転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた   作:大きいホクロ

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彼が手にしたのは新たな叡智。そして………

ファイティングライフ 双神創世 収録カード 『双世の叡王』フレーバーテキスト



番外編 物。

退屈だ。

母に連れられてその施設に行った時の感想は必ずと言って良い程に、その端的な一言で充分だった。

同じような境遇の子供達と遊ぶ事もあったがあまり楽しくはなかった。何故なら遊ぶといえばカードゲームで、それでは赤子の手を捻るように簡単に勝ってしまうからだ。

そういえば当時の三月君は私に勝とうと何度も挑んで来ましたね。他の子よりは強かったので印象に残っています。

母はその施設に通うのがとても好きなのが幼い私にも理解できた。

また、母は私にその施設を運営している組織へと加入する事を期待していたのだろう。

彼らのやっている事を素晴らしい事のように語っていたが、幼い私には理解できず不気味さすら感じていた。

 

「ススムちゃん、この組織は誰も出来なかった、やれなかった事を成功させようとしているのよ」

 

そんな感じの言葉に幼いながら私はすごい、だとかかっこいいなんて言ういかにも幼子が言いそうな言葉で反応してやり過ごしていたものだった。

 

そんなある日のことだった。彼女と彼に出会ったのは。

 

「こんにちは、ススムちゃん。私はツクルって言うの、よろしくね」

 

その女性を見た時に感じたのは、明らかに他の人と違う狂気だった。

いや、他の人たちにある狂気の集合体、元と言うべきだろうか?

 

「ススムちゃんにお願いがあってね。ウチの子と戦ってみてくれない?」

 

「……よろしく」

 

そこで出会ったのがどこが生意気そうな顔をした少年、悪道ゼン君だった。その頃の面影は今もある。

最も向こうは私の事を覚えていないようだが。

当時の私は小学3年生、彼はまだ1年生だったから無理もない。…………無理もないがやっぱり気に食わない。

 

「俺の勝ち」

 

「………負けた?」

 

それは幼い私が初めて経験した敗北だった。

しかしその驚きも束の間、さらに目を疑う光景がその場で繰り広げられた。

 

バシンッという音がその場で響いた。

 

「ゼン、なんであのターンで詰めたの?」

 

ツクルさんがゼン君の頬を思い切り平手で叩いていた。

ゼン君の頬の紅葉のような赤さがその叩き加減の強さをはっきりと示していた。

 

「……押し込んで良い盤面だったかなって」

 

バシンッともう一度音が響いた。

紅葉が両頬に咲き乱れた。

 

「相手のデッキタイプとハンド的にまだ対抗魔法が残ってるかもしれないでしょ?運が良かっただけよ。反省しなさい」

 

「はい、すいません」

 

その光景を見て私はただ唖然としていた。

しかし唖然としたのは私だけでそれを見ている母を含む組織の人達は全員まるで微笑ましい物を見るような目だった。

例えるならば父が家で買った新しい家電製品をうまく扱えなくて困って四苦八苦しているのを笑って見ているような目だった。そして漠然と感じた、狂っていると。

しかし同時に私にもある感情が芽生えた。この少年に勝ちたいと。

なんとなく必要だったからやっていただけのカードゲーム。その敗北は少しも努力だとか考察だとかもした事が無かった私が勝つ為に努力するには充分な理由であった。

 

「はい、とどめ」

 

「負けた……」

 

一度努力するとあとは簡単だった。私は再戦した時はいとも容易く彼に勝利した。

こんな物か、と思うと同時に私に負けた彼がどうなるか少し心配だった。

どうなったかは言うまでも無かった。それでも敢えて言おう、彼は母に何度も殴られながら説教をされていた。

それを見ている時に私は感じた。

何故たかだかカードゲームでそうまでなるのか、と。

そう思ってからはあらゆる所でそう思うようになった。学校、社会と様々な所でカードゲームが普及しているカード中心の世界。

たかだかこんなゲームに翻弄される人々が愚かに思え、つまらない物に見えた。

だけども施設でのゼン君との勝負だけは面白かった。

私が彼を負かすと今度は彼は強くなって私に勝つ、その繰り返しが他にはないもので楽しかった。

そんな思いが表情にまで出ていたのだろうか?

ある日、ゼン君との勝負の後でツクルさんに私は声をかけられた。

 

「ススムちゃんは、カードゲームは好き?」

 

その顔はとても優しい顔だった。ゼン君には一度だって向けてるのを見た事ない、けれども母や組織の人達にはよく向けられている笑顔だった。

 

「嫌い。つまらないから」

 

「そう、私もそう思ってるの。私だけじゃないわ、ススムちゃんのママもノゾム君のパパもね、みーんなそう思ってるの」

 

それにはどこか納得が行った。

彼ら彼女らは不自然に思うほどカードゲームをしている姿を見せていなかった。

 

「そうなの?」

 

「そうよ。だからね私はこの世界を作り変えるの」

 

世界を作り変える、それは子供の私にもとても無謀な事だと分かった。

 

「そんなことできるの?」

 

「ええ、神様を殺せばね」

 

「神様、殺せるの?」

 

「ええ、殺せるわ」

 

私は正直期待していた。そんな事ができたらさぞかし面白いだろうと。

カードゲームに縛られない世界、それはまるで未知の世界だ。

 

「どうやって?」

 

「ゼンの体に別世界の神様を降ろすの、その為に作ったのよ」

 

その言葉を聞いた時、私は気に入らなかった。

別に手段が気に食わなかった訳じゃない。

ただゼン君を自分の物扱いする彼女が気に入らなかった。と言うか正直目の前でゼン君を殴るのも気に食わなかった。

けれどその最終的な目標に私は強く興味を持った。

だから私は決めた。

 

「すごい!私も協力する!」

 

「わあ!ありがとう!」

 

隙を見てゼン君を私の物にして、私が彼女の代わりにそれを為す、と。

あなたのではなく私の物と見せつけてやる、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生憎、ツクルさんはその1年後に勝手に病死した。

しかし彼女が死んでもゼン君は彼女の目論見通りに神の器になった。

自室とベッドがあるのにアジトのソファで眠る彼の寝顔を眺める。

そこに居るのはただの少年だ。

 

「呑気に眠ってるな」

 

突然声をかけられる。今のゼン君…いやアク君と私の協力者、勝導ユウだ。彼のアク君を見る目はまるで弟を見るかのようだ。

 

「そうですね。可愛い寝顔ですね」

 

そんな相槌を打つ。しかしわざわざ声を掛けてきたのはきっと話したい事があったのだろう。

そうでなければ私と彼の2人きりでの会話など無い。

 

「………計画を実行する時、お前はどうする?目的通り神を討つのか?」

 

「そのつもりですよ、付いてきた部下達もそれを望んでますし」

 

「そうなったら俺はお前を倒す。そうなったらだがな」

 

そうならなければ何もしない、つまり彼はそう言っているのだ。

この転移騒動の原因を作った組織の現トップである私をだ。

 

「甘いですね、DFCの元総帥ともあろう方が」

 

「お前は転移の首謀者じゃないだろ。子供にそこまでの責任を求めてない」

 

「貴方も子供でしょ」

 

「転生前の歳を加えたら遥かに大人さ、お前ら2人より」

 

「そうですか」

 

「そうだ。……だから子供らしく好きにやれ」

 

「言われなくてもそうしてますよ」

 

勝導ユウ、前から好きではないですが私はやはりこの人は嫌いですね、二階堂君の次くらいに。

それに対してアク君は……。

そう思いながら再び彼の寝顔を眺める。

その幼い寝顔は無くしてしまうには惜しい物に思えた。




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