【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「魔素溜まり……落とし穴……組み換え……」
「魔素溜まりに関しては見ればわかりますよ」
「そうですか」
「柳生アンダーでしたっけ、そっちの方にも同じようなのはあるんですか?」
「ええ、ありますよ」
「ほー……」
アンダーなんてものはどこのセクターでも発生しうるし、発生するのを抑えるのは難しい。だけど発生理由が似ているから、内部の構造も似たものになる。
アリサには耳タコで言い聞かせているが、ダンジョンってのは特殊な地形を含むことがある。例えば魔素溜まりっていうのは文字通り魔素が溜まっている場所で、大型モンスターのねぐらや食べかすの捨て場所なんかに発生することがある。紫や緑色に輝いてるから、大抵は見ればわかる。
溜まりと言っても濃度にはバラツキがあるけど、間違えて足を踏み入れたら足が一本増えたなんて話や、先に仲間が入って後から覗いたらそこには、身体が自在に伸びて、似たような装備を纏うモンスターしかいなかったなんて話も。
落とし穴と組み換えに関してはそのまんまだ。
床の厚みが薄くなった部分は落とし穴になるし、ダンジョンの道も姿を変える。
あれ、さっきまでここには道が……なんて時は回り道をしたりせず、まずは持ってきたスコップで掘ってみるのも手だ。
「溶岩流は無いんですか」
「まだ歴が浅いからね」
「なるほど……溶岩流は無し、と」
「恐ろしいねえ、骨も溶けちゃうんでしょう?」
「ええ」
目の前で探索者達が溶岩の中にゆっくり引き摺り込まれるのを見たことがある。あの時はゾッとしなかったね。
なまじ探索者ってのは耐久力やら体力やらがあるせいで、普通の人よりも死にづらい。
あの女も腹がなくなるぐらいまでは藻搔いていた。
まぁ、一番厄介なのが無いならそれに越したことはない。
「そうしたら、閲覧代で各100万の合計200万ね」
「はい」
「商工会の口座から引き落としちゃっていいのかな?」
「ええ」
「ではこちらにサインを」
「わかりました」
「こっちにも」
「ええ、はい」
「はい! ではまた明日……で合ってたのかな?」
「そうですね、また来ます」
「ではよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
ペコペコと頭を下げ合って商工会を後にした。
まだ夕飯には遠いけど、小腹が空いた。昼ごはんが少なめだったからかもしれない。
ヒナタもサナエちゃんも少食だから、意識的に増やさないとどうしてもな。
でも、作ってくれてる人にそれを言うのもなんか違う気がする。さりとて、二人が作った後に足りないからって肉を焼くのもなんかなあ。
「……酒場で食べるか」
一度出てきた手前、もう一度入るのはちょっとだけ気まずいけど。地理知識のあまりないこのセクターでお店を探すよりは酒場で食べた方がいいだろう。
「──あれ、また入ってきた。忘れ物は無いはずだけど……」
「小腹が減ったんで」
「そういうことね」
一回出たからといって、中にいる人間の数が変わるわけじゃ無い。相変わらずヤマイチさんしかいない。
「はいメニュー」
「あ、どうも」
「水はあそこの樽からコップでね」
「はい」
一人で対応してるけど、裏に調理担当はいるよな? 流石に。こっちの対応できなくなっちゃうし。
「酒場と受付は兼務で?」
「人が少ないですからね」
「いきなり増えたらどうするんです?」
「無い無い! ここのセクターの人が増えるなんて……」
「でも、何が起きるかわからないじゃ無いですか」
「仮に増えても人員は増やせないから、その時はノンビリ待ってもらうしか無いね」
頼んだのはクラフトエールとフタマタの唐揚げ。
フタマタは頭が二つある蛇型モンスターで、ミツマタやヨツマタもいる。それぞれの頭で味が違うから、酒のつまみにちょうどいい。
「うん、美味い」
「街は廻られましたか?」
「一応周りましたけど、いかんせんおぼえるのが苦手で」
「ここを出て右にずっと行くとある、サロメっていう食堂は安くて美味しいですよ」
「へえー、今度行ってみます」
和食だろうか、洋食だろうか。和と洋っていう概念が無いから、看板とか見てもわからない。メニューからここは和メインなんだな、みたいに判断するしか無い。
「加賀美さんは、どうして探索者になったのかな」
「?」
「細かいことが気になる性分でね。どうにも、探索者特有の雰囲気が無いというか……」
あんたの知ってる探索者って、ここの支部だけじゃ無いんか?
「私、実は移住者なんですよ」
「そうなんですか」
「前は別の仕事をやってたんですがね、途中でここの商工会に転職しました」
「ヘェ〜、子供ができたとか?」
「そうそう、よく分かりましたね」
「ははは……お子さんはもう成人してるんですか」
「3人いて、長女だけ成人してましてね。出て行っちゃいましたよ、私は立派な鍛治になるんだ! っつって」
「ハートフルですねえ」
「……今は何してるんだかなあ」
「端末は持ってるんですか?」
「私はね? でも娘はどうしてるのか……音信不通ってやつです」
山市さんの年齢的に、その娘さんは俺よりも少し年上くらいの可能性が高いだろう。
成功してれば鍛治に……なれるのかあ? 鍛治ってマジのガチで秘密主義だから、内部情報とか一切流れてこないんだよな。
……闇の情報屋とかから聞けるのかな。
それか、ネットがもっと普及してれば広まったのもしれない。
鍛治って、どうやってなるんだろう。
思いつく限りの入り口は店なんだけど……あいつら特定の立地に店舗を持たないからな。
露店で熱意を語るしか無いか?
「娘さんの名前はなんて言うんですか?」
「咲良(サクラ)です」
「ヤマイチサクラさんね、見つけたら連絡するように言ってみますよ」
「…………期待して待ってますよ」
まあ、そういう顔にもなるわな。
この世界で特定の人間と出会うって……めっちゃむずい。
めちゃんこむずい。俺たちって第1期はどうやって人探ししてたんだっけ? ってくらい難しい。
小学生の時の友達とかは分かる。だけど、中学生の友達でも連絡先とか無いからな。sns、ネット、電話帳が無い。
情報を最も手広く持ってるのは間違いなく商工会だけど、聞けば全部教えてくれるわけじゃない。そもそも、そこに就職してるヤマイチさん本人が見つけられてないんだから俺が聞いたところで変わらん。
つまり、足で地道に稼ぐしか無い。
ヤマイチさんにはそんな時間無いし、俺も人探しのためだけにどこかへ行くってことは基本的には無い。誘拐とかじゃなければ。
「他支部の情報なんてのは、書面できっちり決裁取ってからじゃないと貰えないしねえ…………ああ、これは内部的な話なんで聞かなかったことに」
「そうですよね、ええ」
「変な仕事じゃなければ何を仕事にしていても良いんですけどね、連絡くらいは欲しいもんです」
「なるほど──ああ、ちょっとすみませんね」
客が来た。
……いや、客っていうか職員だな。なんで表から入ってきたんだ。そこは裏口から入るとかしろよ。
「アランくん」
入ってきたのは金髪青目の兄ちゃんだった。
顔立ちも欧米寄り。
父さんと同じだな。
「お疲れ様です」
「うん、午後頼むよ」
「任せてください」
返事が頼もしいな。
「人はどうせ来ないけどね」
「でしょうね」
「そこは俺が呼び込みますよ! くらい言ってくれないと」
「無理ですね、力不足です」
「ハハッ。じゃあ任せたよ」
「はい、お疲れ様です」
「……では」
「あ、はい」
今日は半ドンらしい。
俺も食べ終わったら帰ろうかな。
「初めまして、カガミさん」
「……ああどうも、アランさんですよね? 話がちょっと聞こえちゃったんで」
「はい、アランで合ってます」
「加賀美明宏です、よろしく」
ニコリと微笑むと、受付カウンターの向こう側で動かなくなった。事務作業も無いくらい暇なんだな、ここ。
方目さんとかは受付してない時も常に手を動かしてたけど。
……食べ終わったし帰ろうかな。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない