元銀眼の魔女の死神代行の話 作:ラキアー
一応、この話は一護の視点に重点を置いて書くことにしていますので、あしからず。
黒崎一護と石田雨竜が、初夏の路地で対峙しているその頃。
朽木ルキアは浦原商店を訪れていた。
店の前でじゃんけんで喧嘩をするジン太と
彼らに断りを入れて、ルキアは連絡しようとも出ようとしなかった店主、浦原喜助と向かい合っていた。
元々は黒崎一護のような力を持つ人間たちが
だが、彼らは死神とは決定的な違いがあった。
それはすなわち、
そして、彼らはその信念ゆえに、滅びることになる。
一護は無表情のままだったが、ブラウンの瞳の奥で瞳孔を開いて石田を凝視していた。押し隠していた霊圧がビリビリと漏れ出している。
一護はどちらかといえば気が短い方だが、石田の挑発は彼の地雷を奇麗に踏み抜いていたのだ。
こいつは。一護をルキアの人形扱いしたのだ。ルキアのことを知りもしないくせに。一護のことを知りもしないくせに。
クレアになる前の少女を人形扱いした、あの糞妖魔も思い出させる。実に、虫唾が走る。
一護は石田に向き直ると、無言のまま鞄に手を突っ込み、ギャーギャーわめくコンを引っ張り出した。
ルキアに言われて渋々一護の鞄に入っていたコンの口に、一護は問答無用で手を突っ込み、中の義魂丸を取り出すと、そのまま自らの口に放り込んだ。
途端に、その肉体から死神姿の一護がはじき出された。
なお、ドン観音寺との共闘の際は左手を使っていたが、現在の一護はバッチリ回復して、斬魄刀の柄も右側に来るように装備しなおしている。
一護の肉体で嘔吐反射に苦しむコンをよそに、死神姿の一護は石田に向き直った。
「それで」
一護が口を開いた。ひどく低い声だ。
「勝負の内容は?」
「これで勝負しよう」
言って、石田が胸ポケットから取り出したのは、コインにも似た白いものだ。
なんだそれは、と一護は言葉にも出さずに、眉を寄せた。
「対
これを砕いて撒けば
しれっと言った石田に、一護は目を見開いた。
「集まってきた
わかりやすくていいルールだろ?」
「・・・っ!!」
ギチリッと一護は両手を握りしめた。びりびりと霊圧が膨れ上がる。
こんなくだらない意地の張り合いのような勝負に、関係ない町の人間を巻き込むのか。
「・・・取りこぼしが出たらどうする気だ」
「取りこぼし?」
低く抑えた一護の問いかけに、石田はパキンッと撒き餌を砕きながら言った。
「そんなことありえない!
集まった
ここで、石田は嘲るような調子になって続けた。
「君も、
「傲慢なクソガキが!」
吐き捨てて、一護は石田に背を向けると、コンに向き直った。
「コン!すぐにルキアのところに行って来い!
「ないよ、そんなもの。賽は投げられたんだ」
「うるせえ!てめえは勝手に
つんと言い放つ石田は、すでに右手に光の弓――霊子兵装『弧雀』を展開し、早くも出現した
こんなクソガキにかかずらっている時間が惜しい。
「早く行け!コン!」
「わ、わかった!」
慌てて駆け出すコンをよそに、一護は今にでも石田をぶん殴ってやりたい衝動を必死にこらえ、霊圧探査に集中する。
以前、ルキアは言っていた。
パッと思いついたのは、妹の花梨。だが、最近は石田のこともあって、周囲の霊圧を探りなおしてみて、驚愕した。
あまり意識していなかったが、井上織姫、有沢たつき、茶渡泰虎の3名は霊圧が上がっている。日に日に上昇してきているようなものだったので、他と比べてやっと上がっていることに気が付いたのだ。
最優先は妹の花梨。それが終わったら他の三人を助けに行かねば。花梨を優先するのは、他3人ならば、年長なので体力があり、逃げる時間を長くとれるだろうという意識からだ。
あまり考えたくないことだが、こういう時はとにかく優先順位を付けねばならない、と一護は歯噛みする。
ともあれ、一護はすぐに猛スピードで駆け出した。
光の矢で、早くも3体目の
伝令神機に、異常なまでの
とりあえず、花梨の通学路、遊び場になってそうな場所周辺の
とにかく、『弧雀』を連射して、次々
そして。
不意に、一護は足を止めた。
霊圧が爆発するように膨れ上がったのだ。その周辺に妹の霊圧があり、さらに
霊圧の感触からして。おそらくは、茶渡。茶渡の霊圧が膨れ上がり、代わりに
花梨は無事らしく、自宅の方へ向かっている。
方向的に
だが、またしても一護は舌打ちする。
高校の方に
わけのわからないことだらけである。
とにかく、移動するしかない。
花梨の行動範囲のやつはあらかた倒した。
一護は霊圧を探る。茶渡と井上、有沢は・・・意識がないのか、さほど大きくはないが、落ち着いてはいる。
そして、一護は眉を寄せた。
なぜか茶渡と井上が一緒にいる。場所は・・・なんか、別の場所だ。霊圧が膨れ上がった場所とはまるで別の場所にいる。
誰かに運ばれた?訳が分からなすぎる。
いずれにせよ、一護がやるべきは一つ。
ルキアと合流して、石田を止める。
それにしても。
舌打ちしながら、一護は駆ける。死神状態は生身よりも恵まれた身体能力を発揮でき、素早く移動はできる。だが、限度はある。
もっとすばやく移動する術はないか?ミリアの使った『幻影』や、アナスタシアの『羽持ち』ならば、いけるかもしれないが、現状でそれを使うわけにはいかない。(『羽持ち』には長い髪が必要なので、どのみち使えないし)
いらいらしながら一護が駆け付けた時には、ルキアと一護の肉体に入ったコン、石田がそろい踏みで
一護は即座に豚面の芋虫に似た
「っ、ここにいたか・・・」
息を切らしながら、一護は消えつつある
「コン、何をもたもたしている?!
ルキア、無事か」
「ええー?!なんでオレは怒って、姐さんはねぎらうんだよ?!」
「うるさいぞ。さっさと見つけねえほうが悪い。
お前、改造魂魄だろ、霊圧の一つや二つ読めねえのか」
「できるわけねーだろ?!
「誰が変態だと?!」
「おめーだよおめー!
オレは姐さんと一心同体なんだ!姐さんの居所なんて、この通り!手掛かりなしで匂いで一発よ!」
「し、失敬な!私の身体はそんなきつい臭いなどせぬわ!」
ギャーギャーと言い争う3名。一護は普段の不愛想仏頂面をかなぐり捨てて、皮肉を吐いている。
あまりの事態に、石田は眼鏡の奥の目を点にして、ややあって「君たち、いい加減にしないか!」と軌道修正を図る始末。
「君たちの敵は僕だ!仲間割れなどしている時ではないだろう!」
言い放った石田に、一護がぎろりッと一瞥を向けた。
「ああ、そうだ」
「何?」
「お前の敵は俺で、俺の敵はお前だ。よくわかってるじゃねえか。
なら、こんなくだらねえことして、つべこべぬかすな!
一対一で手合わせなりなんなりするべきだろうが!」
怒声を放った一護に、石田は一瞬言葉を詰まらせた。
「っ、何?!」
ここで、一護が顔を上げて空のかなたをにらんだ。
「な、何だありゃ?!」
コンも声を上げ、ルキアも顔をこわばらせる。
蒼穹に、巨大なヒビ――正確には、ヒビが一か所に集まりつつある。
一護は、その奥から、奇妙な――巨大な霊圧を感じていた。何かが、出てくる。そんな予兆がある。
「待て、それだけじゃない・・・」
周囲を見回した石田の言葉に、一護はうなずいた。
舌打ちして、石田は『弧雀』を構える。
「よせ!焼け石に水だ!」
一護が止めようとするが、石田は「何だ、怖いのか黒崎」と吐き捨て、そのまま
「怖いならここで見物しているといい!
この勝負は僕の勝ちだ!」
言い捨てて、石田は階段を駆け上がり、朗々と叫んだ。
「こっちだ!
最後の
「・・・どういうことだ」
一護はゆるりとルキアに振り向いた。
「最後の
「滅亡したのだ、200年前に。
一護の問いかけに、ルキアは険しい口調で答えた。
すべての
200年前、
だが、それは死神にとっても苦渋の選択であった。
死神たちは
死神は、その両世界の魂魄の量を調整することを仕事としている。
そうして、魂魄の運行のすべてを死神にゆだねることにより、
だが、そこに
つまり、現世の側にばかり魂魄が増えていくことであり、現世側に世界が傾き、現世に
それは生と死が入り混じる混沌であり、世界の崩壊を意味するのだ。
初めて
しかし、
そして・・・
それは果たして、死神の傲慢と断ぜれるのだろうか?
一護は道を駆け抜けながら、ルキアの言葉を反芻した。
世界がどうの、魂魄がどうの、
一護は舌打ちする。気に食わない。なんて気に食わない世界だ。
クレアだったころにいた狭い辺境で、こんな事情があるなんてついぞ知らないままだった。
だが。
石田が、死神を憎むのは、本当にそれだけか?
一護は駆けながら思う。
そんな古い時代のことなんて、今を生きる人間が気にするとは・・・いる者もいるだろうが、石田がそれを気にするだろうか?
もっと、別の・・・身近な理由があるような気がするのだ。
石田はいた。無人の工事現場で、
そこに一護が割って入る。
すでに使い込んだ霊圧読みによって
ぎょっと石田がこちらを見ている。
すでに
かつて、クレアが聖都ラボナでの覚醒未遂を経て半覚醒へ至った後に、妖気を読むのを完全にものにしたように、一護もまた数々の戦闘を経て、霊圧読みをものにしたといってもよかった。
「おい」
蹴散らした
「お前が死神を憎むのは、200年前の
「・・・だったら何だい?」
石田は、『弧雀』を引きすぎて血まみれの左手が一護に見えないように、右手で眼鏡を押し上げながら言った。
「僕の目の前で、
そうして、話は続くのだ。
とりあえず、今回はここまでとします。
好評でしたら、次回、VSメノス・グランデ辺りをやりましょうかね。あの辺りは、ちょっと原作と違うことになりました。書いてて楽しかったです。