転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
ファイティングライフ プロモーションカード 『彷徨いの先の龍』フレーバーテキスト
『U18プロリーグ、昨日の試合で捻咲選手が二ノ宮選手に勝利し首位に躍り出ました。……前回優勝した三月選手も………………間も無く夏の全国高校FL大会も…………」
弁当屋の備え付けのテレビが今日のニュースを読み上げている。
画面内には同じくらいの歳の黒髪ロングのザ・清楚とでも言うべきな少女が映っている。どうやら彼女が捻咲選手らしい。
この世界の生活はカードゲームと共にある。
賭け事決まり事会社の取引、至る所でカードゲームの技術が必要だ。
強い奴はプロだったり賞金稼ぎ、会社の重要な取引の時の代表として重宝される。
「オジさん、この弁当で」
いつも通り下宿させて貰っている家の家族が経営している店で今日の昼飯を買う。
いつでも財政難の俺は一番安い弁当を選ぶ。
「毎度……ってお前またその弁当かよ、たまには別のメニュー食って欲しいって娘が嘆いてたぞ」
このガタイの良い弁当屋の店主は俺を下宿させてくれている大家さんだ。
娘と2人暮らしであり、昔はプロファイターだったらしい。
「貧乏学生は財布が寂しいんで…」
「何度も言ってるが別に金払わなくて良いんだぞ」
オジさんは俺にそう言ってはいるが衣食住を普段から用意して貰っている以上ここだけは払わせて欲しいと俺自身が頼んだのである。
お金はバイト代から捻出している。
「気持ちの問題だよ、じゃ行ってくるよ」
「おう、気をつけてなー」
なんでも一昔前はDFCって組織が暴れてカードゲーム中心の社会から脱却しようとしたらしいが、ある日を境に突然消えたらしい。
噂では天罰が降ったなんて声もあったレベルで急に消えたとか。
「「レディー、ファイト!!」」
潮風薫る通学路を走っていると、至る所でさまざまな声色での宣言を耳にする。
そんな世界で高校生として生きている俺も当然カードゲームを嗜んでいる。
俺はどうやらデッキを大切にしていたようで、デッキを握りしめながら倒れていたのを下宿先のオジさんに拾われたらしい。
らしい、と言うのは俺がそれを覚えていないからだ。
俺の記憶はオジさんの家で目覚める所から始まった。
「おはよう」
学校に着きクラスのドアを開き挨拶をする。
学年一クラスな上そのクラスの人数もそう多くない。
「おはよー!アク君!」
「おうアクおはよう!」
仲の良い2人が俺に対して挨拶を返してくれた。
アク、それが俺の名前らしい。
これもらしい、と言うのは無意識に俺が名前を聞かれた時にそう言ったからとオジさんは言っていた。
オジさんは俺に住む場所を用意し、更に今この地元の高校に通わせてくれている。
本当に感謝してもしきれない。
「おう、おはよう」
今日もまた普通の1日が始まる。
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「三月君、さようなら。また会えたら会いましょう」
目の前に倒れている長い付き合いの友人に別れを告げタワーを登る。
「ゲートが開いたぞ!急げ!」
「やった!ついに帰れるんだ!」
ゲートが開いてDFCの団員達が一斉に白い光の中に飛び込んで行く。
その光景を眺めながら私はその光の中心を目指す。
「成功しちゃいましたか」
思わずそうこぼす、ゲートを開くのに成功したという事は彼は死んでしまうという事である。
その彼の顔をなんと無しに思い浮かべる。
結局彼とは再会してから対戦していない事を思い出して一度くらいは対戦したかったな、なんて思いながらタワーを登って行く。
「おや?皆さんお揃いですね」
「………会長」
頂上に辿り着くとボロボロになった勝導君が居た。
こちらを見つけるや否私を睨み付けており、我ながら嫌われ者だなと肩を竦める。
彼の他には何も言わずに険しい顔をしている雅マコトさんと彼女に抱えられ気絶している水瀬リンさん、同じく険しいが明らかにイライラしている捻咲シラユリさん、相変わらずボロボロな一色ソメル君。
「綺麗な光ですね、一色君」
ゲートが開きあたり一面を包んでいる光を見ながら一色君に共感を求める。
「なんで………俺に言うんすか?」
「君が消さなければ彼等みたいに帰れた人がもっといたかもしれない、そう思っただけです」
「っ………」
一色君の顔は更に曇ってしまいました。
それにしても本当に哀れな子ですね、嫌味を言ったのも申し訳ないと思ってしまいます。
なんせ神に選ばれやらされたのは人殺し。
最良の方法としてそれに手を染めたのに結果はこれである。
この世界視点だと今偶然滅んでないだけなのを考えると強ち神様のやり方は悪いとは言えませんがね。
「まあ良いです。さて、勝導君勝負しましょうか」
「ゼンの目的は果たされました。これ以上何をするんですか?」
「そこに居る神を殺そうかなと」
私には見えない、しかし感覚で感じるソレを指差して告げる。
「……………」
勝導君が何も言わないまま、少し沈黙が出来た。
「……見えてはいないんですね」
「そうですね、見えていません。神様が何か話してましたか?」
「ええ。俺を殺して何をしたいんだ、と」
「世界を作り替えたいんですよね。カードが中心じゃない世界に」
「会長は転移者じゃ無いですよね?」
「そうですね、しかしそれを望んでいる人はこの世界にもいます。そして私もその世界を見てみたい。ゼン君のおかげで神様はここに降りてきてくれてますからね」
「………ゼンはその目的を知っていたんですか?」
「ええ、勿論。けれど多分算段に入れてたんじゃないですか?誰かが必ず私を止めると」
誰か、とは濁したが恐らくゼン君は勝導ユウをストッパーと考えていたのだろう。
彼はかなり勝導ユウを信用していた。
「…………そうですか。良いですよ、勝負しましょう」
彼はすんなりと勝負を受け入れた。
私が現れた時から既にこうなる事は分かっていたに違いない。
「ありがとうございます、始めましょうか」
「「レディー、ファイト」」
「とどめだ、『神竜王』」
神の一撃により私はダメージを受け、その場に倒れてしまった。
私は負けた、完敗だったと言うべきだろうか?
兎にも角にも私は負け、神殺しは失敗した。
「会長、終わりです。貴方の野望はここで」
「ええ、そうみたいですね」
幼き頃、悪道ツクルと出会ってから長年かけて行った計画は失敗だ。
学園長が居なくなってからも私に付いてきた組織の人間達には申し訳ない限りである。
「……………」
勝導君がどこか困惑している顔で、仰向けで倒れる私を見つめていた。
「どうかしましたか?」
「………どうして笑っているんですか?会長」
「さあ、なんででしょうね」
漸く長い長い計画が終わり、肩の荷が降りたのかもしれないですね。なんて口に出す程勝導君とは親しくない。もし彼がこの場に居たのであれば案外口に出していたかもしれませんね。
「もう満足しただろ、皇道」
「……兄さん」
狙い澄ましたかの様なタイミングで背後から現れたのは勝導ユウだった。
勝導君がここにいる時点で彼も同じく負けた側なのに格好を付けてるのが少し癪に触りますね。
「……そうですね。そう言う貴方はもう覚悟できてるんですか?」
「そうだな……既に出来てるさ。…………ユウキ!」
ゼン君も甘かったですね、彼の計画には穴がありました。
その一つが勝導ユウは私を止めると考えており、私と彼が手を組むという可能性を一切考慮しなかった事だ。
「今度こそ本当のお別れだ。元気でな!無茶はしても死ぬなよ!」
「待って、兄さん……何を!」
「俺はDFC初代総帥だ。その責任を果たしに行くんだ」
そう言いながら光の中心へと彼は向かう。
「責任って……それに今の言い方………兄さんまで居なくなるつもりなの!?待ってよ!……待って兄さん!」
勝導君が取り乱す。
もう既に限界だったのがいよいよ決壊してしまったようだ。
彼も一色君同様可哀想ですね。
「待ちなさい、アンタも一緒に行こうとしてるのはなんでなの」
捻咲さんが私も彼と共に光の中に向かっているのに気付いたようだ。
「ちょっとカードを返してもらいに行こうと思いましてね。これからも頑張ってくださいね、後輩諸君」
「何言ってんの?どういう意味よ、待ちなさい!」
勝導ユウは光の中心へと迷わず進んで行く、そして私もそれに続く。
悪道ゼンがウツワである副産物としてエネルギーを生み出せるのであれば、それは同じ目的の試作として作られた勝導ユウでもある程度は可能なのが道理だ。
そしてそこまで繋げる道を作るのが私だ。
「…………り未練があるんだな、……」
僅かに彼の声が聞こえた気がした。
ここで生きる意思があるのなら、叶えてあげましょう。
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俺の記憶が始まった時、誰か二人に背中を押された気がした。
しかしそれが誰か分からないし、そもそも俺が誰なのかも勿論分からない。
それらが気になって俺は何度も考え込んでしまう。
「アク、どうしたんだよ早く行こうぜ」
「アク君っていつもボーッとしてるよね」
下校中だったのを2人の声で思い出す。
このほぼ小中高がエスカレーターの田舎で高校から一緒になった俺とこいつらは仲良くしてくれてる。
本当に大切な友人達だ。
「うるさい。行こうぜ」
そう言いながら駆け出すと、向かい側から来た人にドンッ‼︎とぶつかってしまい、互いに尻餅をついてしまった。
更に俺はその拍子にカードも1枚落としてしまった。
「すいません、よそ見してて……」
「ご、ごめんなさい……。私こそ考え事してて、あ!カード落としましたよ………あれ、これって………」
「何やってんだよアク」
「もー何やってるの?ごめんなさいウチの馬鹿が。大丈夫、立てる?」
ぶつかってしまったのは同年代くらいの茶髪の少女だった。制服はウチのではない……ニュースで今朝見たプロの捻咲選手と同じ制服だからあの名門のFL学園高等部の生徒だろうか?
「?どうかした?」
少女は俺のカードを見て驚いており、そのままこちらを見ると固まってしまった。
そして俺の反応を見ると急に涙をこぼし出した。
「………嘘」
彼女の目からは大粒の涙が溢れている。
当たりどころが悪かったのだろうか?こういう時は近くの接骨院に連れてった方がいいのか?
「ど、どこかぶつけたか?大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫だから……。」
そう言いながら少女は自らの目を拭った後こちらにカードを差し出す。
「はい、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
差し出されたカード、『彷徨いの先の龍』を受け取る。
目覚めた時から俺のデッキに入っていた、俺のエースだ。
「……ねえ…どこかで会った事、無いかな?」
そう言う少女の整った顔をまじまじと見るが記憶にない。
いやそもそも俺に記憶が無かった。向こうが知ってそうって事は俺を誰か知っているのだろうか?
ただ彼女の問いに答えるとなると………
「ごめん。……分からない」
「そっか………」
少女はとても悲しそうな顔をした。
しかしすぐにその顔は繕われて笑顔を見せた。
「良かったら、一戦どうかな?」
彼女はそう言いながら自分のデッキを取り出した。そう、この世界はそういう世界だ。人を知るにもカードでの対話が一番だ。
「喜んで」
「「レディー、ファイト!!」」
最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
皆さんからの感想、ここすき、評価どれもが本当に励みになっており、おかげで完結まで書くことができました。
また大変誤字脱字が多く誤字報告にも大変助けられてばかりでした。
改めて、本当にありがとうございました。
後日談も少し投稿予定ですので、よろしければそちらでもお付き合いいただけたらと思います。