クトゥルフ世界に飛ばされる一般PL君 作:冷たくて美味しい紅茶
「ーーーわけーーーーーーーきてーーーーーーー」
誰かに呼ばれる声が聞こえて意識が覚醒する。今は冬休みで両親も仕事に行っているため起こす人は誰もいないはずだ。
「ーーしわけーーませんーおきてーーーーんか?」
しかし、その声はいつまでたっても消えず思考がはっきりしていくほどにその声もはっきりと聞こえるようになる。
「知らない天井だ」
声に反応するように目を開き、視界に入った光景を見て思わず言葉が漏れる。目覚めた場所は自分の部屋ではなく床も壁も天井も真っ白な空間だった。すぐ近くには100人中99人くらいが美青年だと答えそうなくらいの青年がいる。
「俺のことを起こそうとしてたのは君?」
状況を整理するためにも青年に質問する。この空間には俺ら二人以外の人の姿はなく、おそらくは彼が呼んでいたのだろう。
「そうですね。私が起こそうと声をかけました。此処がどこかわからなかったので」
そう言いながらキョロキョロと辺りを見渡す青年。全然関係ないがその見た目で一人称私は違和感が……まあ、いいか。それはそうとまずは自己紹介をしないとな……*1
「俺は
「私は武本優です。䋆井さんはどうしてこの場所に来たのか覚えていますか?」
彼は俺の問いかけに答えながら逆に質問をしてくる。
「俺は自分の家で気づいたら此処に」
記憶にある限り家で寝てたはずだ、流石に寝ている間に誘拐とかはないだろう。嘘をつく理由もないのでそのまま答えると優は少し考え込むような素振りを見せ、ポツリと呟く。
「なるほど……ということは䋆井さんも私と同じ状況ということか……」
「ということは君も俺と同じ感じかな?」
「!そうですね。私も䋆井さんと同じで家にいて眠りについたら此処に」
独り言が聞こえていないと思っていたのか少し驚いていたがすぐに平静を保つ。そんなに驚かなくてもいいのに……
「で、この場所はどこだ?」
一度会話を区切り辺りを見渡す。この空間は壁も床も天井も真っ白だが一つだけ灰色の扉がある。また、部屋の中心には机が置いてあり何かが置かれていて、部屋の隅にはベッドが置かれている。
「なんかcocみたいな状況だな」
いつも通りの日常を送っていたのに寝て起きたら急に見知らぬ真っ白な空間に……うん、完全にクローズドシナリオの導入だな。
「シーオーシー? 䋆井さんはこの状況を知っているんですか?」
俺の独り言が聞こえていたのか優が質問をしてくる。
「実際に経験したことがあるわけじゃないけど俺のやってたゲームのストーリーに展開が似てるなって」
cocについて説明してもよかったがマイナーなものだし説明も難しいので詳しい部分は無くして簡単に説明する。
「ゲームのストーリー……」
「とはいっても気がついたら見知らぬ真っ白な空間にいるってところだけだけどな」
少なくとも俺が知っているシナリオにはこんなのはなかった……はずだ。まあ、ネットには無数のシナリオがあるし探せばほぼ同じようなシナリオがあるかもしれないが。
「俺はこの服は知らないし持ち物も特に何もないんだけど君の方はどう?」
とりあえずは部屋を調べ始めるよりも先に自分の持ち物を調べる。持ち物は寝る前には特に何も持っていなかったはずだから問題はないのだが服装が見たことがない真っ白なローブのようなものに変わっている。*2
「申し訳ないですが私も䋆井さんと同じです」
優は本当に申し訳ないといった様子で様子で言ってくる。そこで、あんまり関係はないのだが今の反応や優の丁寧すぎる口調が段々とむず痒く感じてくる。
「それなら俺と同じ状況ってだけだし気にすんなって。それと、俺のことは凪都って呼んでくれ。それに、敬語もいらない。多分優は俺と同年代くらいだろ? 同年代の奴にそんな堅苦しい敬語されたらむず痒いからさ」
断りにくい言い方になってしまったので、最後に「嫌なら別にいいけどな」と付け加える。
「わかったよ凪都」
優は俺の言葉を受け入れて素直に敬語を外してくれる。
「ありがと、じゃあ俺は机調べるからそっちはベッドをお願い」
俺がそう言いながら机へ向かうと優が首を傾げる。そして、扉に向かって指をさす。
「ここから出るなら扉じゃないのか?」
「いや、この部屋からも情報が出るかもしれないし調べてから行こう」
もしかしたら大事なメモとか落ちてるかもしれないしな。*3
机に近づいてみると上に置かれていたのが箱だと言うことがわかる。箱を手に取り蓋を開ける。すると中にはいろんな種類の眼鏡が入っていた。
「なんで眼鏡? *4」
箱の底に何か入っているのかもしれないのでとりあえず箱をひっくり返してみる。すると箱の大きさとは釣り合わない量の眼鏡が落ちていく。その眼鏡の滝は止まるところを知らず無限と言える程落ち続ける。
「あっこれやばいやつだ」
これ以上は流石に収集つかなくなりそうなので箱を元の場所に戻す。すると地面に散らばった眼鏡が光の粒子となって消滅した。
「はえ~不思議なこともあるもんだな」
深く考えたら負けな気がするので思考を放棄する。
「ん? なんだこれ」
粒子となって消えた眼鏡たちの下から一枚のメモを見つける。そのメモに書かれた言語は読むことができす全く見覚えのない言語のためどこ系の国か予想することさえできない。
「一応優にも聞いてみるか」
もしかしたらこの文字に見覚えがあるかもしれないし。そう思い、ベッドを調べているであろう優の方へと向く。
「あれ?」
しかし、視界に優の姿が見えない。ベッドの奥でも調べているのかと近づいてみると優はベッドの中ですやすやと眠っていた。
「何やってんだ? おーいおき」
起こそうと思って近づくがすぐにその足を止まる。ベッドから目が離せない、どれだけ目を逸らそうとしても眼球が縫い付けられたかのように視界の中心に『ソレ』は存在し続ける。
ソレは真っ白でシーツにはシワひとつ見当たらない。かけられた布団はこの世のものとは思えないほどの柔らかそうな素材でできておりマットレスも今まで見たことがないくらい分厚いものだ。鼻腔をくすぐるのは柔軟剤の香りだろうか? 優しい花のような香りでこの距離でもその匂いがわかるのに不思議と不快感はなくむしろ安心感を覚えるほどだ。
このベッドで寝られればどれだけ素晴らしいか
その考えが思考を支配して何も考えられなくなる。
「あっ」
頭の中に危険を訴える警報がなっているがそれに反して一歩また一歩と勝手に足がベッドに近づく。それに伴い段々と瞼が重くなり睡魔が押し寄せる。このままだと取り返しのつかないことになってしまうことは想像に難くない。
別にそれでいいじゃないか
今が幸せならなんの問題もない。今この快楽を知れるのであれば気にしなくていい。
耳元でそんな甘い囁きが聞こえる。その囁きに従うようについにはベッドにもたれかかってしまう。肌に触れるシーツはひんやりと冷たくしなやかでまるで絹を触っているかのような感覚になる。そのままベッドへと寝転がるとゆっくりと全身から力が抜けていき、抑えきれなくなった睡魔を受け入れ静かに眠りにつく。
ことはなかった
俺は振り上げた手を容赦なく
「ふぅ~危うく本当に眠るとこだった」
頭にたたきつけたおかげで刺激が発生し、その刺激に意識を集中させ
「やっぱ意志の力が一番よな」
何度か壁に頭を叩きつけつつベッドの誘惑を完全に振り払う。どう考えても先程までの思考は異常だった。どれだけ寝心地がよさそうなベッドであろうとも見知らぬ場所で無防備な姿をさらすのは自殺行為だ。
「それにしても別に痛みを感じなかったな」
先程からぶつけている頭をペタペタと触ってみるが全く痛みを感じない。しかし、触っている感覚はあるという少々奇妙な感じだ。
「ということはこの空間は夢か」
cocのシナリオ風な場所のためワンチャンその可能性はあると思っていたがやはりそうだったみたいだ。それならばと夢見を使って何かを出そうと思ったが何かが出てくる気配は無い。この空間はドリームランドというわけではないらしい。*5
「まあそれが分かったところで事態が改善するわけないしな*6」
ここが本当にcoc的な世界であるならば夢であろうとも死んだら現実に帰れない可能性はあるし。
「とりあえずは優を起こすか」
あんまり幸せそうに眠っているので少々罪悪感がわくが放置していくよりは起こしたほうがいいだろう。
「起きろー」
優に近づいて顔をペシペシと叩く。それでもなかなか起きなかったが根気よく続けていくと目を覚ます。
「あれ……ここは」
目をゴシゴシとこすりながら優は体を起こす。まだ寝ぼけているのか状況が把握できてないらしい。この短時間でここまでぐっすり眠るとかこのベッドやっぱりやばいものだな。
「ぐっすり眠っていたとこ悪いけどそろそろ進むぞ」
俺の言葉に目が覚めたのかハッとしたような表情をした後頭を下げる。
「すまない。警戒はしていたんだが……」
申し訳なさそうにするがあのベッドの力は凄まじいものだ。
「いや、あのベッドの魔の手から逃れるのは不可能に等しいし気にすんなよ」
フォロー入れたが少し落ち込んでいる様子だ。話を変えるがてら先ほどのメモを見せる。
「この言語って読めるか?」
優はメモを受け取ってまじまじと見るがすぐに首を横に振る。
「どこの言語か見当もつかない。そもそも右から読めばいいのか左から読めばいいのか……」
やっぱわからないか……とりあえず今これについて考えても埒が開かないので放置することにしよう。メモを返してもらってからポケットにしまう。
「どうかしたか?」
これ以上この部屋を調べても何も出なさそうだったので扉に行こうとしたが急に優がベッドのシーツを剥がし始める。
「いや、起きてから背中に刺さる感覚があって……あっ」
シーツを剥がすとそこには黒色の鍵が置いてあった。手のひらサイズの小さなものだ。
「そんなところに鍵があったのか……とりあえずナイス」
自分だったらいつまで経っても見つけられなかっただろう。優が鍵をしまったのを確認してから今度こそ扉へと向かう。
「この扉だけおかしいよな」
この部屋には先ほどの鍵を除いてほぼ全てのものが白色なのだがこの扉は灰色だ。かといって周囲に何かあるわけでもなく特に鍵もかかってなさそうだ。
「開けるか」
十分に警戒しつつ扉を開ける。扉の先は廊下のようで白い扉が手前の両側に一つづつ。奥の右側には真っ暗な扉がある。
「鍵的にはあそこいかなきゃいけないよな」
鍵の色と扉の色が全く同じなのはおそらく偶然ではないだろう。行くべきなのだろうが黒という不穏な色なので一応優の反応を仰ぐ。
「確かに他の扉に比べて不気味ではあるが、この鍵で行けるのはあの扉だろうから行くしかないんじゃないか?」
後回しにしたいがどうせそのうち行くことになるのだろうからそれならさっさと行ってしまった方が楽か。
「よし、行くか」
廊下を進んでいき覚悟を決めて黒い扉に手をかける。てっきり扉自体に鍵がかかっているのかと思っていたのだがそれはなさそうだ。
「えい」
手に力を入れてゆっくりと扉を開ける。扉の先は最初の部屋とは打って変わって床も壁も天井も真っ暗な部屋だった。どこまでも続く漆黒は足を踏み出せばそのまま飲み込まれてしまうのではないかと思うほどだ。
「これは……」
しかし、その闇よりも目を引くものがある。目の前に広がる巨大な檻だ。部屋を埋め尽くすほどの大きさを持ったソレはこの檻に閉じ込めているものの危険さを表しているようだった。
書くことがないので世界観でも
クトゥルフ神話TRPGの舞台のような世界。
ルルブとかは存在しないがネクロノミコンやエイボンの書などは存在自体はしてる。もちろん神格や神話生物もいる。神話生物が悪さをしているためやたら現実よりもやたら行方不明者が多い。なので探偵の仕事が多いよ!私立探偵とかもいっぱいいる。主人公たちもそのうち事件などに巻き込まれる(予定)