転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
ファイティングライフ 神龍祭誕 収録カード『機械仕掛けの神』フレーバーテキスト
「『神光の勇者』の効果で2点のダメージだ!」
戦いは既に始まっていた。
俺と会長は少し離れた位置で観戦している。
恐らく彼らは気づいていないだろう。
一色は俺を倒した時のカードを引き続き使用している。
「……ターンエンドだ。俺は次のターン効果ダメージは受けないしお前は墓地のカードを動かせない。そしてお前の盤面のモンスターに関しても防御可能なモンスターが居る…‥仕留め損なったが次のターンは凌ぎ切る」
一色のデッキは状況に応じた魔法をサーチして使用できる、それでガチガチにメタ魔法を使って相手の動きをかなり絞っている。
「甘いな………」
しかし叔父は余裕そうだ。
まるでだからどうした、とでも言いたげである。
「なんだと!?」
「私のターンだな………時に一色君、このフィールドはなぜ作られたと思う」
「対戦を通じてダメージを与える事と相手を逃さない事が目的だろ?このフィールドは展開したら対戦が終わるまで出られない」
「20点だ………。それは副次的な効果に過ぎない」
「つまり本来の用途があるのかよ……」
隣で観戦している会長は眉ひとつ動かしていない。どうやらそれが何かを知っているようだ。
「悪道君………いや、この呼び方は駄目ですね、そう、悪道君だからアク君」
「ダサいので嫌です」
「アク君、見ていてください。アレが君が求めてる物に必要な力です」
スルーされた。………アレ、とは恐らく今まさに叔父が掲げようとしている物だろうか?
「降臨せよ、『機械仕掛けの神』」
その宣言と共にフィールドに大きな衝撃が走った。
支払っていたらしいコストはよく見えなかった。
そこに現れたのは一つの女性の様な外見の銅像だった。
巨大で神々しく、そして何より異質なエネルギーを放っている。
「……なんだよ、こいつは」
「フィールドの本質はカードから実体化したモンスター達の生み出すエネルギーの蓄積だ。勝導ユウはこれによりエネルギーを集めていた」
「で、そのエネルギーを使って生み出されたのが……」
「この神さ。本来ならば機械仕掛けではなく本物の神を招来するつもりだったんだがね」
そう言う叔父の目は何処かうっとりしている。
「会長、アレの力で俺の望みは叶うんですか?」
「アレだけじゃちょっと足りないかな」
アレですら足りないのか、と圧倒的な存在感を放つ機械仕掛けの神を見る。明らかに他のモンスターとは一線を画している。
「その能力は、全ハンデスと全てのフリーズだ」
「なっ…‥俺の盤面とハンドが………」
「速撃、こいつの元からの打点は……3だ。そして更に私の盤面には2打点のモンスターも2体いる」
「全ハンデス…対抗魔法どころか、コストすら奪うのかよ」
「とどめだよ、『機械仕掛けの神』で攻撃」
「なんなんだよ………これは………」
全ハンデス、更にフリーズ。一枚で打点以外の要素をケアできる圧倒的な力……なんて恐ろしい力なんだ。
「さて一色君、君には罰を与えよう」
「俺を、殺すのか?」
「私は手を汚したくない主義だ。痛めつける程度だよ。………神罰だ」
その言葉共に実体化したままの『機械仕掛けの神』によって光が放たれた。
そしてそれは一色に直撃した。
「ソメル!」
ユウキが叫んだ。
光が消えた後、不幸中の幸いかボロボロではあるが一色の姿は残っていた。
「さて、次は君の番だよ。勝導ユウキ君」
「…‥ええ、貴方を倒します」
そのまま連戦が始まる、そのはずだったまさにその瞬間、ユウキの元に光が落ちた。
その光は叔父とユウキと一色を飲み込み姿を消した。
「…‥何がどうなってるんだ?」
俺と会長はフィールドに取り残されてしまった。
「ついに怒りが頂点に達してしまったみたいですね。自分の名を騙る偽物が現れて」
会長は全て理解した様な口ぶりで語る。
「それってつまり……」
「この世界の神様の力ですね。私達が呼び出そうとしてる方じゃない、そもそもこの世界に在わす神託だとかを与えてる神」
神託を与えた神…‥つまりこの世界を有るべき形に整えようとしている神だ。
「…‥ユウキは大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思いますよ、ユウキ君は」
「なんでそう思う」
「彼はこの世界の歪みを何度も叩いていますからね」
思い返してみると確かにDFCの野望を砕き、この前のオトルの一件も解決している。
「良いですかアク君、世界に干渉する際必ずあの神は障害になります。ユウキ君と戦う覚悟をしておいた方がいいですよ」
会長は真面目な顔で俺にそう忠告したが、しかして俺はとっくに覚悟をしていた。
一色に負けて以来俺の頭にフィルターは無いから展開がメタ読みできる様になっていた。
俺とユウキは戦う運命にある、と。
「俺が勝つ」
「いい覚悟です、ああそれと…‥今からやる事には目を瞑ってくださいね。私は私の逃げ道を潰します」
会長の顔は、今までに無い程に真面目で冷たかった。
「決める前にまず教えてくれ、会長の目的を」
「現在の神の打倒によるカードゲーム中心の世界の終わり。私、得意でも好きじゃ無いんですよね、カードゲーム」
その目的は、皮肉な事にDFCの悲願とそっくりだった。
「神殺しって事か」
「ええ、大罪でしょう?」
「そうだな」
「けど今の代表に、機械仕掛けの神で満足してる彼にはそれは出来ない。そもそも今の組織に昔ほど野望へ熱意のある人が居ないんですよね」
「だから私が新たな代表になる」
会長は冷たい声でそう宣言した。
その言葉の意味する事は、俺の叔父の謀殺だった。