……」
「凄いですね、察しがとても良くなってて感心します。大分重く思考に制限がかかってしまっていたんですね。そうです、その転移・転生を主導した人間は」
俺の頭は今世で最大級と言っていいばかりに冴えている。
何故俺は転移ではなく転生したのか、会長の口ぶり、そして目覚める時に思い出した記憶。
そこから導き出せる答えは単純明快たったの一つ。
「俺の母さん…」
「そう、悪道ツクルさん。彼女がこの騒動の始まりです」