元銀眼の魔女の死神代行の話 作:ラキアー
このクレイモア一護君は、霊圧探査能力が超絶有能なので、石田君とのことどうしようと思った結果、こうなりました。
廃病院の屋上で、一護は
突っ込んできた
先ほどのように狭くはないし、観音寺をかばう必要もない。
観音寺の霊圧の移動を感じ、一護は舌打ちした。早く仕留めなければ。
ここで、バタンと音がして階段に続く扉が開かれた。
「待たせたな、ボーイ!」
待ってねえ、帰れ。と一護は言わなかったが、代わりに舌打ちした。
案の定、
観音寺は霊圧からして、立っているのが精いっぱいな様子だ。本当に何しに来たのか。
一護は素早く、
反動で大きく吹き飛んだ
体が回転して、仮面が下を向いた
その巨体が、屋上にたたきつけられ、少し離れたところに、一護が降り立つ。
「やったっ!
グレイトォ!素晴らしいぞボーイ!信じていた!よくぞ倒した!私から受け継いだ正義のパワーで!
やはりユーは」
はしゃいで褒めちぎる観音寺に、一護は斬魄刀を背中の鞘に納める。
「事は成した。が、はしゃぐようなことじゃねえ」
「な・・・なぜだ、ボーイ?!何を言う?!
冷めきった一護の言葉に、観音寺が食って掛かる。だが、直後にその言葉を途切れさせた。
「そんな・・・彼は私が浄霊したはず・・・。
ぼ、ボーイ、これは一体どういうことだ・・・?」
「先ほども言ったが」
震える声で尋ねてきた観音寺に、一護は淡々と語った。
「あれは
普通の霊は胸に鎖が付いており、それがちぎれれば胸に孔が空いて、霊は理性を失った怪物・・・
それを聞いた観音寺は、サングラスの下で大きく目を見開いた。
「そんな・・・私はずっと、あの孔を拡げて鎖を切ってやれば成仏するものとばかり・・・そんな・・・。
それじゃあ・・・私が今までやってきたことは一体・・・」
がっくりと膝をついてうなだれる観音寺に、一護は声の調子こそ変えなかったが、語り掛ける。
おそらく、観音寺は今まで爆発した霊が目の前で
それが今回は違った。
何をどうしたら
気にするなとは言わない。だが、後悔ばかりしてても何もならないだろう、と。
それでも自分のふがいなさにグズグズとすすり泣く観音寺に、一護は困った様子で視線を泳がせた。
そして、彼は気が付いた。
「泣くのはそのくらいにしておけ、ヒーロー。
みんなが手を振っているぞ」
見下ろせば、病院の下で野次馬たちがこちらに歓声を向けて手を振っている。
「どうした?応えてやれよ」
一護の声は、淡々調子ではあるが、どこか柔らかかった。皮肉でもなんでもない。立ち止まったヒーローの背を押す、励ましの色を宿していた。
「それがヒーローの務めだろう」
一護の言葉に、観音寺はぐっと息を詰めると、ややあって声を張り上げた。
「ボハハハハーッ!」
両手を胸の前で交差させる独特の高笑いを響かせる。
それに応えて、観衆も同様に「「「「ボハハハハーッ!」」」」の大歓声とポーズを決める。
「ボーイ・・・ありがとう。そして見事な戦いだった」
言いながら観音寺が振り向いた。
だが、そこに一護はいなかった。
一護はすでに転落防止用の柵を蹴って、病院の窓枠に足を引っかけながら、飛び降りていた。
どうも、ああいう派手なのは苦手なのだ。
「ボーイ?!どこへ?!せっかく!私の一番弟子に任命しようとしたのに!」
一護本人が聞けば、舌打ちと同時に「いらねえ」と吐き捨てそうなことを、観音寺はのたまった。
黒崎一護も、朽木ルキアも。
予想だにしなかっただろう。
この夜に撮影された映像が、その場に居合わせた全員の運命を一変させることになろうとは。
なお、後日観音寺はちゃっかり、休診日のクロサキ医院を訪ねてきた。
観音寺は、あの時に一護に向かって叫んだルキアの顔をしっかり覚えており、一護が肉体に戻ってさっさと逃げ出した時、置いてけぼりにされたルキアに根掘り葉掘りして、挙句勝手にファンクラブに入れるよう手配していたのだ。
もちろん、一護はきれいに無視し、
観音寺は、大ファンの遊子にちやほやされ、独特すぎる服飾センスで黒崎一心と意気投合したのは余談だ。
さて、一護が死神代行業という非日常を送ることになっても、訪れるものは訪れる。
期末試験である。
やっと終わった!そして死んだー!とわっと机に泣き伏す浅野啓吾をよそに、全員が解放感に浸っていた。
ちなみに、一護は死神代行業に入る前の中間考査で18位を取っており、今回のテストは・・・多少下がったかもしれないが、さして問題はないだろうと思っている。
なお、その実情を知った浅野は奇声を上げて、遊びに誘ったのに!俺らが遊んでいる裏でお前は!このガリ勉野郎!などと泣きわめいている。
一護はこう見えて、ちゃんと勉強をしている。
以前も記したが、彼はオレンジの髪という目立つ頭をしているのだ。おかげで上級学年にはケンカを売られやすく、教員には目を付けられる。基本的には無視を決め込む一護だが、短気であるがゆえに我慢の限界は意外と早く訪れるうえ、ケンカは買うし、教員には反抗する。
で、さらに絡まれるという悪循環を少しでも防止するために、成績を上げているのだ。成績が良ければ、教員は何も言ってこないのだ。
前世のクレアは、仇のプリシラを討つために最下位ナンバーでくすぶっていたころ、散々無茶をやっていた。いい加減にしろ、と連絡員のルヴルを通じて、警告を受け取ったのは数知れず。
同じく問題児であったろう、ナンバー4のオフィーリアは割と野放しにされていた感じがすごかったのに。
上位ナンバーというのは、それだけで許されるものなのだ、と思ってしまった。少し違う感じはあるが、まあ成績を優秀にして、上との折り合いをつけておくというのは大事だと、一護は身に染みて知っているのだ。
根本的に従順は無理でも、優秀ではあらねばならない。
でないと、いきなり北の地で使い捨ての戦力として送られかねない。今思い返しても、よく生き残れたものだ。
日常方面はそんな感じなのだが、非日常方面――死神代行業においては、ここ最近奇妙な事態が起こっていた。
そもそも、
だが、最近は討伐に向かった先に、肝心の
一護の霊圧探査によると、確かに
ルキアのような感じの独特の霊圧でもない。また別の感覚の霊圧だ。
まるで。
「まるで、誰かが先んじて退治しているようだな」
ぽつりと一護がつぶやいたのは、何度目かの空振りの際に、道端に置いていた肉体に戻った時だった。
以前もその可能性を言ったのだが、それはルキアが否定した。死神は担当地区が決まっているからありえない、と。
やはり伝令神機の調子がおかしいのか、とケータイモドキをポチポチいじるルキアをよそに、一護は道端に目をやった。
「それで、何の用だ」
「やっぱり気が付くんだね」
一護の声に、脇道からスッと誰かが姿を現した。
夜闇に浮き上がる、白い神父服のような独特の衣裳を身につけた少年だ。一護たちと同い年ほどだろうか。黒髪に眼鏡をかけた、どこか神経質そうな印象を与えてくる。
「そんな霊圧の残渣を見せつけてきてはな。ここ数日の空振りは、お前が原因か」
言った一護に、ルキアがぎょっと見てきている。
「へえ。そこまでわかっていて、なおも無視をしてたと」
「あいにく回りくどいのは苦手で」
言いかけた一護はバッと勢いよく右の方を見やった。
「気が付いたかい?そうだね、新しい
「何っ?!」
しれっと言った眼鏡の少年に、ルキアが声を上げる。直後、それにこたえるように伝令神機が指令の着信を知らせてきた。
「ほ、本当に?!」
「ルキア!」
「遅いよ。それでも君は本当に死神かい?」
一護がルキアに死神にするように促すより早く、眼鏡の少年が嘲るように動いた。
右手につけた十字をかたどったアクセサリー。そこから青白い光が弓の形を作ると、左手で光の弦を弾いて霊力の矢を放つ。
すると、それは彼方を飛んでいた
一護は一つ眉間にしわを寄せた。
ルキアもまた、伝令神機を覗き込んで、「反応が消えた・・・!」とこわばった声でうめく。
「・・・何者だ」
「石田雨竜。
こちらに背を向ける少年は、光の弓を消しながら振り向いた。
「僕は、死神を憎む。
つまり・・・君を、憎む」
低い声で唸るように宣言しながら。
石田雨竜について。
一護は彼については、気が付いていた。
一護もまた自分の霊力を抑え込むのを癖付けていたのだが、おそらく石田という男もそうだったのだろう。時折、霊力が漏れ出していたのだから。
ただ、一護は基本的に自分の周囲については必要以上に興味を持たないタイプで、人の名前と顔を覚えるのが微妙に苦手なところもあった。最初入学当初は気が付いたが、親しくないならばどうでもいいと捨て置いて、忘れていたのだ。
ゆえに、一護は井上織姫に教えてもらうまで、彼が同じクラスであることに気が付かなかった。
まして、先日の期末テストで1位を取った(中間から引き続き)ことなど。
なお、一護は今回は23位で、またしても浅野と小島に奇声を上げさせていた。余談だが、井上織姫は3位、茶渡泰虎は11位である。
話を戻して、石田雨竜は実は黒崎一護のクラスメートである。目立つしにぎやかな友人のいる一護と比べると、おとなしいタイプであるため目立たなかったのかもしれない。
井上が彼を知っていたのは、同じ手芸部だからである。
先ほども、クラスメートのぬいぐるみを驚くべき手際の良さでササッと直した石田は、つんと澄ました様子だった。少々つっけんどんな物言いをするタイプらしい。一護も人のことは言えないが。
まあ、憎みたいなら勝手にしろよ、喧嘩売ってくるなら買うぞ?が一護の基本スタンスなので、そのままきれいに無視していく・・・つもりだった。
その日は、午前授業で午後は職員会議だか何だかで半日授業、午後は自由だった。
ゆえに、一護はそのまま家に帰ろうとして・・・足を止めた。ある公園のそばの路地だった。
「・・・何の用だ」
「宣戦布告からノーリアクションとは、呆れるほど臆病だと思ってね」
鞄を背負ったまま一護がうなるように言って振り向くと、石田雨竜が電柱の影から姿を現した。
「単刀直入に言え。それから、どうでもいいことを覚えていられるほど能天気じゃねえんだよ」
向き直って吐き捨てる一護に、石田はピクっと眉を動かして眼鏡を押し上げる。
「・・・いつから気が付いてた?」
「目的語が抜けているぞ、黒崎。
何についてだ?
君が幽霊が見えるほど高い霊力を持っていることかい?最初からさ。
死神の力を身につけたことかい?5月の半ばからだ。
それとも・・・朽木ルキアの正体かい?」
一護の問いかけに、石田は冷徹に言い放つ。それは真逆、確信を持った者の答えだった。
直後、石田雨竜のそばに白い帯状のものがいくつも出現する。
霊絡だ。大気中の霊気を圧縮・視覚化したもの。視覚化して触れることができるのは上位の死神くらいだ、と以前ルキアが言っていたな、と一護は思い出す。
「そうそう」
言いながら、石田は腕を伸ばし、一護の前をつかんだ。
「知ってたかい?死神の霊絡は色が違うんだ。紅いんだよ」
赤い帯状のものをつかみ上げながら、彼はこともなげに言った。
一護は仏頂面のまま黙っている。
「うまく抑え込んでいるようだったけど、僕の目はごまかせないよ」
ちっと一護は舌打ちする。ルキアに霊力を譲渡されて間もなくは上限感覚が狂い、抑え込むのが難しく、ちょっとした感情の変化で軽く漏れ出していたのだ。
最近少し慣れてきたと思った矢先に、これだ。
「僕は
するりと石田は、掴んでいた赤い霊絡を放した。水に溶けるインクのように消え去る霊絡を見やりもせず、石田は一護を見返した。
「勝負しないか、黒崎一護。
解らせてあげるよ。死神なんてこの世に必要ないってことをさ」
「勝負だと?俺とお前が?」
「そうだ。この世に死神なんて必要ない」
わずかに眉を動かして言った一護に、石田は淡々と言った。
「くだらねえ」
一言のもとに、一護は吐き捨てた。
「さっきも言ったが、お前の事情などどうでもいい。
そんなバカバカしい勝負、する必要性も感じねえ」
一護はそっぽを向いて吐き捨てる。
「意外だね。逃げるのかい?」
「ありがちな挑発だな。意味のねえ勝負はしねえんだよ」
くるりと背を向けて一護はその場を去ろうとした。
「ああ、そうか。思い出したよ」
その背に、わざとらしい石田の声が投げつけられた。
「君は朽木さんに力を与えてもらった死神・・・。
つまりは、“仮の死神”だったね。
彼女の許可がなければ、指一本動かすこともできないってわけだ」
眼鏡を押し上げながらの言葉に、一護の足が止まった。
振り向いた一護のブラウンの瞳の奥で、怒気で瞳孔が開かれていた。抑えている霊圧が、びりびりと漏れ出していた。
そうして、この話は続くのだ。
ドン観音寺との時に、テレビでもめ事を起こしてないので校長室への呼び出しはなくなりました。はい。