【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「誰に会いにいくんですか?」
「山田って言うんだけど、昔は実家が弓道の道場を開いてたらしいんだよな」
「キュードー」
「昔って言っても第一期の話な」
「ふーん……」
「まあシンプルに言うと、弓を練習する教室だよ」
「それって商工会が開いてる講習会とは違うんですか?」
「講習会では技術的なことで、かつ基礎しか教えてくれないだろ? それに、レベルとかないし」
「えっとお……僕は受けたことないんで分からないですけど……シエルちゃん、そうなの?」
トテトテと前を歩く足音が止まった。
ロボットくらい動かない表情のまま振り返り、口だけ動かす。
「無い」
「へー」
なにが?
無いしか言ってないけど、何がへー、なの?
教えてくれないの無いとレベルがないの無いで合ってる?
お前ら雰囲気だけで会話してるだろ。
「僕は剣の講習なら受けたことあるけど……加賀美さんは?」
「講習はそもそも最低一回の受講は必須だぞ」
「そうでしたっけ?」
おいおい。
本当の講習受けたのか? この子。
「……お話はあんまり聞いてなかったかもです」
「結構大事なこと言ってたけどな……」
講習会は一日を使って行われる。
これを長いと捉えるか短いと捉えるかは人による。
俺は正直、短すぎて不満があった。
武器の使い方は自分に合ったやり方を探せばいいと思ってたし、ダンジョンで注意するべき事項に関して、もっと多くの事を教えて欲しかった。
商工会には人類のダンジョンに関するノウハウが蓄積している筈なので、それを公開すれば生存率が上がるのは間違い無い。だけど、ある程度から先の情報に関しては金を払わないと手に入れることができない。
意図的に情報を絞っているのは間違いない。一気に公開すると、商工会やダンジョンに対する軽視が起きかねない。人は、一度見知ったものに関して注意レベルが下がる。
敢えて低レベル程度でのみ通用する情報を伝えるのは、それはそれで間違ってないと思う。
だけど、俺は深層に潜りたい。目的の為にはダンジョンの深みまで辿り着く必要がある。
漫然と生きているのには耐えられない。
俺は本気で生きていたいんだ。
「講習……もう一度受けてみようかなあ」
「じゃあ一緒に受けるか?」
「え……いいんですか?」
「1人だとなかなか受け辛いだろ?」
俺も忘れてることとかあるかもしれない。最近はぬるいダンジョンに潜っていたから、意識レベルを上げていく為にも受けるのは悪くない。
でも、一つだけ懸念点がある。
「2回目からは受講料5万円取られるけどな」
「たかっ!?」
「腐っても探索者の為の組織ってことだな」
お前ら稼いどるんやろ? 5万ぐらいええやないか! の精神だ。1回目の講習をきちんと聞かないようなバカには吹っ掛けても心も傷まないだろうしな。
逆に、真面目に聞きたいやつは5万くらい痛くない。
三船くんはまさかの前者側だったけど。
「ごまんいぇん……」
「報酬はどうしてるんだ?」
「……えと、貯金してました、前は」
「じゃあ、余裕もあるんじゃないか?」
「でも回復薬とか防具とか買わないといけないから、あんまり貯められてないんです……マイナスで、むしろカツカツで……」
「あーそっか、研修生だから報酬もそこまでか」
「あはは……」
業務をこなした報酬は、探索者自身のレベルや業務の難易度に応じた額が支払われる事になっている。
所定の報酬があって、パーティメンバーで山分けというわけではない。初期はそういう制度だったこともあるらしいけど、問題が多すぎてやめたとか。
そりゃそうだ。
どうやって分ける問題がどこのパーティーでも起きるだろう。
一番傷を負わせた、トドメを刺した、荷物を多く持っている、不寝番で襲撃に気付いた。
すぐに思い付くだけでもこれだけ紛争の種が出てくる。
実際はもっと多くの要因が絡み合ってくるだろう。
だから、俺は三船くんと一緒に探索に行ってるけど、実際のところ全く稼いでない。
仮に探索者自身のレベルに応じて報酬が支払われるならば、簡単な依頼だけこなしているやつと高難易度の依頼をこなしているやつの報酬が同じ事になってしまう。
それはおかしい。
じゃあ、今度はシンプルに業務の難易度のみに合わせて報酬を決めてみる。かつてはこのシステムだったこともある。一見悪くないし、公平にも見える。しかし、べらぼうに強い探索者が身内を連れて荒稼ぎができてしまうのがこのシステムの欠点だ。
低レベル探索者の高難度業務受注を制限すればある程度は防げるだろうが、そうすると育成の枷になると言って不満が出た。レベルが低くても技量が極めて高い才能に溢れたヤツが時たま現れるのに、そういった人間を掘り起こせなくなるということだ。
なので、いくらかは明かされていないが業務の難易度毎に標準的な報酬を決め、探索者のレベルや実績などに応じて倍率を儲ける今のシステムになった。
高レベルの探索者が低難度の業務を受注してもカスみたいな金しかもらえないし、実績の無い低レベル探索者がいきなり高難度の業務を達成してもカスみたいな金しかもらえないか、査定をされる事になる。
査定中に別の実績を上げれば話が変わってくるらしい。
三船くんは研修生かつ実績も薄っぺらいので、適正難易度の業務に対しては倍率も普通にかかってくる。だけど、そもそもの報酬もそこまでだ。そこらへんのバイトに比べたら稼いでるだろうけど、一攫千金という額では無い。
なんなら、探索に使うアレやコレやを揃えていたらマイナスになる程度だ。
苦しい時期だねえ。
「今は頑張りどきだぞ」
「はいっ! …………日程とか、どうします?」
「三船くん、相手が違う」
「え」
「君は、なんのためにパーティーを組んだんだ?」
「──あっ! そ、そういう……」
「じゃあ、はい」
スッと手を差し向ける。
前を歩くシエルは、顔や身体こそ前を向いて歩いているが、普通よりも長い耳──いわゆるエルフ耳がピクピクと動いていた。若干こちらを向いているような気もする。
「シ、シエルちゃん……」
「なに」
おずおずと切り出した三船くんの顔を、望洋の目つきで捉える。顔面通り越して空間見てるぞコレ。
もしかして、それが弓使いには必要だったりして……!?
「あの……講習を受けたいんだけど……一緒に」
「なんで私が?」
「パーティー向けの講習ってのがあって──」
「知ってるよ」
「そ、そうなんだね! そしたら──」
「あれ、いる?」
「いるいる! 僕、何も分からないから!」
「ふーん……それで?」
「え? そ、それでって……」
「いつ受けるの」
「そ、それは、まだ、決めてないけど……」
「じゃあ決めて」
「ぉぉ……よ、予定見てくるね?」
講習は日毎に違うからな、公表されている予定表を確認しないと後で泣きを見る。明日やったら次は1ヶ月後、みたいな講習だって中にはある。
例えば、鉱石採取の方法を学ぶ講習とかな。
「どこまで歩けばいいの」
「え?」
「その山田って人がいる建物」
「ああ、もう少しだ」
駅から降りて、もう1時間以上歩いてるから、そんな気分になるのも致し方なし。
だけど立地がね、うん。
親御さんの方針的に、市街地に建てたくなかったらしいからな。
だから、人との交流が少なくてグレちゃったんだ……とか言ってるとぶん殴られそうだな。
いかんいかん、日向ちゃんは結構キレやすいからな。
気をつけないと。
この栗餡たっぷりの高級饅頭ならあいつの気分も途端に甘々になるだろう。
「甘いものが好きなんですか? 山田さんは」
「まあ、そうだな……」
好きというか、好きにさせた。
「──おっ、見えてきたな」
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない