転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
ファイティングライフ 双神創世 収録カード 『神竜皇』フレーバーテキスト
『ユウキ、ユウキ、反応しろ』
「なんだい神様」
空が茜色に染まる時分に自室で虚空へと問いかける。
まるで精神をおかしくしてしまった人のようだが僕は正常だ。
いや本当にそうだろうか?実はとっくにここ最近の出来事で異常をきたして幻覚でも見ているのかもしれない。
『これは幻覚では無いと何度言えば良いんだよ』
そこに居るのは霊体の様な姿をした少年だ。
「そうだね、幻覚であってほしいんだけどね」
『親に対して失礼だぞ』
「僕の親は君じゃ無い」
『広義では俺だ』
この声の主はこの世界の神と自ら名乗っている。
出会ったのは学園長とのファイトの時、僕の体に突然降りて来た。
今はどうやら本来の力の50%も無いらしく、本来の姿で現界できない為僕の体に憑依してるらしい。
『テレビをつけな』
「テレビって………」
寮の部屋に備え付けのテレビをリモコンを操作して付ける。
そこには会長と一緒にいた仮面の男、アクが立っていた。
その正体は僕の友である悪道ゼンだと彼と遭遇したマコトが教えてくれた。
「…………繰り返す!俺は現DFC総帥である。今日この放送を乗っ取ったのは団員、引いては同胞達にどうしても伝えたい事があったからだ」
「なんだい、これ」
『見りゃわかんだろう、犯行声明さ』
そこで叫ぶ友はまるで姿を消した兄の様になっていた。
「同胞達よ、長きに渡る苦しみによく耐えてくれた。遂に我々は帰還できる!明日の正午、FCタワーにて帰還のゲートを開く!繰り返す!明日の正午に帰還のゲートを開く!全ての帰還を望む者はFCタワーに集え!帰還を望む全ての同胞を帰還させる事を約束する!我々にはどんな手を使ってでもそれを成功させる用意がある!繰り返す!………」
『ほう……』
「神様……これって」
『異世界の神の力を使ってだ、奴ら顕現に成功したらしい』
「神の力で…そんな事ができるんですか?」
異世界の神にできるのであればそもそも神様が彼等の帰還をさせていれば死なないで済んだ人が何人も居たのではないだろうか?
普段から疑いを持っていた事について考えながら尋ねる。
『できねえよ、普通は』
返ってきた言葉は否定だった。
「できない…?」
『力がたりねぇよ、明らかに』
「じゃあ彼は嘘をついてるのかい?」
かつての、いや自分にとっては現在進行形で友人の彼は嘘でこんなことをする人間ではない。
『そうかもな、それはそれとしてこいつを止めるぞ』
「どうして?元の世界に彼らが帰るなら神様としては助かるんじゃないかい?」
神託カードなんて物を使って彼等を返そうとしていたのもこの神様だ。
しかも元はと言えばこの世界の人間の身勝手によって起きた騒動だし彼等が帰る事くらいは当然許されるべきだ。
『普通に帰るならな。けどこいつらのやってる事は突貫工事なんだよ、俺に無許可の』
「けどこの世界の人が勝手に呼んだのは神様の責任じゃない?止めるのは可哀想だよ」
『それはそうだがな、こんな突貫工事されたらこの世界がボロボロになるんだよ。一度穴が空いた服はそこからほつれちまうだろ?そもそもが開けられまくった穴直してるせいで俺はこんな状態なんだしよ』
「つまりそんな大規模な帰還を行ったら……」
『この世界が持たねえかもしれねえよ、だから一旦止めるぞ、向こうの神が居るなら2人分の力で他のやりようもあるだろ。神託持ちも集める』
神託持ち、転移者達に帰還というのは名ばかりの死を与える者達。
神様曰く正規のルートで還す以上、時の流れには逆らえず戻る場所に魂が辿り着けず結果として死を与えるらしい。
逆に言えば来てすぐの人間ならば入るべき本来の体が残っていれば復帰出来るだとか。
ならば彼等が現れた時にやればよかったものを、それができなかった理由もあるらしい。
「やめてくれ、これ以上彼等を死なせたく無い」
『俺にとってはお前らとこの世界の方が大切だ』
「じゃあせめて神罰は使わせないでくれ、僕が必ずゼンを止める」
『もしヤバくなったら使わせるからな』
そんな独り言としか周りからは見えない会話をしていたため、ドアを叩く音に大きく驚いてしまった。
扉を開くとそこにはマコト、ケン、ミコト、シラユリ。そして先日マコトと喧嘩して以来数日部屋に閉じこもっていた筈のリンが居た。
「みんな………」
「見たでしょ?当然行くわよね?」
「俺は悪道の奴が何考えてんのかよくわからないすけど、取り敢えず行くべきだと思うんすよ」
「ユウキ殿と共に、私は何処へでも行きますよ」
「あの馬鹿殴りに行くわよ」
「私も行く!どうしても会わなきゃいけないから!」
「皆……うん、行こう!」
頼もしい友人達を見てより一層決意を強める、必ず彼の元へと行くと。
「俺達も一緒に行くぜ」
「僕も会いたい人が居てね」
「先輩方………」
そこに立っていたのは三月先輩と二ノ宮先輩だった。彼等もテレビを見てたのだろうか?
しかしこの2人が味方なのはこれ以上になく頼もしい。
戦力は充分、後はFCタワーに向かうのみだ。
「行こう、皆!」
「…………せる用意がある!繰り返」
プツリ、とその病室のテレビは黒い画面へと戻された。
ベッドの上の人物の手にあるリモコンから、それを誰がしたかは火を見るより明らかだ。
「行くか…………」
その男、一色ソメルも未だに癒えない体を引きずりタワーへと向かった。
長い夜が始まる。