こんな世界でも美味いコーヒーが飲みたい   作:yamaneko3

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 投稿が大変遅れてしまい、誠に、申し訳ありませんでした。
 投稿頻度は前から問題がありましたが、今回に関しては本当にすみません。
 これからは早く投稿できるようこれまで以上に頑張りたいと思います……
 とりあえず本編をどうぞ……



コーヒーだって飲めやしない

 

「……よお、ミーシャ」

「……どうして、帰って来たの」

 

 スカルシュレッダーの遺体を抱くミーシャは、心底驚いた様な顔でこちらに振り向いた。俺の横には壁に背を預けるWもいて、不審な眼差しで見つめてくる。

 

「あら、逃げてきたの?"捕虜"だったアッシュ君」

「まだ疑ってるのか……。怪しいのは分かるが、どうかミーシャと二人きりにしてくれないか?」

「できるわけないでしょ」

「じゃあこのままでいい。とりあえずミーシャと話がしたい」

「……話すことなんて、何もないよ」

「……そんなこと言わないでくれ」

 

 反論もなく、誤魔化す様に苦笑しながらそう言うことしかできなかった。

 だが、かといって中身のない会話をすることも許されない。ちゃんと話すべきなんだ。この子のためにも。

 

「……俺、このままレユニオンにいることにするよ。ロドスに行くことも考えたけど、まだレユニオンでやるべきことがあるから」

「……それが、どうかしたの。他に何もないなら、早く出ていってよ」

「今ここは、非常に危険な状態だ。この場のトップだったスカルシュレッダーが死んだんだ、影響は色々あるだろう。……それでさ、俺が代わりになろうと思う」

「代わり……?」

「ほら、俺ってスカルシュレッダーといつも一緒だったし。アーツも少し特殊なんだ。旗頭になるにはちょうどいいだろ?」

 

 痛む心を抑えて、なるべく優しく語りかける。だが、俺の言葉に対し、ミーシャは首を横に振った。

 

「……ううん。スカルシュレッダーは、死なない。私が、死なせない」

「……何言ってる」

「辛いのは皆んな同じだけど、それでも、皆んなが少しでも救われるなら。それにきっと、あの子ならこうすると思うから」

 

 ミーシャはそう言って、俺の方へと歩いてくる。目の前まで来ると、俺が抱えたいたスカルシュレッダーのガスマスクとグレネードランチャーを取った。

 

「これ、貰うね……?今の私に……スカルシュレッダーに、必要な物だから……」

 

 ミーシャの浮かべるその微笑みが、あんまりにも悲痛な笑みだったから。俺の腕が抱える物を取るこの腕を拒絶したら、今にも崩れ落ちてしまいそう

で。俺は呆然として、ただ受け入れるしかなかった。

 こんな顔をさせたくないと、あんなにも思っていたのに。

 

「……ほら、もう行って。アッシュはレユニオンなんでしょ……?なら、みんなと一緒に行かなきゃ」

「……あ、ああ。そうだな……」

 

 言われるがまま、後ずさるようにして部屋から出る。そして他の奴らがいる方へと向かった。

 ああ、またしても、断れなかった。

 廊下を歩きながら思う。どうすれば救えるのだろうか。彼女を救いたい。でも、傷ついてしまった彼女を、彼女の痛みを知らずして一体どうして慰めれようか。ただ隣にいるだけでは救えない。何かをするにも俺にその資格はない。結局口先だけで、俺には何も救えやしないのか。

 

「……だからって、諦めるわけにもいかねえだろ」

 

 そう呟いてそれっきり、意味のない思索は途切れた。

 だが、レユニオンの一軍へと向かう足取りは酷く鈍重で、それはまだ迷いが振り切れていないことの表れだった。

 それでも今は、この場を切り抜けることが重要だ。今の俺にミーシャは救えない。だから長期的な目で見て生き続けるんだ。

 

「……この戦いの先に、きっと彼女に救いがあるはずだ」

 

 

 

 

 

 ガキンッ!

 

 爪と盾がぶつかる音がした。盾で止められた腕を、無理矢理押し込んで相手を押し倒す。こんな状況で峰打ちなんてできるはずもなく、乱暴に顔面を殴って気絶させる。意識を失った近衛局隊員を投げ捨て、またもや仲間を助けにひた走る。もう、さっきからずっとこんな調子だった。

 この場を切り抜ける、なんて軽々と言ったが、こっちもあっちも数が多くて、戦闘はかなり激化している。主な敵がロドスではなく近衛局だったのは、遠慮なく戦えるから不幸中の幸いと言うべきだろうか。遠慮がないといっても、殺すわけじゃないけどな。

 そうは言っても俺自身に積極的に戦闘をする意味もなく、レユニオンの仲間が死なないように尽力している。そのためにアーツを連発し、戦場を駆け回っているが、今や疲労は積み重なって心なしか体の調子も悪い。

 そうして近衛局隊員を今度は蹴り飛ばそうとしたタイミングで、またもや盾で防がれる。ただ今度は、誰かが間に入って防いでいるらしい。アーツと疲労のせいで回らない頭で、さて次はどう動くかと考える。

 独特な三角形の盾で隠れていた体が露わになり、緑髪と額に生えた角が見えた。

 

「悪いですが、これ以上好き勝手はさせませんよ」

「……勘弁してくれよ」

 

 この女、これまでの戦闘でも見たことのあるが、他の近衛局隊員と見た目も実力もまるっきり違ったからよく覚えている。

 とにかく攻められる前にこちらから仕掛けなければ。こっちは打たれ弱いんだからな。アーツが解除されたらその時点で終わりな以上、先制はこちらが取りたい。

 相手が動こうとしたタイミングで、地面を思いっきり蹴って砂や石を飛ばす。同時に砂埃も立ち、隙を作ったところで殴りかかる。

 が、当然の如く防がれる。それを力押しで無理矢理押し倒そうとするが、相当な力で押し返され、力比べのようになってしまった。

 

「生憎ですが、生半可な力に負けるほど、柔な鍛え方はしていませんのでっ!」

「……あークソ、かっこいいじゃねえかこんちくしょう……」

「それはどうも!」

 

 言葉と共にこちらへと押し返してくる。ほんと、どんな馬鹿力だよ……。だがな、こっちだって手加減はしてないが全力ってわけでもないんだぜ。

 奥の手ってのは、こういうときのために残しておくもんだよなあ!

 自分の体の銃を提げていたあたりに手を突っ込み、体表を貫きまさぐって銃を掴んで引っこ抜く。このアーツが体を変化させるのではなく謎物質を纏った上で身体強化するアーツだってことは、感覚で分かっていた。なら服も持ち物も当然そのままだ。外側から無理矢理持ち物を取り出すことだってできる。まあ、ほぼ自傷みたいなもんだしアーツは解除されるけどな。ただ、敵の意表を突くという点では有用だ。

 アーツが解除される前に上に跳び上がり、空中で引き金を引く。完全に後ろを取った状況での射撃。空中ということもあり当たったのは一発だけだったが、全く攻撃できなかったさっきよりは全然いい。着地する前に再びアーツを発動し受け身を取る。フッ、この間二秒。

 ふざけるのも一瞬だけにして、すぐさま緑髪の方へと突っ込んで全力で蹴り飛ばす。盾を構えるのも間に合わず、蹴りをもろに受けた緑髪は数メートル吹き飛んだ。それでもすぐに立ち上がり構えを取る。

 

「けほっ、中々、やりますね……!」

「そりゃあどうも!」

 

 獣化のアーツのせいでくぐもった声で返答しながら、切り掛かってくる他の近衛局隊員を撃って、殴る。

 弾がなくなり、カチッカチッ、と音が鳴ったタイミングで緑髪が攻撃してくるのをかわし、次の攻撃の間にリロードする。

 銃口を緑髪に向け、同時に突進の構えを取った。

 

「悪いがこっちだって、いつまでもあんただけに構っているわけにはいかないんでな!さっさとあんたを倒して、他の仲間のもとにーー」

 

 

 瞬間、閃光が轟いた。

 

 

 物凄い爆発音と共に、前方から爆風が吹き付ける。衝撃で吹っ飛ばされ、身体を硬い地面に打った。

 

「全員、すぐに岩陰に隠れろ!」

 

 どうやらあの爆発を盾で防いだらしい緑髪は、すぐさま他の近衛局隊員に指示を飛ばしていた。

 俺は痛む身体を無理矢理立ち上がらせ、どうにか状況を掴もうとする。

 

「クソッ……!一体、何がどうなって……」

「奇跡だ……!奇跡が起きたんだ!」

「は……?お前何言って……ッ!」

 

 思わず息を呑んだ。だって、他の奴らの視線の先には、死んだはずの、スカルシュレッダーがいたのだから。

 

「……嘘、だろ」

 

 そんなはずはない。スカルシュレッダーは死んだんだ。生き返るなんてこと、起きるわけがない。

 じゃあ、あそこにいるのは一体誰なんだ?もしや、あそこにいるのは……。

 

「あら、行かなくていいのかしら?愛しのスカルシュレッダーがそこにいるのに……」

 

 いつの間にか隣にいたWが、嘲るように言ってくる。なんでここに、とは言わなかった。

 ただギリッ、と歯軋りしながら吐き捨てる。

 

「言われなくたって……!」

 

 解除されていたアーツを再び発動し、全速力でスカルシュレッダー……ミーシャの方へと向かう。走り続けるその最中も、爆発音は鳴り続ける。

 丘の上からアーツを撃ち続けるミーシャ。そして近くに見えるのは、近衛局とロドスの面々。その場所に近づき、強化された聴覚が彼女らの会話を捉えた。

 

「……もう一度だけ、話を聞いてくれませんか……!」

「話……?意味ないよ……」

 

 向き合い、武器と掌を突きつけ合うアーミヤとミーシャ。

 

「……きっと、全てこうなる運命だったの。…………アーミヤ、お人形の作り方、教えてあげられなくて……ごめんね」

「アーミヤ!早く、ミーシャを無力化するんだ!」

 

 剣を構え、ミーシャに向かって行く、近衛局の奴ら。

それを見て、俺はーー

 

 

「……もういい……もういいだろ!!」

 

 

 腹から、刃が飛び出した。同時に、ボツ、ポツ、と血が滴り、服が赤に染められていく。

 

「……アッ、シュ……?な、んで……」

「お前が、馬鹿な真似してるから……止めに来て、やったんだよ……」

 

 刃が貫いている箇所が痛くて堪らない。ミーシャを庇って刺されたおかげでこの様だ。

 痛みに耐えながら、ゆっくりと、ミーシャを抱きしめる。

 

「……なあ、ミーシャ。お前は十分頑張ったよ……だから、もう何もかも投げ出して逃げてくれ……」

「……逃げたって、どこにも行くところなんてないよ……」

「どこでもいい……ただ、レユニオンもロドスも、何も関係ないところへ……たとえ短い間でも、幸せになれるところへ……」

「……今更、そんなこと……!」

 

 視界がぼやける。もう、あまり時間は残されていない。

 

「……俺、ようやく分かったんだ……。スカルシュレッダーの、願う結末がさ……」

「え……?」

「お前が、ミーシャが幸せになる。……それが、スカルシュレッダーの、願う結末。復讐なんかじゃなくて、お前のことを、第一に想ってた……。こんな簡単なことに、俺ようやく気づいたんだ……」

「…………」

 

「だから、もうこんなことやめろ……」

 

「アッシュ……?アッシュ!?」

 

 体に、力が入らない。立つこともままならず、ミーシャにもたれかかってしまう。

 意識が遠のく。さっきまであった痛みも、今は感じない。ぼやけた視界に、俺の身体を抱きながら泣くミーシャが映った。

 泣かないでくれ、ミーシャ。そんなこと、俺もスカルシュレッダーも望んでない。どうか、俺のことなんて忘れて、どこか遠くで幸せになってくれ。

 これで、良かったんだ。誰も救えない俺だけど、それでも最後にミーシャの命だけでも救えたんだ。なら、これでいい。

 ……ああ、でもそうだな。やっぱり思ってしまう。

 

 この子の心も、救ってあげたかった。

 

 最期に彼女を強く抱きしめ、視界が暗転した。

 




 ミーシャを死なすか生かすかはめちゃくちゃ悩みました。そのせいで投稿が遅れた節もあります。
 次話以降は早く投稿しますよ。
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