ラインハルト家の息子。金髪蒼眼の少年である。頭が良く齢10歳にしてモビルスーツを一人である程度整備出来るように機械工学を独学で勉強していた。
家族は祖父のエド・ラインハルトのみであり、両親はヘルガーが幼い頃、仕事でコロニーに向かう途中海賊に襲われて死亡している。
祖父であるエド・ラインハルトが死去した後はエドが経営していた会社をたたみ僅かな遺産としてモビルスーツとモビルスーツを保管する倉庫、そして少量の金だけを残して残りを従業員の退職金に当てる。
その後、生活する為にCGSに入社、その時に阿頼耶識を取り付ける事となる。
宿舎から出て暫く建物の廊下を歩いて行き玄関から外へ出る。外へ出ると少し遠くにある食堂にはもう既に皆集まり、食事を受取り始めていた。
「あー…やべぇなハエダの野郎にまたグチグチ言われそうだ」
CGSには2つの部隊が存在する。1つは1軍と呼ばれる大人だけで構成された部隊、そしてもう一つが俺が所属する参番組。こっちには子供、つまり少年兵のみで構成されている。なぜ1軍と参番組と名前が違うのかは分からんがどうせ大人共が俺らが3軍とか名乗る事が気に食わないんだろう。
CGSの大人は皆クソ野郎だ。禄に実力も無い癖に威張り散らすバカに自分達の仕事を押し付けておいて報酬だけは掻っ攫うクズ、そして俺ら参番組の子供達をただの弾除けにしか考えてねぇ野郎どもばかりだ。そんな1軍の隊長がハエダ。禄に訓練もしてねぇ癖に無駄にデケェ図体を活かして殴って来るもんで少年兵の中でも歳が低いチビ共は怖がってしまっている。
出来る事なら反抗したいがしようもんなら周りの子供に被害が飛び火するし何十人といる大人共にリンチにされるだけだ。だから我慢するしかねぇ。
「ん?おーう!やっと来たかヘルガー!早く並べよ!!」
朝からハエダの事を考えるとか言う吐き気を催す様な事をしちまって勝手に苛ついてた俺に気付いたのか、飯を貰う列に並んでいた一人の男に声を掛けられる。
「おぅ、朝から元気だなシノ」
「おうよ!今日はモビルワーカーで三日月と演習すっからな!朝から気合入れてんだよ!」
元気良く喋る短髪のこの男の名はノルバ・シノ。モビルワーカー隊の隊長をしている男であり、モビルワーカーの腕前も上位の奴だ。
「ヘヘッ…いっつもクソ早く起きてたあのヘルガー様の情けねぇ寝顔バッチリ拝ませてもらったぜ?」
「あぁ?うっせぇなユージン。昨日誰かさんが隣でゴソゴソと動いてたせいで眠れなかったんだよ」
「なっ…!おまっ!起きてたのかよ!?」
シノの隣から俺の寝坊をイジろうとして思わぬ反撃を食らったのか焦って掴み掛かってきたこの男の名はユージン・セブンスターク。少し熱くなりやすくて思慮浅い奴だが弄ると面白い反応を返してくれる。
「まぁまぁ…二人とも落ち着いて、ね?」
「たくっ朝からほんと元気だなお前ら」
「おうビスケットにオルガ、おはようさん」
「あぁ、おはよう」
「おはようございます。ヘルガーさん」
シノとユージンより前に並んでいた二人の男がこちらに振り向いて話しかけてくる。一人は一応警備会社として経営しているこのCGSで日夜訓練してるのに何故かふくよかな体型を維持してるビスケット・グリフォン。そしてもう一人は俺ら参番組を纏める隊長でどうしたらそんな髪型になるのか気になって仕方ない褐色肌の男、オルガ・イツカの二人だった。
「おらユージン、そろそろ手話してやれ」
「ぐっ…チッ!ぜってぇ今日の訓練で泣かしてやる…!!」
「ハッ!出来るもんならやってみな自家発電ユージン君」
「このっテメェ!!」
「やるか!?」
俺の煽りに切れたのか一度離したその手をまた掴みかかろうとするユージンに対して迎撃しようと構えた瞬間、俺とユージン二人の耳が思いっきし下に引っ張られ耳に痛みが走った。
「イテテテテッ!?」
「グオッ!?」
俺らの耳を引っ張った犯人へと視線を向けるとシノやオルガ、ユージン、そして俺よりも1周りほど小さい男がそこに居た。
「二人ともオルガが辞めろって言ってるんだし喧嘩辞めなよ」
「痛い痛い!ちょ三日月マジで痛いから離してくれ!!」
「悪かった!悪かったから!仲直りすっから!頼む離してくれよ!!」
俺らの反省の言葉で許してくれたのか耳を掴んでいたその手を離してくれた男の名は三日月・オーガス。この参番組の中で一番のモビルワーカー乗りだ。
「オー痛ぇ…すまんかったユージン。流石に弄り過ぎた」
「クソッ…耳引きちぎれてねぇよな…?あぁ、いやこっちこそすまん…」
お互いに引っ張られた耳を摩すり気にしつつ謝る。弄るといい反応してくれるとは言え流石にやり過ぎてしまった…反省しなければ。
「二人とも仲直りしたね?それじゃ進もう?列かなり進んでるよ」
「だな。おら二人とも行くぞ」
「「お、おう」」
三日月はオルガ達より前に居たのか前の方の列に戻って行くのを見ながら、ユージンと互いに顔を見合わせて列に並び直した。
「たくよー俺等が必死こいて仕事したりしてんのに飯は1軍の野郎どもが掻っ攫った残りモン見てぇなものしか食えねとかムカつくぜ」
飯を受け取った俺等は席について早速飯を食い始めたが、途中でお椀の中に入れられたコーン粥をスプーンでくるくると混ぜながらユージンがそう呟く。
「確かになぁ…せっかく頑張っても飯は多くねぇたいして上手くもねぇコーン粥だけだとやる気も無くなるぜ」
それに同調する様にシノも愚痴を零す。まぁシノとユージンの言いたい事も分かる。どんだけ頑張ろうが俺らの飯は残飯擬き、たいして1軍の野郎どもはタコスにサラダといいもん喰ってやがるからな。
「仕方ねぇさ1軍も社長も俺等のことは使い捨てとしか思ってねぇんだからな」
「……おいオルガ、お前がそんなんだから舐められるんじゃ…!」
「落ち着けユージン。どっかのタイミングで転機は来るさ、それまでは我慢しろって」
オルガの物言いに苛ついたのか隣にいたユージンが立ち上がろうとしたのを肩を掴んで止めて落ち着かせる。また喧嘩なんてなろうもんならまーた三日月から耳引っ張られるだけだってのにこいつは…。
「でもよぉ!」
「まぁまぁ落ち着いてよユージン。でも確かにオルガこのままずっとはちょっとアレだよ…」
「分かってるさ。ヘルガーも言っていたようにどっかのタイミングで転機が訪れる。そん時になりゃどうにかしてやるさ」
「なら良いけど…」
どうやらオルガにも一応考えは有るらしい。オルガに任せときゃある程度は大丈夫だし、取り敢えずこの話は終わらせるか…。
「うっし!ごっそさん!!おい三日月、早速やろうぜ!演習!」
「ングッ、分かった。ご馳走様でした」
「ちょおい待てよ!俺も参加するんだからな!ハグハグッ!!ゴクッ!ごっそーさん!!」
シノが食べ終わったのを皮切りに三日月も食べ終わり、ユージンは急いでコーン粥を掻き込んで食器を流しに持って行ってしまった。
「はぁ…たくっあいつらマジで元気だな」
「ダナー」
俺とオルガ、そしてビスケットはゆっくりと飯を食いながら他愛もない会話をし始める。すると俺等の席の後ろに居た奴が席を立った。
「ん?おぉ明弘、おはよう。お前も演習するのか?」
「あぁ」
「そうか、俺も後で参加するから頑張れよ」
「……」
席立った短髪で黄色肌をしている男の名は明弘・アルトランド。参番組の中で一番ガタイがいいゴリラだ。明弘も演習に参加する為、頑張る様エールを送るも無視されてしまった。
無視された俺はオルガ達の方へ顔を向き直し見合わせるとやれやれとジェスチャーをする。するとオルガからは深いため息とビスケットからは苦笑いが帰ってきてしまった。
そうして暫くした後、俺等3人は飯を食い終わり各々やる事をする為に別れる事となった。
取り敢えず俺は三日月達の演習に参加する前に年少組の訓練を軽く見てやる事になっている。その為訓練場へと足を運ぶと早速年少組の皆は飯を食い終わって居たのか既に訓練の準備を始めていた。
「エンビ、エルガー!ヤマギィ連れて倉庫に置いてある地雷持ってきて!」
「「りょうかーい」」
年少組のリーダーとしてタカキが子供達に指示を出している姿が見え、タカキの元へと近づいて行く。
「精が出てんなタカキ」
「ヘルガーさん」
「ほんの少しだけだが訓練見てやるよ。つっても今日は地雷設置訓練だからあんま意味ねぇけどな」
「そんな事無いですよ。ヘルガーさんが見てくれている間、1軍の奴等、あんまり殴って来ないですから」
「そう言ってくれると助かるよ。うしっ!俺も手伝うぜ。何持ってくりゃ良い?」
「ホントですか!じゃあシャベルをお願いします。今ダンジにも頼んだんですが物が物だけに重いので…」
「おう!任せとけ」
軽くタカキと会話し、頼まれたシャベルを取りに行く為に倉庫へと足を運ぶ。するとそこには茶髪の少年、ダンジ・エイレイが4本ほどシャベルを抱えて倉庫から出てくるのが見えた。
「おーいダンジ!手伝いに来たぜ」
「ん?あぁヘルガーの兄ちゃん!助かるぜ!こいつ重いからさぁ」
「おう。取り敢えずダンジ、お前はシャベルを倉庫から外に出すのを頼むわ。俺が訓練場まで持っていくからよ」
「分かった!じゃあ取り敢えずコレお願いね!!」
ダンジは直ぐ様抱えていたシャベルを地面に下ろすと倉庫へと走って行ってしまった。俺も早速しゃがみ込み、シャベルを肩に乗せて立ち上がる。
「おう…よいっ…しょっと!案外重てぇな」
そうして暫くして訓練の準備が終わり早速地雷設置訓練を開始し始める。
「この地雷は爆破するとそれなりの威力があるし、モビルワーカーとかのデカさそれなりに有るから地雷の設置感覚をちゃんと考えて埋めろよー」
「「「はーい」」」
時には全体へ説明をしたり、
「ヤマギィ、その地雷はもう1m左に寄せた方がいいぞー」
「分かった」
個別にアドバンスをしたりして訓練を勧めて行く。
そうやって訓練を続けているときったねぇ声を出して二人の男共が近付いてきた。
「クソが…なんで俺がガキ共なんかの訓練見ねぇと行けねぇんだ…!オイトド!お前が禄に仕事しねぇからだぞ!?」
「す、すいません!へへへ…」
1軍クズ共が二人、ササイとトドの二人組だった。ササイはハエダの取り巻き、腰巾着。トドは俺等参番組の教育、指導係だが仕事なんて大してした事もないカス野郎だ。
「だいたい…!あ?オイなんでお前がここに居るんだよヘルガー!」
「チッ…!ハァー…トドさんが朝から少し体調悪そうにしてたんで少しの間だけこいつ等の訓練見てやることにしたんですよー」
クズなこいつ等に下手に出るなんて腸煮えくりそうだが我慢して適当な嘘をでっち上げる。ちなみにこう言う嘘は何回もしてきてる。まぁその嘘は毎回トドを使ってるんだが…
「あぁ?またかよおい!トド!テメェどんだけ体調崩すんだよ!!」
「へへへ…いやぁちょっと胃の調子が悪いみたいでぇ…」
トドはこう言う嘘を付くときは乗って来る。別にトドが子供達への理不尽な暴力を憂う優しい大人とかでは無く、体調不良って事にしとけばある程度合法的に仕事サボれるからだ。全く持ってクズである。
まぁそんな訳でここに俺が暫く居ても文句言われる事は無くなったのである程度時間が経つまでは年少組の訓練を見てやる。
そうしてある程度時間が経ち、これ以上ここに居ると流石に文句言われ始める頃合いになった。
「そんじゃトドさん。ある程度体調も戻ってきたそうですし俺は演習に参加しますんでこれで」
「お、おう。ありがとなー」
一応嘘とはいえトドの代わりにって事でトドに声を掛けるがお互い目が友好的じゃない。俺の方は当然クソ野郎って冷めた目で睨みつけるし、トドの奴はもっといろやガキが…!って苛ついた目付きをしている。
「んじゃあタカキ、俺はそろそろ行くから頑張れよー」
「了解です!ありがとう御座いました!!」
「「「ありがとー!!」」」
まぁ海洋生物野郎なんかの目なんて見ても気持ちが良いものでも無いし、タカキ達にも声を掛けて訓練場を後にする。
そしてモビルワーカーが置いてあるドックへとやって来た俺は背中の阿頼耶識に専用の機械を取付けた後、自分用に黒く塗装されたモビルワーカーに乗り込んで阿頼耶識とモビルワーカーを接続する。
そして接続できた事を確認した為、演習をしているシノ達へと通信を繋げる。
「お前ら待たせたな。こっからは俺も参加だ」
『やっと来たかヘルガー!』
『おっしゃ!後は三日月が戻ってくるのを待つだけだな!!』
モビルワーカーを動かして演習場へ向かう途中、シノの言葉にふと立ち止まる。
「ん?三日月来てないのか?食堂で一緒に行ったんじゃないのか?」
『あぁさっきまでは居たんだよ。ただなんか社長がオルガを呼んでるとかで三日月の奴がオルガ探す様に言われたんだ』
「なるほどね。理解した」
俺の質問にユージンが答えてくれてシノの言葉の意図が分かった。それじゃ恐らく直ぐに三日月も戻ってくるだろうし待つか…
それまでの間、軽く雑談でもするか。
「んじゃ待ってる間暇だし…今の所誰が勝ってんだ?」
『えーと5戦ぐらいして…三日月が勝ったのが3回、俺が三日月の空きを突いて1回、明弘が三日月と相打ちで終わったのが1回だな』
どうやら三日月の奴が今の所トップらしいな。それにしても…
「ユージンくーん?1回も勝ててないみたいだがそんなんで俺を泣かせられるのかなー?」
『くっ…!テメェヘルガー…!ぜってぇ泣かしてやる!!』
ユージンを煽るとやっぱいい反応を返してくれる。そうやって俺等はユージンを煽ったり適当に雑談したり、またユージンを煽ったりして時間を潰していた。
『おまたせみんな』
そうしてほんの少し時間が経った後、三日月からの通信が飛んできた。
「おう。大して待ってねぇよ」
『あれ?ヘルガーもう来てたんだ』
「おう」
三日月が俺が来ていた事に気付いたのか軽く会話する。
『よっしゃあ!三日月も来たことだし早速再開するか!!』
『次は勝つ』
『ヘルガー…泣かしてやるからな…!』
「やってみろや」
『次も負けない』
モビルワーカーパイロットの中でも上位5人が揃った今、演習とはいえ本気の戦闘が今から起ころうとしていた…。
ユージンの事をかなり煽るヘルガーですが仲は別に悪くないです。お互い戯れ合う感覚で煽っては切れるをしているだけです。
ただ朝のヘルガーの発言には流石にバラされたくないこと言われてしまった為ガチで切れてます