【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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13_部屋分け

 傷を洗って、軽く手当てを済ませてから加賀美さんを探した。案内も一通りしてもらったし、ここから何をすればいいのかを教えてもらうためだ。

 だけど、なかなか見つからないので3人で探した。

 おかしいな。いくら広いって言っても、一つの敷地内だ。声が聞こえるものだと思ってたのに。

 

「──あ、早苗さんだ」

 

 探し回っていると、庭に早苗さんがいた。シエルちゃんもいる。声を掛けようとしたら2人から制止が。

 どうやら、僕の足音で接近には気づいていたらしい。

 

「どうしたの?」

 

「あれ」

 

 シエルちゃんの指差す先を見る。

 

「──わあ」

 

 そこは、庭の一角だった。芝生の生え広がった、太陽の降り注ぐ場所。家の中にこんな場所があること自体がまず驚きだけど、加賀美さんと日向さんはそこに寝転がっていた。

 2人とも、頭の後ろに両手を回している。

 談笑しているようで、邪魔し難い雰囲気が流れていた。

 

「日向ちゃん……」

 

 やがて、ふざけた雰囲気のまま2人は小突きあいを始めた。じゃれ合いなんだろうけど、覗きをしているということもあって、見てて恥ずかしくなってきた。

 

 だけど、数分経つと視線に気付いた加賀美さんがこちらを向いて、気まずそうに上体を起き上がらせた。日向さんも不思議そうに起き上がり、追随させた視線を固まらせる。

 

「あーあ、気付かれちゃった…………あきひろくーん!」

 

 先ほどまでの、どこか湿り気を帯びた声はどこへやら。カラッとした声で駆け寄っていく。

 加賀美さんはそんな早苗さんを、座ったままに両手で迎える。飛び込んできた身体をキャッチし、そのままゴロゴロと一緒に芝生を転がった。

 遠景で見ると、両親と娘の休日といった様子に見えないこともない。

 

「──俺と日向の関係? お前そりゃあ、マブよ」

 

 ガッチリと日向さんの肩を抱き寄せると、親指を立てる。屈託の無い笑顔に気圧され、頷く。加賀美さんが不義理なことをするとも考えられないし、きっと、そうなのだろう。

 

「は、離せよ……」

 

「この通り、恥ずかしがり屋だから中々構ってくれなくて寂しいぜ」

 

「誰が恥ずかしがり屋だ! そもそも、構うも何も、たまにしかうちに来ないのはお前だろ!」

 

「んなこと言ったって遠いし、俺、忙しいし」

 

「っ……この──」

 

 ワーワーと言い合ってる2人をそのままにしたら日が暮れるまで乳繰り合ってそうだったので、早苗さんが2人を引きずってお家の中に入った。

 やっと落ち着けるや。

 

「予定? とりあえず辺見さんと三船くんはここで1ヶ月過ごしてもらう」

 

 え? 加賀美さんは? 帰っちゃうの? 

 

「えー! アキヒロくんも泊まってってよー! 日向ちゃんも一緒に寝たいって言ってるしさー!」

 

「言ってねーよ!」

 

 ……っていうか男は僕1人!? 

 それはちょっと流石に……しかも1ヶ月!? 

 

「そんな邪悪なことしないから……俺もこっちに泊まるよ、商工会の支部も近いしな」

 

「じゃあ、1ヶ月もいてくれるの!?」

 

「いるっつってもダンジョン行ったりするけど」

 

「わーい! わーい!」

 

 え、お、女の子しかいないお家に僕も泊まるの……? 元々はそうだったけど、流石に初対面みたいな女の子がほとんどだと緊張するなあ……加賀美さんはしないのかな。

 

「うーん……どれにしようかな」

 

 加賀美さんは、すでに端末を見ていた。

 どの業務を受注するかを選んでいるようで、緊張なんて微塵もしてないように見える。

 

 でも、一つだけ気になることがあった。

 

「ミツキ? そりゃあ連絡はしてあるけど……なんで?」

 

「あ、いや、してあるなら何も……」

 

「?」

 

 そこらへんどうなのかなって。

 すごい気になっています。

 前、加賀美さんのお家に行った時の印象だと、結構嫉妬深くて暴走しがちだった気がする。

 何かおかしなことにならなきゃいいけど……

 

「おいアキヒロ、荷物運べ。いつまでもリビングに置いとくなよ」

 

「そうだな──よし、2人とも! 荷物運ぼうか!」

 

 ここに泊まってと案内された部屋の引き戸を開け、後ろ手に閉めて荷物を床に置いたら、また戸が開いた。

 中に入ってきたのは──

 

「ぼ、ぼ、僕、シエルちゃんと同じ部屋なの!?」

 

「文句ある?」

 

「いや…………あれっ、僕がおかしいのかな」

 

 加賀美さん曰く『パーティーメンバーなら、同じテントで寝泊まりすることもあるだろ! 今から慣れとけ! シランケドナ!』だそうだ。

 本当かな……でも、シエルちゃんは何も思ってなさそうだし、僕だけ意識しているみたいで恥ずかしくなってきた。

 

 廊下では何やら言い争っていた。

 

「アキヒロくんは私の部屋!」

 

「何言ってんだよ! こんな奴と一緒に寝たら頭おかしくなるぞ!」

 

「だから自分の部屋に泊まらせるって?」

 

「私が一番付き合い長いんだし、1人部屋に泊まらせて変なことされるよりはいいだろ! 監視だよ!」

 

「信用してないんだー……かわいそう、アキヒロくん……」

 

 加賀美さんは半泣きで2人を止めていた。

 

「俺のために争わないでよお!」

 

「うっせえ引っ込んでろ!」

 

 あんまり関わらない方が良さそうだなと思い部屋に入ると、シエルちゃんは持ってきていたリュックから変な物を取り出した。

 

「シエルちゃん、何それ?」

 

「気にしないで」

 

 それを頭に付けると、床に正座をして目を閉じた。

 

「…………っ……」

 

「……大丈夫?」

 

「──」

 

 苦しそうで、声をかけたら睨まれた。

 

「うるさい」

 

「ごめんなさい……」

 

「集中させて」

 

「うん、わかったよ」

 

 荷物を広げた。中には、持ってくるように言われていた武器や着替えが入っている。

 買ったナイフは、いまだに何の成果も上げていない。だけど、それは僕のせいだ。

 へっぴり腰ではナイフなんか振れない。相手を殺すために、力を込めなきゃ、刃が立たない。モンスターは怖くて、強くて、簡単に僕たちなんかペシャンコにしちゃうんだ。

 だから、みんな死んだんだ。

 

 加賀美さんがここに連れてきた意味は分かっている。僕たちを強くするためだ。弱っちくて、心も弱くて、1人じゃ何もできない僕が、並みの研修生になれるように。

 

「──よしっ!」

 

 頬を張った。

 僕も、頑張らないと。

 

「う゛う゛〜……」

 

 人生で初めての温泉。外に設置されたお風呂っていうのもあって、恐る恐る浸かる。不思議な匂いに戸惑ったけど、疲労が抜けていくような気がした。

 だけど、結構温度が高くて浸かる時に変な声が出る。

 パシャパシャとお湯の中を泳いだりしていたら、加賀美さんが入ってきた。

 身体を洗って、隣に腰を下ろす。

 

「くへえ〜」

 

 渋い顔をしている。

 あれからどうなったんだろう。

 

「お疲れちゃんだよ本当に……あいつら元気だのなんだのって……俺の寝るところなんか草むらでも構わねえっつうのに」

 

「あはは……」

 

「辺見さんとはどうだい?」

 

「あー……」

 

 あの後、シエルちゃんからあることを言い渡されていた。

 

『ここの線からこっちは私の場所だから』

 

 僕はそっち側には立ち入り禁止になってしまった。

 だけど、シエルちゃんは自由らしい。

 

「へっ、そりゃあなんとも」

 

「僕たち……まだ、顔を合わせるの数回目ですからね……」

 

「何回合わせたら大丈夫なんて無いさ、魂で繋がるときがそのうち来る」

 

「魂……」

 

「日向と俺も、心が繋がっていればこそ親友なんだ」

 

「ミツキさんや関根さんは?」

 

「そこらへんもだな──ゔぁ〜! 温泉だよやっぱりよお! 日本人はよ!」

 

 お湯を掬って、バシャバシャと顔に打ち当てる。

 気持ちよさそうに髪をかきあげた。

 それにしても全身、傷だらけだ。

 

「探索者なんかやってるからよ、こうなるんだ」

 

「もう痛く無いんですか?」

 

「とっくに治ってる」

 

「あの……身体を鍛えるよりもレベルを上げた方が良いって聞いたことあるんですけど」

 

「出たよ、それ」

 

「え?」

 

 加賀美さんは、うんざりだと言わんばかりに手と首を横に振った。

 

「男なら鍛えなきゃ」

 

「は、はあ……」

 

「こっちの方がカッコいいだろ?」

 

 二の腕をムキッと膨らませる。確かに、加賀美さんの体は厚みがあって、僕とは全然違う。それに、商工会で見かけた探索者達も、服越しではあるけどこんな風には見えなかった。

 どうやったらこんな身体になるんだろうか。

 探索者の力って普通より強いし、腕立て伏せとかじゃ鍛えられないよね。

 

「意外と漫画もバカにならないな」

 

「漫画ですか?」

 

「読んでる時はバカみたいだった修行法ってやつも、いざやってみれば意外とな」

 

「ふーん……」

 

 バカみたいって言いつつ、加賀美さんはどこか遠い目をしていた。

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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