【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「加賀美くん、相変わらず順調なようだね」
「そこまで難しいのをやってないんですよね、このままだと鈍っちゃうから今度一個良いの行こうかなって」
「私がついていくのは、流石に厳しいかな?」
「ははっ、ちょっと俺じゃあ力不足ですね」
「そうかぁ〜」
「まあ、ゆうてもレベル30前ですから」
「十分だよねえ」
「目指すところはまだまだ先って感じです」
久しぶりにボールバードなんて獲ったので、魔石を持ってきた。あと、喉奥にあった器官も。
内臓とは違って、硬質な部位だ。
生臭いから洗ったけど。
「魔素器官って奴だね」
「雑な名前ですよね」
「まだ学者達の中でも、こういう器官をどう呼ぶかってのは定まっていないからね」
「生きた状態で稼働させられれば一番良いんでしょうけどもね」
魔素器官。
あまりにもまんまな名前だ。
モンスターが有する、魔素を操るのに必要な能力はこの器官ありきである。だけど人類は未だ、モンスターがどのようにしてこの器官を稼働させ、どのようにして魔素を操るかというところの答えを得ていない。
物理の法則だって未解決なことはたくさんあるだろうに……魔素と物質の結びつきやら法則やらが解明されるのはだいぶ先なんだろうな。それこそ、俺が生きているうちには解き明かされることはないだろう。
「これ、くれるのかい?」
「俺が持ってても大した事はできませんし、研究に使えるなら使ってください。それか展示でもして探索者の紹介コーナーでも作りますか」
「んー……」
めっちゃ反応悪い。
仕方ないね。
大学生は探索者になんてならない。ダンジョンなんて新しい3Kの仕事としか思ってないんだろう。
大学生だからこそ思っているというべきか。
お金持ちの子供で、勉強で他者を蹴落としてきた。
そういう成功者の集まりだ。
先生もそれは良く理解してるし、実際、先生自身も探索者の道は選ばなかった。探索者の紹介なんかしたところで、物珍しさから見る事はあるだろうけど、なりたいなんてやつは金輪際現れまい。
「へえ〜、生で初めて見たー!」
「触っても良いですよ」
「あー、やっぱり硬いんだ……これに魔素を充填したらどうなるのかな」
「爆発するんじゃないですかね」
知らんけど。
「し、死ぬかな?」
「人間ならたぶん」
「えー……加賀美くんやってくれない?」
「いや、実験施設で安全にやってください。俺も怪我したら怒られるんで」
「誰に?」
「幼馴染と知り合いに」
「そんなの絶対に四門さんじゃん、もう1人は教え子だっけ」
「まあ、はい」
じゃあしょうがないか、なんて言いながらコロコロと机の上で魔素器官を転がして遊ぶ増田さん。彼女の修論テーマは、物質が安定的に存在できる魔素の許容濃度に関するものだったはずだ。
学部生だと、4年生で確か羽根井くんがダンジョンの地質調査みたいなことをやっているはずだ。
当然彼も探索者ではない。探索者を雇ってやっているとか言ってた。実家が太くないとできないやり方だね。
お金って便利だなあ。
俺はそもそも卒業自体には興味がないというか、論文を作るために机に向かう時間を増やすくらいならダンジョン行きたい。
それが焼肉に繋がるようなテーマなら喜んでやるんだけど、なかなか上手い切り口は見つかってない。
そもそも、焼肉のことに関しては大学とか関係なく自分でも色々調べたりしている。
牛じゃないけど……なんとか農場が可能にならないか、みたいなのを模索してる人はいた。その人にもアポは取って話に行くつもりだ。ただ、離れた場所──400番台のセクターにいるようなのでまとまった時間が欲しい。
ついでに、道中もやや危険だったりして……万全を期したい。
一年くらいは旅を覚悟する必要があるだろう。
先人の残した僅かな軌跡──地図によれば、カブトの谷、雨音の通る道、第230セクター、あとは竜の巣の近くなんかも通る。恐らく、名前すらついていないダンジョンも多くある筈だ。
行くとしたら、せめてレベル50になりたい。それでも足りるかわからないけど……
何年後かなあ。
遅くても3年後には行きたいよ。
とまあ、若干話は逸れたが俺の卒論はおそらく牛肉関係になるだろう。完成しなかったら普通に退学してそのまま自分で勝手にやる。
先生もそれは理解してくれている。
「私もちょっとはダンジョンに入ったりしたほうがいいのかなあ……」
「やめた方がいいですよ、そういう生半可な気持ちで行くと一分で死にますから」
「こわっ!?」
「冗談じゃないですからね?」
「だから怖いの!」
まじで、本当に、そういう輩は多い。
真面目に探索者になる気はないけども、面白半分でくる奴ら。肝試し感覚と言えばいいのか。
よくあるのが、アンダーに侵入したヤンチャ坊主が行方不明になるというものだ。
これは単なる噂話じゃない。
俺も、タグを持ってないThe クソガキって感じのやつが職員の話も聞かずに中に入って行って、それっきり戻ってこなかったのをこの目で見てる。
微妙な気持ちになったよ。
インターネットがなくて良かった。そういうのがあると商工会への批判が集まったりするからな。
俺は流石に商工会の味方をさせてもらうけど。
これだけ追い詰められた世界で、探索者に関してはキッチリと報酬も渡してくれるし、頼めばフォローもしてくれる。
当然か。
「増田くん、本当に行きたいなら加賀美くんに依頼するのも手だよ」
「お高いんでしょう?」
「そこそこね」
「安くしてええええ!」
同じゼミにいるんだし、仲も悪くないし、安くするくらいならいいけど。
「ちなみにいくらを想定してます?」
「いちまんえん!」
「舐めんな」
「だって私、苦学生だよー!?」
桁が一つちげえ。
「高すぎだよお><」
「別に俺じゃなくても、それこそ入口程度なら初級でも案内くらいならできますけどね」
「……お友達価格とかないの?」
「友達価格は通常の2割り増しとなっております」
「金の亡者だー!?」
「友達なら、金ぐらい気前よく払えって思ってるんで」
「ぐ……確かに……」
再び突っ伏した増田さんを置いて、永井先生が口を開いた。
「ボールバード……良く考えたら、こんな低レベルのモンスターをわざわざ獲るなんて、珍しいね」
「俺もまだ低レベルなんですけどね」
レベル30なんて、ゲームで言えば序盤もいいところだ。
「いやいや、世間一般と比べたら上澄だよ」
比べちゃダメでしょ。
そこと比べて勝ち誇ってたら、負けを認めたみたいなもんだ。
「第100セクターでね」
「おお……何故あそこに?」
「最近知り合いが増えて、その子を連れてったんですよ」
「ふむ、ならばその子が駆け出しなのかな?」
「仰るとおりです」
「練習、だね」
さすが永井先生、探索者のこともよく調べている。
「今度、その子達を連れて旧友に会いに行こうと思ってるんです」
「へえ〜」
「弓を使う子で、ちょっと学ばせたいことがありましてね」
「弓使いなら私の知り合いに一級がいるけど……会わせてあげようか?」
「ありがたいですけど……それはまだ先の話ですね」
「ううん?」
「まあちょっと、はい」
「詮索はやめておこうか」
「助かります」
流石に詳しいことを勝手に話すわけにもいかない。
そもそも……本人の性質に難があってそれをどうにかしたいんですよ〜、なんてフランクに話せるわけないだろ。
「お土産、期待してるぞ!」
修士二年の峯尾さんが親指を立てながら部屋を出て行った。
いや、観光じゃないんですけどね。
むしろ、こっちに持ってくるんじゃなくてお土産を持参していかないといけない気がする。
細かい事は気にしないだろうけど、親しき仲にも礼儀は必要だ。
お土産どうしようかな。
今日、帰り際に選ぶか。
ついでに夕飯も済ませよう。
ミツキの授業が終わったら合流だな。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない