【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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4_タマモ遭遇

「はぁ……はぁ………………はぁ」

 

「いきなりはキツかったか……いや、それでもコレが一番だな……とはいえ、か」

 

 脳内を巡るのは、この手法をとったことに対する反論と擁護。

 荒療治であることは理解している。家族を失くして間もない少年に行わせるのは酷であるということも。

 マスコミに捉えられれば俺はバッシングの嵐だろうか。そんなものは無いからただの推論になってしまうけれど。

 

 しゃがみ込む三船くんは必死に息を整えている。

 背後のアリは頭、胴、腹の三つに捌かれている。

 間もなく姿が崩れて、草っ原に数mm大の死体がポトリと落ちた。

 同時に、何か光るものが落ちる。

 

「……魔石も、こんなもんか」

 

 小指のさきほどしかない、取ろうが取るまいが何の支障にもならない魔石が陽光を反射していた。

 

「三船君、見ろ」

 

「…………」

 

 小ぶりな手のひらの上に魔石を乗せると、マジマジと見つめる。最初は、研修生とはいえ魔石くらい手に入れたことあるもんだと思っていたけど。

 今のこの様子や、コレまでの振る舞いからしてモンスターとの対峙経験が極めて薄いのかもしれない。

 

 それに対して何かを言うつもりは無い。アリサも今年に入るまでは調査任務やら安全な採取任務やらだけを受けていたらしいからな。

 本当の最初は駆除業務を受けていたけど苦戦したと言ってた気がする。

 

 三船くんはレベルも一桁だし、むしろ堅実にやろうとしてたのかもしれない。それで、最初の一歩で躓いた。

 もちろん、直接聞いたわけじゃ無い。俺の想像だ。

 大事なのは、俺の想定していた以上に三船くんは一般人ということだ。

 

「ちっちゃい……」

 

「あのアリでこの大きさだぞ? 酒場で見た魔石がどんな怪物から出たか、想像もつかないだろ」

 

「……はい」

 

 小さく頷いた御舟くんは、魔石をどうすればいいか迷っているようだった。

 こんな小さいやつ貰っても仕方ないだろうに。

 

「コレは捨てちまえ」

 

「え、勿体無くないですか?」

 

「別に持ってってもいいけど……こんなの売れもしないぞ」

 

「うーん……えいっ」

 

 金にならないと聞いた途端に興味を無くしたのか、今の今まで大事そうに持っていた小粒を木々の方へと放り投げた。

 結構現金なところがあるんだね、チミは。

 

「さて、さっきのアリはどうだったよ」

 

「……ちょっと、早いかも」

 

「あれよりも柔いやつか……ん?」

 

 どうしたものかと悩んでいたら後ろから草を踏みつける音が聞こえてきた。

 

「ねえ」

 

 商工会の職員か、それとも他の探索者だろうか。

 振り返ると女の子がいた。

 探索者だな。

 

「あなた、何しにきたの?」

 

「え」

 

 俺には用が無いようだった。

 明らかに三船くんに対して言葉の矢印が向いている。

 

「戦えもしないなら、何でここに来るの?」

 

「そ、それは……」

 

 おいおい、ゲンキ一杯だな。

 自分が殴り飛ばされるとは思ってない奴の典型だコレ。

 そもそも初対面でこんなこと言われる謂れは無いだろ。

 

「そこの人に守ってもらう為に来たの?」

 

「…………」

 

 三船君は、とうとう顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。

 

 反論のとっかかりが無い。

 さっきからクリティカルヒットを狙って出されているから、グゥの音も出ないのだろう。

 とはいえ、事情も知らん子に口を出されてプランを崩されるのは堪らん。

 

「お嬢ちゃんごめんねえ? 今、勉強中だからさ……お母さんはどこかな?」

 

「は?」

 

「1人で来たわけじゃ無いんでしょ? お兄さん達、今練習中だからちょっと相手できなくてさ」

 

「私、子供じゃ無いんだけど」

 

「そっか! じゃあ三船くん、あっち行こうか」

 

 離れるつもりは無いようだった。

 それならこっちが離れればいいのである。

 ガッチャ! 逆転の発想! 

 俺はやはり天才だ! 

 

「…………」

 

「落ち込むなって! ああいうのを一々真に受けてたら疲れちゃうぞ」

 

「…………」

 

 まあ、このフォローは無理がある。

 年頃の男の子はナイーブなんだ。可愛い女の子から酷いことを言われたら死にたくなるよな。

 それも、恥に直結するようなこと。

 三船くんは見た目からして繊細だからな。優しく接してあげないとダメなんだ。

 

「……あっ」

 

 ただ、泣こうが喚こうが落ち込もうが、俺たちがいるのはダンジョンだ。

 トボトボと歩いていた三船くんも気付いた。

 

「タ、タマモ……」

 

 なんて罰当たりな名前だ。

 名付けたやつは、何を思ってこんな名前にしたのか。一族郎党呪われるぞ。

 

 そこにいたのは狐型モンスター。

 体長は1mほど。

 尻尾が2本。

 毛には所々白いものが混じっている。

 歳をとっているわけじゃ無い。

 そういうモンスターなんだ。

 

「シャアアアア」

 

 かつて訪れたキツネ園の子達はお腹剥き出しだったのに、こっちのは牙剥き出し。可愛さのかけらも無い。

 ……嘘、ちょっとだけ可愛い。

 口元が赤くなっていることを除けば。

 そして足元にはケチャップをぶちまけたような惨状。

 残った足をみるに、ウサギを食ったのだろう。

 哀れ、幸運を表す部分以外を食われてしまったのか。

 

「ど、どうします……?」

 

「どうするって…………逆に、俺がいなかったらどうする?」

 

 俺がいなくても大丈夫なように、ここに入った時点でとあるものを手渡してある。問題は、このパニパニな顔でそのことを思い出せるのかということだ。

 

「ええと、ええと……」

 

 目が泳いでいる。

 何か忘れていると思って脳みそをフル回転させているのが表れていた。

 

「不審者に遭ったら、子供はどうするって教わる?」

 

「…………そうだっ!」

 

 腰に付けていたものを取り外し、目の前に持ってきた。

 それは筒。

 緑色の筒に紐がくくりつけられている。これはいわゆる狼煙とか発煙筒に近いもので、中には花火が入っている。紐を引っ張ると異常を周囲に知らせてくれるわけだ。

 

 ここには商工会の職員もいるし、使えばすぐに助けに来てくれるだろう。正解を見つけてくれて嬉しいよ、うんうん。

 

「こうだよね、確か……」

 

 …………ん? 

 

「……あ、いや、ちょ、今とは──」

 

 ──昼空に花火が打ち上がった。

 

「あ」

 

 三船くんもハッとした顔をしている。

 

 突然すぎて止めることすら出来なかった。

 そもそも、俺がいなかったらの仮定として問題を出しただけなのに。パニくってるやつに指示を出すことの迂闊さを再確認したところでタマモの様子を伺う。

 

「クルルルルル……」

 

 なぜか、こちらを睨んだまま動かない。

 ああいう大きな音を出すと、モンスターや獣は何かしらの反応を見せるのが常なんだけど……まあ、あらゆる物事においてイレギュラーはつきものだよな。

 

 この後、暴れてこちらに向かってくる可能性を考慮して三船君を背中に隠した。

 一応魔剣も顕現させる。

 少なくとも、彼や研修生の手に負える相手では無い。

 

「ケーーーン!」

 

 しかし、タマモは鈴のような遠吠えを響かせると、悠々と去っていった。

 険しい目付きの割には余裕ありげだった。もしかしたら生まれた時から目付きが悪いのかもしれない。それで飼い主に捨てられて擦れたキツネが……くっ、なんて哀れな! 

 

「君たち! 大丈夫か!」

 

 駆けてきた職員。

 最初は俺たちの方を心配していたが、血みどろの地面に少しだけ顔色を変えた。

 

「何があったんだ」

 

「モンスターを探して2人で動き回ってたんですけど、偶々タマモと出くわしちゃって……」

 

「なるほど、君達ではまだ対処できなかったんだね」

 

「はい!!!」

 

「うううるさっ! なに!?」

 

「ごめんなさいでした! 次からはもう少し考えて使います!」

 

「う、うん……あ、でも危なかったのなら全然、間違いじゃ無いからね」

 

「ありがとうございます!」

 

「じゃあ、気をつけてね」

 

「はい」

 

 微妙にイヤそうな顔を一瞬浮かべたけど、すぐに笑顔で見送ってくれた。

 三船くんの手を引いてその場を離れる。

 

 勢いで何とか誤魔化したぜ。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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