元銀眼の魔女の死神代行の話   作:ラキアー

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 導入であるせいか、バトルしませんね。おかしいな?

 もっとたっぷりバトルするのはもう少し先ですかね。


【#21】元銀眼の魔女の死神代行、三番隊隊長と打ち合う

 

 「ほ、ほんとに僕たちも通っていいのか・・・?」

 

 恐る恐る問いかける石田に、兕丹坊はうなずいた。

 

 「ああ。

 オラはお前たづのリーダーに負げだ!

 お前たづを止める資格はねえだ!」

 

 「なっ?!

 黒崎が僕たちのリーダーだって?!冗談じゃない!」

 

 文句を言う石田に、何ムキになってんだこいつ、というかのように一護は冷めた視線を向ける。

 

 「黒崎・・・っていうだか、お前え・・・」

 

 「ああ。黒崎一護という」

 

 まじまじと見降ろしてきた兕丹坊に、一護はうなずいて見せた。

 

 「いちごか・・・。

 ずいぶんとまあ、めんこい名前だなや・・・」

 

 「うるさいぞ。

 一等賞の『一』に、守護神の『護』だ。めんこくねえ」

 

 兕丹坊のしみじみとした言葉に、一護はやや食い気味に言い返した。

 

 幼少からさんざんそれでからかわれたのだ。何か一つを守れるように、と名付けてもらえた名前だから嫌ってはないのだが、こういうからかいはやはり腹が立つ。

 

 「気ィつげろや、一護・・・。

 お前えが何のためにごの門をくぐるのが知んねえが・・・ごん中は強ええ連中ばっかだど!」

 

 「わかっている」

 

 淡々と頷いた一護を見下ろして、兕丹坊は「そうが・・・」とつぶやくように言った。

 

 「いや、わがっでんならいいだ・・・。

 ほれ、今門開げるがらのいでろ」

 

 言われて少し下がった一同をよそに、兕丹坊が門の端に手をかける。

 

 「腰抜がすなよ~~。

 一気にいぐぞ~~。ぬ゛う゛ん゛!!」

 

 力みながら兕丹坊が門を持ち上げた。家屋ほどの高さのある門が、巨体の兕丹坊に持ち上げられるのは、圧巻の一言に尽きる。

 

 思わず歓声を上げる一同。無口な一護と茶渡も、息をのんだ。

 

 「・・・?」

 

 だが、一護は気が付いた。門を持ち上げ両手で支える兕丹坊が、青ざめた顔で中を見たまま硬直している。

 

 同時に、一護もまた感じた。霊圧だ。誰かが門のすぐそばにいる。

 

 「ああ・・・あああああ・・・!」

 

 怯え切った様子でうめく兕丹坊の向こうに、男が一人いた。

 

 銀髪に糸目の、狐のような印象を受ける男だ。死覇装に白い羽織り、腰に差した短い刀は脇差のようにも見えるが、斬魄刀だろうか?

 

 わきから覗き込んだ一護はとっさに息をのんだ。

 

 霊圧を探ってわかる。この男、『戦士』の基準だと一桁ナンバー、それも上位ナンバーだ!

 

 「さ、三番隊隊長・・・市丸ギン・・・!」

 

 「ああ。こらあかん」

 

 うめいた兕丹坊に、男が口を開いた。喜怒哀楽を感じさせない、飄々とした口調だ。

 

 次の瞬間、一護は叫んでいた。

 

 「よせっ!」

 

 だが、それは何の意味もなかった。その直後、兕丹坊の左腕が切り飛ばされた。肩口からバッサリと切られたのだ。

 

 「あかんなあ。門番は門開けるためにいてんのとちゃうやろ」

 

 無情に、市丸と呼ばれた男は、何の感情も見せずに言い放った。

 

 切り飛ばされた兕丹坊の腕が、流魂街の家屋の茅葺屋根に落ちる。

 

 隻腕となった兕丹坊は、斬られた傷口からおびただしい血を流し、息を切らしながらも、それでも門を支えようと踏ん張った。

 

 「・・・っ!」

 

 市丸が何をやったのか。他のメンバーが目を白黒させる中、一護は無表情の奥で歯を食いしばる。

 

 見えはしなかった。だが、直前の霊圧の上昇が、彼の攻撃だと教えてくれていたのだ。

 

 「おー。片腕でも門を支えられんねや?

 サスガ尸魂界(ソウル・ソサエティ)一の豪傑」

 

 ひょうひょうとしたまま、からかうように市丸が言う。

 

 「けどやっぱり。門番としたら失格や」

 

 「・・・オラは負げだんだ。

 負げだ門番が門を開げるのは・・・当だり前のこどだべ!」

 

 踏ん張りながらも言った兕丹坊に、市丸は不思議そうに言った。

 

 「何を言うてんねや?」

 

 その言葉に、兕丹坊は恐怖に目を見開いた。何を言われるかわかっているかのように。

 

 「わかってへんねんな。

 負けた門番は門なんか開けへんよ。

 門番が“負ける”ゆうのは・・・」

 

 市丸はこともなげに言った。

 

 「“死ぬ”ゆう意味やぞ」

 

 殺気がさく裂する。

 

 刹那。固い音がした。金属の打ち合う音だ。

 

 兕丹坊の脇をすり抜けた一護が、市丸の前に降り立ったと思ったら、何か弾き飛ばされたように大きく飛び下がる。

 

 一護の右手は斬月の握りにかかっており、斬月は鞘代わりの晒しが外れ、出刃包丁のような刃をむき出しにしている。

 

 一方の市丸も、右手に脇差サイズの斬魄刀を携え、一護と対峙する。

 

 「井上。兕丹坊の腕の治療を、頼む」

 

 「あ・・・は、はい!」

 

 振り向きもせずに言った一護に、井上が声を張り上げた。

 

 「かかってこい。戦ってやる」

 

 市丸を見据えて、一護は言い放った。

 

 「はっ。おもろい子やなあ」

 

 市丸が言った。言葉通りに、面白がってそうな声音だ。

 

 「変則型の抜刀術やな。

 大刀を抜刀して、振って、納刀する。たったそれだけ。それだけやけど、それを超高速で行うことで、速度と大刀の重量が合わさって、文字通りの必殺技となる。

 おかげで・・・」

 

 市丸は、プラプラと右手を振った。斬魄刀は左手に持ち直している。

 

 「ちょっと手がしびれたわ。居合なら僕も得意やけど、それを大刀でやろうなんて思わんわ」

 

 一護はかすかに眉を動かした。初撃を防がれたうえ、たったの一回で『風斬り』の理屈を見抜かれた。思っている以上に手練れだ。

 

 「もうよせ一護!ここはひとまず退くのじゃ!」

 

 夜一の焦った声が聞こえるが、一護は動かなかった。振り向きもせずに市丸を見据えたままだ。

 

 否、動けないのだ。うかつに目を外せば、市丸がどう動くかわからなかったのだ。

 

 だが、一護の名を聞いた瞬間、市丸が少し表情を動かした・・・ように見えた。

 

 「・・・キミが黒崎一護か」

 

 こちらの名前を知られている。ルキアから聞いたのか。

 

 「・・・だったら何だ」

 

 「なんや。やっぱりそうかぁ」

 

 一護の言葉に、市丸は踵を返した。

 

 退いてくれるのか、と一護は内心で思う。

 

 “リハビリ”はしたが、一桁上位ナンバークラスの相手と戦うのはよくない。いや、戦闘自体はいいのだ。だが、状況がよくない。

 

 一護たちの一番の目的は、朽木ルキアの処刑阻止&救出。処刑までの時間制限があり、強敵と戦えば負傷で足止めを食らうことになる。井上織姫が回復技能を持っていようとも、できるだけ時間をかけることは避けたい。

 

 だが、一応侵入者である一護をやすやすと見逃すのか。

 

 「ほんなら尚更、ここ通すわけにはいかんなあ」

 

 一護から距離を取った市丸がスッと右腕を伸ばした。脇差しのような斬魄刀を握り直して。

 

 「!」

 

 とっさに一護は動いた。兕丹坊の盾になれるように立って、斬月を抜刀した。

 

 直後、市丸が動いた。脇差のような斬魄刀を槍のように構えて、言い放った。

 

 「射殺せ、『神鎗』」

 

 直後、その刃が伸びた。長刀どころか槍よりも長く、すべてを穿ち貫くほどの、恐るべき速度で。

 

 一護はそれを斬月で受け止めたが、勢いまでは殺し切れず、そのまま突き飛ばされ、背後の兕丹坊とともに門からたたき出される。

 

 「黒崎君!」

 

 「黒崎!」

 

 慌てる他メンバーに、夜一が叫んだ。

 

 「しまった!門が下りる!」

 

 門を支えていた兕丹坊がたたき出されたのだ。支えるものがいなくなった門は当然下がる。

 

 「バイバーイ♡」

 

 門の下からこちらを覗き込んで手を振る市丸を最後に、白道門は轟音とともに再び閉ざされた。

 

 門からたたき出された一護は、吹き飛ばされた衝撃はあったが、無傷だった。

 

 あのクレイモアと同等、否、それ以上に頑丈な斬月のおかげだ。

 

 弾かれたときに打った場所をさすりながら一護は立ち上がり、斬月を納刀した。シュルリッとその握りの晒しが再び刃を覆い隠す。

 

 「無事で何よりじゃ、一護」

 

 「すまねえな、夜一さん。俺のせいで門が・・・」

 

 歩み寄ってきた夜一に一護が言うと、黒猫は首を振った。

 

 「いや、おぬしを責めても始まらぬ。

 門は再び閉ざされてしまったが、相手が市丸(やつ)ではおぬしが飛び掛からずとも同じ結果じゃったろう。

 おぬしに怪我がないだけでも良しとせねばな」

 

 ここで、一同は気が付いた。

 

 それまで不気味に静まり返っていた家屋から、住民たちが出てきて、こちらを見てきている。全員、着物を着ているので、ますます古い時代感が強い。

 

 「人だ・・・」

 

 「今まで隠れてたらしいな・・・」

 

 「何で・・・」

 

 いぶかしげな一同に答えたのは夜一だ。

 

 「当然じゃ。死神の導きなしに不正に尸魂界(ソウル・ソサエティ)へ来た魂魄は『旅禍』と呼ばれ、尸魂界(ソウル・ソサエティ)ではあらゆる災厄の元凶とされる。

 彼らが儂らを恐れて身を隠すのも道理というわけじゃ」

 

 一護は彼らを見回した。特に敵意はないようだ。

 

 まあ、彼らが敵意をもってかかってくるなら、それはそれでどうにかするまでだ。何ともないなら置いといていいだろう。

 

 「じゃが、こうして姿を見せたということは、儂等に対していくらか心を許したということ・・・」

 

 「す、すいません!」

 

 言いかけた夜一をさえぎるように、幼い声がした。

 

 「通してください!すいません、通して!」

 

 人ごみをかき分け、麻の着物を着た少年が駆け寄ってきた。

 

 「お、おじちゃん!久しぶり!ぼくだよ!インコのシバタだよ!」

 

 「シ、シバタ?!」

 

 ぎょっと声を上げる茶渡に、一護もまた軽く目を見開いた。

 

 

 

 流魂街の住民、力のある男手たちが気絶して横たわる兕丹坊の腕をくっつける。

 

 縄で引っ張り、無理やり固定し、そこに井上が力を使う。

 

 「舜桜、アヤメ」

 

 呼ばれた六花のうち二つが井上のヘアピンから外れて翼をひるがえして現れる。

 

 「『双天帰盾』『私は拒絶する』」

 

 言霊とともに、二つの六花の狭間でオレンジ色の光の盾が展開され、そのはざまの、兕丹坊の腕の亀裂が徐々に消えていく。

 

 流魂街の人々が心を開いたのは、一護のおかげだった。

 

 死神連中には、威張り腐ってヤな奴も多いが、兕丹坊は流魂街の出身であり、ここの者たちにも優しく接してくれたのだ、と。

 

 そんな兕丹坊のために、一護は市丸に立ち向かった。だからきっと、いい人だろう、と。

 

 久々の再会に、茶渡はシバタ少年を肩車して歩きながら、近況を聞いていた。

 

 現在、シバタ少年は、義理の父母と兄のような“ほりうちひろなり”少年とともに暮らしている。

 

 尸魂界(ソウル・ソサエティ)――というより、流魂街において、ほとんどの者が知らないもの同士で家族に似た共同体を作って生活している。

 

 流魂街は広く、死んだ場所も時間もバラバラのものがごちゃ混ぜに住んでいる。先に死んだ家族と再会できるなんてものはまれらしい。

 

 死神たちが引き合わせるなんてことはなく、彼らは事務的に死んだ順に整理券を配り、流魂街に入居させる。その順番に東西南北の各地に振り分けられるのだ。心中でもして一緒に整理券を受け取らない限り、相手がどの地区に行ったかすらわからないという。

 

 それを話すほりうち少年は、昭和22年の山梨に亡くなったらしい、シバタと年も場所も離れまくっている。

 

 まだママとは会えていないシバタ少年を気遣う茶渡は、捜していればいつか会える、と言葉少なく励ましていた。

 

 

 

 日も沈み、月が登ってきた。

 

 井上は兕丹坊につきっきりで双天帰盾の光を維持していたが、一護に言われ、流魂街の人たちにも言われたことから、切り上げた。

 

 さすがに完治まで5時間かかるとなれば、切り上げさせた方がいいだろう。

 

 ここまでしてもらえたら十分だ!兕丹坊さんの代わりに礼を言う!という流魂街の人々に頭を下げ、井上は他のメンバーもいる長老の家に入った。

 

 囲炉裏の前では、長老と茶渡、夜一が座している。石田、一護、井上の三人が座ったところで話が始まった。

 

 一度門を開けてしまった以上、警戒されて門の内側の警備は今回の何倍にもなっているだろう。

 

 つまり、もう直接門を突破する方法は得策ではない。夜一が言うには、元々そんな方法を得策とは考えてなかったらしい。先走った一護たちをにらみながら、黒猫はぼやく。

 

 要は、こうなった以上、この白道門は使えない。他の門にしても、一番近い門までここから10日は歩く。それでは時間がかかりすぎる。

 

 ゆえに、夜一は提案する。

 

 門以外から入れば良いだけのこと、と。

 

 そして、黒猫は長老に尋ねる。

 

 志波空鶴というものの所在について。

 

 それを聞いた長老ははっとした顔をすると問いかけた。

 

 あんたがた、まさか“あれ”で壁の中へ入るつもりかね?と。

 

 そのときだった。

 

 何かものすごい轟音が轟いた。

 




 そうして、この話は続くのだ。





 とりあえず、今回はここまでです。

 次回は空鶴邸への訪問辺りまでですかね。またよかったら、お付き合いくださいませ。
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