クトゥルフ世界に飛ばされる一般PL君 作:冷たくて美味しい紅茶
あの日から何事もなくテストも終わりカフェの初日も終わらせることが出来た。新しいメニューを10種類ほど追加して、わざわざ柊夜が知り合いの写真家に頼んで完璧な料理の写真を撮ってもらったり、彰が登録者300万人近い動画投稿者だったので告知を手伝ってもらったりしたおかげかオープンしたのが平日にもかかわらず大量のお客さんが殺到しており、常に仕事に追われていた。結局開店時間の12時から閉店時間である22時まで常に客が満員で地獄を見た。メニューは色々なものが注文されたが、特にカレーやオムライスといったしっかりとしたものが頼まれていたような気がする。俺は一応アルバイトにもかかわらず常に厨房に立っており、逆に柊夜がメニューをとったり料理を運んだりなどをしていた。
そして今日はオープン2日目となる土曜日、10時からの開店のために7時から柊夜と共に店で仕込みをするために集まっていた。
「仕事したく無い」
昨日のことを思い出して憂鬱な気持ちになりながらも仕込みをする。といってもメニューはすぐに作れるものをメインに考えているのでそこまでやることは多くない。いや、まあ昨日は面倒なものばっかり頼まれたわけだけれども。
「残念なお知らせだけど今日は昨日よりも大変だと思うよ」
そう言って柊夜が見せてきたスマホにはこの店のレビューが上がっているサイトが映っていた。そのサイトにはサクラを疑うほどに高評価なレビューが上がっており他にもインフルエンサーのSNSでべた褒めされているようでそのファンが来る恐れがあるそうだ。昨日以上か……まだ多少の余裕はあるがそれでもこれ以上がずっと続けば過労死できる自信がある。それとも慣れればマシになるものなのだろうか。
「あいつら来ると思ってたけど来なかったな」
彰は告知を手伝って貰ったこともあって飯を食いにきていたが他の普段関わっている奴らが来ることはなかった。一応オープン日は伝えてたんだけどな……テスト終わりだったし遊びに行ってるんだろうか。
「真白とか優は知らないけど鋼我は昨日学校で比奈に鎖でぐるぐる巻きにされて運ばれてたのを見たよ」
「あいつ何やったんだ」
狩咲さんが関わっているということは部活か委員会関係なんだろうな、おそらく。
「まあ、どうせそのうち来るし準備を進めちゃお……誰か見てるね」
横で材料を切っていた柊夜が突然そんなことを呟く。
「何処からだ?」
「店の入り口から道を挟んで反対側の住宅街の角のとこ。確認してもいいけど手は止めないで、こっちが気づいたことに気づかれたくない」
柊夜の言う通り仕込みの手は止めずにちらりとそちらに目を向ける。するとそこにはアルビノというやつだろうか? 白い肌に真っ赤な目を持った少年がじっとこちらの方を見つめていた。特徴的な見た目のはずなのに柊夜に言われなければ全く気づかないほどに周囲に溶け込んでおり多少の違和感を感じる。
「何処かから逃げてきた? いや、それにしては焦っている様子がないな」
「何考えてるのか知らないけど多分見張ってるだけだよ。それも……うん、僕の方を見てるね」
「この距離でよくそんなことわかるな」
俺じゃあそこに人がいることは分かってもその人物の目がどのように動いているのかまで見ることはできない。
「人に見られることには慣れてるからね」
経験上、というやつだろうか。確かに柊夜だったらそう言った経験をすることも多いか、持っているコネと年齢の異常性から好奇の目で見られることも多いだろうし。
「うーん……悪意は無さそうだし別に放置してもいいんだけどどうしたものか」
柊夜は悩むそぶりを見せつつも決して手は止めない。多分既に答えは決まっているのだろう。
「よし、せっかくだし話を聞いてみようか。ということで凪都、行ってきて」
「了解、一芝居打つか?」
どうせこちらに回ってくることは分かっていたのでやっていた下処理を切り上げて手を洗う。柊夜の反応を待つよりも先に冷蔵庫を開け、わかりやすく驚いたような表情をする。
「なるほど、足りない食材があったっていう体で外に出るのね。だったら財布が奥にあることにしてそのまま裏口から出て回り込んで」
「両側から挟んで逃げられないようにする……と、容赦無いな」
苦笑いをしながら裏口から外に出る。見られないようにするためにもぐるっと回っていくか。
未だ先程の位置にいる少年に後ろから近づく。これ、側から見たら完全に不審者だな……幸いにも人は近くにいないようで警察に通報される心配はなさそうだ。
「君、俺たちに何か用?」
少年の背後に立ち、確保ではなく話を聞くだけなのでとりあえず声をかけてみる。
「えっ、あっ嘘……さっきの……どうして……見つかった?」
振り返った少年の顔は真っ青でこちらを認識すると身体をガタガタと震わせる。俺の想像していたよりも怯えられてしまいこちらもびっくりする。
「違う、僕は……」
あまりの動揺だったのか少年の肉体がドロドロと崩れ落ちていく。この子人間じゃなかったのか……玉虫色、いや銀色に近い不定形の何か肉体が変質していく。ウボ=サスラの雛か……やっぱこの世界って意外と神話生物が社会に溶け込んでるよな。
「捕ま……る? また……あそこに……嫌だ、嫌だ!」
現実逃避をしていてもしょうがない、とりあえずこれ以上怖がらせないようにしゃがんで目線を合わせて出来るだけ優しい声色を出す。
「大丈夫、落ち着いて俺は君を傷つけないよ」
この子はおそらく何かしら過去にトラウマがあるのだろう。人に捕まるのがトリガーか……下手に近づくことは悪手になりかねないな。
「痛いのは……嫌だ、逃げなきゃ……いや」
うーん、もしかしてかなり不味い状況か? 逃げてくれるならまだしも攻撃を仕掛けられたら太刀打ちできない。だって本神から逃げ残った雛とか絶対やばいよ。
「
誰かがこちらに呼びかける声が聞こえる。声が聞こえる方向に目を向けると顔に紙を貼った男性がこちらへと近づいていた。目の前の少年が奏楽という名前だったようで、男性に抱きつくと顔だけこちらへと向け警戒したように様子を伺ってくる。
「突然の非礼を詫びさせて欲しい。彼が私達と敵対しうるかの確認がしたかったのだが……このような形になってしまい本当にすまない」
目の前の男性は俺を前にするなり深々と頭を下げる。状況はよくわからないが多分、柊夜に何かしらしたいと考えてた集団が、柊夜がどんな人物か見定めるために人材を派遣していたということだろう。子供にやらせるのはどうかと思うがウボ=サスラの雛ということもあって擬態的なので信頼されていたんだろうか。
「うーん……謝罪するべきは俺じゃない気がするしとりあえず店来ます?」
とりあえず話をすべきは柊夜なので場所を移動することを提案する。俺が話を聞いていても仕方ないし……
「ということで、連れてきたからよろしく」
「どういうことで?」
仕込みを終わらせ、店の掃除をしていた柊夜に全てを押し付けて厨房へと入る。奏楽と呼ばれた子も席に座らせて、少し未だ警戒しているようなので餌付けがてら裏に置いておいたお菓子と温かい飲み物を出してあげる。
「……いいんですか?」
奏楽は目の前に出されたものを見つめた後、おずおずといった様子で尋ねてくる。やっぱり食べ物って最強だな。
「もちろん、好きに食べな」
俺が許可を出すとゆっくりと奏楽は食事を始める。チラリと柊夜達の方を見ると柊夜が渋い顔をして男性の方を見ていた。男性は顔につけていた紙を外しており、少し短い茶髪の髪に見る人を安心させるような優しい顔をしていた。
「何の話をしてるんだ?」
柊夜の表情が珍しく、逆に気になってきたので話に参加するべく二人に近づく。
「あっ、凪都? いや、
「綾人さん?」
話の流れ的にこの男性の名前なのだろうが、それを前提に話を始めるのはアレだと思ったので聞き返す。
「君には名前を言えてなかったね。私は宮島綾人、神話生物を束ねる組織のリーダーのようなものをやらせてもらっている」
「どうも、䋆井凪都です」
綾人さんが手を差し出してきたので握手を交わしながら自身も名前を告げる。それにしても神話生物を束ねる組織か……ということは奏楽の他にも沢山の神話生物がいるんだろうが、綾人さんは普通の人間に見えるんだよな。いやまあ人に擬態した神話生物を見分けられるわけじゃないから別形態とか持ってたら話は変わるんだけど。そう考えるとこの人が実はニャルとかもあり得るのか、ちょっと怖いな。
「……うーん、君の判断も聞きたいからちょっと一緒に聞いてくれない?」
「わかった」
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「トラウマ持ちの子を人と接触する恐れのある仕事に駆り出すなよ……」
最後まで話を聞いた後、思わずそんな声が漏れる。大体の話をまとめると、綾人さんは幼い頃に神話生物に助けられており、その神話生物が迫害されていることを知ったので、神話生物を匿うために組織を立ち上げたらしい。
それで、今まで小さな仕事をこなしてきていたが、メンバーが集まるにつれお金の管理が厳しくなってきた結果、新しい大きな取り引き先として柊夜に目をつけたみたいだ。そして、その様子を把握するために奏楽を派遣し、一応念のために綾人さんが見守っていたといった感じらしい。
奏楽については、俺の予想通りウボ=サスラの雛のようで、綾人さんがとある研究所で保護したらしい。詳しい事情はわからないがその研究所でかなり酷い扱いを受けていたらしく、保護した当初はまともに会話もできないほどのトラウマを抱えていたらしい。やっぱ人と接触するような仕事は全く向いてないって……
「それは……ごもっともな指摘だね。一応、ちゃんとした認識阻害の腕輪付けさせていたのだけれど……」
そう言って綾人さんは困ったような笑みを浮かべる。認識阻害……だから特徴的な見た目であるにも関わらず気付きにくいという違和感があったのか。実際、いつからいたのか知らないが何度も外を見たタイミングはあったのに柊夜に言われるまで俺は気づかなかった。ともすれば一応万全な準備はしていたのか……あれ、じゃあなんで柊夜は気づけたんだ?
「僕ってなんか知らないけど生まれつきそういうのわかる体質なんだよね」
「ナチュラルに人の心を読まないでくれ」
「何かに気づいたような表情されたら流石にわかるよ」
というか体質って……実は知らないだけで柊夜って特殊な生い立ちだったりするのだろうか? いや、存在自体が特殊みたいな奴だからあんま関係ないかもしれないけど。
「それに本来はディーンさんがやるはずだったんだけど彼は今別件で人が足りなかったんだ……」
知らない名前が出てきた……おそらくリーダーである綾人さんがさん付けで呼ぶと言うことはその人物は年長者に近しい方なんだろう。
「別件って?」
聞いていいのかはよくわからないが気になったので質問してみる。情報は開示されているのだから全く話せないと言うわけでもないだろう。
「この街に突然現れた風の落とし子を保護しようとしてたんだ。彼女も人に本性がバレれば危険に晒されてしまう」
風の落とし子ね……うーん、根拠はないが嫌な予感がする。
「その風の落とし子って14歳くらいの銀髪の髪を腰まで伸ばした少女だったりしませんか?」
一応、一応ね? 確認しておかなきゃいけないような気がしてね? 間違ってるなら別にいいんだけど当たってた場合は……うん。
「どうしてそれを?!」
「知り合いに心当たりが……」
やっぱ、そうか……大丈夫かな、既に優と合流してたら大変なことに。そう思考した瞬間、ピリリリリリという携帯の着信音が店の中で響く。
「もしもし、私だ」
鳴っていたのは綾人さんの携帯のようで、綾人さんが電話に出て通話を始める。そして、話をすればするほど顔は青ざめていき、側から見ても焦っていることがわかった。
「えっと、綾人さん?」
ただならない状況に気づいたのか奏楽も近づいてくる。しかし、そんな奏楽の声も聴こえないほどに綾人さんは集中して話し込んでいた。
「すまない、事情が変わったから今日は帰らせてもらう。どうやら私達の本拠地に侵入者が現れたらしい。柊夜君、この件が片付いたらまたこちらに足を運ばせてもらうよ」
「僕は別にそれでも構わないけど……」
侵入者、侵入者ねぇ……
「綾人さん、その侵入者の特徴を聞いても?」
「黒髪で木刀を持った青年やシャベルを振り回す青年らしい」
「あちゃー」
「あー、二人がそっちに接触しちゃったのね」
考えうる限りトップクラスに面倒な状況になってるな……シャベル持ちはどうせ真白だし襲いかかったりもしてるんだろうかしてるな、うん(確信)
「知ってる人なのかい?」
「まあ友達で……木刀持った方が風の落とし子の知り合いなんで何か勘違いが起こってるような気がしますね」
真白の方は血の気が多いから攻撃を仕掛けるのはわかるんだが、優が初手から攻撃を仕掛けるとは思えない。とはいえ綾人さんの表情の移り変わりから話し合いで解決してそうな様子もない……何か理由があるんだろうか。
「それだったら話が早い、説得するためについてきてもらえるかな?」
「それだったら僕が行くよ、ついでにそっちで仕事についての話も出来るしね」
俺が答えを出すよりも先に柊夜が答える。
「僕も準備できました。えっと……お兄さん、ご飯ありがとうございました」
奏楽も食事を終えたらしく何なら後片付けまでしっかりとされていた。
「えっ? 俺は?」
いそいそと柊夜が外へ出る準備を始めているが、俺が完全に取り残されてしまう。俺も急いで準備した方がいいんだろうか?
「君は店を営業しなきゃダメでしょ? 流石に2日目からお客さんを待たせるわけにもいかないし」
「ちょっとま「行ってきまーす」」
俺の静止を無視して柊夜は二人を連れて店から出ていってしまった。現在の時間は9時30分、開店までは残り30分しかないので色々なことがあることを考慮して開店前に帰ってくるのは厳しいだろう。あいつ……帰ってきたら覚えておけよ……
展開が早すぎて何が起こってるかわからないって?大丈夫、ぶっちゃけ時間空きすぎて自分でも何書いてるのか途中からわかってなかったし、完成したものも何だこれって思ってるから。まあ、それはそうとお気に入りやコメントなどして貰えるとモチベが上がるのでお願いします!(乞食)
後ついでに動画投稿始めたんで良かったら見てください。小説よりも更にネタに走ってるんで
https://www.youtube.com/channel/UC6XIQiYdIDczsJRUvwoNgBg