【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「そう……すか……」
「うん、君たちでは貝殻の洞窟の通路部分で戦うことすらできない」
「…………」
アキヒロは、真っ向からトモキたちのことを否定した。
ダンジョンのこと……ましてや、相手は子供。
そういう事に対して、アキヒロが害のある嘘をつくとは思えない。少なくともあいつにとっては事実なんだろう。
「アカリの母さんたちの物は……」
「残念だが、俺には有効な策を思いつくことができない」
「…………」
全くもって忖度の無い意見。
配慮が欠けているとも言える。
私だって、もう少し言葉を選んで言うぞ。
「光村──いや、この場合はアカリちゃんの形見か……それに関しては今は諦めた方が良い」
「そ、それは…………アカリが可哀想じゃないですか……」
「命あっての物種だ」
「……姐さん…………」
縋るような目に、答えられる言葉を持っていなかった。
命以外に対してシビアと言うべきか。
明宏には意見を変える気が微塵も見られなかった。
そして、私たちがソレに難癖をつけるわけにはいかない。形見を取り戻すことができないのは可哀想だけど……トモキの意見を受け入れるということは、自殺しに行けと言うのと一緒だ。
元とはいえ舎弟にそんなこと、言えるはずもない。
「今すぐに見つけたい事情でもあるのか?」
「…………」
「急げば急ぐほど命を失う可能性が高くなる。少しずつレベルを上げていって、将来あそこを制覇すれば良いというのはまちがってるかな」
「…………」
それは正論だ。
才能があれば。
努力すれば。
いつかはその結果に辿り着けるだろう。
じゃあ、誰がその才能を保証する?
努力とは具体的になんだ?
いつかって、いつだ?
そんなこと大人にだって分からない。
「とりあえずこの本は貸しておくよ、俺は内容を覚えてるから」
「あ…………」
「どうする? もう少しここでのんびりしていっても良いけど」
「……っ!」
「…………まあ、そうだよな」
肩をすくめると、リビングに戻っていく。
あの場面で『じゃあ、お茶お願いします!』なんて言えるやつはいない。それを分かった上での質問だったのだろうから、当然の反応だ。
「難しいねー……」
「いいや、簡単だよ。答えは一つだけだ」
姉ちゃんの答えを否定し、キッパリと言い切った。
「命を失っても手に入れるべきものなんて、あまり無い」
「一応あるんだ?」
「そりゃあ在るよ……だけど、あの子達がその形見とやらに命を賭けているかは──」
「無いだろうけど……もう少し優しく言っても良かったんじゃない?」
「中途半端な優しさが一番厄介なんだよ、早苗ちゃん」
「ううー……」
今日は午後からは稽古だ。
いつまでも余計なことを考えている暇は無い。
シエルもレイトも、体力は十分に回復しているだろう。
まずは山中を走り回ってもらう。
「俺は次のダンジョンのことをもう少し調べるから出掛けるわ」
アキヒロは明日からまたダンジョンに潜る。
ダンジョンの名前は越生アンダー。
越生(オゴセ)っていう人が見つけたダンジョンで、アイツが好きなタイプのダンジョンらしい。
「好きっていうか、地下に慣れてるだけだから」
地下に潜る。
真っ暗闇。
助けを呼んだところで、やってくるのは声に反応したモンスターばかり。
そんなところに慣れるやつは、私らみたいな不良よりもよっぽど倫理観がズレている。
恐怖が麻痺しているのかもしれない。
「さーて! 楽しみだ!」
楽しみって言っちゃってるし。
やっぱり好きなんじゃん。
「着替えるのか?」
「ん? そうだな、出掛けるし」
「カゴに入れといて」
「あーい」
「…………」
なんか、良いな。
こういうの。
──────
調べると言っても、一番情報を持ってるのは商工会なのでソコに行かざるを得ない。
ネットで調べればなんでもわかる時代は、もう少し先ということだ。
「それにしても……」
すれ違う人のなんと少ないことか。
道場にはあんなに来るのに、みんな石の下にでも隠れているのかね。
道はきちんと形作られているだけに、もの寂しさが勝つ。アスファルト舗装などは無いけど、森の中でも無い。
──ヌボーッと歩いて移動していた俺の視界の奥から、何か白いものがやってきた。
「シカ……シカ……?」
パッカラパッカラと白い鹿が歩いてきた。
まあ6本足なんですけど。
一瞬だけ奇形かと思った。
ビビるよね。
「ちわー」
「こんにちは?」
子供が載っていた。
小学生くらいの男の子だ。
……どこまでがモンスターだ?
「これ、ポチ」
「ポチ? 良い名前だね」
どうやら会話は成立するらしい。
つまり、この男の子は少なくともモンスターでは無いのかな? 下の鹿に関しては……モンスターを使役できるとは聞いたことないし、あくまで変化したシカなのか。
というか、こんな珍妙なヤツ初めて見た。
後で早苗ちゃんに確認しよう、一瞬だけsnsとかでバズりそうなやつがいたって。
sns無いけど。
オーマイガー、残念ながら町おこし計画は1歩目から蹴躓いたようだ。
「今は何をしてるんだい?」
「みまわりちゅー」
「お父さん達は?」
「寝てる」
「ふーん……いつも見回りしてるの?」
「そう」
シカがカツカツと小石を後ろに流し始めた。
蹄が2本、しっかりと偶蹄類らしい。
「じゃあねー」
「おお……落ちるなよー」
中指を突き立てながら歩いていく背中を見送る。
去り際があまりにもロックだった。親指と間違えてるな、ありゃ。
……というか、見回りってなんの見回りだ。
もしかしたら不審者でも出るのかね。
──────
「アンダーに行きたいんだ?」
「ええ、明日なんですけどね。もう少し情報が欲しいなって」
いつも潜っている地下ダンジョン──柳生アンダーと共通してる部分、してない部分の見極めが完全にはついてない。
あっちに比べると新しいから層が浅いってところは分かっている。当然、モンスターの質もこちらの方が下だ。
「逆に、何を知りたいのか具体的に教えてもらえないと教えようも無いんですがね」
「モンスター。あと、特殊な地形があれば」
「はいはい」
ガサゴソと分厚い資料を取り出す。
電子データでの保存は、まだ容量がカスだから紙なんですわ。
ただ、扱う人と物理的な距離次第では電子よりも紙のほうが早いこともある。属人性高いけどな。
「ミミズ、モグラ、コウモリ──」
基本的にはアンダーらしいアンダーだ。
だけど、向こうにいる奴がこっちにはいない。
「スライムいないんだ」
「まあね、管理がしっかりしてますから」
「はああ! 凄いんですねえ」
おおかた、下水路とダンジョンが干渉するほど下水路が整備されてないだけだろう。
ダンジョンの成長が途中だからという可能性もある。
「──マンイーター、セビレ…………ケサランパサラン?」
こいつは知らないな。
「知らないですか」
ケサランパサラン。
体長3m。
全身が毛で覆われており、なんなら毛をめくっても肉体らしきものは無い。
しかし二足歩行なのは間違いないそうだ。
2本の足が見えるとか
「タンポポじゃないなら良いんだけど……」
「現れるのは第三階層からですね」
「そうなんですか、じゃあ今回は出くわすことはないかな」
初回だからまずは第一階層で様子見、余裕があれば第二階層までって感じで計画していた。
柳生に比べると越生は幾分かレベルが低いようなので、基本的にはいつものアンダー攻略と同じ感じになりそうだ。
「まあ、別のアンダーに行ってるなら心配することもないでしょ」
「いやいや、地形の情報は?」
「ああ、そうだった!」
人が少ないし来ないのはわかるけど、しっかりして欲しいぜ。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない