【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「ごめんなさい、勝手にパーティを組んじゃって」
「…………」
教導中の研修生が勝手にパーティーを組む。
現状は臨時とはいえ、教官に対しての裏切りとも捉えられることだ。人によっては怒ることもあるだろう。
だが、どうでもいい。
俺が任せられたのは彼のケアであり、彼を探索者として大成させることではない。方法を指定されているわけではないのだから、俺のこの行動はそもそもが独りよがりなのだ。
この部分に関しては趣味と言っても良い。
最後──彼が幸福に辿り着くまでの過程には余地があり、これまでは俺が主導して行動を起こしていただけだ。
彼がその過程に自らの意思を反映させることは、何らおかしいことではない。
むしろ、彼が自らの脚で立ち上がり、俺など置いてどこかへ行くという結果に辿り着いたのなら……それは歓迎するべきことだ。
きっと、方目さんも喜ぶだろう。
「でも、僕……何かを感じたんです」
それが性欲なのか、運命なのか、あるいは魔素の脈動が齎す感応なのか。知る由はない。
彼にすら分からないだろう。感情や選択とは、ほぼ同じシチュエーションだとしても些細な変化によって容易に変わり得る。
多少の温度変化ですら。
「ダメ、でしょうか?」
「……三船くん」
「は、はいっ」
「きちんと面倒を見るんだぞ」
「──わかりました!」
本当は、彼の行動を制限する権利なんて無い。
全ての存在は自由であり、倫理は無く、縛りは無い。自らの責任において全ての行動は行われる。
だが、それでも彼が俺の言葉に信頼を置いてくれるというのならば。
少しは俺も頑張って見てやろうじゃないの。
それが、男ってもんだろ。
「私はペットじゃない」
「辺見さん、君にも言いたいことがある」
「…………なに」
「しっかりと面倒を見るんだぞ」
「……当たり前」
子供と子供がパーティーを組む。俺には縁遠い話だったが、同時にありふれた話でもある。
大人と子供がパーティーを組むというのはむしろ、歪な関係になりかねないからコレで良いのかもしれない。
「あなたは、なんでこの人と一緒にいるの?」
「色々と事情があるんだ」
「そう」
それで、えーと……この先はどうすれば良いんだ?
パーティーを組もうが何をしようが構わないけど、戦闘訓練も1人と2人とじゃあ大きく違ってくる。
俺の経験をもとにするなら……アリサしか参考になる奴がいないな。
今度呼ぶか?
「辺見さん、君は誰かと一緒に戦ったことはあるか?」
「ある」
「おお、それは助かる! どんな感じだったんだ? 申し訳ないけど俺は遠距離武器持ちと一緒に戦ったことがなくてな、参考にさせてくれ」
年齢は三船くんより下だろうに、経験が意外と豊富だ。
「…………」
「どうした?」
無言。
一向に答える気配がない。
想起しているという様子ではなく、口籠もっている。
「……まあまあ」
「まあまあ?」
まあまあって……あの、まあまあ?
良い感じみたいな。
「具体的には?」
「…………」
「おーい」
恥ずかしがり屋さんなんだから! もう!
「加賀美さん、僕、話します」
「お?」
三船くんは何か策があるらしい。
俺に聞かれないためか少しだけ離れて話すと、すぐに戻ってきた。
何故か困り顔だ。
「…………パーティーを組んだ人の腕を撃っちゃって解散したらしいです」
おほほほほ(笑)
「そうすると……一緒に戦うにしても、もう少し射撃精度を上げないとな」
三船くんだって背中を射られたいわけではないだろう。
ただ、やること自体はシンプルで、上達しているかもわかりやすい。こっちの問題はそこまでだ。
「あー……今日いきなり一緒に戦うってのは無理だな」
シエルは人の後ろから撃てる領域じゃないし、三船くんはそもそも戦闘行為が行えないし、現実的じゃない。
帰ろう。
──────
「三船くん、君のダメなところを明確にしよう」
「はい……」
帰るにしても時間がかかる。
今日は野宿だ。
二泊目ェ!
焚き火をしながら、今日の振り返りをした。
「君はモンスターを必要以上に怖がっている」
「……そう、ですね」
正しく評価しているならば、対象を恐れることは油断を無くしてくれる。
だが、実際の姿以上に大きいものだと考え、恐れたならば。
正しい選択をすることはできなくなる。
「分かってはいます…………分かって、いるんですけど……」
モンスターが首を逸らしただけで叫び声を上げ、目を向けただけで腰を抜かし、腕を振り上げたらなりふり構わず逃げ出す。
圧倒的格上相手ならば、それは正常な反応だ。
三船くんは同格の相手にそれを行なってしまっているのが問題だ。
「…………っ」
下唇を噛み締め、悔しげに眉を顰める。
そんな彼を見て……ビビリだとか、生来の臆病者だとか、そんな誹りを浴びせる気はさらさらない。
時間のかかる問題であるということが、再確認できた。
「ゆっくり進もうぜ」
「……はい」
焼いていた鳥の足を剥がして渡す。
あれから追加で1羽、ボールバードを落とした。
持ってきた食料だけだと足りないからな、俺が。
当然、落としたのはシエルだ。
石投げで落としても良かったけど、折角なら練習に繋げようということで。
「僕……また、何もしてないですね」
「それが今の実力ってことだ」
ボールバードは脂が乗っていた。
普通の動物と同じで、秋になるとモンスターも冬に備えて栄養を溜め込むからな。
「…………」
三船くんが、フイッと視線を向けた先。
「シエルちゃん……腕、大丈夫?」
「うん」
シエルは少し離れたところで、モソモソと口を動かしている。左腕はだらんと垂らした状態で。
2体目は雷の球体を使うタイプだった。
アレを喰らうと、その部位がしばらく動かせなくなる。加えて樹状のミミズ腫れが発生し、装備によっては一撃で気絶することもある。
傷自体は既に回復薬で治した。
ただ、麻痺までを治すことはできない。
おそらく明日の朝までは続くだろうな。
そんな状態で男が2人いるところに野宿なんて、よく眠れるのか怪しいところではある。
「何か困ったことがあったら、俺らのどっちでも良いから言うんだぞ?」
「…………」
まあ、信用されてるとは思ってない。
俺の印象は良くないだろうしな。
それでも、有事の際の取り決めは大事だ。
フワッとした指示でも、してるのとしてないのじゃ大違い。
「じゃ、じゃあ……寝ますか」
「そうしますかね」
当然、泊まる場所はセクター100の内部。
夜の番の練習もさせるぜ。
「じゃあ、俺がまず寝るから」
「僕はその間に外を見張って、時間が経ったら加賀美さんを起こせばいいんですよね?」
「私は?」
「三船くん、俺、辺見さんの順番だから最後だな」
シエルは三船くんに、ボーッとした目つきで尋ねた。
「あなたが見張りで、大丈夫?」
「あはは……」
これには流石の三船くんも苦笑いだ。
「コレは練習でもある、何か起きたら俺を起こせばいい」
「甘ちゃんだね」
「OJTってやつ。全然甘く無いぞ、普通のことだ」
「おーじぇー……?」
「細えこたあいいんだよ、辺見さんも寝な」
──────
「──」
テントに近付いてくる足音で、意識が夢の世界から現実に引き戻された。火山でモンスターに追われながら華道を習っている夢だった。
厳しい先生だったな。
「かがみさーん……あ、起きてる」
「今起きた」
「交代、お願いしてもいいですか?」
随分と疲れている。
野宿に慣れてないのだろう。昨日の夜だって、寝袋はあっても地面はそんなに柔らかく無かった。
草を敷けばそれなりに変わるだろうけど、ここでガチサバイバル生活をするのが目的じゃ無いからな。
快適さはもう少し余裕ができてからでいい。
少なくとも、最初のうちはこの程度で我慢して欲しい。
それにしても……そろそろ、三船くんがどんな風に仕事を消化してきたかってのをちゃんと聞かないといけないかもしれない。傷に触れることになるから敢えて聞くことはしなかったけど……シエルが急加入したこともあって、あんまり甘いことを言っていられなくなった。
方目さんに聞いてもあんまり情報無かったしな。実務の様子は本人に聞かないと分からないってことだ。
「おやすみ」
「顔だけ洗ってから寝ます……」
三船くんはヨロヨロ歩きながら小川の方に向かった。
こんな夜中に1人だと流石に危ないので着いて行くと、木の根に蹴躓いて顔から土に突っ込みかけた。
足元が暗いし、眠いし、疲れてるしで色々限界なのが手に取るようにわかる。
「す、すいません……」
「気にすんな。ほら、顔洗いに行くんだろ」
しょぼしょぼした目しやがって。
オラっ、顔洗っておねんねしろっ!
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない