【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「──っ! ……ふぁ〜! 悪い、寝るわ! 意識飛びかけた!」
飯を食い終わってくつろいでたら途端に眠気が襲ってきた。ダンジョンだと気を張ってたから眠気も何も無かったけど、その分、安心安全な場所にやってくると瞼が重くなるのは当然だ。今、半分昇天してたし。
ドカ食い気絶部には入部してないから、間違いなく眠気だな。
「お布団敷いてあるから、寝ちゃっていいよー」
「ごめんな早苗ちゃん」
「ううん、いいよ! おやすみ!」
「うんおやすみ。ヒナタもおやすみ」
「……」
本当なら三船くん達がどうだったかを聞いてから寝たかったんだけど、無理しても良いことないし明日聞くことにしよう。
2人とも疲れた顔をしているから扱かれているのは間違い無い。話を聞くのが楽しみだ。
「三船くん、辺見さんもおやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
廊下に出ると冷えた板敷。
スリッパの刺繍はピースサイン。
壁一枚隔てただけなのに、どうしてこんなにも1人の廊下が寂しく感じるのか。
冷たさが、本質的には死に近いものだからだろうか。眠いからどうでも良いことを考えちまう。
「あーきーひーろ」
「ん?」
「行こうぜ」
「おお……」
山田が出てきた。
どうやら布団に案内してくれるらしい。
赤ちゃんか何かと間違われているのかもしれないけど、寂しい廊下を着いてきてくれるというのだからそれでも良いか。
「2人はどうだ?」
「どうって?」
「体調とか、稽古は何やってるとか」
「お父さんかよ」
「そんなんじゃねえって」
「……お前、アレ教えてないんだな。ボクシングだっけ」
「ううん……まあな」
「ビックリしたよ」
「…………」
「私が稽古するより、お前がボクシング教えた方が良かったんじゃないのか?」
「モンスターとの戦いで何の役に立つんだよ」
「そんなこと言ったら私だって一緒だろ」
「いてっ」
「──ほら入れよ」
「え? いや、ここ……」
戸を開いたらそこは、良い匂いのする部屋でした。
床に二つ布団が敷いてある。
包み隠さず言えば、山田日向の部屋だ。何度も来たことあるのに知らないわけがない。
「文句あんのか?」
「あるよ! ダメでしょ!」
「家主の命令だぞ」
「いやいや、だからさ……別に俺は外で寝ても……」
「……そんなに嫌かよ」
「嫌じゃないけど……俺、一応幼馴染とアレがアレで……」
「…………っ」
「だから俺は1人部屋でって……あれ? そういえばコレ、確か最初に伝えてたような……」
「…………」
「おい、こっち見ろ」
来る前に電話で1人部屋でってお願いしてたのを、今更ながら思い出した。初日は2人で言い争っているのを尻目に廊下で寝たけど、今日は流石に。
「良いから入れ!」
「お、おい……」
グイグイと背中を押され、やむなく部屋に踏み込む。
布団に座り込んだ山田と向かい合い、説得を試みた。
「親友なんだから別に良いだろ」
「親友だけど、それとこれとは話が別というか……」
「さっ、最近は友達なら男も女も一緒の部屋で寝るもんだぞ!」
「えっ……そうなの?」
「そう! 普通なの!」
最近の子供ってそんな賢者みたいなの? 俺が大学生の時って部屋泊まったら普通におっ始めてたんだけど……普通なのか……そうか……普通って変わるもんな……
「だ、大体アレか!? お前は一緒の部屋で寝たら私のことを襲うのか!?」
「いやいや、襲わねえよ」
「本当か!?」
「それ疑うなら一緒の部屋で寝ない方が良くない?」
「…………し、信じてるし」
「…………」
「何だよその顔」
渋い顔してんだよ。
「そもそも、こんな事で一々反応してる方がおかしいからな」
「えぇ〜……」
俺がおかしいのか……
「人様に力借りようっつっといて、そんなに拒絶されたら気分悪いんだが?」
「……分かったよ」
色々世話になるしな。
今回は言われた通りにするか。
正直クソ眠いから、これ以上言い合う気も起きない。
ただし、布団は離す。
万が一があっちゃいけねえからな。そもそも朝まで起きないとは思うけど。
「布団離すな!」
「王様くらい命令するじゃん……」
──────
並んで布団に入り、5分ほど。
目が冴えて全く眠れる気がしない彼女は。
自分に背を向けて横たわる男へと話しかける。
「もう寝たか?」
「…………」
「おーい」
「…………」
規則正しく聞こえる呼吸。問いかけにも反応が無いのを確認して掛け布団を持ち上げる。這い出ると途端に冷気が身を包んだ。
「うぅ、さむさむ」
急いで男の掛け布団を持ち上げる。男は、自身の布団内に流れ込んでくる冷気に対して特に反応することはなかった。
むしろ、布団の中に放っている熱が外に流れていくくらいだ。
「あったかっ」
冷え性な手先を背中にぴたりとつけ、熱を吸収する。ジワジワと肌を通して手が温まっていくのを感じ、同じように足をふくらはぎにつけた。
「快適快適」
そのままモゾモゾと身体をくねらせ、布団に潜り込んでいく。
「…………」
「むふぅ〜」
同じ布団に纏まると、満足げに息を吐いた。
三日間に及ぶダンジョンの探索。
一睡もせずにモンスターの警戒を行い、戦闘をこなす。普通の人間ならば出来ることではない。これも、魔素によって変質した肉体を持つ探索者だからこそ出来ることだ。
「〜〜♪」
鼻歌を歌いながら、背中に文字を書く。
尚も無反応。
彼はタイミングを見つけて休息を取ってはいたが、三日間の疲労は肉体にすべて蓄積されている。その状態だと即座に睡眠が可能になり、深い睡眠が連続する。彼女が何をしようと、この状態の彼は起きないだろう。
本来ならば、パーティーを組むことでその欠点を補う。不寝番を決めて、順繰りに。実際、第100セクターではそのようにしていた。
今回は、優秀なパートナーであるコマちゃんや関根アリサはついてきていない。だからこそ、かつてのように1人で潜ったのだ。
「…………」
背中側のシャツを捲ると、傷跡が晒される。
探索者は視覚や聴覚が強化されているが、背中側に目があるわけではない。異能としてそういう力を得ている者もいることにはいるが、そうでない探索者に関しては死角が必ずある。
背後から襲われることもあるし、闇から飛び出てきたナニカから腹を貫通して背中を抜けていくような攻撃を喰らうことだってある。
関根アリサが得ているようなヒーリングファクターは、傷跡すら残さないような、巻き戻しとも呼べる再生を可能にする。そしてあの指輪のように、異能の力を保持できるアイテムにその力を込めておけばその力を他者も扱える。
だが、彼が持っているのは回復薬だけだ。
実際、回復薬は探索者生活において極めて有用だ。脳を除く臓器であれば損傷を回復させる究極のアイテム。
完全な欠損には効かないが、ちぎれているだけであれば治せる。
かつては気持ち悪いと思っていたそれに、彼は大いに助けられていた。
だが、大きな怪我であればそこに傷跡が残る。損傷は修復されるが、完全ではないのだ。
「増えてる」
憂いを帯びた目で傷痕をなぞる。
今回は怪我をしていないようだが、4ヶ月の間にまた無茶をしたのだろうと確信をしていた。
「ばーか」
罵倒。
謂れのない、思わず出たものとは違う。彼女はしっかりと考えた上で彼を馬鹿だと思っていた。
探索者のこと然り、先程の発言然り。
そもそも幼馴染がどうのこうの言うなら、ここに来なければいいのだ。あの2人だけ預ければいい。
それをしなかった時点で、半ば自分から余地を作っているようなものだ。つまり、隙を作ったら突かれるのが道理。
だから、そっちの事情なんて。
「…………知ったこっちゃねえんだよ」
ピタリと背中に顔をつけて、呟いた。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない