もう一匹の悪魔   作:華風鱗月

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運命の日 その2

 演習場にそれぞれ色が異なるモビルワーカーが5台存在している。黄色のユージン機、マゼンタのシノ機、青い明弘機、黒の俺の機体、そして白い三日月のモビルワーカー。この5台がそれぞれ距離を取って今から始まる戦闘を今か今かと待っていた。

 

『えー、じゃあ今からシノ、明弘、ユージン、ヘルガー、三日月の5名による演習開始のカウントダウンを始めます』

 

 俺等5人のモビルワーカーが互いに睨み合いを利かしている中、通信が入る。声の主はダンテと言う男だ。

 

『開始まで5秒前』

 

 カウントダウンが始まった。俺は目を閉じてこれから起こる戦闘に集中し始める。

 

『4』

 

 思いっきり空気を吸って肺の中に酸素を満タンにする。

 

『3』

 

 肺の中に入れた酸素を次は完璧に無くなるまで吐き出す。

 

『2』

 

 操縦レバーを力いっぱい握る。

 

『1』

 

 閉じていた目を開けてカメラを睨む。

 

『スタートぉ!!』

 

 戦闘開始の合図が通信越しに鳴り響き、戦いの火蓋が切られた瞬間、思いっきりペダルを踏み抜いてモビルワーカーを前進させる。

 それと同時に他の奴等の動きを確認すると、明弘とシノは三日月の方へと真っ直ぐ突っ込んで行っている。大してユージンは…

 

『ヘルガァー!!!』

「そら俺狙いだよなぁ!!」

 

 俺の右隣に居たユージンは通信をオープンチャンネルにしたまま俺へと突っ込んでくる。が、俺はユージンの相手はせずにそのまま真っ直ぐ三日月の方へと向かう。

 

『なっ、待て!!』

 

 ユージンは一瞬遅れて機体の進行方向を曲げて俺の後ろを追い掛けて来るのをレーダー越しに確認する。今の状態だとユージンにモビルワーカーのケツを取られてるせいで俺の方が不利に見える。が演習用のペイント弾の射程距離は把握済み。今の距離では逃げる俺に当てる事は出来ない!!

 

「迂闊に追い掛けるのは辞めといたほうが良いんじゃねぇかぁ!?そらよっと!!」

 

 ブレーキのペダルとアクセルのペダルを同時に踏み抜きつつレバー動かし、ユージンから逃げていた俺のモビルワーカーを反転、ユージンのモビルワーカーと向き合う形にする。

 そして完全にモビルワーカー同士が向き合った瞬間アクセルのペダルから足を外して全力でバック走行に切り替える。

 

『なっ、しまった!?』

「おらぁ!!」

 

 そのままレバーに付いているボタンを押して機銃を発射、ペイント弾がユージンの方へ打ち出されていく。

 追い掛けるユージンは幾らペイント弾を撃っても射程外、逆に追い掛けられる俺は相手が勝手に近づいてくれるもんだから当て放題のこの状況が完成した。だが…

 

『うぉー!!!』

 

 ユージンの奴め、ペイント弾が当たる直前にモビルワーカーの進行方向を俺から見て左へと曲げて避けやがった…!!

 クソッ…!今ので落とすつもりだったのにこれじゃ盛大な隙を晒しただけじゃねえか…!!

 今の状況は三日月の元へと向かっていた俺が三日月達にモビルワーカーのケツを向けた状態で向かっていっている。このまま三日月達の所に到着しようもんなら俺が蜂の巣にされてしまう。

 それだけは真っ平ごめんだから直ぐにレーダーとモビルワーカー後部を移しているモニターを確認して三日月達の距離と状況を確認する。

 

 距離はまだ多少余裕がある…!状況は…三日月の奴が明弘とシノ機体の間を縫ってこっちに来てやがる…そしたら…

 

「よっと!」

 

 機体をバック走行からまた回転させ此方に向かってきている三日月へと向ける。そのまま三日月へ向かって牽制としてペイント弾を発射するが当てるつもりの無い弾だが真っ直ぐこちらへ向かってきている三日月にとっては脅威である為、三日月はモビルワーカーを動かし避けていく。

 

 そうして三日月のモビルワーカーの向きが少しズレた瞬間ドリフトをする。すると大量の土煙が発生して三日月の視界を遮った。

 

 目くらましの土煙ではあるがレーダーのせいで三日月からでも俺のモビルワーカーの位置はある程度把握出来る。だから土煙を起こしたあとはすぐ様その場を離れて距離を取る。

 

 そうすると反撃されないと分かり切っているように土煙の中から三日月の奴と三日月を追い掛けていたシノのモビルワーカーも飛び出して来た。

 

『オラァ!今回の一番の離脱者にしてやるぜ三日月ぃ!!』

 

 シノはペイント弾を三日月に向けて乱射するが三日月は巧妙にモビルワーカーを操作して避けながら反撃する。三日月の放ったペイント弾は数発シノのモビルワーカーに着弾し、皮肉にもシノが真っ先に離脱者になってしまった。

 

『まじかよ!?』

 

 シノの驚きの声が聞こえる中、距離を取って離れていたユージーンの姿が見えた。ユージーンは俺を狙おうとしているがどうやらユージーンの方は土煙のせいで上手く俺の位置を把握しきれていない様だ。

 

 奇襲を掛けるなら今だろう。そう考えユージーンが俺に気がつく前にあいつの視界外から急接近を始める。

 

『あ!?いつの間に…!』

 

 ユージーンが俺の接近に気がつくも既にペイント弾の射程内にモビルワーカーを捉えペイント弾を射撃開始する。ユージーンは機体を動かし避けようとするも視界外からの接近のせいで対応が遅れ俺のペイント弾が着弾する。

 

『くそ…!ヘルガーの野郎!!』

「へへっ戦闘中に敵を見失うから負けるんだぜ?」

 

 行動を止めたユージーンへ煽りを忘れずに入れていると視界の端に三日月のモビルワーカーがこちらへ銃口を向けているのを捉える。やべっユージーン落とす為に三日月から目を逸らしてたせいで狙われてるじゃねえか!

 

「アッブねぇ!」 

 

 三日月のモビルワーカーから発射されたペイント弾をギリギリ避けてその場を離れる。すると三日月の後方から空きを伺っていた明宏が三日月へ奇襲を仕掛けるが簡単に避けられてしまった。

 

『このタイミングで躱すかよ!三日月・オーガス…!!』

 

 余裕で躱した三日月は明宏に向かって反撃を行い明宏を撃墜する。これで残ったのは俺と三日月の2人、つまりタイマンになった訳だ。

 

 三日月の奴は残りが俺だけと言う事で真っ直ぐコチラへと向かってくる。対して俺は後方に下がりながら三日月に向かってペイント弾を乱射する。

 

 だが1度目の時とは違いシノと明宏に追われていない三日月にとって対して狙いを定めいない攻撃など高が知れているらしく三日月は余裕を持って回避する。

 

「だがおかげで距離を取れた!」

 

 回避する為に移動した為に三日月のモビルワーカーと俺のモビルワーカーの距離はかなり離れた。これで一旦場の仕切り直しが出来る。モビルワーカーを反転、全力でアクセル全開にして三日月から逃げ出す。

 

 もともと三日月は至近距離での戦闘を好み、それに伴うように近距離戦が得意な傾向になっている。おかげで近付かれると何も出来ずにやられる事が多々あるのだ。

 

『頑張れよヘルガー!』

 

 三日月に追い掛けられながらどのタイミングで三日月へ攻撃しようか考えているとシノから通信が入る。どうやら三日月とのモビルワーカーによるチェイスはぐるっと一周して元の場所に戻って来ていた様だ。

 

「丁度いい、シノを壁として使わせてもらうか!」

 

 シノのモビルワーカーは撃破扱いの為に演習中はその場に待機している。そのモビルワーカーを壁として利用させてもらう事に決めてシノへと近付いて行き、ドリフトを決めながらシノの後ろに隠れる。すると隠れた瞬間、

 

『うぉぉ!?ちょ、三日月攻撃してくんな!俺もうやられてるって!』

『ごめん』

 

 どうやら俺がシノの後ろに回った瞬間に三日月がペイント弾を発射したらしくその殆どがシノのモビルワーカーに着弾したようだ。恐らく一瞬でも後ろに回り込むのが遅れていたら俺も撃ち抜かれて撃破されていただろう。

 だが実際は違うし、なんなら三日月はシノに攻撃してしまって一瞬だが硬直したようだ。

 

「チャンス!初めの1勝は貰うぜ三日月ぃ!」

 

 ドリフト走行のままシノの後ろへ回り込んだ反対側から飛び出して三日月へとペイント弾を乱射する。対して三日月も直ぐに対処して俺へとペイント弾をばら撒いていく。

 

「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

 互いに引かずに撃たれるペイント弾を避ける為に移動しながらの撃ち合いの決着は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けたー!!」

 

 三日月との撃ち合いは俺の負けだった。三日月の硬直を狙って攻撃したにも関わらず三日月は直ぐに対処して反撃を行ったがその弾が直撃してダンテの終了の合図が聴こえて負けてしまった。 

 

「ヘヘッヘルガーの奴に1回勝ってやったぜ!」

「ぐぬぬぬぬ…!!」

 

 しかもなんならその試合後にもう数戦したのだがユージーンに奇襲を掛けられてやられるという意趣返しをされてしまった。そのせいでユージーンの奴がまぁ煽ってくる。

 

 一応全員1勝はしていて全敗した奴は居ないがそれ以外は殆ど三日月が勝ったか相打ちによる引き分けだった。やっぱ阿頼耶識を3回も打ち込んだら三日月の操縦センスも相まって強えーわ。 

 

「そういや三日月、オルガは何の用で社長に呼ばれたんだよ」

「さぁ?俺はオルガとビスケットを連れて来いとしか言われてないから」

「ふーん…ってオルガだけじゃなくてビスケットもか?」

「うん」

 

 話変わって俺が演習に合流する前にオルガを探しに行っていたと言う三日月に話し掛ける。社長が用事って事で何となく内容は分かるんだが…オルガだけならまた参番組に対しての文句とかだろうと思うがビスケットもとなると変わって来る。もしかしたら…

 

「もしかしたら俺達参番組に仕事入るかもな」

「マジかヘルガー!?」

「多分な。多分」

 

 シノの言葉に多分、と付け加えて答える。確実に仕事とになる訳では無いからな。これで違ってたら恥ずいし。

 

「でもなんで仕事なると思ったの?」

「ん?あぁそれは…「オルガとビスケットの2人が呼び出されたからだろ」…正解」

「どういう事だ?」

「つまりだな、オルガだけなら参番組への文句とかイチャモンだろうがビスケットもとなると話が変わる。謂わば参番組隊長とその参謀の2人が呼び出されたんだぜ?そうなりゃ仕事が入るって可能性の方が高いだろ」

 

 ユージーンの奴め、俺のセリフ全部奪いやがって…まぁユージーンの言う通りあの二人が呼び出されて何も有りませんって事は無いだろうし十中八九だが仕事に関連する話だろ。

 

「なるほど〜…」

「まぁ真実はオルガにでも聞こうぜ。今から昼飯だからあいつ等とも合流するだろうしな」

「だな」




5人の実力は
三日月>ヘルガー≧明宏>シノ>ユージーン

ただし状況やタイミング等でユージーンが三日月を倒す等が極希に発生する。
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