【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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17_貝殻の洞窟

「うおお〜……これが貝殻の洞窟ね……」

 

 独り言が漏れる。

 ソロ探索していると、状況整理するために言葉にしがちだ。あと、コマちゃんとの意思疎通を図るためというのもある。

 今はコマちゃんいないけど。

 コマちゃん……

 

 入り口の外の時点で骨が落ちてる。逆に入口すぎてスネイルも興味湧かなかったのかもしれない。家の中さえ綺麗ならソレで良い、みたいな。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 物言わぬスネイルウォーカー。

 そもそもナメクジに発声器官は無いので、物を言うナメクジがいたら怖いわけだけど……これが非常に厄介だ。貝殻の洞窟は石灰質の洞窟だが、完全な天然洞窟では無い。洞窟はスネイル達の体表から滲み出る分泌液が幾重にも重なって、層を構成している。それを貝殻のようだと表現して名前がつけられた。

 

「そいっ」

 

 ヌッ、という微妙な感覚がナイフを通して手に伝わってくる。抵抗とかほぼ無しにスネイルの頭を切り落とした。まだ入り口部分だから低レベルなスネイルウォーカー達しかいないと言うのも大きいんだろうな。

 スネイルウォーカーの見た目は、巨大なナメクジが腕を出して白色のギザギザした石を握っているというものだ。ナメクジから腕が生え、まるで人のように器用に動かしている姿を見たそこのあなた、SAN値チェックです。

 

 石は結構ギザギザしているけど、腕の動きは遅いし、当たらなければどうということはない。問題は動きの速さでは無く、スネイルの数だ。

 この洞窟全体がスネイルの王国のような物なので、つまり全体が居住部になっている。そしてスネイルは洞窟の見えるところで懇ろスタイルで生活しているわけでは無い。

 

「ヒビ……」

 

 洞窟の表面は、全体が滑らかに繋がっているわけではない。表面に幅が20〜30cmほどの亀裂、隙間が空いた部分が大量にある。スネイル達は普段、その亀裂の中で過ごしているのだ。一説によれば、侵入者が歩く際の振動に反応して現れているとも言われている。

 こうやって考えている間にも、スネイル特有のツノが隙間の奥からニュッと出てきた。

 

「うおっ気持ち悪りぃ!」

 

 俺の魔剣は刃部分に実体があるんだか無いんだか分からない。薄すぎるせいか、虚空から出現しているせいか、血や脂で切れ味が落ちたことがない。

 スネイルの体表には常に酸と粘液がまとわりついている為、武器で攻撃すればするほど腐食が進んでボロボロになる。

 素手でも変わらないけど、俺の装備は狙ったわけでもないのに対策完了していた。だからここにしたわけだしな。

 

「…………戦い甲斐もない」

 

 つまり、入り口部分のスネイルウォーカー達とは千日手だ。実際のところは向こうの数も有限だろうし俺のスタミナもあるので、俺が撤退して終わりだろうけど……今回の最終目的地は玉座の間の前。

 

「……やっぱり白いな」

 

 貝殻の洞窟は通常のアンダーと違って内部が明るいが、場所によって色が違う。

 入り口は白、通路は黄色、玉座の間は緑。

 表面の成分が陽光を取り込んで、奥まで光をもたらしてくれるらしい。おそらく光ファイバーのようになっているのだろう。

 

 

 ──────

 

 

 カンッ、カンッ、と人によっては耳障りにも聞こえるような音が洞窟内にこだまする。硬質な物質を、同じく硬質な物で殴っている音。

 スネイルが移動する際にそんな音はしない。彼らは粘液で地面との摩擦を減らして這う為、移動の際はズリズリという音だけが犠牲者の耳に残る。

 

 貝殻の洞窟内に不快な音を響き渡らせているのは、勝手に入ってきた人間だ。

 

「よっ、ほっ」

 

 持ってきた小型のハンマーを振るい、洞窟の表面に叩きつける。魔素が含まれているとはいえ、もとが石灰であり、更に積み重なった一層一層の厚さが薄いためにボロボロと崩れる。

 カケラをつまんで持ち上げると、唸る。

 

「……脆いな」

 

 スリスリと指の腹で擦ると、更に細かく砕けて一部は粉になった。

 落とすと周囲からの光で微妙に輝きながら地面に積もる。

 

「これじゃあサンプルにならない……やっぱ、雑に砕くのはダメだな」

 

 今回、俺がこのダンジョンに潜った目的は、ダンジョン表面の調査のためだ。

 物質に対して魔素がどのような変化を引き起こすかという研究は日夜行われている。しかし、研究者達により人為的に行われる物質の遷移現象よりもむしろ、人間以外が引き起こす現象の方が激しく、興味深い変化を齎すというのが常。

 生の試料を持ってこなければ正確な結果は得られないというのが研究者達の悩みの種だった。

 

「…………」

 

 ナイフを表面の亀裂に突き刺し、ハンマーで奥に押し込む。腕に力を入れると、先ほどとは異なり表面の一部が塊となって外れた。

 一箇所だけではない。

 何箇所も何箇所も、場所を変えて剥がしていく。

 スネイルが時間をかけて仕上げた洞窟が、呆気なく破壊されていた。

 

 もしもスネイルウォーカー達に感情があったのならば、怒り一辺倒になっていただろう。勿論、実際にはこのスネイル達にはそこまで複雑な機能は無い。ただ、亀裂から顔を出したり、元々洞窟内に出ていたスネイルが集まってくる。

 荒らされた場所を一生懸命に移動してヌリヌリしていく様は、どこか可愛げすら感じさせた。

 

「悪いなナメクジちゃん達、これも俺たち人類の為の尊い犠牲なんだ」

 

 そう言いながら塊状のソレを二重に袋に収め、リュックに詰める。少しだけスネイル達の様子を見ると、踵を返して洞窟の奥へと向かっていった。

 

「中間がどうなってるかも一応調べないとな……」

 

 入り口は白、通路は黄。

 ならば、その中間はないのか。いきなり白から黄色に遷移するのか。それとも、色が変わるのはこの洞窟内特有の現象で、取って仕舞えば全部一緒なのか。

 彼の疑問は尽きてやまない。

 その疑問を完璧に晴らす術がある。

 

 全部調べてしまえば良いのだ。

 洞窟をひっくり返して、スネイルを捉えて、中にあるものを全て検査にかければ良いのだ。

 

「ふんっ」

 

 鼻を鳴らす。

 一笑の下、妄想を無かったことにした。

 そんな夢物語が成立するのは、第一期の世界だけだ。

 この世界はそこまで生易しくない。

 霊長はもはや人類たる彼らではなく、モンスターという総体なのだ。

 人手も、技術も、何もかも、彼の知るものは無い。

 甘い考えは意識が散っている証拠。

 再び、目の前のことに集中を深めた。

 

「いち、に、さん、し、ご」

 

 前方にのっそりと立ち上がった影の数。

 それはこれまで見てきたスネイルウォーカーに加え、ただのスネイルも含まれていた。

 スネイルは、スネイルウォーカーのように腕はない。ただ、酸性はウォーカーに比べて優っているとされている。

 

「そこら辺はどうなのかね」

 

 リュックから容器を二つ取り出し、構える。

 また一つの資料だ。

 

「──ブッ!」

 

「うわきたなっ!?」

 

 スネイルの口から吐瀉物のように吐き出されたものを避けると、地面に落ちてジウウと音を立てる。

 スネイルウォーカーはゆっくりと近付いてきていた。そして、その背後からスネイルが再び酸を吐こうと口を膨らませている。

 それだけではない。

 亀裂からニョキッとツノが出てくる。

 

「待ちは悪手ってことだな」

 

 ジャリッと地面を軽く削りながら走る。

 ナメクジのくせに意外と狙いが正確だった。

 距離を詰め、スネイルたちを切り刻む。スネイルウォーカーはスネイルたちとの間に入る余裕すら無い。

 

「もう少し時間軸を早めて生きたほうがいいな、お前らは」

 

 的外れな説教をしながら、居住者を蹴散らしていった。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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