クトゥルフ世界に飛ばされる一般PL君   作:冷たくて美味しい紅茶

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話の区切りの都合により文字数は少なめです。


謎空間で出会う女の子は大体ヒロイン

 目の前に広がる檻に一瞬気圧されるがすぐに平静を取り戻す。檻には見たところ扉がついており南京錠がかけられていた。

 

「どうする、開ける?」

 

 廊下はライトがないのに明るいのに対してこの部屋は廊下からの明かり以外の一切の光が届かず手持ちにライトになるものがないので檻の中に何があるか見ることができない。

 

「凪都……彼女は……」

 

 優がそう言いながら檻の中を指さす。指をさした方向を見つめてみるが真っ暗なため特に何も見えない。しかし、優は何かを見つけたのか檻の扉に近づく。

 

「あっ、おい!」

 

 あまりになんの警戒もなく鍵を開け始めたので一旦止めようと思ったが優の行動は素早くすんなりと扉を開けそのまま中に入っていく。開けてしまったものは仕方がないので自分もついて行こうと思ったが扉にあるマークに目が止まる。

 

 五芒星の中心に人のような目が描かれているマークだ。普通の人から見ればただの奇妙なマークなだけのそれを俺は知っていた。

 

「旧き印?」

 

 別名エルダーサインとも呼ばれるそれは旧神ヌトセ=カームブルが旧支配者やその眷属、外なる神と対抗するために考案したマークであり*1、それがここにあるということは即ち……

 

「優! 逃げ……」

 

 そこまで言おうとしたところでガシャンという金属音が響き渡る。それがこの檻に閉じ込められていた『ナニカ』を解放してしまった音だということは想像に難くなかった。

 

「凪都、どうかしたのか?」

 

 恐る恐る奥から戻ってきた優の方を見る。その身体には特に外傷はなく後ろには化け物ではなく女の子を背負っていた。

 

「にん……げん?」

 

 優が背負っていたのは十代前半ほどに見える女の子だ。人形と見紛うほどに顔が整っており肌は病的なまでに白い。しかし、それよりも身体は骨と皮しかないのではないかと細いところが気になる。医学的知識が全くない俺でも栄養失調とわかるほどだ。

 

「体調が悪そうだが大丈夫か?」

 

 心配そうに優が顔を覗き込んでくる。とりあえずは檻にいたのが化け物では無かったことに安心する。

 

「いや、大丈夫。それで、その子は?」

 

 聞く意味ないかもしれないが一応聞いておく。

 

「奥で鎖に繋がれていて……見ただけで危険な状態だとわかったから外してきたんだ」

 

 誰がそんなことを……って状況的にヌトセさん以外にいないよな。あの神格の性質を考えるんだったらこの子が何かしらの神話生物か神格の関係者的な感じなのだろう。

 

「その子の他には何もいなかったか?」

 

 もしかしたら古き印をつけることになった原因が他にあるかもしれないと思ったがその希望を打ち砕くように優が首を横に振る。さらには一枚の紙を渡してくる。

 

「いや、この子の他には何も……それとこの紙が」

 

 渡された紙には『ここから出たいのなら化け物を渡すか殺せ』と書かれていた。

 

「この子が化け物なんかな」

 

 確かに神話生物どもの中には人の形をとっている奴らもいる。この子もその中の一匹だったりするのだろうか。

 

「そう……なのか?」

 

 恐る恐るといった感じで優が尋ねてくる。人の形をしたものが化け物だというのが受け入れがたいのだろう*2

 

「一応可能性の一つとしてな」

 

 他にもこの子の中に雛がいるとか諸々の可能性はあるので何とも言えない。そもそもこの紙が本当のことを言ってるとも限らないし、古き印もただのマークかもしれない。

 

「ひとまずは食べるものでも探すか」

 

 この子が本当に化け物なら弱ってる今のうちに殺すべきなのかもしれないが、少なくとも俺にはできない。

 

「すまなかった。もし、この子が化け物だったら……」

 

 移動しようとしたところで優が頭を下げる。なんかさっきから謝られてばかりだな……ここまで真剣に謝られると逆にこっちが申し訳なくなってくる。そもそも今まで普通に生きてきた人がこんな意味わからん状況で混乱せずに周りを観察して探索するというのは無理な話だろう。

 

「優は弱ってる人がいたから助けようと思ったんだろ? だったら気にすんなよ」

 

 実際俺もこの子が見えていたら助けに行っただろうし。この子の状態はかなり深刻だしもう少し遅かったら大変なことになっていたかもしれない。

 

「化け物だったらその時はその時、なるようになるさ」

 

 全力で逃げるか説得を試みるか……ニャルだったら終わりだけどな。まあ、ニャルがこんなだまし討ちみたいなことはしてこないだろう*3

 

「……ありがとう」

 

 俺の言葉に安心したのか優が微笑みを見せてくる。くっこいつ……顔がめちゃくちゃ良いからこっちも気が緩む。

 

 それはそうと俺たちはまだ食べ物がありそうな部屋を見つけていないし、そもそも存在しているのかもわからないから入っていない白い扉のうちどちらかにあるのを願っておく。唸れ俺の幸運! *4

 

「こっちの扉に行こう」

 

 灰色の扉を正面にして右側の扉を開ける。今までやっていなかったが聞き耳を立てるのを忘れないようにしないとな*5。特に何の音も聞こえないのでさっさと扉を開ける。

 

 その部屋は今までの非現実的な部屋とは打って変わってごく普通の家にあるような部屋だった。地面や壁は木製のようで天井にはLEDライトがついている。下にはカーペットが敷かれ、ソファが置いてある。部屋の奥にはダイニングテーブルのようなものが置かれこの位置からは見えないがテーブルの壁がなく奥にも部屋が続いているようだった。壁がないところまで進んでいくとそこからはキッチンにつながっていた。先ほどと同じようにごく普通のキッチンでシンクや調理台、コンロが連続しておかれており反対側には冷蔵庫や食器棚などが置かれている。食器棚にはたくさんの食器が並んでおりそのすべての食器が銀で出来ている……ということはなく*6、冷蔵庫には様々な食材が置かれていた。冷蔵庫内の食材は新鮮そのものといった感じでとても美味しそうだ。*7

 

「ものすごい怪しい」

 

 少女をソファに寝かして優にその面倒を任せてからキッチンに立つ。今考えたら食材があるのは助かるがそもそも何故この空間にそんなものが存在しているのか疑問に思う*8。銀が反応していないから硫化ヒ素は入っていないのだろうが銀を置くのは油断させるためで実は銀が反応しない毒が入っているかもしれない*9。それかここは黄泉の国で此処の食べ物を食べると現実に帰れなくなってしまうのだろうか*10

 

 とはいえ料理を作る以外の選択肢は残されてなさそうだしそうではないことを願おう*11

 

 冷蔵庫の奥のほうに米が入っていたのでそれを取り出す。何を作ればいいのかわからないが少女の様子的に消化に良いもののほうが良いだろう。ということで何故かあった*12土鍋に米を広げて入れてからその米を軽く超えるくらい水を入れる。コンロに火をつけ、米を煮ている間に冷蔵庫から鶏肉と卵を取り出す。鶏肉を食べやすいように小さめに切りそのまま鍋に入れさらに煮込みそのうちに卵を溶く。鶏肉に火が通ったら鶏ガラと塩を適量入れて味を整える。ちょうどいい味になったら卵を回し入れ蓋を閉めて卵が固まるまで放置。そして最後に刻みネギを入れれば完成だ。

 

「というわけで鶏粥の完成」

 

 消化に良さそうなものということで思いついたのがお粥だったのである程度栄養素を考えつつ*13作った。完成したものをお盆にのせてソファーまで持っていく。

 

「あっ起きてる」

 

 優達のところへ行けば少女はすでに目を覚まし、優と話をしていた。

 

「話しているところ悪いができたぞ」

 

 俺の声に反応して二人がこちらを向く。2人とも凄く顔が良いためこの一瞬を切り取るだけで凄く絵になる。まあ、そこはどうでも良いので少女にお盆を渡す。

 

「まだ熱いと思うから気をつけて。それと今更だけどアレルギーとか好き嫌いある?」

 

 いつ起きるかわからなかったし、極力早めに作り始めた方が良いと思ったから作ったけど口に合うかな。合わなかったら作り直せば良いか。

 

「あっ、いや、特には……でも、良いんですか?」

 

 俺の心配は杞憂だったようで特にそういったものはないようだ。しかし、少女は少しの間鶏粥を見つめたあとこちらを見て質問してくる。

 

「良いって何が?」

 

 何を遠慮する必要があるんだろうか。優が料理うんぬんの話をしてなかったとか? でもそれだったら料理出された時点で困惑するだろうからちがうか。

 

「私がこれを食べてしまって……」

 

 もしかして話は聞いていたけどそれはそれとして申し訳なさがあるといった感じだろうか。だとしたら少女のために作ったということをしっかり伝えないとな。

 

「君のために作ったものだし気にしなくて良いよ」

 

「でも……ケホッケホッ」

 

 それでも遠慮しようとするが免疫が弱っているのか咳で遮られる。心なしか彼女が意識を失っていた時よりも顔が青ざめている気がする。

 

「大丈夫? 君の体は今栄養が足りてない状態だから食べなって」

 

 無理強いになるのは好きではないが彼女の体の調子的に無理矢理にでも食べさせた方がいいだろう。ということでスプーンを優に渡す。優は何をすれば良いのかわかっていないのか少し困惑している。

 

「あの子に食べさせてあげて」

 

 流石に口元まで運ばれたら彼女も食べざるを得ないだろう*14

 

「私が……? 君が作ったんだから君がやるべきじゃないのか?」

 

「いやさ、助けたのは優だしさっきまで話をしてたんだろ? だったら多少は信頼されてるだろうし俺がやるより良いだろ」

 

 ぶっちゃけこの女の子は人形と見紛うほどの美少女だ。そんな子にあ〜んするのは一般人である俺には不可能だし嫌な顔されたら絶望する気がする*15。これがTRPGだったら気にしないんだけどな*16。その点顔が少女と同じくらいかそれ以上に良い優だったら問題はないだろう*17

 

「じゃあ俺は向かいの部屋調べてくるから」

 

「ちょっとま」

 

 後ろから優の呼ぶ声が聞こえるがそれを無視して逃げるように部屋を後にした。

*1
諸説あり

*2
お前は違うのかよ

*3
ニャルはゴミだぞ

*4
Dice 1d100>6

*5
扉開ける前の聞き耳大事

*6
つまり毒はない

*7
描写のオンパレード

*8
ロールプレイのためです

*9
入っていません

*10
そんなこともありません

*11
よかった……

*12
ロールプレイのためです! 

*13
ビタミンは無い

*14
他のやり方は無かったのか

*15
怖いよね

*16
APPなんて誤差

*17
イケメンなら何やっても許される




次話は早めに投稿したい(願望)。シナリオとしてやってるときは気にしないけど現実問題として考えたら意味わかんないことってあるよね。
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