転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
ファイティングライフ 黒龍執激 収録カード
『生贄村の農夫』フレーバーテキスト
思えばこの世界に俺は異様に適応できている。
よくわからないカードゲーム中心の世界に転生して12年。前世の経験と母の英才教育のおかげで少なくとも今のところは生きていくのに困らない実力を持っている。
そんなある程度好きにやれる環境のせいなのか、前世で考えられない程俺の素行は悪くなっている。ぶっきらぼうで好戦的、少なくとも前世の俺では考えられない性格だ。
前世の俺はもっと社交的で普通に友達だって居た気がする。気がするというのは記憶が曖昧だからだ。
いや、それ以外にも俺は何かを見落としている気がするんだ。俺の今の状況に対する漠然とした既視感、これはDFCや勝導にも感じている。しかしその既視感が何かを考える度に「まあいいか」と思ってしまう。
まるで俺が俺じゃないような感覚だが、考えて動いているのは間違いなく俺だ。
俺のはずなんだ…。
「終わりだ」
「ぐああああああああああ」
最近無限にいるんじゃないかと思うレベルでDFCが絡んで来る。
こいつらの詳細を知っている勝導とは最近絶妙なタイミングのズレで会えない。だからよく分からない変な連中をよく分からない変な連中として処理する毎日に少し苛立ちを覚える。
「…我々に逆らったこと、いずれ後悔するぞ…」
今倒した奴がなんかほざいてる。こんな捨て台詞ばっか吐いて似たような連中をポンポン寄越してくる事に対しては正直後悔したいかもしれない。
対戦相手が自動的に供給されるのは楽なんだがこいつらとの対戦は痛い。
リアルダメージが入るせいで疲れるんだよ。
リアルダメージがあるからこそのヒリツキはたまにやる程度なら良いんだが。
あ、こいつらが何かを知る簡単な方法思いついたわ。
「なあ、お前らのアジトに案内しろよ」
こいつらに案内させれば良いや。
何でこんな簡単な事に気が付かなかったんだ?
普通に最初から倒した奴から聞き出せば良かったのに…。
思えば老紳士は消えたがあれ以降の刺客は別に消えてない。
思考に霧がかかってたとしか思えないくらい不自然に思い付かなかったなと思考がやけに巡る。
「な、なんだと!?」
「うざいんだよ毎日毎日。送り主に文句言ってやる」
「っち、まあ良いだろう。貴様などアジトの強豪の前では雑魚だ」
「良いから案内しろよ雑魚に負けたオッサン」
「ガキが舐めやがって…こっちだ」
ちゃんと案内してくれるのに驚きつつもついて行く。
付いていきながらなんとなしに今世で生まれ育ったこの街を眺める。
この街は本当に変な建造物が多い。
やたらと尖った建物だったり明らかにやばいだろってボロボロな家、カードショップと言うには無理があるくらい小さい民家みてえなカードショップや逆にデパートみたいにでけえカードショップ。
そして俺たちはそんな街の中心へと向かっているようだ。
何となく行き先の察しはついた。
この街の中心、FCタワーだ。
この街の象徴とされるそのタワーに俺たちは向かっている。
街の象徴をアジトに出来るなんて一体どんだけDFCってのはでかいんだよ。
「なあオッサン」
「なんだよ…」
「DFCってなんだよ」
「なんだよ知らなかったのかよ…」
「悪いかよ」
「ったく…しょうがねえなぁ教えてやるよ、DFCってのはな、ファイティングライフを使ってある理念を掲げてる組織なんだよ」
「へえ…どんな理念なんだよ」
「おっと…到着だ、今からチームリーダーにアポイント取ってやるよ。この話はおめーが負けた時に話してやるよ」
話してる内に着いてしまったようだ。
もう少しで組織が何なのか分かりそうだったんだが……そう思いつつ前を見ると、最近見慣れて来た姿がそこにあった。
「…勝導か」
勝導、水瀬、赤い女、後1人学校で見た事ある奴がそこに居た。
赤い女が膝をついていて、水瀬ともう1人も座り込んでいる。
更に周りには俺のところに刺客に来たようなDFCの構成員らしき奴らも転がっていた。
そんな風に殆どの人間が膝をついている中、威圧感を放つ男が勝導達の前に佇んでいた。
長い髪をした、10人に聞いたら10人がイケメンと答えると思えるほどのイケメンだ。
なんか肩に棘付けているけど。
「な、あ、あれは副総帥様!?何故ここまで降りてきて……」
「あれが副総帥?」
棘がやたらと似合う男はどうやらDFCの副総帥らしい。
取り敢えず何か話してるようだから2人の会話にオッサンと2人で耳を傾ける。
「小娘にしてはよくやったよ、だがまだ弱い。
これで分かっただろ?私に勝てるとしたら君だけだ、勝導ユウキ」
「どうやら、そうみたいだね」
「君を総帥の元には行かせない。ここで終わらせる」
「…やるしか無いのか」
「面白そうじゃねぇか、俺も混ぜろよ」
「な、ゼン君!?」
「悪道君!」「あ、悪道じゃねーか、なんでここに」「…悪道」
勝導側から驚きの声を浴びる。
気が付いたら体が動いていた。まるで何かに導かれるように、この場で前に出ろと何かに突き動かされた、そんな気がした。
「これは私と彼らの問題だ。君は関係ない筈だが?」
「うざいんだよ、毎日毎日変な奴送りつけやがってよ」
「ん?ああ君だったのか、やたらと私の部下を潰している野良犬は」
「行けよ勝導」
「ゼン君、なんで…」
「俺はこいつらがウザいだけだ」
「…ありがとう。気を付けて、彼は強いよ」
「どうせ俺が勝つ」
「僕は上に行くよ。マコト達を頼む」
「とっとと行け」
「…ああ」
勝導は俺たちに背を向け塔の中に走っていった。
「仕方ない、君を倒して私は勝導ユウキの後を追う…展開!」
瞬間例のフィールドに世界が切り替わる。
ここ最近は毎日見る風景だ。
「まるで俺に勝てる前提じゃないか」
「私は勝つさ」
「いいや勝つのは俺だ」
「「レディー、ファイト!」
違和感なんてどうでもいい。
取り敢えず対戦を楽しもうじゃないか。
副総帥の二人称を君に統一しました