こんな世界でも美味いコーヒーが飲みたい 作:yamaneko3
コーヒーに一番合うのはやっぱりチョコレートだと思うんですよね。
異論反論抗議質問口答えは認める。個人的にはチョコレートの中でも板チョコが好きです。チョコレートは、明◯!
コーヒーブレイク、という言葉をご存じだろうか。
それは、仕事や勉強の合間にコーヒーを飲み休憩する時間のことを指す。そして俺も、このきったねえ部屋で優雅なコーヒーブレイクを楽しんでいた。仕事も勉強もしてないけど。どっちかというと単なるコーヒータイム。
まあそれはどうでもいい。今日が作戦の決行日で胃は痛いが、そんなこともどうでもいい。どうでもいいったらどうでもいい。
問題なのはせっかくのコーヒーブレイクが、コーヒーがマズくてぶち壊しなことだ。付け合わせ(料理に対して使われる言葉らしいが俺にとってコーヒーは主食だから問題ない)があれば良かったんだが、レユニオンにそんな余裕はないと言われた。
ガスマスクボーイにレユニオンの奴をパシってもらおうとしたが、駄目だと断られた。
コーヒーは俺を扱う必要経費で、付け合わせはその範囲外だと言いたいのだろうが、俺にも言い分はある。
コーヒーの美味さはその品質よりも、ぶっちゃけ付け合わせの美味さ、食べ合わせの良さで決まると言っても過言ではない。だからこれは必要経費だ、と反論しようとしたらナイフを突きつけられた。大人しくなった。
結局暴力には逆らえないことに悔しくなったが、すぐにそれよりもコーヒーを飲み干したことに注意が行った。
「アッシュ、時間だ」
「......あいよ」
ガスマスクボーイに着いてこい、と言われて大人しく従う。今いる部屋もスラム街の中の建物だからすぐに作戦は始まる。もっと心の準備させて欲しかったな......。
「アッシュ、お前は俺と一緒にミーシャを探す。だがアーツは絶対に使うな。お前のそれは危険すぎる」
ガスマスクボーイに釘を刺される。たしかに俺のアーツは攻撃性が強いけど、"絶対に"とは、よっぽどそのミーシャって奴が大事と見た。
それに名前からして女の子......ほほーん、さてはそういうことだな?
「さてはお前、その女の子のこと好きだな?はあ、若いっていいなあ」
「ミーシャはそんなんじゃない‼︎」
ガスマスクボーイに怒鳴られる。顔はガスマスクで見えないが、雰囲気からして相当怒っている。そんな怒んなくてもいいじゃん。
恋絡みじゃないとすると、あとは家族か?姉か妹か、はたまた母親か。
そのミーシャって奴について、俺は何にも知らされてないからな。
このとおり何も知らなくて、楽しみはクソマズいコーヒーだけ、他に何にもないからふざけて聞いたのに、逆に損しちまった。
ガスマスクボーイの方を見ると、何やら他のレユニオンと話しているようだった。
「......ミーシャが見つかったらしい。すぐに向かうぞ」
若干の興奮を感じさせながら、ガスマスクボーイが俺含めレユニオンのメンバーに告げる。そう言われた直後にガスマスクボーイが走り始め、他のレユニオンも続く。遅れて俺も走るが、追いつけなくて差が付き始める。
「この野郎!こっちの身体能力考えやがれ!どれだけ俺がアーツ頼りだったかぐらいーーぐほぉ⁉︎」
叫びながら走ってたら転んだ。全身を擦りむいて、血を流しながらも立ち上がってまた走る。
ここで置いて行かれるとかあまりにもダサい。死に物狂いで追いついてやる。だがそうは言ったものの、俺の脚力では追いつけそうにないことも分かっていた。それでも全力で走る、何故ならーー
ーーあいつに無能だって思われたら何されるかわかんねえ‼︎
まだ俺は死にたくないんだ。
人間、必死で何かに取り組んでたら時間を忘れるものなのだろう。気づけばあいつのいる廃ビルに着いていた。階段を上って、ようやくガスマスクボーイの姿を見つけた。
「......見つけた......。ようやく......この日が来たんだ。ずっと、お前をさがしていた」
何やら敵っぽい奴らと話していて、ものすごく出づらい。敵と言っても、服装を見るとレユニオンよりよっぽど正義の味方っぽい。ミーシャ、と言うのはおそらくあいつが話しかけている熊耳の女の子だろう。
しばらく傍観していたら、なんか戦い始めた。えぇ......。俺どうしよう。今さら戦闘に入るのもなんかなあ。ま、いっか。もうしばらく様子を見よう。
それから数分、敵がミーシャを連れて逃げた。
もういいか、とガスマスクボーイに声をかける。
「逃したのか?」
「......お前、これまで何してたんだ」
「お前らが俺を置いていくのが悪いんだよ。それに、どうせ俺がいても役に立たないだろ。アーツ使うなって言われたしー」
俺の物言いに腹が立ったのか、無言になって怒っているオーラを出し始めた。怖い。
ガスマスクボーイは顎に手を当て何やら考え始める。次の策でも考えてるんだろう。まあ、アーツ使えない俺なんて一般人以下だし、今回動くことはないだろう。
「......お前、ミーシャを追いかけろ。必要なら、アーツを使っても構わない。......必要以上に傷つけたら殺すからな」
Fu◯king Goad!!ふざけんな‼︎
ああクソ、分かったよ、やればいいんでしょやれば。そんな脅さなくていいじゃんか。
「......了解」
これ終わったら少しはマシなコーヒー買ってもらうからな。
とりあえずミーシャが逃げた方へ歩く......走る。分かったよ、そんな急かすなよガスマスクボーイ。
ミーシャを追う、と言ってもどこに行ったか分かんないし、どうやっても時間かかりそうだな。
てことで見つけるまでカットォ!......誰に向かって言ってるんだ?
十分後
なんか建物の屋上で戦ってる!レユニオンは......何あれ?ジェットパック?俺も欲しい!
二十分後
やっと戦闘が終わった......。お、ミーシャ達が移動するみたいだ。別れた仲間と合流してる......仕事が面倒臭くなったな。まあ仕方ない、仕掛けるか。見た感じミーシャも鉱石病《オリパシー》のせいで弱ってるっぽいし。
ーーグルアァァァァ!!!!
突如響く獣の叫び。
もちろんこんな所に獣なんているはずもなく、その声の主は間違いなく俺であった。
「か、感染生物⁉︎」
「待って、アーミヤ。こんな種類は見たことないし、感染生物がここにいるはずもない。たぶん別物」
集団の内一人に冷静に対応され、盾から出た電流をもろにくらう。
さて、ここで唐突に俺のアーツについて説明しよう。
俺のアーツは獣化。文字通り獣になるアーツだ。といっても、その見た目はどの動物にも当てはまらないまさしく化け物といった見た目だ。
そして見た目相応に身体能力も上がり、ついでに凶暴性も上がる。今にも理性が吹っ飛びそうである。
ちなみに理性が吹っ飛びそうになる以外のデメリットは、
一定以上のダメージでアーツが解除される、である。
さて、今の状況は?
「人間?それもレユニオン......!」
「おーっと、待ってくれそこのお嬢ちゃん、銃なんて向けないでくれ。お願いだから。大人しくするから、ね?」
焦って情けなく一気に捲し立ててしまう。
そうは言っても警戒が解けるわけもなく、とりあえず手を上げておく。
「あなたはレユニオン......なのですよね?その......お話はできませんか?同じ感染者同士、話し合うことぐらい......!」
「ちょっと、アーミヤ⁉︎」
何だか生存の可能性が出てきたぞ?ここは話に乗って、隙を見てミーシャを連れ出すのがベストか。最悪連れ出すのが無理でも、時間稼ぎができればあのガスマスクボーイも許してくれるだろ。
「あー、そうそう、俺はレユニオンだな。話くらいなら全然オーケーだ。むしろウェルカム?」
「なんで疑問形なのよ......」
オレンジ髪にツッコまれるが、幸いあちらにもそこまで敵意はないようだ。そしてさっき話し合いを持ちかけてきたウサギ耳の少女が前に出てくる。
「......その、あなたはなぜレユニオンに?」
「あー......そうだな、趣味のため、かな」
「趣味?」
「ほら、感染者だから色々やれないことも多いだろ?だからレユニオンに.....というかまあ、ぶっちゃけ半ば脅されて......。いや、趣味のためってのも嘘じゃないぞ?」
時間稼ぎのこととか、色々考えてると質問に答えるだけでも緊張する。このウサギ耳の子も優しそうだし可愛いし、殺されはしないだろう。たぶん。
「......じゃあ、私達ロドスへ来ませんか?」
............ロドスって何?
えっと、こいつらの所属してる組織ってこと?じゃあ何で勧誘されてんの?俺さっきまで戦ってた奴の仲間だけど。
でもなんかウサギ耳の子も微笑んでて可愛い。話を聞かずに断るのもなんか嫌だな。まあ、話くらいなら聞いてもいいか。
「えっと、ロドスって何?」
「し、知らないんですか⁉︎レユニオンなのに⁉︎」
「え、あ、なんかすみません」
「えっと、ロドスというのは製薬会社なんですが、鉱石病《オリパシー》の治療や感染者を助けることを目的としていてーー」
戦っている組織の名前も知らない、ということにウサギ耳の子以外も驚いていた。
それからしばらく、ロドスという組織について教えてもらった。
感想としてはーー
「それ何て無理ゲー?」
「え、えっと......?」
「いや、治療法も見つかってないのに全世界から迫害されている感染者を救おうとか、勇気ってレベルじゃねえよ。それにレユニオンみたいな敵対しててテロ起こすせいで感染者の印象下げる組織いたらますます無理だろ。何でそんなことしてんの?」
「......それでも、感染者の皆さんを、助けると誓いましたから。それに、希望はゼロじゃありません。鉱石病《オリパシー》の治療法も、レユニオンと戦うことも、全てこの人、ドクターがいますから大丈夫です!」
ずっとウサギ耳の子(アーミヤと言うらしい)の隣にいた黒ずくめの顔をマスクで覆ったそいつは、アーミヤに名前を言われたからかこちらに挨拶した。
【どうも】
「どうも」
お互いに会釈もするが、何だか気まずくなった。
二人の会話(?)にアーミヤは戸惑いながら、再び俺に問う。
「えっと、もう一度聞きます。ロドスへ来ませんか?」
「ごめん無理」
「え、えぇ⁉︎」
「いやほんとごめん。さっきも言ったけど俺脅されてレユニオンに入ったから、裏切ったら何されるか分かんないし」
だからごめん、と断る。その答えにアーミヤも悲しそうな顔をし、俺の心が悲鳴を上げる。
これに関しては仕方ない。だから今了承するわけにはいかないのだ。
そう、今は。
「でも、いつかそういうの関係なくロドスに入る気になったら、そん時は入れてくれ。あ、そうだ。戦闘中に裏切りたくなったときのために合言葉決めとくか」
「合言葉、ですか?」
「ああ、合言葉はーー」
ーーコーヒーは付け合わせが重要、だ。
ロドスの奴らは困惑してた。
すべったな、こりゃ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
感想等お待ちしております。
作者もコーヒーを啜りながら書いているので、読者の皆様にもコーヒーを飲みながら読んでいただきたいです。アーミヤはかわいいですね。