クトゥルフ世界に飛ばされる一般PL君   作:冷たくて美味しい紅茶

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ラスト付近でセリフだらけになってるのは書く文章が思いつかなかったんです…許してください!


戦いは怖いもの

「危ない!」

 

 鋼我に奇襲者の存在を知らせるがあまりにも突然すぎたため反応が鈍って避けられそうにない。このままだとナイフが彼の体を貫くのは時間の問題だろう。

 

 長髪の男が鋼我へとぶつかる直前。世界の全てがスローに見えた。

 

(自分のせいで鋼我が死ぬ?)

 

 自分がいつまでも動けなかったせいで彼に危害が加わる。自分が原因で自分以外の人間が傷つく。それはどうしてもいやなので何としてでも阻止しなければならない。

 

(でもどうすれば……)

 

 この状況を変えるには相手を何とかするしかない。しかし、全身の震えのせいで俺は武器を持つことがままならず歩くことさえできるか怪しい。だが、これは人間の根源的感情である恐怖に起因するもので……

 

(そうか、恐怖が原因なのか……)

 

じゃあ恐怖を消せば良いんだ

 

 俺は意図的に狂気に自分を押し込むことで一時的に感情を麻痺させる。それによって震えがなくなり全身に力が入るようになったため、さっき落とした鉄パイプを手に取る。そして、そのまま鋼我へと襲い掛かろうとする長髪の男の頭に思い切り振り抜く。

 

「このガキッ!」

 

 直前で気付かれてしまったようで鉄パイプを腕で防がれる。しかし、無理矢理鉄パイプを防いだことにより相手の右手はあらぬ方向へと曲がっていた。

 

 相手の顔が痛みで歪んだ瞬間を狙って腹に蹴りを放つ。蹴りによって体勢を崩したところに上からのしかかる。暴れようとしていたがナイフを振り回されると危険なので鉄パイプを突き立てて掌の骨を砕くと大人しくなる。

 

「い゙っ」

 

 痛みなのか恐怖なのかはわからないが、男は小さく悲鳴を上げる。顔は涙でぐちゃぐちゃになっておりまるで化け物を見るような目でこちらを見てくる。怯えているかのように全身を震わせ、今にも発狂してしまいそうだった。

 

酷いな、先に殺そうとしてきたのはそっちだというのに……

 

 この反応的にこれ以上何もできないだろうが態々生かしておく必要性を感じない。このまま殺してしまおうと鉄パイプを振り下ろそうとしたが……

 

「やりすぎだ」

 

 男の顔に鉄パイプが届くよりも前に鋼我に腕を抑えられる。それによってできた一瞬の間のおかげで自身が若干の狂気に飲まれてしまっていたことに気が付く。周りを見渡してみれば長身の男と猫目の男は既に鋼我によって潰されているようで、部屋の隅で伸びていることに気がつく。胸が上下していることから生きてはいるようだ。

 

「大丈夫か?」

 

 もしかして今狂気に飲まれてたのに気づいてる? ……流石にわかるか。だってさっきまで戦いも出来なかった人間が急に人を殺そうとするんだもんな。どう考えたって不自然だ。

 

「今は大丈夫。止めてくれてありがとう」

 

 手の震えが再開してるのを示してちゃんと正気であることを鋼我に伝える。ついでに止めてくれたお礼も言う。止めてくれてなかったら多分俺あの人殺してただろうし。

 

「……そうか」

 

 鋼我は納得できないことを無理矢理納得させるかのように首を振り俺を男の上からどかす。

 

「それにしても、よくやったな。危機を前にして実際に動ける奴の方が少ねぇ」

 

 鋼我が労いの言葉をかけてくれる。確かにすごいことなのかもしれないがあんまり何度も経験したいとは思わないな。普通に怖いし。

 

 そんなことを考えていると鋼我が右手を上に向けていることに気がつく。どういう意図なのかは分からなかったがとりあえず真似して右手を上げると鋼我がこつりと軽く手をぶつけてくる。

 

「勝利のハイタッチ……ってやつだ」

 

 そういうのってスポーツの試合とかでやるものじゃないだろうか? こんな血みどろな行為の後にもやるものなのか? 

 

「そういうもんか」

 

「そういうもんだ」

 

 俺が自分を納得させるために呟いた言葉に鋼我が反応する。ただ、ほぼ脊髄反射的な速度だったため意味はよくわかっていないだろう。

 

「なあ鋼我そこの人にあと地下に何人いるか聞いてくれない?」

 

 少ししてまだ意識のある人物を指差しながら鋼我にそっと耳打ちする。何をするにしても安全は確保した方がいいだろう。

 

「別に良いけどよ……ったく、自分で聞けよ」

 

 ため息を吐きつつ小言を言われる。自分で聞くべきと言うのはそうなんだけど……

 

「だって怖いじゃん」

 

「うっそだろお前」

 

 鋼我はありえない、といった風にこちらの方を見てくる。確かに先程この男をボコボコにしたばっかりだけどあれは狂気で感情を消してたから出来たことであってそれがなければ普通に怖い。

 

「……他には誰もいないそうだ」

 

 若干のドン引きを挟んでいるような気がするが気にしないでおこう。

 

「なら良かった……悪いけど、少し疲れたから外出てる」

 

 重い鉄パイプを何度も振ったせいかそれとも狂気を利用したことによる精神的負荷かは分からないがとにかく疲れた。鋼我が情報収集を始めようとしているがそれを手伝えそうも無いので休憩がてら部屋の外に出る。この部屋にはベッドがあるが流石に戦った部屋で休憩はしたく無い。

 

「鋼我が敵じゃなくて良かったな」

 

 部屋を出る直前、そんな言葉が思わず出てしまう。今思い返してみれば先程戦った人物たちよりも鋼我の方が明らかに戦闘能力が高かった。最初は俺を守っていたせいで実力を出せていなかったのであろう。本当に申し訳ない。

 

「せっかくだから最後の部屋も調べるか」

 

 ただ、休んでるだけなのもあれなので探索を再開する。人がいないことはわかっているので特に気にせず扉を開く。部屋の中は閑散としていて特筆すべきものは置かれていない。しかし、壁につけられた凹んだような痕やベッドで見たのと同じような黒い染みからここが何の部屋だったのか想像がつく。

 

「安らかに眠ってください」

 

 今はいないここに連れてこられた人たちに黙祷を捧げる。それと同じくらいだろうか、鋼我のいた部屋から小さな悲鳴が聞こえた。

 

「……戻ろ」

 

 この部屋で出来ることはもう特に無いし、精神的にもかなり落ち着いたので元の部屋に戻る。扉を開けるとウキウキで男達の財布を漁っている鋼我が目に入った。

 

「何しれっと回収してんだよ」

 

 10枚以上のお札をポケットにしまっていく鋼我に声をかける。チラッと見えたがお札に描かれた人の顔に見覚えが無かったためこの世界が知らない場所だというのを改めて実感する。

 

「ドロップアイテムってやつよ」

 

 金が手に入って喜んでいるのか今までにないくらいニコニコな鋼我に思わずため息が漏れる。

 

「はぁ……何か情報でた?」

 

「おう。レイトで送るからアドちょーだい」

 

 レイト……メッセージアプリの一種のことだろうか。それにしても遅延しそうな名前だな」

 

「そうでもないぞ」

 

 鋼我の反応を聞いて思ったことを口に出してしまっていたことを自覚する。

 

「そっか……じゃない、俺スマホ持ってないんだ」

 

 遅延しないなら良いかと思ったが自身の持ち物がほぼ無いことを思い出す。

 

「まさかのガラケー?」

 

「いや、持ち物がこれしかないんだ」

 

 俺はポケットから指輪を取り出す。あの世界で唯一持ってこれたものできっと何かしらに使うのだろうから無くさないようにしないとな。

 

「あー、悪かったな」

 

 鋼我の同情するような目が刺さる。やめて! 俺だって酷い状況だってのは自覚してるんだ! 

 

「……気にしないでくれ」

 

 絞り出すように言葉を紡ぐ。

 

「あ、そうだ! 最後の部屋はどうだった?」

 

 気まずい空気を切り替えるように鋼我が話を投げかけてくるが、ごめんな特に言えることはないんだ……

 

「何も無かったよ。すっからかん」

 

 俺の言葉に鋼我は一瞬絶望したような表情を浮かべる。タイミングを見計らっていたのだろうか、会話が途切れた瞬間に上から柊夜の声がかかる。

 

「大丈夫~?」

 

 柊夜の方を見れば横には青い制服を着た警察官も立っておりやっと安心できるんだと2人でホッと息をつく。

 

「なんとか~!」

 

「大丈夫~! 俺も凪都も怪我してねぇぞ~!」

 

 お互いに無事なことを報告すると上から縄梯子が降りてくる。それを登ることで漸く地下室から抜け出すことができた。

 

「君たち大丈夫かい?」

 

 地上へ登ってきて早々に警察官から声をかけられる。こちらへとしっかり視線を合わせ話を聞く意志を感じる。

 

「大丈夫です」

 

「とりあえずここは調査が入るから数日は入れないと思う。申し訳ないが君たちの安全を守るためだ」

 

 誠実そうな人でこちらのことを考えてくれていることがよくわかる。クトゥルフ世界の警官が無能だと思った自分を恥じた。

 

「……分かりました。お疲れ様っす。んじゃ、自分他ん所いるダチ連れてくんで!」

 

 鋼我が急いで真白達を呼びに部屋を出ていく。

 

「なんか素直だな」

 

「そうだね」

 

 鋼我のことだから急に追い出されて少しくらい悪態をつくだろうと思ってたのだが権力に従うタイプなのだろうか? 

 

「あっ、てか家どうしよう」

 

 柊夜との約束はこの家でありこの家が使えないのであれば住む場所がない。

 

「一先ずは僕の家に泊めてあげるよ。どうせ一人暮らしだしね」

 

「ありがとう」

 

 これで家の心配は無いか……捨てられないように家事とかやっていかないとな。前の世界とこの世界の常識の違いなんかも調べないと。

 

「先出てよっか」

 

 時間が経っても3人が帰ってこないので先に家の外に出ることにする。家の外には既にテープが貼られており何人かの警察官が見張りをしていた。

 

「悪い、こいつが起きなくてな」

 

「え〜僕のせい?」

 

「当たり前だろ」

 

 そんな話をしながら3人が出てくる。2人も特に怪我をした様子はないし地上にも誰もいなかったようだ。

 

ぐ〜

 

 返事をするよりも先に俺のお腹が鳴ってしまう。

 

「ごめん、お腹空いちゃって」

 

 そういえばあの空間から全く食事を摂っていないことを思い出す。何時間かはわからないがそこそこな時間は経っているだろう。

 

「よし、飯でも食いに行こうぜ! まだ朝だけどやってるとこはあんだろ」

 

「って言っても、まだ8時前よ? 何処開いてんのよ」

 

「ファストフードとかファミレスじゃな~い?」

 

 鋼我と桃花さんが話しているところに真白がいつのまにか持っていたお茶を飲みながら口を挟む。

 

「でも俺一文無しだぞ?」

 

 なんなら財布もないくらいだからな。外で食べようにも必要なものが足りない。

 

「だったら僕が奢るよ」

 

 俺の言葉にすかさずそう答える柊夜。そうして貰えると助かるんだけどあまりにも都合が良すぎて罪悪感がどんどん募っていく。とりあえず今はお礼を言おうと思ったが……

 

「「マジっすか先輩、ゴチになりま~す」」

 

 俺がお礼を言うよりも先に鋼我と真白が頭を下げる。

 

「アンタらねぇ……」

 

「ま、いいか。じゃあ僕が全員分奢ってあげるよ。思ってたよりも騒ぎになっちゃってたみたいだし、追加報酬って形でね」

 

「「や っ た ね」」

 

「私までいいの? 特に何もしていないのだけれど」

 

「いいよいいよ」

 

「そう? じゃあお言葉に甘えて」

 

「取り敢えず食いつくすか」

 

「加減はしてあげなよ?」

 

「僕は何食べよっかな〜」

 

 みんなでわいわいとしながらファミレスへと歩いていく。幸いこの時間でも近くにあるのファミレスはやっていたようで入ることができる。全員が席につき思い思いのメニューを頼む。水を取りに行ったり真白が茶葉を水に入れようとして止められたりをしていると鋼我が思い出したかのようにポツリと呟く。

 

「あっ……ピザどうしよ」

 

 ……あ




この世界のファミレスは朝早くからやっています。

というわけでシナリオ『探索するは我が家にて』編終了です。新しい仲間がたくさん増えましたね。次回はシナリオ間を繋ぐ話を書きつつその次で新しいシナリオが始まります。

評価やコメントなどを貰えるとモチベが上がるのでお願いします!(乞食)
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