こんな世界でも美味いコーヒーが飲みたい 作:yamaneko3
ここすきっていう機能あるじゃないですか。あれ読者側としてはあまり使いませんけど(というか僕も使わない)作者としてはここが面白く感じたのか、はえ〜って感じで面白いので是非活用してください。
ということで遅めの投稿すいませんが今回とても重要な回です。難産でしたが相応の出来であることを期待しています。
僕曇らせ好きなんですよ(隙自語)
「おい!スカルシュレッダー!スカルシュレッダー!!待て!待ってくれよ!……俺を、俺を置いていくな!!スカルシュレッダァァァ!!」
どうして、どうしてこうなったんだ。
ついさっきまで、軽口を言い合っていたじゃないか。それがどうして、いきなりこんなことに。
冷たくなったスカルシュレッダーの体を抱きかかえながら、ひたすらに叫び続ける。その叫びはスカルシュレッダーに届くことはなく、空に虚しく消えていった。
目の前にある現実からは逃れることなどできず、悲しみに震えるしかなかった。
もう、どうしようもなかった。半ば諦めの境地に入りながら、それでも叫び続ける俺。一体何をしているんだろう、もう死んでいるのに、って。そうやって冷静に俯瞰している自分もいた。
こんな所にいては危ない。早く安全な所まで後退をーー
「黙れ!!黙れ黙れ黙れ!!ああぁぁぁ!!こんなはずじゃなかった!!どうして、どうしてこんなことに!!」
冷静な自分を狂ったように叫び抑える。この状況を肯定してしまったら、自分が自分じゃなくなるような気がしたから。
心臓が張り裂けそうな程痛んで、思わず胸を抑える。
感じた激情は、不味いコーヒーの、酷い苦味に似ていた気がした。
こうして俺はーー
ーー死の止まぬ戦場の中で、初めて現実を見た。
スカルシュレッダー死亡より一時間前
「見ろ、ミーシャ」
「う、うん……」
戦闘職ではないにしろ、自衛手段ぐらいは必要だろうということで、ガスマスクボーイがミーシャに銃の扱い方を教えていた。
改めて考えると、この世界の銃というのは少し不思議だ。技術レベルは現代に近いくせに、武器は剣やクロスボウだ。銃を使っている奴もいるが、全員でないのが不思議だ。テロリストは銃で武装しているイメージが強いしな。そもそも銃を撃つのにアーツが必要というのがまずおかしい。前の世界では銃を撃つこと自体に特殊な力はいらなかった。
俺も銃を使ってみようか。剣やクロスボウより使い勝手もいいだろうし、遠距離攻撃手段を持っている安心感も大きいだろう。とはいえどこから貰ってくればいいのか。ガスマスクボーイは仮にも幹部だし、あいつにねだれば貰えるのかな。それか他のレユニオンに銃が余ってないか聞いてこようか。
そうと決まれば戦いが始まる前に調達しよう。そう思って立ち上がったその時だった、レユニオンの一人が大きな声でガスマスクボーイに声をかけたのは。
「ーースカルシュレッダー!ここを離れよう、撤退だ!この場所には、もういられそうもない!」
「ッ、何が起きた!?」
「ロドスが襲撃してきたんだ!」
「ーーなっ……!!あのクソ野郎どもが……!慌てず立て直せ、反撃に出るぞ!それとアッシュ!」
「なんだ?」
「お前はロバートの部隊に付け!今回は真面目にやってもらうからな!」
「あいよ」
状況が切迫しているからか、さすがのガスマスクボーイも焦っている。ガスマスクボーイが指示を飛ばし、皆バタバタと行動していく。俺もワトソン君がいるテントの方へと歩き出す。こんな時にちんたら歩いていたら、いつもはガスマスクボーイに怒鳴られるんだが、今はそんな暇すらないようだった。
顔には出さないようにしているが、俺だって不安なんだ。皆が忙しなく動いていることや、これから起こる戦闘のことを考えると、胃が痛くてたまらない。これまではレユニオンが攻める側だったから心の余裕があったが、攻められる側に回るとこんなにも不安になるものなのか。心なしか歩く速度も速くなる。
「ワトソン君、準備はもう終わった?」
「ロバートだ。お前は……ああ、スカルシュレッダーに言われて来たのか。準備は終わってる。すぐに出るぞ」
「わかった。あ、そうだ。銃余ってない?さすがにアーツ以外の武器がないとキツイからさ」
「……余ってはいないが、俺のがある。それをやろう。俺には剣もあるし、お前は重要な戦力だ。アーツの無駄使いは避けたい」
「やっぱ優しいな、ワトソン君は」
「もうツッコマねえぞ。ほら、銃をやる。拳銃だが、使い方は分かるか?」
「なんとなく。アーツ云々は不安だけど、なんとかするよ」
渡された拳銃を見て、形状や使い方はほとんど変わらなそうなことは理解した。黒い無骨な拳銃で、前世の知識から考えると、この形状は……グロックか?前世でオタクだったこともあって、銃の知識も少しかじっている。有名な銃なら形でわかるくらいだが。
まったく同じ物ではないだろうが、知っている銃に似ていてよかった。これでアーツを使わずとも多少は戦えるだろう。
「よし、行くぞ!」
ワトソン君が部隊の皆に向けて大きく声を上げる。急ぎ足で進み始める皆の先頭に立つワトソン君の隣に行き、並んで歩く。
移動し始めて数分で、戦場になるであろう場所が見えてきた。そして同時に、敵であるロドスの面々も見える。
「正面から戦うのはリスクがある。待ち伏せて奇襲するぞ。総員、散開!」
皆がそれぞれの方向に散らばり、遮蔽物に身を隠す。俺も適当な岩を見つけて身を隠した。
ロドスが近づいてくるにつれ、緊張感が高まっていくのを感じる。
そして、草むらにロドスが近づいてきたタイミングで、レユニオン兵が飛び出す。
「ーーかかったな!死ねっ!」
だがその奇襲も、剣を持った女に斬られ防がれてしまう。
その女の対応からして、既にレユニオンが隠れていることはバレているだろう。これでは奇襲の意味がない。
「っ、退却だ!全員、退避しろ!」
ワトソン君の指示を聞いて、岩陰から飛び出して逃げる。退避するレユニオンの一団に加わって、走りざまにロドスの方へと威嚇射撃をする。何も当てようとしなくても、これでも効果はあるんだからと言い訳もしていた。知り合いを撃ちたくないだけなのは自分でも分かっていた。
ロドスとある程度距離を取ったところで、別行動していたサルカズの部隊が合流した。彼らは皆銃を持っていて、その存在は部隊全体に安心感を与えたようだった。俺自身も、銃を持った部隊というのは非常に頼もしい。
そして、再び戦場に戻った俺達レユニオン。今度は逃げも隠れもしなかった。真正面から相対したレユニオンとロドス。両陣営の戦いは、互いの指揮官の掛け声で始まった。
前衛が突撃して猛攻を仕掛ける中、銃を持っている俺は少し後ろから射撃する。ロドスの前衛の頑丈さを信じながら、一応急所以外を狙って撃っている。
バンッ、バンッ、と銃声が絶えず鳴り響く。その銃声はロドスのものも含まれていた。他にもバシュッと矢の風切り音もして、前衛の斬り合う音も合わさって、まるで音楽みたいだなんて、逃避気味に考えていた。
そうして半ば作業気味にほとんど当たっていない射撃を繰り返していると、とうとう前衛の均衡が崩れ始めた。所詮寄せ集めであるレユニオンと、しっかりとした組織であるロドスが戦った、当然の結果なのかもしれない。
こちら側の前衛の壁に穴が空き、何人かのロドスの前衛がこっちに来た。だが幸いサルカズの部隊は散らばっていたこともあり、一人が狙われれば他の奴が、といった具合に迎撃していた。……俺は怖くて撃てやしなかった。
危機が去ったことで、サルカズも俺も再び射撃を再開した。またバンッ、バンッ、という音が鳴り出し、ときどき毛色の違う音が鳴る。
ふと、少し大きめの銃声がしたから、自然とそちらを見た。
「た、隊長が!」
そう叫ぶ仲間の隣には、胸から血を流して倒れる、ロバートの姿があった。俺はあまりの驚きに口をぽかんと開け、しばらく意味のない音を発していた。やがて状況を理解し体が震え出すころには、ロバートは背負われてこちらまで来ていた。
すぐ近くまで運ばれたロバートに駆け寄り、懐を漁って応急処置の道具がないか探す。当然持っているわけもなく、服をちぎって止血しようとするも、ロバートに手で制される。
「……治療はいい。もうどうせ、助からない」
「何言ってんだよお前!!ああ、血が!!早く、早く止血しないと!!」
「……散弾銃で内臓ごと持ってかれてるんだ。そんなことしたって意味ねえよ……それより、他の奴らの援護を……」
「お前を助けるのが先だ!待ってろ、俺が拠点まで運んでやる!」
ロバートを背負い、拠点の方へと走り出す。それに何人かの仲間が付いてくる。
ひたすらに走った。ただ死んでほしくない一心で。
背中が生暖かい血で濡れていくのが分かる。それとは対照的に、冷たくなっていくロバートの体。それを感じたくなくて、紛らわすように走った。
必死に走っていたせいで、周りが見えていなくて転んでしまった。すぐに立ち上がり、また走り出そうとする。
「……アッシュ、ロバートはもう……」
その言葉に、とうとう耐えきれなくなって膝をついた。ロバートが死んでいることなど、背中の感覚でとっくに分かっていた。それでも認めたくなくて、必死に走っていたのに。今、逃避していた現実を突きつけられ、止まってしまった。
ロバートの死体を地面にゆっくりと降ろし、横たわらせる。ロバートの仮面を外し、それが本当にロバートであることを知ると、俺の目からは、涙が流れ出した。
「……ロバート、ロバート、ロバート、ロバート、ロバート!!ああぁぁぁぁ!!」
ああ、最後くらい、ちゃんと名前を呼んでおけばよかった。
スカルシュレッダー死亡より十分前
「アッシュ!スカルシュレッダーが来た、撤退するぞ!」
「……わかった」
「スカルシュレッダーのアーツで一網打尽にする手筈だ!……隊長のことは残念だが、遺体はここに置いて行くしかない。ほら、早くーー」
「わかってるよ!!黙っててくれ!!…………ごめん」
「……気持ちは分かるが、今は早く撤退だ」
「……ああ、行こう」
ロバートが死んだ。大切な友人だった。その喪失感から、どうにか目を逸らして冷静になる。
ああ、そうだ。スカルシュレッダーが来るんだ。あいつのアーツで、この戦闘も終わる。……終わって、終わってどうなる?もうロバートはいないじゃないか。それだけじゃない、他の仲間も何人も死んでる。この戦闘が終わっても、その次の戦闘でまた仲間が死ぬだろう。
間違いだったんだ。この世界に来たことが。俺みたいな奴は、この世界に、ましてレユニオンという組織に入ること自体が間違いだった。何の覚悟もない人間が、来ていいところじゃなかったんだ。
「……なあ、アッシュ。俺はお前と特別仲が良いわけじゃない。だが同じレユニオンの仲間だ。だからこれだけは言わせてもらう。……一人で抱え込むな。隊長の死は、俺達全員で背負っていくことだ」
「……そうだな。ありがとう……」
「なんてことはない、仲間として当然のことだ。さ、早く撤退しよう」
言われた通りに撤退すべく、ロドスとは真反対の方向へと歩く。重い足取りで歩きながら、ふと腰にある銃のことを思い出した。あいつの銃で、いわばあいつの形見とも言える物。無骨で黒い、不思議と手に馴染む拳銃。こんな人殺しの道具が形見なんて、ひどい話だと、フッと自嘲するように笑った。
バァンッ!バァンッ!
大きな銃声が連続的に鳴る。これが、スカルシュレッダーのアーツとやららしい。いつも持っているグレネードランチャーを使ったのだろうか。ともかくこれで、この戦闘はーー
「おい!近衛局の奴に防がれてるぞ!アーツで一網打尽じゃなかったのかよ!?」
ああ、今度はなんだ。近衛局の奴に防がれた?まだ戦闘は続くのか?
クソッ、いつになったら、この戦いは……スカルシュレッダーは何をしてるんだ?やたらとロドスとの距離が近い。それもドクターとの距離が。一体何をしようっていいうんだ。
気づいた時には、スカルシュレッダーの腹から、黒い刃が突き出ていた
「……は?」
「ス、スカルシュレッダーが!」
理解が追いつかなかった。だが頭では理解できなくとも、体は瞬時に状況を理解し勝手に動いた。
アーツを発動し全速力でスカルシュレッダーへと向かう。獣化した俺の身体能力で、スカルシュレッダーの元へはすぐに辿り着いた。
アーツを解除しすぐさま倒れているスカルシュレッダーに駆け寄る。
「スカルシュレッダー!!大丈夫か!?返事をしてくれ!!スカルシュレッダー!!」
呼びかけても返事は来ない。スカルシュレッダーの体は、ピクリともしていなかった。
待って、待ってくれ。ついさっき友達が死んだばかりなんだ。それが、なんでお前まで。
「おい!スカルシュレッダー!スカルシュレッダー!!待て!待ってくれよ!……俺を、俺を置いていくな!!スカルシュレッダァァァ!!」
どうして、どうしてこうなったんだ。
このための日常回だったんだよ!!アッハハハハハハハ!!