転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
ファイティングライフ 双神創世 収録カード 『革命の徒花「王手」』フレーバーテキスト
勝導ユウとの出会いは突然だった。
「ほら、カードを渡せ」
「くそっ………」
その日も俺は神託持ちを倒しカードを集めていた。
「これで27枚か………」
カードはできる限り多く用意しておきたい。
だから手当たり次第に勝負を吹っ掛けて集めている。
「まだ足りないだろう?」
「誰だ!」
そんな折、突然背後から声をかけられた。
「久しぶり、それともはじめましての方が適切か?」
振り向いた所に立っていたのはユウキによく似た、ユウキより大人びた男だった。
「ユウキ………いや、勝導ユウか……久しぶり、って答えればいいか?」
勝導ユウ。元DFCの総帥であり、ユウキに野望を阻止された後は消息を絶っていた男だ。
「神託カード、本当に恐ろしい物だな。カードスペックも高ければ俺達にとっては負けた瞬間消えちまうデスゲームになる最悪な仕様だ」
そう言う彼の手には何枚かの神託カードが握られていた。
「本当にな、神様はなんでこんなクソッタレなカードを作ったんだろうな」
「それは俺のせいさ」
「………なに?」
「知ってるだろ、俺達は何年も前からこの世界に転移して来ていることを。疑問に思わないか?何故今になって神託が降りたのか」
「それは確かに疑問に思ったが……」
確かにそれは疑問だった。
神が余所者を嫌っているのであればとうの昔から神託持ちを生み出して狩り尽くしているのではないかと。
「トリガーになった行為は一年前の俺が実行に移した計画だ。この世界にとって重要な存在であるカード達と人類の均衡を崩そうとした俺達異邦人を神は危険分子と見做したんだ」
「だから自分のせいだと?」
勝導ユウは静かに首を縦に振った。
「……ユウキに負けた後、俺は他の方法が無いかを探しながら神託持ちからカードを集め続けていた………そして辿り着いた結論が、お前だ」
「ウツワ、か」
「そうだ。……だがお前は弟の友達だ。だから背負わせたくは無かったんだが……」
この男はこの世界での弟のユウキを大切に思っている。以前オトルが語った話の中で人の命を犠牲にする世界渡航を行わなかったという話もあった。
人の命を大切に思っているのだろう。
「俺の方が動こうとしているのを知った、か」
「そうだ……これは俺の罪滅ぼしであり自己満足だが………生き残っているDFCを…いや転移者達を救いたいんだ。俺にも協力させてくれ」
勝導ユウはそう言って俺に手を差し出した。
俺は迷い無くその手を握った。
会長の手より強く握れた気がするが、その握った手はとても重かった。
「転移者集めは今の所順調だ、この調子で行けば決行日には確認が取れてる者はほぼ全員集まるだろう」
「助かる」
「神託カードの方もそれだけあれば大丈夫です。後は次のフィールドでの対戦の時に無事成功するかですね」
「ああ、絶対に成功させる」
俺と会長、そしてユウはFCタワー内のDFCアジトのとある一室に集まっていた。
組織壊滅後にも会長の元に残ったメンバー達と俺はDFCに合流した形になる。
「下準備が終わった事だし………話して貰おうか、俺たち転移者が何故ここに転移させられたかを……皇道ススム」
ユウの視線は鋭く優雅に紅茶を飲んでいる会長に向けられた。
皇道ススム、誰もが会長と呼ぶせいで忘れられがちな会長の本名だ。
「ウツワを知っているのなら気付いてると思っていたんですけどね」
「ウツワの実験体にしては俺達転移者の数が多すぎる」
「転移者は実験体であり、撒き餌だと当時悪道ツクルさんは言っていました」
「実験体で……餌だと?」
「ええ。当時実験を主導した悪道ツクルさんは魂を持ってくる事に成功した後、魂が定着するかどうかを一般人を使って実験していたらしいです」
「………身勝手な話だ」
母さんのやっていた話を聞けば聞くほど家族としてその犠牲者達に申し訳なくなる。
「魂が体にどの程度定着するかの実験で無事定着できた人間が私達の用意した体に定着できた結果、転移者としてこの世界で生き残れた」
あまりにも理不尽すぎる…つまり魂が定着しなかった奴らも居たという事ではないか。
「そしてこのノウハウをもとに作られた最初の転生者が……貴方、勝導ユウです。そしてその結果からより精密にウツワとして用意されたのがアク君ですね」
「ああ、そうだな」
「ユウも、転生者なのか?」
「ああ、だから俺は転生者なのに弟が居る……で、撒き餌というのはなんだ?」
自分が転生者だから気に留めていなかったが、転移者なのに兄弟が居ると言うのは確かにおかしな話である。
そして撒き餌、名前の時点であまり良くない物であることは明白だ。
「ウツワであるアク君という存在を隠す為にカモフラージュとして沢山ばら撒いて神からの注意を逸らす。だから撒き餌です」
「……………そして無事に餌として何人も死んでいったということか。………本来のウツワを隠すって役割は全然果たされてもいないがな」
「そうですね、結局神の前では全て同じ他所の世界の魂という事でしょう………で、私は謝れば良いんですか?」
会長は臆面も無くそう言った。
有名アスリートが不祥事を起こした際にイヤイヤ謝罪するような感じで正直聞いてて良い気分はしない。
「要らないさ……謝られてもアイツらは帰ってこない」
ユウはそれを嫌そうな顔をしつつも流した。
「そうですか。まあ協力は惜しみませんよ、仲良くしましょう」
2人の間の空気は良くないように見えるが、それぞれこれからの準備は協力して円滑に行っているので割り切れてはいるのだろう。
そう思いつつこれからの用意を俺もするかと動き出した時、ドアが強く叩かれた。
「お話中すいません!敵襲です!!」
「敵襲ですか…誰かは知りませんが嗅ぎつけるのが早いですね」
「まだ声明も出していないんだがな」
そう思いつつ部屋を出てタワー一階のエントランスへと出向く。そこに居たのは何人かを後ろに控えさせた見覚えのある男だった。
「お久しぶりですねぇぇぇぇぇ会長、そしてぇ〜悪道君!!」
二階堂サグル。かつては2年生の生徒会の一員だった男だ。
俺に負けた後姿を消していた筈だが何故こんな所に姿を現したのだろうか?
「二階堂君、どうしてここに居るんですか?」
「あなた様の詰めの甘さのおかげでございまぁす!!学園のアジトを封鎖した際にワテクシと繋がっていた組織の人間が秘密裏に解放してくれたんですよぉ〜、もしかして人望が無いんですかぁ?」
会長、もしかしてあのアジトにこいつを監禁してたのか?叩けば埃しか出てこないぞこの女…。
「………相変わらず鬱陶しいですね。で、なんのつもりですか?これは」
「そう、それについてですね!いやぁ〜ワテクシが貰おうかなって、あなたが手に入れたぁ〜そこのウツワを!」
そう言いながら二階堂は俺を指差した。
俺を物扱いしているようで腹が立つ。
「あげません。私自分の物を人にあげるの嫌いなんですよ」
「……俺はお前の物でもないが」
「…………最悪な女だな」
「では力づくでいただきましょうか」
そう言いながら二階堂はデッキを翳した。
「展開」
俺達3人及び二階堂とその取り巻き達の世界が切り替わった。
「………会長、例のアレをもらって良いですか?」
ちょうどいい機会だ、計画を次の段階に今ここで移そう。
「ええ、良いですよ。次会う時もアク君である事を祈っています」
そう言いながら会長は俺にカードを手渡した。
そしてそれを元から用意していたデッキに入れた。
「アク、本当に済まない………」
ユウは申し訳なさそうにこちらを見ている。
「決めていた事だ、気にしないでくれ…………俺が相手だ」
振り返り二階堂を見据える。
正直別にアレを使わなくても勝てる相手だろうが、このタイミングでアレを試しておきたい。
「傷物にしたくないんですけどねぇ……まあいいでしょう」
「「レディー、ファイト」」