【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
テントの外に出たけど、火の番は必要ない。むしろ、こんな場所で夜に火なんかつけてたら火が好物なモンスターが寄ってきてめんどくさい。ヒノコとか火蝿とか、大体が放火魔みたいな性質のモンスターだ。
だから、火は消すに限る。
じゃあ何をするのかと言えば、火が無い時に近寄ってくるやつの監視だよね。
獣が基本的には夜行性なのは知っての通りだけど、都合の悪いことにモンスターもその性質を受け継いでいる。普段は見られないようなモンスターも、夜ならたくさん見られるぞ! やったね!
とはいえ、一晩丸々起きてばかりってわけでも無い。マスダンジョンでは溺死の恐れがあるからそうも言ってられないけどな。
時たま仮眠をとることもある。
罠を仕掛けておけば気付けるから問題は無い。
ついでにモンスターが嫌がる匂いを発するお香も焚いている。
基本的には問題無い。
基本的にはね。
そうじゃないのもいる。
人慣れしてるとか、お香があるところには人間がいると学習したとか、怒り狂ってるとか、そもそもその程度じゃ止まらないとか。わざわざ野営地までやってくるようなヤツはどいつもこいつもクセがある。
モンスターがただでさえクセがあるのに、そこに一捻り加えるのはやめていただきたい。
流石の俺も怒りで震えて涙が止まらない。
──────
「…………んー、朝だ」
そんなわけで何もありませんでした。
釈然としねえよなあ。
こんなに頑張って色々仕掛けてるのに何にも引っかからないんだから。来られても嫌だけど、来られなくても複雑な気持ちになるんだ。
「ふぁぁ…………」
三船くんが、冬眠後のクマくらい気怠そうにテントから這い出てきた。上半身だけこちらに出して、寝起きで状況がよくわかってないのかボーッと俺のことを見ている。
記憶がリセットされているのかもしれない。
「おはよう」
「おはよう……」
挨拶というよりは反射的なオウム返しといった様子だ。
ただ、時間をおけば意識もハッキリしてきたのか、虚だった目が普通に戻った。
すると何かに気付いたのか、テントの中に引っ込む。
「あいたたぁ……」
「大丈夫?」
どこかをぶつけたのかもしれない。
回復薬は必要か? と顔をテント内に潜らせたら両脚を手で摩っていた。
主にふくらはぎ。
「脚が……」
「き、筋肉痛かぁ」
5時間歩いたから当たり前と言えば当たり前なのかもしれないけど、若いから一瞬で症状が現れるな。
「…………まあ、若いんだから大丈夫っしょ」
「うぐぅっ」
ヒィだのピィだの言いながら、顔を洗いに小川に向かった。
……ヨロヨロしてたな。
不安に思いつつもテントを片すこと10分。
「──うわあああああ!」
叫びながら、草むらから三船くんが飛び出してきた。
筋肉痛はどこいったんだよ
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないんです! く、く、くる!」
なにが? と思う間もなく、草むらからソイツは飛び出してきた。
目が合い、身体がこわばるのを感じる。
「お゛っ」
「………………」
牙、毛皮、四足歩行、蹄。
俺の背に隠れた三船くんが口早に叫ぶ。
「モ、モンスターですう! しかも見た事ない!」
「いや……猪だねえ」
猪だあ。
しかもモンスター化しているように見えない。
……この世界で初めて猪見たかもしれねえぞ!
「どうする? 食べる?」
「いやいや! 食べるってなんですか!?」
「だって、美味いぞ」
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないですって!」
しょうがないので、火をつけた棒で追い払った。
「ピギィィィィィィ!」
猪突猛進の1文字目が、まさに四字熟語の通りに走っていった。
「美味しいのに……」
「もう!」
……あーあ! 猪食べてたら精がついたかもしれないのになあ!
──────
朝飯を食べ、残りの道程を歩き、我々はやっとこさ第100セクターに到着した。
人が結構いる。
それも全員が探索者だ。
その中でも、研修生が多くを占めていた。
あちこちでモンスター相手に武器を振るっている。
第100セクターが何かと言えば、実戦形式の練習場だ。武器の試し切りや素振りをするための場所じゃ無くて、実際にモンスターと戦える安全な場所。
何で安全なのかと言えば、すんごーく管理されている。魔素の濃度やセクター内にいる人間の数など、ここまで厳密に管理しているのはこの国でも有数だろう。
だけど、この世界の科学力はまだそこまで高まっていない。鉄道とかインターネットの一部とか、無いと不便極まるものだけはなんとか復旧したけど、それも元に比べたら屁のつっぱりだ。
AIとか、もはや単語すら残ってない。神様も関係なく普通に消滅した。
ターミネーターとかこの世界では絶対に生まれねえわ。
対照的と言っていいのか、第二期の世界には魔素が現れたからそっち方面の技術が伸びている。
つまり、魔素を計測したり扱ったりする物だ。正体不明だろうが、力の流れに沿えば使うことは出来る。それが科学ってやつだね。
「う、うわぁ……モンスターがいる……」
「そりゃいるよ、だってダンジョンだもん」
第100セクターは、人類が完全にコントロールしている貴重なダンジョンだ。
商工会の人間じゃ無いから詳しい内実は知らないけど、コントロールに成功している一番大きな要因は、地上に発生したことだろうな。
これがアンダーだったら絶対無理。
「ほら、最初はあいつと戦ってみ」
「うわっ、と……」
背中を引っ叩いたら、それだけで蹴つまずいたようにつんのめった。集中しろ、集中。
あとは飯食え。
いつまでもなよっちいままだと、強くなれねえぞ。
「がんばれー」
最初に対峙したのは穴から這い出てきた体長1mくらいのアリ。
変異の度合い的には、モンスターとして名前がつく程ではないな。
なんなら見慣れた顔だから可愛さすら感じる。
「キシキシ」
でかい顎を鳴らして目の前の存在を威嚇する。存在というのは、当然のことながら三船くんだ。
さあ、どうやって戦う?
レベル10に満たない研修生の膂力をどう生かす?
「う、うわ……」
動きが硬い。
ナイフの構え方もなんかおかしい。
両手で握るような持ち方をしたら、良いところが死ぬぞ。
それをするなら素直に剣を持った方がいい。
……心の中の指示厨がうるさいな。
落ち着け、俺。
「腰が引けてるぞ」
「は、はいっ」
本当は、腰が引けてるどころか産まれたての子鹿くらい脚がブルついてる。そこを指摘してもどうにもならないから何も言わないけど……これ、どうすりゃいいんだろうね。
「わ、わああ!」
威勢の良い声と共に振り下ろしたナイフは、外骨格の表面を軽く削りとった。
細い線が付いたね、うん。
「…………」
「…………」
刹那、無言の時間が訪れた。
三船くんはナイフと傷を交互に見ている。今、自分が何をしたのか理解しようとしているようだ。
そしてアリは、体に伝わった衝撃から硬直していた。
やがて違いの視線が交錯し──
「キシャアアアア!」
「う、うわあああああ!」
脱兎の如し。
前足を振り上げたアリに完全に怖気ついたのか、背を向けて逃げ出した。
「…………三船くん!?」
俺の横を素通りして。
「キシキシキシキシ」
当然、アリは逃げた獲物を追いかける。
その追いかけた先には、三船君が通り過ぎたばかりの俺がいた。
ロック、オン!
「んイヤちょっと待てい!」
なんで俺が獲物になってんだ! ということで俺も三船くんをおいかける。
アリ→俺→三船くんの三角関係になってしもうたわい。
「はひぃ……はひぃ……」
しかし筋肉痛のせいで碌なスピードが出ていない。
すぐに追いついた。
「お、おい、戦わねえのか!?」
「はぁ……はぁ……」
チラッと寄越した視線。
無理無理無理と、嫌になる程に物語っていた。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない