元銀眼の魔女の死神代行の話 作:ラキアー
この一護君は妖力の扱い感覚で、霊力の扱いが長けているという設定ですが、暴走させないとは言ってません。前世でもやらかしたので。
石田雨竜が霊子兵装『弧雀』を構える。
一護が杖代わりにする斬魄刀の刃に、気を付けながらその体の一部が当たるようにする。
同時に、ドンっと『弧雀』の光の弓と矢が一回り大きくなる。
「すげえな。どういう理屈だ?」
「同じ“霊力を使った戦い”でも、死神と
君たち死神は、自らの魂を使って作りだした霊力を斬魄刀として具現化し、
逆に、僕たち
君の斬魄刀から無意識に放出されている霊気が僕に触れることで収束されて、こうなっている。となれば・・・」
「その弓に俺の霊圧を込めれば、簡易でもバリスタ並みの威力になるってわけか」
「ご名答」
石田の答えに、一護は左手で斬魄刀に身を持たせかけ、石田の弓を支える右手に、自らの右手を添わせる。石田の背に張り付くような格好になってしまったのは、仕方がない。
「フルパワーは出したことねえが、合図で放出する。
外すなよ」
「そっちこそ、霊圧コントロールをしくじるなよ」
軽口をたたき合い、二人は集中する。
「3、2、1!」
ドンっと石田の持つ弓がさらに巨大に・・・身の丈以上に長大になり、一部に至っては地面にめり込んでいる。
石田は、まるで丸太のような光の矢を引き絞って、放った。メノス目がけて。
バギンッと硬質な音を立てて、それは
それを見送って、二人はほっと息をついた。
青空のひび割れは小さくなって、集まっていた
だが。
突然、一護は、石田のそばでうずくまった。地面に着いた斬魄刀が派手な音を立てるが、それでも一護はそれを手放さなかった。
「?! 黒崎?!」
「ぐっ・・がっ・・・ぐうぅぅ・・・!」
ぎょっとする石田をよそに、一護は歯を食いしばってうずくまったままだ。
「れ、霊圧が・・・!くそっ!止まれ!止まりやがれっ!」
ビキビキと、一護の周囲の空間がきしむ。おびただしい霊気が漏れ出す。一護が左手に握る斬魄刀は、ぐにゃりッとその刀身を不安定にブレさせた。
石田もまた気が付く。一護が手を放したにもかかわらず、右手の霊子兵装はその大きさを少し小さくしただけだ。元の弓のサイズにならないのだ。
「『弧雀』が・・・?!
そういえば、先ほどフルパワーは初めてだって・・・!
まさか!」
「くそっ!くそっ!止まれっつってんだ!」
顔色を変える石田をよそに、一護はどうにか自分の霊圧を抑え込もうと四苦八苦している。
かつての聖都ラボナでの妖力の暴走の時のように、壊れた蛇口のごとく霊圧の放出が止まらない。コントロールを失っているのだ。
覚醒することはないだろう。ただ、暴走した霊圧が一護自身はおろかその周囲すべてを吹き飛ばすだけで。
一護は具体的にどうなるか悟っていたわけではない。ただ、感覚的にまずいことは察していたので、必死に抑え込もうとする。
そのときだった。
石田が虚空に向けて、自らの霊子兵装の矢を射出する。
「そうだ・・・こうすればいいんだ・・・!」
石田は思いついた。一護が御しきれない霊気を自分が奪い、放出してやればいいのだ、と。一護が落ち着くまで。
もちろん、それはノーリスクではない。石田が奪い切れなかったおびただしい霊圧は、彼の腕を中心に傷を作っていく。あっという間に、石田の両手は血まみれになった。
「ぐ・・・な、何を、している・・・は、離れろ・・・、手も、ぼろぼろじゃねえか・・・!」
「うるさい!」
一護の言葉に、石田は吐き捨てた。霊力を奪い、固め、虚空へ放出する。その作業を延々続けながら。
「言ったろう!僕は死神を憎む!
言ったろう!お互いここで生き残らなけりゃ殴る相手がいなくなる!
生き残って殴らせろ!黒崎一護!
そして僕を殴れ!黒崎一護!」
血まみれの両手でそれでも必死に弓を引く石田に、一護は歯を食いしばった。
結局一護は、クレアのころから何一つ変わってないのか。
みんなのため、仇を討つためと言いながら、覚醒して散々暴れて。ジーンの犠牲で戻ってくれた。今度は石田を犠牲にする気か。
できるはずだ。元通りに、締めなおすだけだ。自分の力なのだ。抑え込め。抑え込め!
ややあって、一護の身体からの霊圧の放出が止まった。
ハアハアと一護は息を切らした。どうにか、止まってくれた。どうも、“黒崎一護”は潜在能力的に“クレア”とは雲泥の差があるらしい。
弓を引いていた石田の顔は、必死なものから徐々に泣きそうな、悔いるような表情に変わっていった。
膝をついて天を見上げる石田は、懺悔する罪人のような顔をしている。もしかしたら、何か
「・・・そんな顔をしている奴を殴れるか」
うずくまったまま、一護は顔だけを石田に向けて吐き捨てた。
呆然と座り込むルキアは、ややあって難しい顔をした。
浦原率いる3人は、せっせと片づけを始める。
ぶんぶんと飛び回っているコバエのようなものを、ジン太が金棒で叩き潰した。
それが、
翌日のことだ。
普通に学校はあったので、普通に登校した。一護は両足は筋肉痛のような状態だったが、普通に歩けたので、そのまま学校に来ている。
ただ、石田は遅れた。両手を包帯グルグル巻きで、3限にようやくやってきた彼は国語の越智教諭の問いかけに、「階段から落ちました」というべたな言い訳をした。
細かいことは気にしない越智教諭はシレッと流したが、クラスメートたちはそんなべたな言い訳を信じるわけがなかった。
付け加えると、昨日のことはきっちり目撃者がいたらしい。
浅野啓吾が小島水色に、石田が工事現場にいた!一人で芝居がかった調子で食っちゃべってた!と話しているのを聞いて、一護は日ごろの仏頂面の下で冷や汗した。
戦闘に集中していたので気が付かなかったが、そばにいたとは。
なお、浅野は一連のあれこれを、実に都合よく解釈したらしく、そばにいた変なおっさんや子供たち含めて、演劇仲間と練習してたんだな!と言っていた。
一護は、双子女神のクレアとテレサではない、異世界の神(いるかどうかは定かではない)に初めて感謝したくなった。この男の頭をこんなにおめでたく作ってくれてありがとう、と。
石田の怪我と遅刻について、クラスメートたちがひそひそとする中、もの言いたげな空気を漂わせるのは、井上織姫、茶渡泰虎、有沢たつき。けれど、彼らはどう話を切り出したものかと、結局沈黙せざるを得なかったらしい。
さて、昼休みである。
屋上で昼食をとるのは、黒崎一護、小島水色、浅野啓吾、そして・・・石田雨竜の4名である。
なお、石田は一護に誘われた際、最初は断ったが、一護が啓吾の奢りだというや、手のひらを返して乗ってきた。
ともあれ。気まずい沈黙が横たわっている。我関せずの小島はともかく、浅野は居心地が悪くて仕方がない。なんで石田を誘った?!と言わんばかりだ。
挙句の果てに、一護に何か喋って盛り上げろ、と無茶振りされて引きつった顔をしつつも、それでも何かもちゃもちゃとしゃべり倒し始める。
「黒崎。なぜ僕を誘った?
このケガに対する義理か?だったらそれはお門違いだし、こういう気の遣われ方は正直、迷惑だ」
「うるさい。そういう気分だったんだ。悪いか。
誘われただけ感謝するんだな」
「誰が感謝などするか。
大体、僕は食事は一人で摂るのが一番好きなんだ」
「俺もそうだな。うっとうしい。あっちを向いて食え」
浅野のおしゃべりをBGMに、ぽんぽんと石田と一護のやり取りが弾む。
「ところで、気が付いているかい?」
「・・・昨日やってきた二人組の話か?無害そうなら放置だな」
「君はいつもそれだね」
「悪いか」
「いいや。君らしいね」
淡々と言い合う二人に、浅野は「何だよ、何の話だよー?!」とツッコミを入れてくる。
「大した話じゃないよ」
「たぶんな」
パックジュースを吸う石田に、一護はうなずいた。
昨夜突如出現した、奇妙な霊圧――グランドフィッシャーとの戦いの前に剣を交えた、西堂によく似た霊圧の持ち主たちに思いをはせながら。
その夜だった。
一護は、夜食――という名のルキア用の夕食を持ったまま、彼女とコンの寝床と化している押し入れの前で眉を寄せた。
ルキアがいない。出て行った。
ご丁寧に霊圧を押さえて出て行ったらしい。というより、気のせいかもしれないが、彼女の霊圧は死神の力を失ったと言っていた当初と大差ない感じのように思われた。
周囲を見回してみれば、やかましいぬいぐるみもいない。
一護は机の上にある手紙にも気が付いた。
びりッと乱暴に封を破いて目を落として、ややあって眉を寄せた。
そのまま、一護は押入れを開いてごそごそとやって、舌打ちしてから別の場所を探し出した。
「んんー!んんんーー!!」
くだんのぬいぐるみがいたのは、トイレだった。便器の後ろにガムテープで口をふさがれて張り付けられていた。
一護はすでに夜中の二時を過ぎているので、他の家族を起こさないようにぬいぐるみを連れて自室に戻り、まずはトイレ用の消臭スプレーをたっぷりと吹きかけた。
「ぶえええええっ?!てめえ、長時間の苦難に耐えた親友に向かって何しやがる?!」
「うるさいぞ、コン。誰が親友だ。後、便所臭いんだ」
悲鳴を上げてついでにゲホゲホとむせるコンに、一護は不機嫌そうに吐き捨てた。
ついでに黒崎家はきっちり消臭剤も使っているので、排せつ物の臭いと消臭剤のフローラルな香りがミックスされ、それが染みついているので何とも言えない不衛生な香りを、ぬいぐるみは漂わせていた。
何というところに置いていくのか。
十中八九、ルキアの仕業なのだろうが。
「とりあえず、出番だぞ」
「へ?おごぉ?!」
言い捨てて、一護はコンの口の中に手を突っ込んで、本体の義魂丸を取り出すと、飲み込んだ。
途端に、その肉体から死神状態の一護が切り離される。
「げっほっ!おい、どういうことだよ?!
オレだってネエさんに何の説明もせずに、置いてかれたってのに!」
一護の肉体に入ったコンが、むせながら文句を言うので、一護は机の上に置いていた置手紙をその顔面に押し付けた。
「ブッ?!なんだこれ?!」
「置手紙だ。いらんトンチをきかせてあるが、“た”を抜いて読んでみろ」
一護は言いながら、窓を開けて窓枠に足をかける。
「何が“貴様が気にすることではない、私が言いだしたことなのだからな”だ」
ポツリ、と一護はつぶやいた。
あの邂逅の翌日。初めて死神代行として
置手紙の内容は単純だ。
わけあって自分は出て行く、探すな、心配するな、この手紙は読んだら燃やせ、それからしばらくこのままどこかに身を隠していろ、と。
どこまでも一護を案ずる内容に、ルキア自身のことは書かれていない。
以前、西堂ともめたこともある。
ルキアの現状は、一護が思っている以上に、まずいのかもしれない。
「留守を頼むぞ、コン」
「お、おう!ネエさんを頼む!」
一護は言い捨てて、窓の外に飛び出した。コンは大きくうなずいた。
霊圧を手繰り、一護が到着した時にはなぜかその場にいた石田が血まみれで倒れており、ルキアが青ざめて彼をかばおうとしていた。
そのまま下手人と思しき男――死覇装に派手な赤い髪を結いあげた男が斬魄刀を振り上げる。
「阿散井恋次!テメーを殺した男だ!」
トドメの一撃に振り下ろすより早く、一護は男に蹴りを入れていた。
「ぐふっ?!」
「失せろ」
降り立って、一護は斬魄刀を引き抜いた。
どうにか受け身を取った男――阿散井は、一護を見てくる。
「死覇装だと?!
何だテメーは?!
何なんだその、馬鹿でけえ斬魄刀は?!」
阿散井は目を丸くして一護を見てきている。
西堂の刀を見ても思っていたが、やはり一護の斬魄刀は大きいらしい。比較対象がいなかったので、わからなかったが。
「一護・・・何故来たのだ・・・!」
こわばった顔でうめくルキアに、阿散井は刺青とつながる眉をつり上げた。
「そうか。読めたぜ、てめえが・・・ルキアから
「だったらどうする」
「殺す!」
言い放ち、阿散井が切りかかってきた。
速いっ!
目を瞠りながらも、一護は阿散井の刀を捌く。以前打ち合った西堂とは比べ物にならないスピードだ。だが、一護とてただ漫然とやっていたわけではないのだ。
阿散井の刀を徹底的に叩き落とす。自身の霊圧を小さくし、相手の霊力を、霊圧の変動を読みこみ、そこから動きを予測する。
ゆえに、実はこの霊圧読みは、霊力が大きい相手ほど読みやすいのだ。
阿散井の霊圧は、そこらの
ついに、阿散井は懐に一護が飛び込むのを許してしまった。刀を弾かれて体勢が崩れた矢先のことだ。
「ぐっ?!があっ?!」
そのまま斬魄刀の柄頭であごを打たれ、みぞおちを蹴られる。
苦し紛れに阿散井が振り下ろす斬魄刀はあっさりと防がれる。
「っ・・・何なんだてめー!」
苛立たし気に阿散井が叫んだ。
「刀の大きさの割に霊圧は小せえ。そのくせこっちの攻撃が当たらねえだと?!ふざけてんのか!」
姿勢を正した一護は何も言わない。否、ややあって。
「一つ、聞かせろ」
ポツリと言った言葉に、「あ゛あ゛?!」と恋次が怒声を張り上げた。
「俺を殺した後、ルキアはどうなる?」
「はっ!そんなことか!」
一護の言葉を、阿散井は嘲るように返した。
「死ぬんだよ!
その言葉に、一護は目を見開いた。ややあって、眉を顰める。
視界の端で、ルキアが気まずげに視線を落としたのが見える。
ならばなおのこと、ルキアを行かせるわけにはいかない。
ゆえに、この話は続くのだ。
原作が70巻超えの長編であるし、アニオリ・劇場版含めたらさらに膨大な話の数もあるんですが、とりあえず書きたいところだけやっていきましょうかね。
ぶっちゃけ、一護以外のキャラパートをカットしたら、結構短く済みましたし。
くどいようですが、他のキャラシーンを見たいなら、原作読むなりアニメ見るなりしましょうね。