こんな世界でも美味いコーヒーが飲みたい 作:yamaneko3
しばらくシリアスが続くと思います。
最初との温度差......。大丈夫です。ちゃんと主人公が美味いコーヒーを追い求める小説ですので。
組織という概念への嫌悪感や、コーヒーのマズさを嘆いても、現状の改善などされるわけもなかった。
そしてーー
「......お前が、ロドスのリーダーか。自分も感染者のくせに、龍門の感染者狩りに手を貸しやがって......!」
ーー哀れな子供が憎悪に燃える現実も、変わることなどなかった。
ロドスの面々と対峙したガスマスクボーイは、一緒にコーヒーを飲んでいた時の冷静さなどなくし、感情的な声を上げていた。
戦いは、......まあ避けられないだろう。俺はどうすべきか、考えても答えは出なくて立ち尽くしてしまう。元々ただの一般人だった俺に、見知った人間相手に躊躇なく戦う覚悟などなかった。それでも、割り切って戦うしかないのだろう。
どう足掻いても自分にとって嫌な状況に、思わずため息が出る。またコーヒーが飲みたくなった。でも、ここは戦場で、それに気づいて、またため息が出た。ほんと、どうしようか。
逃げるべきだろうか。レユニオンの注意がロドスに向いている今なら、逃げることも可能だろう。だが、その後は?逃げて、またスラム街で人から搾取してみみっちく生きるのか。
裏切るべきだろうか。こんな時のために戦闘中に裏切る時用の合言葉まで決めたんだ。でも寝返っても、今度はレユニオンと戦うことになる。それに、ついさっきまで一緒にコーヒーを飲み、言葉を交わした人間を躊躇なく裏切ることなど、俺にはできない。それも、あんな話を聞いた後では。
......戦うべきだろう。ロドスが生き残ることを信じて、適当に戦うのが一番無難だ。
「犠牲になった同胞たちの命は、お前らの血で償ってもらうぞ!」
ーーかかれ!
ガスマスクボーイのその声で、レユニオンたちが一斉に襲いかかる。
向かってくるレユニオンを見て、ロドスの奴らも迎撃する構えを取る。
「あの日、チェルノボーグで......復讐と称して他人を傷つけ、はじめに暴力を振るったのは、あなたたちのほうです!!」
ウサギちゃんの叫びで、戦闘は開始した。
俺も仕方なくアーツを発動し、後に続くかたちで戦闘に参加する。アーミヤの言ったことからしても、明らかにこちら側が悪役で気乗りしない。 というか、チェルノボーグで復讐うんたらかんたらって何だよ。聞いてねえぞそんなこと。ほんとにテロリストかよ。いや、レユニオンに入った時点で分かってはいたけどさ。
獣化が完了すると、突然頭が真っ白になって、理性が吹っ飛びそうになるのをなんとか気合いで抑える。アーツを発動するたびになるんだが、いい加減慣れた。意外と気合いであっさり抑えられるから、幸運にも暴走したことはない。
雄叫びを上げ、ロドスの方へと突っ込んで行く。剣を持った奴に飛びかかり、押し倒すが、すぐにクロスボウを持った奴らの攻撃をくらってアーツが解除された。
あーまたこれだよ。ほんとちょっとダメージくらっただけで解除されるよな。前に出て正面から殴り合うようなアーツなのに、攻撃くらったら終わりとか欠陥にも程がある。
「あなたは、あの時のレユニオン!?」
「さっきぶりだな、ウサギちゃん」
ウサギちゃんは驚きの声を上げたが、すぐに持ち直す。一瞬の逡巡の後に、こちらに向かってアーツらしき物を飛ばしてくる。
隣にいたドクターも指示を出している。というか、ドクターなのにやってることは指揮官だな。
【少しのダメージでもアーツは解除される。狙撃オペレーターは彼を集中して狙ってくれ】
「弱点知られてんのキッツイなあ!?こんなアーツでもカツアゲには役立つんだぜ!?」
あいつらが取る策は、火力の低い遠距離攻撃での集中砲火らしい。まったく、効果バツグンだぜこの野郎。
アーツを発動させ、とにかくロドスの奴らの周りを走り回る。
この体、身体能力はとんでもないからな。クロスボウの矢を走って避けるぐらいなら簡単だ。矢を放った直後の奴に急接近して、首の後ろを軽く叩く。狙撃オペレーターというらしいロドスの兵は気絶した。
見様見真似でやってみた峰打ちだが、どうやらうまくいったらしい。
すぐさまその場から離れてまた走り回る。
また同じ様に狙撃オペレーターに近づいて峰打ちする。そして離れる。
これを繰り返せば、殺さずに戦力だけを削れるだろう。所謂ヒット&アウェイってやつだ。
よしよし、これで仕事はできてーー
ザシュッ!
「......へえ、今ので死なないのね」
体を斬られる音が響くと同時に、アーツが解除される。
......ヤバイ。死んだかも。
というのも、俺のアーツは確かに遠距離攻撃に弱いが、それはアーツ自体の弱点であって、俺自身の弱点というものがある。
つまり何が言いたいかというと、
前世ではただの社会人、今世ではただのチンピラである俺がこういういかにも強そうな前衛に敵うわけもなく、攻撃くらってアーツ解除された瞬間にズバンッ、である。\(^o^)/オワタ
オレンジ髪の剣を持った女は、心底不思議そうに俺を見ている。どうやら体を真っ二つにしたのに生きていることに驚いているらしい。
ふう、俺のアーツがなぜかどんな攻撃をくらってもアーツ解除されたら元通りになる仕様で助かったぜ。
「フランカ、援護する」
「ええ、お願い」
俺としてはやめてほしいかなぁ!
あークソ。ピンチ訪れるの早すぎない?もうちょっとヒット&アウェイで活躍したかったんだけど。
というか、他のレユニオン兵はどうした。助けに来てくれないと俺が死んじまうぞ。......どうやらドクター率いるロドスのオペレーターとやらに苦戦しているようだ。ガスマスクボーイも戦ってるな。
助けは来ない。勝利も絶望的。どうしよ、逃げよっかな。でも絶対あの青髪に撃たれて終わるよな。
いや、今なら裏切るには絶好のタイミングか?他のレユニオンの注意もこちらに向いていないし、ロドスの奴がいる。まさに示し合わせた様なシチュエーションだ。
そう考えたその時、少し遠くからの声を、ちょうどまたアーツを発動させ強化された俺の耳が捉えた。
「......撤退だ」
その声を聞いた瞬間、俺は速攻で体を翻し、全速力でレユニオンの集団に合流した。
合流してからチラリと後ろを振り返ると、さっきの二人が唖然とした顔で突っ立っていた。よっぽど俺の行動に驚いたのだろう。
早々と撤退していくレユニオンの後ろに付き、ロドスの方にこっそり手を振りながら帰っていく。
それから少し、ミーシャを保護した奴らの野営地へ着いた。
着くなり皆に指示を飛ばすガスマスクボーイ。どうも焦っているような様子だが、まあ早くミーシャに会いたいのだろう。
俺はひと足先にミーシャに会いにいくとするか。この前少し見ただけで、話してもいないからな。ガスマスクボーイの姉って話だが、どんな性格してんのかな。身長だけ見ると歳はあまり離れていなさそうだが。
ミーシャについて考えながら歩いていると、レユニオンの奴がミーシャと話している声が聞こえてくる。
「よお、お前がミーシャか?スカルシュレッダーの姉らしいけど、これだけ背丈も同じだと妹にも見えるな」
「......えっと、あなたは?」
「これは失礼。どうも初めまして。美味いコーヒー求めて今やテロリスト。アッシュだ。気軽にお兄ちゃん、とでも呼んでくれ」
「......どうも。アッシュさん」
......ふむ。どうやら面白おかしい自己紹介は失敗に終わったらしい。初対面から馴れ馴れしくしすぎただろうか。ミーシャは困惑している様子だ。ついでに横にいたレユニオンも困惑していた。
「イワン。けが人を運ぶのを手伝ってくれないか。あとアッシュ。お前も来い」
「あ、ああ。わかった」
「りょーかい」
軽く返事をしてガスマスクボーイの隣に並ぶ。イワンと呼ばれた男もそれに続いた。
「それと、この採掘場跡地を拠点として整備することにした。あくまで一時的な拠点だけどな」
「............ねえ、アレッーー」
「ーーその名前は捨てたんだ。もう呼ぶな」
ガスマスクボーイがミーシャの言葉を遮り、吐き捨てるように言う。その様子に、ミーシャは困惑を募らせるばかりだった。
ガスマスクボーイは続けざまに言う。
「"そいつ"は死んだ。俺のことは、スカルシュレッダーとよんでくれ」
「ーースカル......シュレッダー......?なんでそんな......」
「......そのうち、お前にもわかる。それより、別の話をーー」
「ーーまあまあ、せっかくの再会なんだ。んな暗い話より、コーヒーでも飲んで楽しく話そうじゃないか。ミーシャ、君コーヒーにはミルクと砂糖を入れるタイプか?残念だがここにはないな。ブラックで我慢してもらおう」
このままだと空気が暗いままだと思って話を遮り捲し立てる。
近くにあった木箱に座らせ、俺はこんな時のために持ってきておいたインスタントコーヒーをコップに入れお湯を沸かす。しばらくして沸いたお湯を入れ、いつものクソマズイコーヒーが完成した。
コーヒーを二人に渡して俺も適当な所に座った。
「......お前」
「............」
「ん?俺のことは気にせず姉弟同士話に花をさかせてくれ。暗い話はナシだぞ」
「あー、スカルシュレッダー。俺はけが人を運んでくる。また後でな」
死んだ空気に耐えられず、イワンは逃げた。
しばらく沈黙は続き、俺含め三人は、気を紛らわすために飲んだコーヒーの味の酷さに顔を顰めた。
とうとう話すことを決めたらしいガスマスクボーイが、重々しく口を開く。
「............なあ、覚えてるか?あいつらが俺を捕まえに来た時、俺は家から引きずり出されて......」
「......っ......」
うわおっっも。暗い話するなって言ったの聞こえなかったのかな。
まあいっか。これ以上水を差すのは流石に気が引ける。
「だけどそれでも、母さんは俺の手を握ってくれてた......。お前だって、ちゃんと見てたはずだ」
「......それ、は......」
「絶対......絶対、見てたはず......そうだろ?あいつは母さんを寄ってたかって殴りつけたけど、母さんは手を離そうとはしなかった......。結局、俺たちは引きずられていって......雪の上には、血でできた道がつづいてた」
「ーーあの時......もし、レユニオンの皆がいてくれたら......。もっと早く、来てくれたら......」
ーー俺たち感染者は、ここまで苦しまなくても良かったはずだ!
ガスマスクボーイのその叫びを聞いて、ミーシャは酷く顔を歪める。ついには堪えきれなくなったのか、泣き出してしまった。それでも必死に言葉を紡ごうと、口を動かす。
「......わ、私......何も、できなかった......。怖かったの......だから......う、ぅっ......」
「......ミーシャ......。お前を責めてるわけじゃない。立ち向かう勇気なんて......あの場の誰にもなかったんだから」
できないことをやらなかったと責めるのは筋違いだと、どこかで聞いたことがある。この話もそういうことで、誰が悪かったってわけじゃない。だからこそ、酷く悲しい話だ。あの時どうしたってこの結果になっていたと言うのだから。
ガスマスクボーイは一転して活力に満ちたような声で、ミーシャに語りかける。
「......だけど、大丈夫。これからは、きっと全部うまくいく......。今は、昔とは違うんだ。レユニオンが俺に勇気をくれたから」
「......アレッーースカルシュレッダー......」
「.......お前には、俺たちを信用しないって選択肢もあるし......信用した上で、仲間には入らない、っていう選択肢もある。でも、どのみちお前は、もう感染者なんだ。俺たちレユニオン......その感染者の自由のために、最後まで戦い抜く。そういう組織だ。」
姉弟の会話を邪魔するのは悪いかと思って傍観してたが、こんな話になるとはな。せっかくコーヒーまで用意したのに、これではマズイコーヒーがさらにマズくなってしまう。
「ま、お前がどんな選択をしてもこいつは守ってくれるさ。安心して好きな道を選べばいいんだよ」
「......ああ、守るさ。俺も、レユニオンの皆も」
「スカルシュレッダー......」
さて、どうにか良い方向に持って行けたな。
なんだか姉弟でいい雰囲気になっているのを横目に、コーヒーを啜る。
それにしても、こうして見ると良い姉弟なんだよなあ。それが悲惨な現実に人生を歪められて、片方はテロリストになって、もう一方はスラム街で生活してる。ままならないものだな、現実ってのは。
美味いコーヒーでもあれば、こういう辛さも紛らわせるってもんだが、いつも通りクソマズイのしかない。俺も現実の惨さに泣きそうになる。
こういう辛さも、美味いコーヒーがあればなぁ......
ブルアカでホシノ(臨戦)をお迎えするのに天井まで行った時も、僕はビッグマッーーげほんっげほんっ、コーヒーを飲む。
ホシノがいけないんだよ。あんな声と髪型で誘惑するから。
だ、だめだよ!俺はイズナのことが......<ヨイデハナイカーヨイデハナイカー
え?アークナイツ?ホルハイヤ引いたからいいかなって......
てことでブルアカのせいで投稿遅れましたがなんとか書ききりました。あと評価と感想ください(唐突に湧いた承認欲求)