元銀眼の魔女の死神代行の話   作:ラキアー

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 毎度お付き合いくださり、ありがとうございます。

 アニオリや劇場版も混ぜたいけど、バランスを崩さない自信がないです・・・。


【#25】元銀眼の魔女の死神代行、十一番隊第三席と戦う

 

 打ち上げられた砲弾内部は、想定していたよりは安定していた・・・というのは最初だけだ。

 

 打ち上げが頂点に達した直後、砲弾は向きを切り替える。はるか東、瀞霊廷に向かって、猛スピードで突っ込んでいく。

 

 内部では、岩鷲が持ってきた符札を拡げて、説明し始めた。

 

 これから『継の口上』を行う。花鶴射法・二番は二段詠唱である。打ち上げから方向決定までを『先の口上』で、そのあとの加速と軸調整を『継の口上』でコントロールする。

 

 そうすることでそれぞれの精度を上げているのだ。

 

 瀞霊廷に無事突入するためには、この砲弾の軸を安定させる必要がある。

 

 そのためには、全員の霊力の放出量を均一に調節しなければならない。だが、岩鷲はこれから術式に入るため、霊力放出にあまり気を払えない。

 

 そこで、岩鷲以外の他メンバーは、彼に霊力量を合わせる。霊珠核に触れていれば周りの霊力量がわかるはずなので、それぞれで調節してほしい、と。

 

 そうして、岩鷲は詠唱に入った。

 

 だが。

 

 一護は目を閉じて必死に周囲の霊力量に合わせようとしたが、抑え込んだり、ぶっ放したりするのとは違い、やはり勝手に噴き出してくるものを一定にするのは苦手分野であり、滝のような汗と引き換えにしてもうまくいってない。

 

 付け焼刃でしかないのだから。

 

 井上や石田、茶渡が順番に声をかけてくるのが、よけいに気を散らしてくる。

 

 そして。岩鷲はそれに気を散らして、詠唱をミスした。

 

 そうこうしているうちに瀞霊廷は目の前に迫っていた。

 

 「こうなっては仕方ない!全員ありったけの霊力を込めるんじゃ!

 少しでも砲弾を堅くしろ!」

 

 夜一の号令に、全員即座に霊力コントロールを切り替える。

 

 そして、砲弾は瀞霊壁の見えざる障壁に直撃した。

 

 

 

 その頃。瀞霊廷では謎の侵入者に騒ぎまくっていた死神たちが、そろそろ引き上げるか、と言ってた時だった。

 

 謎の物体が、上空の遮魂膜を直撃した。

 

 白く泡立つように波打つ遮魂膜を見上げ、死神たちが身構える。

 

 そして。

 

 直撃した物体は、ぬるりと奇妙なうごめきを見せたかと思うと、強く光って破裂するように4つの光となって飛び散った。

 

 

 

 砲弾の壁が消え、突入メンバーたちは弾き飛ばされていた。

 

 夜一の号令で、一同はとりあえず手近なものとしがみつき合う。

 

 一護は岩鷲としがみつき合い、一足早く放り出されそうになった井上をかばう形で茶渡が一人放り出され、井上は代わって石田としがみつき合い、夜一はただ一匹で、それぞれ瀞霊廷各所に弾き飛ばされてしまったのだ。

 

 

 

 茶渡は右腕を展開し、衝撃砲のような攻撃で威力を減殺して着地。

 

 夜一もまた奇妙な術で無事に着地をした。

 

 井上と石田は、井上の舜盾六花による『三点結盾』によって無傷で着地。

 

 そして、一護と岩鷲は。

 

 

 

 「さがってろい!」

 

 少し前に出た岩鷲が、印を結びながら叫ぶ。

 

 「砂になあれ!『石波』!」

 

 直後、二人は地面に着弾した。

 

 だが、ケガはない。直前の岩鷲の術式が、二人の落着地点を砂に変えてくれたおかげだ。

 

 「ブッ、ブッ。すまねえな。助かったぜ、岩鷲。それも鬼道って奴か?」

 

 砂から這い出て、口の中の砂を吐き出す一護をよそに、岩鷲はひたすら砂にむせていた。

 

 一瞬一護は、いつまでむせてんだ、と背中をどつきたくなったが、すぐに眉をひそめながら岩鷲の背中をポンポンと叩いた。

 

 「お、おう、悪いな・・・!」

 

 「早く落ち着いた方がいいだけだ。来るぞ」

 

 「へ?」

 

 一護の言葉に、岩鷲が目をぱちくりさせた。

 

 一護たちが落着したのは、塀に囲まれた通路のようなエリアらしい。そして、その塀の上に二人の人物がいた。

 

 「いよっホオ!ツイてるぅ!」

 

 ウキウキと弾んだ声で叫んで、彼は塀から飛び降り、もう一人もまたそれに続く。

 

 「配置につくのが面倒だったから隅っこの方でさぼってたら、目の前にお手柄が落ちてきやがった!」

 

 手にもった鞘に入ったままの斬魄刀で肩を叩きながら、その人物は軽くステップを踏む。纏った死覇装。素足に草鞋。坊主頭に目元に赤い隈取。

 

 「ツイてるツイてる♪今日のオレはツイてるぜっ♪」

 

 それを見やるもう一人の死神。死覇装はもちろんとして、おかっぱ頭にした黒髪に、右の眉頭と目じりに派手な黄色の付け毛をした、美人ながらもどこかとげのある男だ。

 

 「そしてテメーはついてねえ」

 

 言いながら斬魄刀で坊主頭の男は一護たちを指してきた。

 

 一護たちが砂穴の中から見上げるの他所に、男は再びステップを踏んで踊り出した。

 

 それを横目で見ながら、一護は内心で思う。

 

 変なのばっかりだな、尸魂界(ソウル・ソサエティ)。死後の世界って、もっと落ち着いたものかと思っていた。

 

 とりあえず、茫然と坊主頭の踊りを眺める岩鷲の襟首をつかみ、「何すんだテメエ?!」ともがく彼を、穴から引っ張り出して一緒に外に連れ出す。

 

 足場の悪いところでぼんやりするのはよろしくない。相手が躍って時間をくれているのだ。甘えて体勢を整えさせてもらおう。

 

 そうして穴から出てきた一護とそれに引っ張られる岩鷲を見やった男は、踊り終えてポーズを決めた直後、ニイッと笑う。

 

 「わかる奴だな!この俺の『ツキツキの舞』を邪魔することもなく、ちゃんと穴から這い出るたぁ!

 となれば、次はどうするかわかるよなぁ?」

 

 一護が無表情に男を見やっていると、その耳元に自由の身になった岩鷲がささやいてきた。

 

 「おい!隙を見て逃げるぞ!」

 

 「・・・そうか」

 

 「そうかじゃねーよ!わかんねえのか?!こいつらの霊力!そこらのザコ死神のもんじゃねえぞ!」

 

 だろうな、と一護は内心で思う。

 

 この周囲の霊圧の中で、この二人は跳びぬけて大きい。

 

 だが、と一護が反論するより早く、坊主頭の男が斬魄刀で肩を叩きながら言った。

 

 「なぁーにゴチャゴチャやってんだぁ?

 まあ、好きなだけモタモタと揉めるがいいさ。どれだけモタモタしてもテメーらがツイてねえことには変わりがねえ!」

 

 自信たっぷりに言ってのける坊主頭の男に、おかっぱ頭の男が口をはさむ。

 

 「でもあんまりモタモタしてると他の連中に気づかれて手柄横取りされちゃうよ?」

 

 「あん?そういやそうだな。

 よぉし!それじゃ制限時間を設けよう!俺がもう一踊りする間に」

 

 「とにかく俺は逃げるからな!闘いたきゃテメー一人でやれ!」

 

 吐き捨てるや、岩鷲は回れ右して逃げだした。

 

 一護はそれを横目で見やってから改めて目の前の死神に向き直った。

 

 「何だ?仲間割れか?」

 

 「みたいなものだな」

 

 怪訝そうな坊主頭の男の言葉に、一護は表情一つ変えずに答えた。

 

 「チッ、手間かけさせんなよ、弓親!」

 

 「わかってる」

 

 坊主頭の男の言葉に、弓親と呼ばれた派手な男が飛び出して岩鷲の後を追って走っていく。

 

 それを見もせずに、一護は坊主頭の男を黙って見つめた。

 

 「よお。訊くが、どうしてオメーは逃げなかった?」

 

 なおも踊るようにステップを踏む坊主頭の男は、一護を見ながら言った。

 

 「あのヤローは俺らの力が自分より上と見て逃げたんだろ?

 俺はあっちの方が正しい判断だったと思うがな」

 

 確かに、と一護は思う。

 

 前世、クレアに逃走がなかったとは言わない。むしろ、トラウマ物の記憶の一つにある。勝てない相手には逃げてもいい。死んだら終わりだ。それは骨身にしみてわかっている。

 

 だが、今はそうしない。する必要がないのが大きいのだが。

 

 「・・・あんたの力が俺より上なら、逃げることに意味はねえ。絶対に追い付かれるだろうからな。

 だが、あんたの力が俺より下なら、勝てばいいだけの話だ」

 

 淡々と言いながら、一護は斬月の握りに手をかける。

 

 「それに、鬼ごっこは好きじゃねえ。どうせ追い回してダルマにするんだろ?笑いながら手足を切り刻むんだろ?それはごめんでな」

 

 何事か言いかけた相手の言葉をさえぎって、一護は吐き捨てた。

 

 オフィーリアに追い回されてなぶりものにされたのはトラウマだ。高速剣の修行と、覚醒者になった彼女を打倒していなかったら、悪夢にうなされていたに違いない。

 

 「するかそんなこと!誰だそんなサイコパス!」

 

 「? しねえのか?」

 

 「しねえっつってんだろ!言っとくが、弓親――もう一人もしねえからな!」

 

 ドン引きと言いたげに叫ぶ男に、一護は無表情のまま首をかしげた。

 

 「一人くらいいるんじゃねえのか?強い自分は何やってもいい、一般人だろうが敵のついでに切り刻んじまえってやつ」

 

 「いねえっつってんだろ!どっから沸いたそんな最悪な発想!」

 

 おかしいな、と一護はさらに首をかしげた。前世の組織じみた感じのする護廷十三隊とやらなら、一人くらいいてもおかしくなさそう、と思ったのだが。

 

 ともあれ。

 

 「まあいい。それじゃ」

 

 気を取り直した男の殺気がはじける。

 

 「始めようぜ!」

 

 抜刀と同時に切りかかってくる男の攻撃を、一護は一歩引いて除け、斬月を振り下ろす。『風斬り』ではない。市丸のように見抜かれないように、ここぞというときにするためだ。

 

 だが、それは男が反対の手に持つ鞘にいなされる。

 

 握りのすぐ上、刃の境に差し込むように受け止められた一護は、男が鞘を弾くのに合わせるように大きくのけぞる。ブリッジするように体を曲げて追撃の刀をかわし、そのまま頭を振り子のように動かし、切りかかる。反動で斬月に勢いをつけ、地面スレスレに刃を振って、男の足を狙う。

 

 「ぐあっ?!」

 

 ふくらはぎを切られた男は、一護目がけて刀を振り下ろすが、一護はそのまま、体をコマのように回転するように動かして、ついでに斬月を振り回すことで刀を弾いて距離を取る。

 

 「妙な動きをしやがる・・・」

 

 不敵な笑みを浮かべる男を、一護は攻撃が掠った右目の上はそのままに、見据える。

 

 

 

 浦原との勉強会、(ウルル)との戦いにも使った技。頭を振り子のように動かして、その反動で地面スレスレの攻撃を繰り出す技。

 

 それは、古きナンバー1の『戦士』、カサンドラが用いた異種体術。

 

 まるで泥を咬み、地を舞う塵を貪るような醜いありさまだという嘲りとともに、その技は『塵食い』と呼ばれている。

 

 残念ながら、一護は乱用はできない。頭を振り子のように動かすという動作都合で、使いすぎると三半規管がおかしくなってバランス感覚を失ってしまうからだ。

 

 だが、回避とカウンターを一挙になし、相手の意表をついて手足を削げるという点で、この体術は非常に優れていた。

 

 常用はできずと、動きに織り交ぜるくらいはできる。

 

 

 

 「一応、名前を訊いとこうか」

 

 「黒崎一護」

 

 「一護か、いい名前じゃねえか」

 

 「そうか?名前を誉められたのは初めてだな」

 

 構え合ったまま、二人はポンポンと会話する。武器を構え血を流していなければ、街角でかわされてそうな、親しみさえ感じる会話を。

 

 「ああ。名前に一の付く奴ぁ、才能あふれる男前と相場は決まってんだ」

 

 言って、男は高らかに名乗りを上げる。

 

 「十一番隊第三席副官補佐!班目一角だ!

 一の字同士、仲良くやろうぜ!」

 

 「断る」

 

 ぴしゃりと一護は言い放った。

 

 垂れてきた血が片目をふさぐが、一護は気にした様子も見せなかった。この程度、前世からよくあることだ。頭の傷は怪我の割に出血が派手になりやすい。

 

 「片目がつぶれて大変だな?」

 

 「・・・問題ねえ」

 

 からかうような調子の一角をよそに、息を整える。集中して、霊力と霊圧を読む。視界が半分つぶれた程度何だ。

 

 神眼の異名を持つガラテアは、組織からの脱走の際に自ら目をつぶしたが、妖気を読むことにかけては以前以上になっていたのだ。彼女ほどではないけれど、一護にだってできるはず。

 

 見えぬ視界は霊圧を読んでカバーすればいい。集中するのだ。

 

 「はっ!こりゃいい!一流の戦士だ!反応は上等!打ち込みは激烈!妙な体術を使うがこの俺に迫る体捌きだ!」

 

 一角が言った。

 

 微妙に上から目線なのが気に入らないが、褒められているのだろうか。

 

 「おい。褒めてんだぜ?もうちょっと嬉しそうな顔をしろよ」

 

 不満そうに口をとがらせる一角は、次の瞬間真面目な顔をした。

 

 「ただの戦い好きの素人の“本能”で片付けるにゃ出来すぎだ、ってな。

 ・・・師は誰だ、一護」

 

 問われた一護は黙して答えない。

 

 一護の戦いの基礎は前世にある。

 

 前世、『戦士』となるべく、訓練場で教わった。クレイモアの振るい方、妖魔の狩り方、妖気の扱い方。そのすべてを。と言っても、そこでは基礎だけだ。

 

 今繰り出している『戦士』の技は、後年出会った戦士たちから教わったり、身につけたり、見様見真似しているだけのものだ。

 

 一応、こちら――今生で師と呼べる人がいるとすれば。

 

 「・・・10日教わった程度だ。師と呼べるかはわからねえぞ」

 

 「誰だ」

 

 「・・・浦原喜助」

 

 ややあってポツリと言った一護に、一角の顔色が変わった。

 

 やはりあの男、有名人か。そうだろうな、実力は『戦士』換算で一桁上位ナンバーに相当するのだろうから、と一護は内心で思う。

 

 「そうか・・・あの人が師か・・・」

 

 つぶやいて一角は、鞘を持ち上げる。

 

 「それじゃあ、手ぇ抜いて殺すのは失礼ってもんだ」

 

 言うと同時に、一角は刀の柄頭と鞘の鯉口をガツッとぶつけるように合わせ、朗々と叫んだ。

 

 「延びろ!『鬼灯丸』!」

 

 すると、鞘と合わさった斬魄刀が一変した。長い柄に片刃の刃、反対側には赤い房飾りのついた――長い槍になったのだ。

 

 いや、あれは本当に槍か?蛇尾丸の例がある。単純に形が変わるだけじゃないと思っておいた方がいい。

 

 加えて。

 

 一護は少し眉間に皺を寄せる。やはり斬魄刀が解放されるとその霊圧が引き上がり、読みにくくなる。

 

 もっとも、こちらも“リハビリ”でだいぶ鍛えたのだ。かなり慣れたはずだ。

 

 ()くぞ、斬月。

 

 一護が内心でそうつぶやくと、斬月の握りがほんのり熱を持ったような気がする。

 

 「驚いてる暇ぁ無えぞ一護!いくぜ!

 見誤んなよ!」

 

 繰り出された突きを、首を動かして回避。そのまま一角は持ち手を逆手に、房飾りのついた方で、連続突きを放つ。

 

 それをよけ、斬月でさばき、一護は間合いを取ろうとする。だが、そうはさせじと一角が追い迫る。

 

 槍のような鋭い武器と戦うことは、前世(クレアだった頃)にはなかった。大体は同類の『戦士』と手合わせでクレイモアを打ち合い、あるいは妖魔や覚醒者などの己が身こそ最大の武器とする連中と戦うことがほとんどだ。

 

 だが、覚醒者は槍じみた触手攻撃を繰り出してくることが多く、その数もいっぺんに複数ということが大概だった。

 

 あれらと比べると、一角の攻撃は一点だけ。非常に読みやすい。否。

 

 次の瞬間、一角が鬼灯丸を振り下ろす。

 

 それを斬月で受け止めもせずに、一護は身をずらしながら踏み込む。

 

 「っ?! 裂けろ!鬼灯丸!」

 

 ぎょっとしつつも一角が叫ぶ。

 

 号令とともに、鬼灯丸の柄が3つに分かれるが、それは一護の左頬を掠っただけ。

 

 振りぬいた斬月が、一角の脇腹を深くえぐる。

 

 「三節棍か。最初の攻撃は、こちらに自分のリーチを誤認させるためだな」

 

 血が噴き出る脇腹を片手で押さえて呻く一角に向き直り、その首にかけられた鎖でつながって折れ曲がる鬼灯丸を見ながら、一護は淡々と言った。

 

 直前の霊圧変動がなければ、まんまと騙されていたことだろう。下手にさがるよりもとダメージ覚悟で思い切って踏み込んで正解だった。

 

 「っ、見抜いてやがったか。やるじゃねえか」

 

 「まだ続けるか。退くなら追いはしねえ」

 

 痛みをこらえながらも不敵な笑みを浮かべる一角に、一護は表情一つ変えなかった。

 

 「退く?退くだと?」

 

 一角がゆるりと踏み出した。

 

 「なめんじゃねえ!十一番隊は不退転だ!」

 

 ぼたぼたと噴き出る血をものともせずに、一角が踏み込んできた。

 




 そうしてこの話は続くのだ。





 バトルの順番は変わりませんが、クレイモア一護君は結構優勢に進みます。あれでも、まだ全盛期のクレアには及ばないんですけどねえ。いろいろ発展途上なのです。
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