【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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11_山田道場

 山田家の敷地に到着すると、まさかの門前で出迎えてくれた。前はピンポン押さないと出てくれなかったのに、これが客人を連れている効果か。

 仁王立ちしているのが気になるけど。

 

「よっ」

 

「……半年ぶりにきて、一言目がそれか」

 

「何も変わってなくて安心したよ」

 

「…………ちっ」

 

「こっちのが三船黎人くん、こっちのが辺見シエルさん」

 

 背後に控えていた2人を順番に指差す。

 三船くんもシエルも目を見開いていた。

 

「2人とも挨拶して」

 

「──あ、よ、よろしくお願いします」

 

「……ます」

 

「よろしく、私は山田日向ってんだ。この──トンチキ? 変態? と昔、不幸にも同じ高校に通ってた」

 

 初対面の相手に悪口とか俺のこと好きすぎだろ。

 しょうがねえ、愛には愛をもって返すか。

 

「俺に喧嘩で負けて舎弟になったってこともお忘れなく」

 

「ち、ちげえよ! サラッと嘘つくな!」

 

「え? でも俺が負けたら舎弟になるみたいな条件あったし……」

 

「何でそんなこと覚えてんだよ……私が負けた時の約束はちゃんと守っただろ」

 

「えらいでちゅね〜^^」

 

「このやろっ!」

 

「おっと」

 

 猫の如き反射速度を誇る加賀美明宏は、山田日向のムキムキの剛腕から繰り出されたテレフォンパンチを──」

 

「誰がムキムキだ!」

 

「ねえ、いつまで待てばいいの」

 

「あ、悪い」

 

「早く案内して」

 

「…………私たち初対面だよな」

 

「だから?」

 

「……なるほど、口の悪いクソガキがいるって言ってたのは、こいつの事だな?」

 

 言ってない言ってない。

 そんなこと言ってない。

 ちゃんとオブラート20枚くらいに包んだぞ俺は。

 

「でも、そうだな。一旦うちに入れ」

 

「おう、ところで早苗ちゃんはいるのか?」

 

「…………」

 

「……ヒナタ? おい、聞こえてるのかヒナタ。早苗ちゃんいるのかって。おーい、ヒナター…………ヒナタ?」

 

 無反応。

 俺たちは仮にも親友なのに、このすげなさ。

 

「ヒナタ……」

 

「──うひぃっ!? や、やめろ!」

 

「何だ、聞こえてんじゃん」

 

 耳が悪いだけかもしれない。

 ちゃんと耳元で喋れば反応してくれた。

 

「早苗ちゃんいるのかって聞いてんだけど」

 

「……聞けばわかんだろ」

 

「何でそんな冷たいん」

 

「っせえな、普通だよ」

 

 おじさん悲しいよ、たった4ヶ月会わなかっただけでこんなに扱いが悪くなるなんて。

 確かに、家の外にまでパコンっていう小気味のいい音が響いてくる。早苗ちゃんが修練してるんだなってのは分かるよ。でも、それをちゃんと口に出して教えてくれるのが義理人情ってものじゃないのかい。

 

「あの……この音、なんなんですか?」

 

 三船くんも、さっきからキョロキョロと辺りを見回していた。音の正体が気になっていたようだ。

 

「うちの姉が弓を引いてるんだよ」

 

「へー……お家に練習場があるんですか?」

 

「そういう家系だからな」

 

「すごい……」

 

「見てみるか?」

 

「いいんですか?」

 

 特別に──ってほど特別でもないけど、早苗ちゃんが練習してるところを見せてくれるらしい。俺は何回も見たことあるから、休んでようかな。

 

「お前も来るんだよ!」

 

「うわーん;;」

 

 首根っこ掴まれて、地面から天井を見上げる。板間を引きずられるのはゴツゴツしてて嫌じゃのお。

 

 

 ──────

 

 

「アキヒロくーん!」

 

「サナエちゃーん!」

 

 久しぶりの早苗ちゃんは相変わらずちんまい。

 身長は140cmほど。妹の日向とは似ても似つかないが、血のつながった姉妹だ。顔は似ている。

 どちらが姉か分からないけどな。

 

「はい、コレ!」

 

「ありがと」

 

 久しぶりに顔を見たら、やっぱりテンションが上がってきたので、俺も弓を借りてみた。

 

「加賀美さん、弓使えるんですか?」

 

「まあ見てろって」

 

 肩幅より広めに脚を開き、半身に的を見据える。

 探索者ならば、通常の距離の的は目の前にあるのと同じようなものだ。レベルによっては走って切った方が早い場合もある、俺はそこまでじゃないけどな。

 

 中指以下三本指で弓を支え、親指と人差し指の根元をぐっと押し付ける。右手は肩の動きに引かれるまま、矢が離れないように僅かに力を込めた。

 狙うは的のど真ん中。

 

「──っ!」

 

 ここを外せば俺は死ぬ、そういう気持ちで右手をスパンと解き放った。

 弓が半回転し、左手の甲をカケの上から叩く。

 

「…………!?」

 

 三船くんが息を詰まらせた。

 度肝を抜かれたようだ。

 残心を残していたところに、真ん前から早苗ちゃんが飛び込んできた。

 

「きゃー! アキヒロくーん!」

 

「サナエちゃん、どうだった!?」

 

 大きな期待を込め、高い高いしながら尋ねる。早苗ちゃんは人懐っこい太陽みたいな笑顔で答えてくれた。眩しい! 

 

「うん、ゴミ!」

 

「……やっぱり?」

 

 矢は、的場の土手に半ばほどまで突き刺さっている。

 俺の乾坤一擲の一矢は的を擦りもしなかった。

 

「弓手も勝手も完璧なのに、離れの瞬間に全部ゴミになっちゃうの! あれから1ミリも進歩してないね!」

 

「センスが欲しい!」

 

「やっぱり良いなー! アキヒロくんは!」

 

「そっかそっか!」

 

 サナエちゃんは本当に気持ちの良い性格をしている。

 あけっぴろげで、言葉に裏表が無いから好きだ。

 子供の純真さと大人の賢さを併せ持っている。

 俺とはまさに真逆の存在だ。

 ……誰が子供の無知さと大人の狡さを併せ持ってるじゃい! 

 

「何で4ヶ月も来なかったの?」

 

「探索者と大学生を一緒にやるって忙しいんだぞ?」

 

「そうだろうけどさー! 寂しかったよー!」

 

「早苗ちゃん……ごめん」

 

「許した!」

 

「ありがとう!」

 

 茶化してはいるが、本当に忙しい。

 暇があればダンジョン行きたいけどミツキ達との生活も大事だ。実家にもたまには顔を出さないといけないし、それに大学も欠かせない。先生とのやりとりから学ぶことは多いし、何より先生は俺以外の探索者からも情報収集しているので知見が深いのだ。

 合間を見てロイスや山田をはじめとして旧友のところに顔を出してはいるけど、なかなか時間がね……

 

「じゃあ、この子達の案内は私に任せて!」

 

「え?」

 

「久しぶりなんだから、ちゃんと話をしてあげて?」

 

「……わかった」

 

 早苗ちゃんは無言のルーキー達の手を引いて、ルンルンと座敷の方へと戻っていった。

 途端に、2人きりの場に沈黙が広がる。

 早苗ちゃんが特別に元気だから、落差がすごいな。

 

「姉ちゃん……余計な気ぃ使いやがって」

 

「そういうなよ」

 

「そもそも……たかが半年会わなかっただけで寂しいとかねえだろ」

 

「え」

 

「なんだ、寂しがり屋だったのかよお前」

 

「うん」

 

「……そりゃそうだよな、だからあの時も助けに来たんだもんな」

 

「あの時? …………どの時だ」

 

 ロイスを助けにいった時の話だろうか、それともソフィアか? お前か? 深山か? 

 ……ああ、助けに来た、か。

 

「そうそう」

 

「ふん、まあ良いけどさ……私は話すことなんかねえよ」

 

「家から出てないのか?」

 

「巫女だからな、変わり映えのない退屈な毎日だ」

 

「俺はたくさんあるぞ、話したいこと」

 

「探索者だから、か? …………良いな、楽しそうで」

 

「おっ? そういうこと言うんだ……じゃあ一緒に逃げるか?」

 

「バカ、できるわけないだろ」

 

 ポツポツと話していくうちに、少し堅かった表情も和らいできた。

 ロイスと同じく、相変わらず真面目なやつだ。神だの神域だの霊領だの役目だの。

 家のことなんか、放り捨ててしまえば良いのに。

 

「お前がそれ言うの?」

 

 心底からバカにしたような表情。

 なーんにもわかってない。

 

「「この世界で何をするのも自由で、全てが俺の意思のもとに行われるんだ。だから、逃げるもクソもない」だろ?」

 

「OMG……」

 

「お前のことなんか分かり切ってるっつったろ、アキヒロ」

 

 巫女って、すごいかも……

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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