「俺達がお嬢様の護衛?」
あの後食堂で社長に呼び出されていたオルガとビスケットと合流して飯を食いながら二人に呼び出された要件に付いて聞くとまさかの護衛任務を貰ったらしい。
「お嬢様っていい〜匂いするんだろうな〜なぁ三日月!」
「お嬢様っても同じ人間なんだし、そんなに変わんないだろ?」
「ハァ〜?」
お嬢様ね…わざわざ地球行くってのにこんな警備会社の、しかも少年兵に直々にご指名って…なーんか胡散臭いな。
「女に飢えてない三日月さんにンな事言っても無駄ッスよ。はいヘルガーの兄ちゃん、水」
おっ、仕事内容に胡散臭さ感じてたらダンジが頼んでた水持ってきてくれた。
「サンキューダンジ」
ダンジから水を受け取るとタカキも近寄って来るのが見える。ん…?タカキの顔に別れるまでは無かった湿布が貼られているが、まさか…
「タカキ」
「はい!水ですか?」
「いやその傷…」
「あっ…平気ッス」
「平気ってタカキ…傷見せてみろ」
側にいた三日月もどうやら気がついたらしい。立ち上がってタカキの側に近付いて湿布を軽く剥がして傷の具合をみる。かなり強めに殴られてるのか青痣にはなっていないが赤く腫れてしまっている。
「これは…すまんもうちょいあの場に居ればよかったな…」
俺が居ればタカキ達の仕事の監視なんてササイやトドは仕事をサボるが流石に俺が居なくなればそうはいかない。アイツ等も最低限の仕事をサボっていると減給とかされるからな…
「いやホントに大丈夫ですよ。それにこの怪我は三日月さん達の演習を見てて手を止めてたのが原因ですから…自業自得です」
「いやでもなぁ…」
自業自得って言ったって何も殴る事は無いだろササイの野郎。そもそも地雷設置訓練なんざただの虐め目的の癖によ。
「でもあれだな?社長もよ、口だけの社員様より結局は俺等の力を認めてるって事なんじゃねーの?」
ユージーンの奴…万が一でもあのマルバがそんな事考えてる筈が無いだろう。アイツも一軍と同じで俺等を簡単に使い潰しても直ぐに替えが効く存在としか考えてない。
「で、これを切っ掛けによ、社員の奴等出し抜いて俺等が一軍になって…!」
「幾らマルバの親父が耄碌したって使い捨てのコマにしか思ってねぇ俺等を認める訳ねぇだろ」
オルガの言う通りだ。一軍の連中程腐っては居ないがそれでもマルバも同じクソな大人なんだ。
「……オイ…俺等参番組の隊長のお前がそんなだから何時まで経ってもこんな扱いなんじゃねぇのか!?」
あ、ユージーン切れ掛けてる。辞めとけよ隣三日月だってのに…朝の事忘れたんかコイツ。
「やめなよユージーン」
「そうだぞユージーン」
「うっせぇ、テメェ等は黙ってろ!」
ビスケットと二人で制止してるってのにコイツは…もう良いや、三日月が顔を顰めてるのが見えたしお仕置きされちまえ。
「大体テメェぐぁァァ…!!」
「また喧嘩かユージーン?俺は嫌だな」
ほらお仕置きされた。朝も俺と二人で喧嘩になり掛けて耳を思いっきり引っ張られたってのに、学習しない奴め。
「取れる、取れるって…!!」
「喧嘩じゃねぇよコレぐらい、なっ?」
「あ、あぁ!当たり前だろ!だから離してくれよ三日月、取れちまうよ!」
三日月と仲裁とオルガのフォローのおかげで喧嘩にはならなかったが三日月はずっとユージーンの耳を引っ張ったままだ。
「ほら三日月、オルガもああ言ってるし離してやれよ」
「分かった」
「クッソ…痛てぇ…」
「馬鹿だなぁユージーン、朝の出来事考えたら引っ張られる事ぐらい理解しろよ」
「うっせぇ」
ようやっと耳を離してもらったユージーンだが涙目のまま耳を摩っている。三日月の側で喧嘩なんてするから痛い目見るってのに…。
さて、色々あったが飯も食い終わったからペイント弾で汚れに汚れたモビルワーカー洗いに行きますか。
「俺モビルワーカーの洗車してくるわ」
「あっ、俺も手伝います!」
「お?マジか、んじゃあ助かるし頼むわ」
「ハイ!」
タカキが手伝ってくれる様だ。人手が増えるとその分直ぐに終わるし助かるぜ。
「オルガの奴何処にいんだ?」
タカキと二人でモビルワーカーを洗車している最中に途中から他の連中も合流して洗車を終え、その後の訓練等を行い殆どの人間が寝ている夜(夜警している奴等を除き)に俺はオルガに用があって社内を歩き回っていた。
「グッ!フッ!…良いか!俺のっ…方がっ…体重重いんだからな…!!」
「ハイハイ」
「ん?」
なんか聞き覚えのある声が…発生源的に近くの機関室か?
「お〜い誰か居るのか〜?ってお前らか」
「フッ…!あれ、ヘルガー?」
「よっ!」
機関室に居たのは三日月と明宏で何故かパイプにぶら下がって懸垂している。こいつ等トレーニングしてたのか。
「何か用か…!」
「いやオルガの奴探しててさ、二人ともあいつの居場所知らね?」
「オルガならおやっさんと二人で仕事で持ってく装備の確認をしに車庫に向かっていったよ」
「あ〜車庫か、見に行くの忘れてたわ」
そうか、おやっさんと装備確認してたのか。普通に食堂とか宿舎探してて盲点だった。
「じゃあ車庫に行ってみるわ、助かるぜ三日月。もう夜も遅いしトレーニングも程々にしとけよ〜」
機関室から出て直ぐに車庫へと向かう。三日月へ言ったようにもう深夜と呼べる時間で、とっとと用事を済ませて俺も寝たい。
「オルガはどの辺に〜…居た!」
車庫へやってくると直ぐに二人の人影を発見。一人は後ろ姿だが白髪と褐色肌が特徴のオルガともう一人は腹巻きを巻いている黒人の中年、先程三日月も言っていたおやっさんことナディ・雪之丞・カッサパさんの姿を見つけた。
「苦労するなぁ隊長…っと?ヘルガーじゃねぇか」
「アン?こんな時間にどうしたヘルガー?」
「ちょっとお前に用がな」
「俺に?」
なんか二人で会話してる途中だったみたいだが取り敢えず要件を済ませるか。
「明日の夜また抜け出すから一応報告しとこうと思ってよ」
「あ〜?明日ってお前なぁ…明後日には地球へ行くんだぞ?」
「まぁ良いじゃねぇかおやっさん。明日だな?抜け出すのは良いが朝までには戻ってこいよ?」
よし!オルガには報告も済んだしさっさと寝るか。
「分かってるって」
「ったく…しかしオメェ良く抜け出してるが何処に行ってんだ?」
そういやオルガには行き先伝えてるけどおやっさんには言ったこと無かったな。
「確かクリュセの外れにある倉庫街だろ?」
「おう、あそこにじいちゃんから貰った自分の倉庫が在るんだよ。そこでちょっとな」
「ホー倉庫ねぇ…何してるんだ?」
う〜ん、おやっさん気になるのか質問攻めされてる、だが教えるつもりは無い。
「無理だぜおやっさん。俺も前に聞いたがお披露目までは秘密だって教えてくれねぇんだよ」
「そうそう、見せるんなら初見の驚きを見たいからな!」
「見せるねぇ〜?そういやお前確か機械工学の勉強してたな。なんか作ってるってとこか」
ありゃ?おやっさん何してるのか言ったの今回が初めてなのにバレ掛けてる?流石おやっさん侮れない。仕方ないしヒントぐらいは出すか。
「まぁそんなとこだね。一つ言えるのは見たら絶対にビビるぜ?」
「ビビるねぇ…まぁ楽しみにしてるわ」
「おう!それじゃ俺は寝るわ」
おやっさんとオルガに手を振りながら踵を返して宿舎へと向かっていった。
翌日、昼頃に俺達参番組の依頼主であるクーデリア・藍那・バーンスタインがCGSに到着して地球渡航の段取りを取り決めたり地球へ行く為に用意した物資をトラックに積めるなどして1日を過ごしていた。
そうして夜になった頃、俺は車庫に安置されている大型バイクを押し出して会社から抜け出そうとしていた。
「ハァ…毎度言ってるがオメェ俺のバイク使うんは良いが壊すんじゃねぇぞ?」
「解ってるって」
「ったく…見つかった時の言い訳用についでにタバコ買って来てくれ。何時もの24時間営業の店でな」
「あいよ〜」
このバイクはおやっさんの私物なのだが会社からクリュセまで徒歩だと数時間は掛かる距離な為、抜け出す時は毎度借りている。
車庫から出て直ぐに星空を眺めて会話しているビスケットとオルガの存在に気が付く。どうやらあちらも俺の存在に気が付いたようだ。
「あれ?また抜け出すんですか?ヘルガーさん」
「まぁな、ちゃんと朝までには戻るから気にしなくて良いぜ」
「そうですか、戻ってくる時に社員に見つからないで下さいね」
「大丈夫だろ、アイツ等朝全然起きないし」
「そうですけど…」
ビスケットは頭が良い分物事を考え過ぎて心配性な気質が有るから俺の事も気にしてくれてるんだろう。
「それに最悪朝早くからおやっさんにパシられたとでも言えばなんとかなるべ」
「お前な…おやっさんが可哀想だろ」
「大丈夫だって!この案おやっさんのだし」
「マジか…」
おやっさんがもしも見つかった場合を想定してタバコ買いに行く様言われてるしな。一軍の連中も自分達のモビルワーカーを整備してくれて、尚且つ社長と昔からの仲であるおやっさんには強く言えないからな。
「じゃあそう言う事だから、言ってくるわ」
「おう」
「夜道に気を付けてくださいね」
オルガ達と別れて会社の敷地からある程度離れた場所からバイクに跨りエンジンを点火し星空が綺麗な夜道を風を感じながら走り出した。
ヘルガーのガンダムを早く出したい為ちょっと駆け足気味の回。おそらく次次回でガンダム登場&活躍になるかと。