クトゥルフ世界に飛ばされる一般PL君   作:冷たくて美味しい紅茶

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最近寒くなってきたので皆さんも体調不良にはお気をつけください。作者は先週インフルでダウンしてたので……


探索するは我が家にて

「ここだよ」

 

 柊夜の案内でやってきた場所にあったのは1階建ての家だ。

 

「お、でけぇ家だな」

 

 鋼我の言葉の通り家はかなり大きく普通に豪邸と言って差し支えないほどの大きさだ。これをポンって貸せるってやっぱり……

 

「最後に使ったときに鍵かけなかったのかな?」

 

 俺の予想が確信へと変わっている最中に柊夜が扉を開けるのに苦戦していたようで元々扉に鍵がかかっていなかったことを知る。おいおい……不用心にも程があるだろ。

 

「……やっぱり埃っぽい「不審者居ねぇか見てくるわ!」……はぁ」

 

 鋼我は扉を開けた瞬間にダッシュで家の中へと入っていく。その姿はまるで玩具屋さんに来た時の子供のようだった。鋼我、お前もそっち側だったのか……

 

「僕も僕も!!」

 

 こっちは予想通りだったが、鋼我に続くように真白が駆け出す。

 

「私はあのバカ共の監視行ってくるわ」

 

 桃花さんがため息を吐きながら2人を追いかけるように家の中へと上がる。結果、俺と柊夜の2人だけが玄関に取り残されてしまう。

 

「僕たちも入ろうか」

 

 柊夜はこちらを向くとそう提案する。

 

「柊夜、この家って具体的に何年前くらいから使ってない?」

 

 しかし、俺はその提案を受け入れる前に確認を取る。少し疑問に思ったことがあったからだ。

 

「さあ? 少なくともここ数年は使ってないと思うけどそれがどうかしたの?」

 

「いや、扉を開けた瞬間に人の足の形みたいな埃の跡が見えた気がしたから」

 

 鋼我達が入るよりも前、玄関を開けた瞬間に一瞬だけ何人か分の足跡が地面についているような気がした。数年単位で使われていないのであれば足跡がついていることは不自然だ。

 

「なるほど?」

 

「もしかしたら俺らじゃない人間がいるかもしれない」

 

 杞憂だったらいいんだけど……

 

「警戒はしておこうか」

 

 歩き出す柊夜の後ろに続いて家の中に上がる。いくつかの部屋の扉は既に開けられており、鋼我達が開けてったであろうことがわかる。

 

「とりあえずどこか行く?」

 

「埃っぽいからな……掃除したい」

 

 アレルギーがあるわけではないがそれでも埃だらけの空間にいるというのは衛生上も良くないし気持ち的にも心地いいものではない。

 

「それもそうだね。まあ掃除道具がどこにあるのかわからないんだけど」

 

 地図みたいな物は無い……だろうな。家に地図って普通必要ないだろうし。もしかしたら鋼我たちが持ってきてくれる可能性も無くはないがそれを期待するには2人は信用ならないし桃花さんは2人に振り回されているだろう。

 

「じゃあこの部屋から」

 

 柊夜は未だ閉められていた扉を開ける。その部屋には鏡とその手前に水面台。他にはカゴや棚、奥へと続く扉などがあった。

 

「脱衣所だな」

 

 奥の扉を開きその先が風呂であることを確認してから俺は呟く。風呂場も全く使われた様子がなく全体的にヌメヌメしている。掃除をするにしても後回しにしたいほどだ。

 

「こっちに雑巾と洗剤はあったよ」

 

 柊夜が水面台の下についていた棚からその二つを取り出しながら言う。かなり長い間放置されていた形跡があるが使う分には問題なさそうだ。

 

「とはいえ……」

 

「先に箒と塵取りが必要だね」

 

 柊夜の言う通り今雑巾とかを使ってもほこりが邪魔をして綺麗にするのに時間がかかってしまうだろう。まずは埃をどかすべきだ。

 

「ちょっと探してくる」

 

 柊夜にそう伝えて部屋から出るがすぐ近くにそれっぽいロッカーがあることに気がつく。開けてみれば中には今ちょうど必要としていたものが入っていた。

 

「いやめっちゃ近くにあるじゃん」

 

 箒はニ本と塵取りを手に取り部屋へと戻る。

 

「もう見つけたの?」

 

 部屋に戻ると今出たばっかりなのに即戻ってきた俺に柊夜は驚いたような顔を向けてくる。俺だってこんなにすぐに見つかるとは思っていなかったので苦笑いを浮かべることしかできない。

 

「運がよかったんだよ」

 

 本当にそうとしか言いようがないのだから困ったものだ。だが、掃除が早めに始められるのに越したことは無いので片方の箒を柊夜に手渡してから掃除を始める。

 

「ん? ……鋼我か」

 

 掃除を始めてからある程度時間が経ち、部屋のほこりの大半を無くせたタイミングで鋼我が部屋の前を通りかかる。

 

「おう。二人とも今何してんだ?」

 

 鋼我は何やってんだこいつらといった表情でこちらを見てくる。

 

「あまりに埃っぽいから掃除してた」

 

「あーな?」

 

 理解したようなしてないような……何ともいえない反応を鋼我はする。そんなに部屋を掃除するというのが意外なのだろうか? 気にするだけ無駄か。

 

「手伝おうか?」

 

 鋼我の言葉に脱衣所を見渡してみるが粗方の埃は除去できたし雑巾での仕上げは何人も必要とは思えない。俺と柊夜の2人で十分だろう。同じことを柊夜も思ったのか俺よりも先に鋼我に反応する。

 

「ここはもう少しで終わるし別の部屋をお願い」

 

「おけおけ。んじゃあ次のとこ先にやっとくな」

 

「ありがとね、助かるよ」

 

「気にすんなよ。んで、俺はどこをやりゃあいい?」

 

 柊夜は風呂場への扉を開けて一瞬固まった後、鋼我から隠すように扉を閉めた後くるりと振り返る。あのヌメヌメ地獄に気づいてしまったか……

 

「そうだね……じゃあこの風呂場をお願いしてもいいかな?」

 

 押し付けたな。

 

「任せな」

 

 明らかに汚れだらけな風呂場を見ても鋼我は気にした様子はなく濡れないように上着を脱ぎズボンを捲るとそのまま風呂場へ入っていき掃除を始める。流石に可哀想なのでさっさとここを終わらせて手伝うとしよう。

 

「いてっ」

 

 早く終わらせるために急いで雑巾で仕上げをしていると泡が目に飛んできてしまう。上手くかわすことが出来ずそのまま目に泡が入る。その瞬間焼けるような激痛が走る。

 

「あちゃ、もう終わるし目洗っちゃいな」

 

 そのことに気がついた柊夜が苦笑いをしながら洗うように促す。続けようと思ったが変なところに入ってしまったのか全く痛みが引かない。

 

「悪い」

 

 俺は素直にその言葉に甘えることにし、持っていた雑巾を柊夜に渡して水面台で自身の目を洗う。目についた洗剤が水で洗い流されていきスッキリする。

 

「そういえばこの家って水道通ってるんだな」

 

 掃除を始めた瞬間からわかっていたはずだが全く気にしていなかったことを口にする。

 

「ずっとお金は払ってたっぽいね」

 

 そこを認知してさえいなかったってやっぱガバガバすぎないか? 雨風が凌げて水回りまでしっかり整備されていて更には数年単位で放置されている……浮浪者にとって理想的な住環境だなと改めて思う。

 

「……っと、終わったよ」

 

 俺が目を洗っている間に柊夜が仕上げを終わらせていたようで脱衣所はピカピカになっていた。最初に入った時とは雲泥の差だ。

 

「こっち終わったから手伝いに……」

 

 鋼我に手伝うことを知らせようと風呂場の扉を開け、絶句する。

 

「終わってるね」

 

 鋼我はピカピカになった風呂場を見上げながら立ち尽くしていた。片手にはスポンジを握り動くわけでもなく立っている。側から見れば完全にヤバい人だ。

 

「お疲れ様、こんなに広い風呂場をよく短時間で出来たね」

 

 柊夜が労いの言葉をかけながら俺と同じ疑問を口にする。

 

「ん? おう、確かに広かったな」

 

 しかし、返ってきたのは微妙におかしな回答。まるで掃除をする際には何も考えていなかったかのような……

 

「掃除のプロだな」

 

 そう考えることにしよう、うん。これ以上真面目に考えてもなんか意味ない気がする。

 

「他の場所行くか」

 

 これ以上ここにいてもしょうがないので移動することにする。柊夜が先頭となって脱衣所を後にする。

 

「次の部屋は〜此処!」

 

 柊夜がノリノリで適当な部屋を開ける。その部屋の奥には机が一つ置いてあり、その机を挟むようにベッドが二つ置いてあった。

 

「寝室だね」

 

 特筆すべきことは他にはなく強いて言うならこの部屋もそこまで使われた形跡がないということだ。ただ、他の部屋に比べると埃が少ないような……そんなことを考えていると鋼我が我先にと部屋に入っていく。

 

「凪都、なんかあったぞ」

 

 そして、何かを手に戻ってきた。

 

「……なんでこんなところにそれが?」

 

 鋼我が持ってきたのはアロマキャンドルだ。既に使い切られているようで香りが漂ってくることはない。

 

「さぁ? だが、この蝋燭(?)の痕跡と部屋の匂いから推測するに意外と最近使われたっぽいぞ」

 

 そう言われて部屋の匂いを嗅いでみるがよく分からない。ただ、わざわざ鋼我が嘘をつく理由もないので俺が気付けていないだけだろう。それにしても最近に使われたか……確かにそれならこの部屋にほこりが少ないのも納得だ。

 

「やっぱり誰かいるのか……」

 

 嫌な予感が当たってしまったな。独り言として呟いたつもりだが鋼我には聞こえていたようだ。そういえば鋼我にはそのことを伝えていなかったことを思い出しそのことを共有しておく。

 

「鋼我、この家俺ら以外にも誰かいるかもしれない……っていうかほぼ確実にいる」

 

「OK、警戒は任せてくれ」

 

 薄々気付いていたのか、それともこういう状況に慣れているのかは分からないが俺の言葉に鋼我の表情が引き締まる。なんにせよ信じてもらえて良かった。

 

「よし、一旦掃除はやめて探索をしよう」

 

 この家に俺たち以外の誰かが居るとなれば呑気に掃除しているわけにはいかない。一刻も早く捕まえないと。

 

「あいよ……っと、そしたらこれ。俺が持っとくと無くしそうだから預けるわ」

 

 鋼我がそう言って手渡してきたのは水晶のような丸い石だ。なんでこんなものを持っているのだろうか? 

 

「……これ何処でとってきた?」

 

「おいおい、最初からパクった想定か?」

 

 鋼我は不満げにそうこぼす。流石に盗んだことを前提に話をするのは失礼だったと思い謝罪する。

 

「……そうだな、ごめん」

 

「まぁ風呂場にあったんだけど」

 

「オイ」

 

 思わずツッコミが漏れてしまうがこれは許してほしい。というかやっぱり盗んだものじゃねえか。今の俺の謝罪を返してほしい。

 

「……柊夜、返すわ」

 

 持ち主がすぐ真横にいるのにずっと持ち続けるメンタルの強さは持ち合わせていないのでそっと柊夜に返す。

 

「あぁ……えっとありがとう」

 

 柊夜は困惑の表情をしながら水晶を受け取る。そういえばcocにもMPを貯めておける水晶があったような……いや、この考え方はやめよう。ここは現実世界だしそんなポンポンとAF(アーティファクト)があるわけがない。

 

「そういやこの空き家っていつ見つけたんだ?」

 

 ふと、今思った疑問を口にするかのように鋼我が柊夜に質問を投げかける。

 

「空き家っていうかうちの土地なんだけどね」

 

 小さく呟いた柊夜の声が聞こえていたのか鋼我の体がビシッと固まる。そして、何年も油を差さなかったブリキのおもちゃのようにギギギという効果音を立てながらこちらへと向く。

 

「ココ……オマエントコノトチ?」

 

「そうだけど。でもなんで片言?」

 

 まるで自分が勘違いをしていたことに気づいてしまった時みたいな反応をして……もしかしてこいつ! 

 

「ごっめーん! 普通に廃墟探索の気持ちで色々漁ってたわ!」

 

 ……やっぱりか。だから掃除をしてるって言った時にあんな意外みたいな反応をしていたのか。たしかに見つけた廃墟を掃除してたら不思議でしかないな。いやでも、廃墟だからって物漁ったりはしないだろ普通。

 

「僕ちゃんと言ったんだけどな……」

 

 柊夜は自分の話が聞いてもらえていなかったのがショックだったのかしょんぼりとしている。可哀想。

 

「悪い悪い! 次からは気を付けるよ多分きっと」

 

 鋼我はそんな確証の無い反応をする。そこはせめて言い切ってくれよ……というか他にこんな感じの土地があるとは思えないし、次はないだろ。

 

「……話は変わるけどこの部屋は他に何かあるのかな」

 

 悲しい気持ちを忘れるためか柊夜は突然この部屋を調べ始める。机に付いていた引き出しを開けたり、ベッドの下を覗き込んだりもする。流石にベッドの下まで調べるとは思っておらず少しびっくりしてしまう。

 

「いや〜こういうのはベッド下の地下室が鉄板かなって」

 

 俺の視線に気がついたのか柊夜が言い訳をする。確かに地下室は鉄板だがベッドの下に地下への扉があるのだとしたら隠すために誰かが上でベッドを動かさなきゃいけないし出れなくなる可能性もあるので多分ないだろう。

 

「何もないなら他の部屋に行くぞ」

 

 やることが無くなって暇になったのか鋼我が別の部屋に移動しようと提案してくる。

 

「そうだね。特に何も無さそうだし」

 

 柊夜の言葉に俺も頷き今度は俺が先頭となって廊下を歩いていく。そして、既に調べられているであろう開いた扉は無視して適当に目についた扉に手をかける。

 

ゼットゼットゼット……

 

 扉を開けようとした直前、部屋の中から誰かの息遣いが聞こえることに気がつく。眠っているのだろうか? 呼吸音以外に聞こえるものはなく動いている様子はなさそうだ。

 

「静かに」

 

 部屋の中にいる人物にこちらの存在を気付かせるわけにはいかない。そう思って2人に声をかけたのだが……

 

「……なによ」

 

 いつの間にか合流していた桃花さんが反応する。いや、本当にいつからいたんだ? 全く気付かなかった。気配を消すのが上手いって言うか、動きに無駄がないから音が出ないって言うか……なんかこの世界の人全体的に戦闘力高くない? 

 

「この部屋、誰かいる」

 

 まあ1人増えようとも言うことは変わらない。

 

「誰かって」「人数は?」

 

 桃花さんの質問を遮るように鋼我が質問を投げかけてくる。

 

「よくわかんないけど、多分一人だけ」

 

 聞こえてくる息遣いは一つだけのように思える。そんなに壁越しに人の息遣いを聞いたことがないから確証は無いけれどおそらくあっているだろう。

 

「OK、だったら俺がぶち破るからここで待ってな」

 

 鋼我は扉の前に立っていた俺にどくように言い、そのまま扉の正面に立つ。

 

「ちょっと待って」

 

 鋼我が扉に向かって足を構えるがその足から蹴りが放たれる前に柊夜が待ったをかける。

 

「ここは僕の家の土地だから、あんまり壊してほしくないかな」

 

 まあそうだろうな。

 

「しょうがねぇなぁ……」

 

 やれやれといった感じで鋼我はため息をつく。いやいや、何で扉を壊すのが当たり前みたいな反応なんだよ。別に柊夜が言ってることは普通だろ。

 

「なら俺が扉を開ける」

 

 そう言って鋼我はノブに手をかける。確かにこの中で1番強そうなのは鋼我だしもし敵がいた場合に油断をつけるかもしれないため妥当な判断かもしれない。

 

「いくぞ」

 

 鋼我の言葉に全員が息を呑む中ゆっくりと彼は扉を開いた。




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