クトゥルフ世界に飛ばされる一般PL君   作:冷たくて美味しい紅茶

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今週もちゃんと投稿できたな……ヨシ!


フラグって建てるものじゃないな

 沈んでいた意識が浮上していく……酷く全身が痛い。何が起こった? 定まらない思考を巡らせながら自身の過去を振り返る。明斗の掛け声が何かに遮られたと思ったら身体に衝撃が走って……それ以降の記憶がない。今は身体が横にされているようでひとまずは周囲の状況を確認しよう。

 

「あっ起きた」

 

 上体を起こせば柊夜すぐ近くにいるのがわかった。この空間は休憩室のような場所で自分の他にもベッドに横たわっている人が何人もいるのが見える。薬品の匂いが鼻腔をくすぐりここが保健室であると教えてくれる。今は先生は不在のようでベッドで眠る人の近くにその人の友人と思われる人がちらほらといる程度だ。

 

「いや〜まさかこんなに早く保健棟を使うことになるとはね。それにしても試合開始と同時に弾け飛ぶとは思ってなかったな」

 

 あの後の状況を柊夜に教えてもらうと、爆発は青組の仕業だったようで、爆発と同時に鋼我率いる青組の攻勢陣が緑組へと突貫。真白率いる緑組が応戦する形となったが爆発の影響で緑組の指揮統制は崩壊、鋼我たちが一方的に蹂躙する形になったらしい。しかし、背後から現れた生徒の放った飛び膝蹴りによって鋼我は撃沈、リーダーを失った青組も崩壊し混戦状態に。だが、鋼我を倒したはいいものの序盤のアドバンテージを覆すことができずに結果として青組が勝利したようだ。

 

「あれは凄かったよ。みんなの鬼気迫る表情や命乞いをする姿は本物の戦場と言っても過言ではないほどの臨場感があったよ」

 

 2年生の綱引きは生物研究部部長のばら撒いた化け物によって赤組の勝利。3年生のリレーは途中で美術部部長が他の組のバトンを強奪し破壊、その際に間違えて自身のバトンも握り潰してしまい唯一避けた緑組が勝利したらしい。

 

 全色1度ずつの勝利だったので決勝は団長同士の争いとなり、そこで行われた神聖なジャンケンの結果今回の体育祭の勝者は赤組になったようだ。良かったな、明斗。

 

「俺体育祭終了までずっと寝てたってことか」

 

 治療が良かったのか軽く身体が動かせるようになってきたのでベッドからおりる。部屋にかけられた時計を見れば既にお昼は過ぎてしまっていた。

 

「まあ、でも一番の楽しみはこの後だからそれには参加できるでしょ」

 

 そういえば見せてもらったゴミみたいなプログラムにもお昼の後にみんなのお楽しみって書かれてたな。

 

「いったいどんなことをやるんだ?」

 

「それはその時になってのお楽しみ。まあ、すぐにわかるよ」

 

 柊夜が校庭へと歩いていくので俺も着いていく。しかし、廊下に出てすぐとある人と相対する。

 

「……」

 

 150cm程の彼女は一見すればこの学校に紛れ込んでしまった中学生に見えなくもない。膝ほどまで伸びた白い髪はもふもふしており可愛らしい存在に見える。しかし、その達観した姿と雰囲気から彼女が只者ではないということがわかる。

 

(だが、それ以上に……)

 

 圧倒的な力の差

 

 武力については全くわからない俺だがそれでも彼女には手も足も出ないと言うことがわかってしまう。目の前に彼女が立っているだけで死神の鎌を首元に置かれているのではないかと錯覚してしまう程だ。本能的な恐怖が身体を支配し今にも逃げ出してしまいたい衝動に駆られる。だが、言ってしまえばそれだけなのですぐに冷静になることができる。要はこの前襲われた時よりはマシということだ。

 

「いいわね貴方、もし良かったら風紀委員に来ない?」

 

 数秒程見つめ合ったあと彼女はそう口を開く。余りにも突拍子もないことだったので驚いたが何かを答えるよりも先に柊夜が反応する。

 

「凪都は僕と同じオカルト研究同好会だから君の委員会には入らないよ〜だ」

 

「あらそれは残念、貴方だって風紀委員会に来てくれていいのよ?」

 

「僕は自由にやってる方が好きなんだ」

 

「そうだったかしら?」

 

「わかってて言ってるくせに……それで何の用、比奈?」

 

 比奈と呼ばれた彼女はふっと微笑むと空間を包んでいた圧迫感が消える。どうやら柊夜と彼女は知り合いのようだ。しかも、雰囲気的にかなり長い付き合いに思える。

 

「私はただ風紀委員長として体育祭で怪我をしてしまった生徒の様子を見に来ただけ、まあ純粋な興味はあったけど」

 

 彼女は柊夜に向けていた視線をこちらへと向ける。特に圧は感じないのだが背筋が伸びる。

 

「貴方がどんな人を選んだのか」

 

 俺と柊夜を何度か交互に見た後彼女は保健室へと歩き始める。

 

「怪我人の様子を見てくる。今は一年生のレクリエーションをやってるから参加はできなくても見てくるといいわ」

 

「そうすることにするよ」

 

「あっそうそう、兄さんから伝言だけど貴方達が通報した家にはもう入れるみたいだから」

 

 彼女が見えなくなる直前、くるりと振り返りそう言い残していった。

 

「柊夜、あの人は?」

 

 予想外の邂逅を果たした後、再び校庭に向かって歩き始める。

 

「彼女は狩咲(かりさき)比奈(ひな)、この学校で最強の生徒だよ。一応僕の幼馴染でもある」

 

 幼馴染だったからあの距離感だったのか、軽く言い合ってはいたが仲は良さそうだった。風紀委員長ということは3年生なのだろう。最強の生徒というのはよくわからないがあの圧を放てるぐらいだし最強でもおかしくはないか。

 

「で、比奈のお兄さんだけど前に行った家で会った警察官いたじゃん? あの人なんだよね」

 

「はぇ〜」

 

 あの誠実そうだった人だろうか。

 

「ということはあの家がもう使えるってことか」

 

 あの家埃だらけだったから掃除すんの面倒だな……まあすぐに行かなきゃいけないわけでもないしそのうちでいっか。

 

 校庭に出る前、お腹すいたのでそっと南棟の教室に寄りつつ弁当を回収し……

 

ドガーン

 

 校庭に出た瞬間に轟音が鳴り響いたことでそれを落としかける。校庭は死屍累々と言えるほどの地獄絵図だった。夥しい数の生徒の残骸が地面には横たわっておりその中心では大破したロボットと息を切らして立っている鋼我と鎖を足に巻きつけられ振り回されている真白の姿があった。

 

「何が起こってるんだ……」

 

 よく見れば今朝知り合ったクラスメイト達も倒れていることに気がつく。これが彼女の言っていたレクリエーションなのだろうか? ただのレイドバトルにしか見えないんだが……いやでもこの学校ならレイドバトルがレクリエーションになることもあるか。

 

 とにかくアレには関わりたくないのでそっと自分の組の場所に戻る。レクリエーションは強制参加ではないようで自分の席で校庭中央の死屍累々を眺めていたり、友達と話をしている人たちがいた。

 

「おかえりー、棒倒しは災難だったな」

 

 戻ってきて早々明斗に声をかけられる。てっきりレクリエーションに参加してるもんだと思っていたが、最初の爆発がトラウマになって参加しなかったようだ。

 

 お疲れ様会の場所などの話を聞いているうちに放送が流れる。

 

『では、部活動・同好会に所属している方は校庭にお集まりください』

 

「じゃあ行こうか」

 

 柊夜に手を引かれて校庭の真ん中の方へと向かっていく。部活動ごとにまとまっているようで俺たちは何故か壇の目の前に専用のスペースが用意されていた。明斗も部活に入っているようで途中で別れてそちらへと歩いていった。

 

『来ない場合は強制棄権にしますよ』

 

 何度も呼びかけをしていたのに集まらない生徒がいたのか急かすような放送が流れる。

 

『それでは、最後の種目。体育祭のメインイベント部活動対抗狩り者競争です!』

 

 借り物競走か……小学校や中学校でもやったことがなかったから楽しみだ。ただ、この学校では知らないことが多すぎるからそんなに無理難題が来ないといいな。

 

『お互いの部活動が潰し合いポイントが多い部活がより多くの予算を支給される本イベントですが』

 

 ん? 

 

『去年の超将棋部による記録27000ポイントを超えることができるのでしょうか!?』

 

部活動対抗狩り者競争 ポイント表 :

 9999p 校庭整備部員

 1000p  部長

 600p  副部長

 500p  同好会長

 300p  運動部員

 200p  同好会会員

 2p 生徒会長

 1p 校長先生

 

「ちょっと待って?」

 

 今何か聞き捨てならないことが聞こえた気がする。

 

「どうしたの?」

 

 柊夜は知っていたのか至った平然としている。辺りを見渡せば一年生と思わしき生徒達は少なからず動揺している。それとは対照的に2、3年生と思われる生徒の目はギラついており、まるで飢えた肉食獣のようだった。

 

「潰しあってポイントが多い部活がより予算が多いって何?」

 

「この学校は実力がものを言うからね。予算も奪い合いなんだよ」

 

 これから行われるのは予算争奪戦って……コト!? 

 

「じゃあ潰し合うって……」

 

 一応予想はついているが勘違いの可能性もあるので一応……一応聞いておく。

 

「ボコボコにして気絶させて本部まで引きずってく感じかな?」

 

 ですよねー……世界観違いすぎないか? 

 

「というか生徒会長!?」

 

 2pって扱い酷すぎない? 校長先生の1pは正直どうでもいいけど……だってあの人いまだに壇の横でマイクも無いのに喋り続けてるし。

 

「あ〜あの人も馬鹿だから多分放送委員の口車に乗せられたんだろうね」

 

「いくら馬鹿でも自らボコされには行かないだろ」

 

「あの人頭のいいゴリラと大して変わらないから*1……参加したらモテるよとかでも言われたんじゃない?」

 

 えぇ……それは人として大丈夫なのか? 

 

『今年は例年通りのこのポイント表にプラスして特別ポイントとして先ほどの綱引きの際に生物研究部部長がばら撒いた謎の生物たちを捕まえた場合にもポイントが入ります』

 

 いくら困惑しても動揺しても無情にも放送は進んでいく。正直今の現状が意味不明すぎて脳が理解を拒んでいる……しかし、次の放送だけは聞き取ることができた。

 

『そして最後に……これは私的な話なのですが神無月柊夜という生徒にものすごい恨みがありまして』

 

 放送が聞こえたと同時に柊夜の方を見る。

 

「あー面白そうだからって理由で彼の情報収集してたら二股かけてることがわかったからそれを彼がいない放送の時にそっと原稿に混ぜ込んだんだよね」

 

 俺の視線に気付いたのか頬を掻きながら柊夜が苦笑いをしている。

 

「何やってんだよ」

 

 いや、本当に何やってんだよ。

 

「一番の問題点は浮気されてた2人の仲が良かったせいで別れるんじゃなくて2人の共有財産にされたってとこで今は基本的に軟禁状態らしいよ」

 

 そう言われて目を凝らして放送をしている生徒の方を見てみると首筋や手首にうっすらと謎の跡が残されていることに気がつく。……俺は何も見てない、うん。オレハナニモシラナイ

 

『彼自身をこのイベントで潰そうと思ったのですが、彼のコネのせいで手出しができなくなってしまいまして……』

 

「何したの?」

 

「ちょっと根回しを……ね。とある生徒達の情報を守る代わりにこのイベントでの身の安全を保証してもらったんだよ」

 

『しかし、それでは私の怒りが収まらないので彼の所属するオカルト研究同好会に目をつけました』

 

『昨日まで人数が足りなくて存在していませんでしたがなんと今日から学校に来る転校生が同好会長として参加するという書類が届きまして……』

 

 あっ……俺って同好会長ってことにされたんだ。ってか凄い嫌な予感が……

 

『なのでその転校生である䋆井凪都を捕まえれば特別ポイントとしてその部活動の予算を20%増やそうと思います!』

 

「はぁ……」

 

 いや、うん……ソウナルヨネー

 

『私の権限を使っての嫌がらせなのでどうか捕まえてあの男にギャフンと言わせてください!』

 

「頑張ってね!」

 

 柊夜が凄い笑顔で親指を突き立てているが殺意しか湧かない。辺りを見渡せば動揺していたはずの一年生までもがギラついた視線で周囲を観察していた。

 

「まあでも名前しか出てないし多分バレないでしょ」

 

 そう信じたい。まずはこの状況で空気となり混戦が始まったらそっとここから立ち去る。うん、完璧な作戦じゃないか! 

 

「……」

 

 戦いが始まってから少しして明斗がこちらへと近づいてくる。

 

「あぁ明斗? そういえば明斗は何の部活だ──「悪いな凪都! 俺の部活の予算のために犠牲になってくれ!」

 

 そう言って明斗は容赦なく俺に向かって蹴りを放ってきた。

 

「危なっ」

 

 間一髪でその蹴りを避けることはできた……だが、明斗まで敵に回ってしまうのか。いやでも一番の問題はそこじゃないよな……

 

「どうすんだよこれ」

 

 凪都……その名前がでた瞬間、周囲にいた争っていたはずの人々の視線がこちらへと向く。一瞬でも気を抜けばその圧だけで気絶してしまいそうだ。とりあえず攻撃が飛んできた際に道連れにできるように柊夜の背に隠れる。

 

「こういう時のために煙玉を用意しておいて良かった。はい、じゃあこれ使って窮地を脱してね」

 

 しかし、柊夜は速攻俺の手に球体を握らせて俺から離れる。こいつ絶対この状況になることわかってただろ……感謝はするが後で絶対に仕返しをすることを心に決める。

 

 視界が奪われて一番困るのは戦いが始まってからだ。だとすれば……

 

「──ッ」

 

 俺はチラリと逃げられそうな場所を確認してから俺を狙っているであろう人が一番多い場所に向かって突貫する。そして飛んでくる攻撃を上手く誘導して他の人に当たる瞬間に地面に煙玉を叩きつけた。これで視界を奪われた奴らは攻撃を仕掛けてきた奴に反撃をするだろう。そうすれば自然に混戦が始まり逃げるのに有利になる。後はさっさと先程方向を確認したところに走っていくだけだ。ついでに近くにいる人にぶつかっていくことを忘れない。これでより大変なことになるだろう。

 

 

 

 走った方向が校庭からどこに繋がっているのかはわからなかったがどうやら裏庭に繋がっていたようだ。近くの草むらに身を潜め様子を伺う、人は来ていないみたいだな。

 

 しかし、油断したせいでバランスを崩し尻餅をついてしまう。その結果大きな音を出してしまった。

 

「誰?」

 

 このまま終わるまでここでやり過ごそうと思ったが先客がいたようで、その存在に気づかれてしまった。休憩はしたいが捕まってしまってはどんな目に遭わされるかわからない……ここは逃げるか。

 

「待って、私が此処を退くから……」

 

「……敵じゃない?」

 

 しかし、相手の反応的に俺を狙っていたわけではないようだ。てっきり先に待ち伏せをしているようなやつかと思ったんだけどな……

 

「何のこと?」

 

 草むらからひょっこりと顔を出した人物は顔が隠れるギリギリまでフードを被っていた。チラリと見える髪は白雪のように混じり気のない白色で鮮やかな海のように綺麗な青色の瞳をしていた。ちっちゃくついた鼻は可愛らしく表情は無表情と言っていいほど変化しないがそれがより一層彼女の魅力を引き立てているような気がする。

 

「……大丈夫?」

 

 そっと目の前へと近づいてきた彼女が俺の前で手を振ってくれたおかげで漸く正気に戻ることができた。……この世界のに人たちってなんかやたら顔よくね? あれだろうか、太古からクトゥルフ神話の神格と繋がってきた結果ほとんどの人にニャルの血筋がある的な。何にせよ眼福なのでありがたいことだ。ニャルは大体ろくでもないけどな! 

 

「俺は大丈夫、君はどうしてこんなとこに?」

 

 流石に黙って見つめているのはアレなので一番に疑問に思ったことを質問する。放送委員の人の反応的にこの体育祭のメインイベントが今行われている地獄絵図なのだろう。だとしたらそれを見ずにこんなところにいるのは不思議だ。

 

「……人が多いのが苦手」

 

 そう言って彼女は気まずそうに目を逸らす。その行動に何の意味が込められているのはわからないがあんまり深掘りするのは良くないだろう。

 

「もしよかったらだけどここに隠れさせてもらっても良い?」

 

 ただ、今のところ人が来る気配がなく安全地帯と呼べる場所がここだけなので可能なら隠れさせてもらいたい。

 

「ん……大丈夫」

 

 ぐぅ〜

 

「お腹空いてるの?」

 

 小さく鳴るお腹の音を俺は聞き逃さない……なんかキモいけど気にしないようにしよう。

 

「ごめん.なさい」

 

「別に気にしないで。あっ、もし良かったらこの弁当食べる?」

 

 昼休み中に食べようと思ってたが雑談に花を咲かせていたせいですっかり忘れてしまっていた弁当を差し出す。お楽しみはどうせすぐ終わると思って持ったままだったのだ。

 

「……いいの?」

 

 彼女はおずおずといった感じで上目遣いでこちらを覗き込んでくる。くっ……顔が良いよこの子! 

 

「さっき購買で買ったのを先に食べちゃったからさ、お腹いっぱいなんだよ」

 

 実際には全然そんなことないがここは男として見栄を張らせてもらおう。

 

「なら、いただきます」

 

「……おいしい」

 

 心なしか目が輝いているような気がする。気のせいだろうか? 

 

 

 

「ご馳走様でした」

 

 彼女は余程お腹が空いていたのか用意していてた弁当をあっという間に平らげてしまった。あまりに美味しそうに食べてくれた*2のでこちらも作った甲斐があるというものだ。俺が食べるよりもこんな可愛い子に食べてもらえた方が弁当も嬉しかっただろう、知らんけど。

 

「お粗末さまでした」

 

「貴方が作ったの?」

 

「そうだよ。こう見えても俺、結構料理得意だからさ」

 

 柊夜の家では家事くらいしか出来ることがなかったのでパソコンでメニューを見ては飯として作るというのを繰り返してたおかげで俺の料理スキルはある程度伸びていた。

 

「そろそろ「きゅ〜」……?」

 

 時間も経ったと思うので移動を開始しようとした瞬間に俺たちではないナニカの声が聞こえる。

 

「……お前は!」

 

 声の方に目を向ければそこには今朝ロッカーから解き放った紫色のナニカがいた。朝見た時と同じようにズルズルと液体を撒き散らしながら急いでこちらに近づいてくる。というかお前喋れたのか……何処に発声器官ついてるんだよ。

 

「きゅー!」

 

 ナニカは俺たちの近くへとくるとそのまま俺の背中に飛びつく。うわぁ……背中がズルズルになって気持ち悪い。帰ったら綺麗に洗わないとな……

 

「きゅきゅきゅー!」

 

 ナニカは体から生えた触手で俺の頭を何度も叩くと自分が来た方向を指す。そこには狩り者競争に参加しているであろうガタイのいい生徒達がこちらに向かってきていた。

 

「化け物を追っていたら一番の獲物を見つけられるなんてラッキーだな!」

「逃げられないように回り込め!」

「これで俺たちの部活も安泰だ……」

「勝ったな、風呂入ってくる」

「俺、この戦いに勝ったら彼女にプロポーズするんだ」

 

 このままここにいれば捕まってしまうことは明白だ。まあ、何人か死亡フラグを建ててくれているので勝手に自滅してくれるかもしれないけど。

 

「待って……」

 

 呼び止めてくる彼女には申し訳ないがどうせこの学校の生徒なんだ、そのうち会うことになるだろうからその時にまた話せばいいだろう。

 

「じゃあ、また!」

「きゅ〜」

 

 ナニカを背中に背負い生徒が現れた方とは逆方向に走る。しかし、逃げた先は校庭であり隠れられるような場所はない。更には大声で名前が呼ばれるせいで人々の視線がこちらを向く。わー完全に獲物を見る目だよあれ……

 

「この状況を打開する方法は……」

 

 辺りを見渡して柊夜(肉壁)を探すが運が悪いことに見つからない。というか校庭ではおそらく生物研究部がばら撒いたであろう大量の黒色のうねうねとした化け物で溢れかえっていた。

 

「きゅー!」

 

 化け物に気を取られていて自分の身に迫る危険に疎かになっていた。ナニカの声で漸くその存在に気がつく。

 

「チェストォッッッッッッ!!!!!」

 

 その姿は現代の人間とは思えなかった。体には着物を纏い両手で木刀を握りしめており、人の言葉とは思えない奇声を叫び、親の仇のような視線でこちらを睨みつけていた。どう見ても江戸やそれより前に出てくる妖怪の類だ。

 

「マズッ」

 

 ソレが背を屈めたかと思えば一瞬にしてこちらの懐に入り込んでくる。回避をしようにも相手の方が早く既に首元まで刀が迫ってきていた。

 

「……?」

 

 しかし、その刃が届くことはなかった。刃は俺の目の前で切断されその衝撃はソレは後退りをする。

 

「悪いが私達のリーダーを潰させるわけにはいかない」

 

 やけに落ち着いた声が鼓膜を揺らし、俺とソレの間に1人の存在が現れる。顔こそ見えないが、その背中と持っている武器には見覚えがあった。

*1
INT6

*2
予想




評価やコメントなどを貰えるとモチベが上がるのでお願いします!(乞食)

可能だったら今日の18時にもう一本投稿します
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