【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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16_第235セクター支部

「どうも、初めまして」

 

「…………えっと……?」

 

「加賀美です」

 

「受注、ですよね?」

 

「はい」

 

 当たり前ですよね? タグつけて防具まで着てるのに、挨拶だけ来ましたとかほぼ挑発行為にしかなりませんね? 

 そんな困り顔されても……俺が困っちゃうな? 早く登録をさせて欲しいな? 

 

「えっと……えっと……少々お待ちください!」

 

「ええ……?」

 

 カウンターの前で待つこと五分、おじさんが来た。さっきの若い女の子も一緒だ。上司だろうか。

 

「やあやあ、すいませんね。中々新規の探索者なんて来ないもので」

 

「あぁなるほど」

 

「こんな僻地に来てくれるなんて……最近越してきたんですか?」

 

「いや、友達の家に泊まりに来たもので。そのついでに登録しとこうかなという魂胆です」

 

「地域によってモンスターも全然違いますからねえ」

 

「そうすねえ」

 

「ああ、じゃあそこ掛けてもらって……説明はどうしましょうか」

 

「聞きます」

 

 タグさえあれば、登録に身分証も何もいらない。説明もいらないような気がするけど、場所によって若干ルールが違うこともあるからちゃんと聞いておかないといけない。

 

「……えーと、そうしたらもうちょっと待って頂いても?」

 

「ああ、ええ」

 

 おそらく説明用のマニュアルがどこにあるか探すのだろう。仕方ない、10分ぐらいで済ませるつもりだったんだけどノンビリ待つか。

 

「──うぃー!」

 

「ん?」

 

 隣にチャラチャラした兄ちゃんが座った。兄ちゃんっつっても俺よりは年下っぽいけど。

 顔が赤い。席からこちらを見ている同じ年齢程の三人組のアチャーといった様子から見るに、1人で絡みに来たようだ。いつもの事、って感じか? 

 

「うぃー!」

 

「うぃ〜」

 

「おっ、良いねえ! 見ない顔してっけど、俺のこと知ってる?」

 

「ジョニーデップか?」

 

「はあ? 何言ってんだ?」

 

「ちげえのか」

 

「アツシね、アツシ」

 

「オケオケ、俺はアキヒロだ」

 

「アキヒロ! 良いね、レベル幾つ?」

 

「15」

 

「はい勝ちー! 俺は18!」

 

「すげえじゃん、いつから探索者やってんの?」

 

「16歳、今は18ね。歳もレベルもどっちも18」

 

「へー」

 

「この防具、結構よさそうじゃん。今度貸してよ」

 

「はは……」

 

 コンコンとノックする音。

 俺の鎧に興味を持たれてしまったようだ。

 

「ちょっと今着てみてもいい?」

 

「普通にダメ」

 

「えー、いいじゃん!」

 

「酔ってるやつに貸すわけねえだろ」

 

 初対面のやつにも貸さないし、信用できないやつにも貸さない。これは俺の一張羅なのだ。

 

「うわおもんねー! だから1人なんだ!」

 

「そうだな」

 

「…………ぶー!」

 

「みんなのところへ帰りな」

 

 みんなのところへおかえり、こわーい怪物がやってくる前に。

 

「お待たせしてすみませんね」

 

「ええ、お気になさらず」

 

「じゃあ、ええと……どこのページかな」

 

「そんな急がないでもいいですよ」

 

「いや本当に申し訳ない」

 

 それにしても──改めて周りを見ると、良い時間帯のはずなのに探索者の数が少ない。さきほどのアツシを除くと、5〜6組程度だろうか。こんな数でこのセクター周辺の治安を維持しているのか。

 俺がいつも利用している第32セクター支部なんかはこの時間帯、受付が埋まるくらいの利用者がいる。まさか、これが少子高齢化社会……? 

 

「はは……人手不足でしてね」

 

「どこも厳しいですからね」

 

「だからこそ、この子が入ってきてくれて助かりましたよ」

 

「なるほど」

 

 おっさんが指差したのは受付のお嬢ちゃん。正直、本当に受付なのか怪しいところはあったけどマスコット扱いなのか。13歳とかじゃないのか? この幼さ。

 残業させてないよな? ──なんてのは冗談で、これもまたありがちと言えばありがちだろう。

 極端に低い子がいるわけじゃないけど、就業年齢の制限とか存在しねえからな。働けるなら何歳だろうが働けば良い。重荷を背負えるような余裕は人類には無いんだ。

 そういうのは社会が成熟してから。

 

「おお、あったあった! じゃあちょっと、これ一緒に見てもらって──」

 

 説明を受けたけど、あっちと大した違いはなかった。

 良かった良かった。

 聞かないで違うのの百万倍良い。

 

 

 ──────

 

 

「スネイルウォリアー、か……」

 

「ええ、俺の地元にはいないもので」

 

「──光村さん、あっちに行ってなさい」

 

「?」

 

 タタッと、受付の嬢ちゃんがさっきの少年たちのところへと駆けていった。すぐにアツシだったかの膝上を確保して、餌付けされている。

 仲睦まじいことだ。

 

「あの子のご両親はスネイル達にやられましてね」

 

「それは……なんとも」

 

「赤ん坊の頃の話だから覚えていないんでしょうが……一応ね」

 

「はい」

 

「貝殻の洞窟に行くということで良いんですね?」

 

「そうですね、おっしゃる通りです」

 

「レベルは29……貝殻の洞窟の難度は玉座の間を除けばレベル35ですが、勝算がおありで?」

 

「これが俺のナイフです」

 

「……ほう、魔剣ですか」

 

「これが俺の銃です」

 

「こちらも変質している……戦闘経験はそこそこおありのようだ……それで?」

 

「これだけです」

 

「…………うーん……いやぁ〜どうだろう……」

 

「足りないですかね」

 

「パーティーは組んでいないんだね」

 

「ええ」

 

「無茶とまではいかないですがね……ウォリアーだけなら、という但し書きがつきます」

 

「どうやら問題無いようですね」

 

「キングとクイーン、ジョーカーに出くわしたらくれぐれも逃げるように。死ぬよりも酷い目に遭いますからね……まあ、無いとは思いますが」

 

「ははは」

 

 

 ──────

 

 

「待って!」

 

「…………」

 

「おい、待てよ!」

 

「…………君は確か、アツシのお友達だったかな」

 

「話が聞こえちゃってさ……貝殻の洞窟に行くんだって?」

 

「うん」

 

「ちょっと頼みが──」

 

「待て、その前に君の名前は?」

 

「あ、そうか……俺は幸田智樹(コウダトモキ)!」

 

「トモキね、俺は加賀美明宏」

 

「よろしくな」

 

 アツシの友達、トモキは初対面の俺に用事があって話しかけてきた。お母さんが死にそうで防具貸して欲しいとかだったら、ぶん殴ってやろう。

 

「頼みってのは?」

 

「実は……物を探して欲しくて」

 

「他を当たってくれ」

 

 そういうのは余裕があるやつにしてほしい。俺は貝殻の洞窟初心者なの! 今は余裕綽々に見えるかもしれないけど、現地に行けばわりと一杯一杯になる。そんな中で探し物なんて、無理ですからねあーた。

 

「……他はもう全員当たったんだよ」

 

「ええ?」

 

「第235セクター支部にいる探索者には全員当たったんだって……」

 

「…………尚更俺には無理じゃん」

 

 キングスネイルのレベルは60、クイーンスネイルは65。ここら辺だと格段に高い。スネイルウォリアーだけなら対処できるやつだっているはずだけど、みんなに断られるってことはそういうことじゃん。

 

「やっぱ無理だわ、そもそもスネイルウォリアーだって俺にとっては本気で立ち向かうべき相手だし」

 

 戦ってみなきゃ具合とか分からんしな。

 

「そうか……でも、話だけは聞いといてもらっても良い……ですか?」

 

「……はぁ」

 

 子供ってずるい……

 

「アカリはお母さん達がスネイルにやられちゃったんだけど……」

 

「ん、いや、ちょ、待って……アカリはあの子の名前でいいんだよな?」

 

「え? …………そ、そうそう! 光村アカリ! アカリね!」

 

 この子、ちゃんと説明できんのか? なんか不安になってきたぞ。

 

「そんで、アカリのお母さん達の遺品がいまだに回収できてなくて……」

 

「あー、なるほどね」

 

 スネイルには洞窟内に落ちている物を収集して奥に集める習性がある。内部を清潔に保つためと言われているけど、正確なところはわかっていない。

 

 そして、奥っていうのはキングスネイルやクイーンスネイルのいる空間だ。貝殻の洞窟においてはダンジョン部分が大別して三種に分けられる。

 

 探索レベル15の入り口部分。基本種のスネイルやスネイルウォーカー、あとはブラックスネイルなどがいる。ここはイレギュラーさえなければ苦戦のしようがないだろう。あのオッサンも説明省いてたし、そこは間違いない。

 

 次に探索レベル35の通路部分。ここにはスネイルウォリアーやモンクスネイル、ビッグスネイル、ついでにクロウラーと呼ばれる隷属種なんかがいる。要は戦闘員がいる場所で、俺が今回目指す場所もここ。正直、厳しい戦いになると思っている。

 死ぬかもな? 

 

 最後の玉座の間に至っては探索レベル70。

 押しも押されぬ1級ダンジョン、それが貝殻の洞窟だ。アカリちゃんのお母さんの遺品も、他の犠牲者の遺品も、消化しきれないものは全て玉座の間にある事だろう。

 ここにはノータッチで行くつもり。だって、玉座の間にいるのはクイーンスネイルとかキングスネイルだけじゃない。

 ガーダーっていう護衛のモンスターやビッグスネイル、カイガラカブリみたいなレベル50帯のモンスターもウヨウヨいる。

 俺みたいなカスじゃ話にならねえ。

 

「やっぱり無理だわ」

 

「そっか……でも、落ちてるものがあったらできるだけ持ってきて欲しい。お金は払うから」

 

「それなら正式に契約しろ、仮にも探索者ならな」

 

「……わかった」

 

 受付を通して依頼を受注した。

 大した金額じゃないけど、落ちてるものがあって、更に拾う余裕があったらの話だ。別に良いだろう。

 

「そんじゃあ、俺が戻って来れたら報告するわ」

 

「…………」

 

 さーて、貝殻の洞窟に参りますか。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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